フランス語基礎文法の考え方 Page 5


◆複合過去

ここでは時制の話を中心にします。フランス語に限らずヨーロッパ系の言語ではあらゆる出来事は言語上も動詞
の形にしたがって、「過去」「現在」「未来」を基本とする、そのいずれかに位置付けられます。

1) 形態
 複合過去は、形のうえからは英語の「現在完了」と同じ作り方をします。つまり「avoir+過去分詞」が基本
形です。しかし、あとで取り上げますが若干の動詞は「être+過去分詞」で複合過去を作ることになります
から、タイプがふたつあるんだと考えておいてください。
 フランス語の文法用語では複合過去に用いられるavoir, être を「助動詞」と呼んでいます。この助動詞が
活用して動詞の役割をはたし、過去分詞は(性数の変化が必要な場合はあるものの)助動詞の後ろに添えら
ます。助動詞と過去分詞を「組み合わせる」ところから「複合過去」という名前がつけられました。

 danser を例にとって活用を示します。これはavoir+過去分詞のタイプです。

                           j'ai dansé     nous avons dansé
                           tu as dansé   vous avez dansé
                           il a dansé     ils ont dansé

上に、助動詞が動詞の役割をすると書きました。したがって否定形は助動詞をne...pas ではさんで出来あが
ります。
                           je n'ai pas dansé   nous n'avons pas dansé
                           tu n'as pas dansé  vous n'avez pas dansé
                           il n'a pas dansé    ils n'ont pas dansé

今度はêtre+過去分詞のタイプを示します。
                           je suis allé(e)     nous sommes allé(e)s
                           tu es allé(e)      vous êtes allé(e)(s)
                           il est allé         ils sont allés
                           elle est allée     elles sont allées
否定は
                           je ne suis pas allé(e)   nous ne sommes pas allé(e)s
                           tu n'es pas allé(e)     vous n'êtes pas allé(e)(s)
                           il n'est pas allé       ils ne sont pas allés
                           elle n'est pas allée    elles ne sont pas allées

 être+過去分詞のタイプでは過去分詞に主語との性数一致が起こるので、あらゆる可能性を考えて過去
分詞の語尾が変化する可能性を( )に示しました。その関係でelle, elles の人称についても示したのです。

2) 用法
 少々複雑な経緯があるのですが、本来、複合過去は英語の現在完了と同じ役目をしていました。しかし
ながら、本来の過去形であった「単純過去」という時制が、今日では文章語のなかでしか用いられること
がなくなってしまったので、この複合過去が、口語では一般的な意味での「過去形」として用いられていま
す。なお、過去時制には複合過去のほかに「半過去」という時制があります。複合過去と半過去はある意味
では対照的に用いられることになります。

複合過去は「出来事を現在から見て、もう起こってしまった」こととして表す、と考えてください。そして、複合
過去はやはり、本来持っていた「現在完了」もかねることになります。

        J'ai acheté un livre hier. 私は昨日、本を買った。(過去のこと)
        
Elle n'est pas encore arrivée. 彼女はまだ着いていない。 (現在のこと)

 複合過去は連続して用いられると、出来事を、起こった順番に述べることになります。(前に述べた事柄と同時
に起こっている出来事を表すのには、後述する「半過去」が用いられます。)

        Il a lu la lettre qu'il a mis sur la table. 彼は手紙を読んで、それをテーブルに置いた。

3) 助動詞の選択
 フランス語の全動詞、約4000語のほとんどは avoir+過去分詞のタイプですが、「場所の移動や状態の
変化を表す若干の自動詞」だけがêtre+過去分詞のパターンになります。基本語彙のなかではこのタイプ
に属する動詞は15個程度なので、列挙します。
 すべて自動詞なので、逆に考えて直接目的がついていればかならずavoir+過去分詞になるとも言えます。

  aller「行く」,  arriver「到着する」,  descendre「降りる」,  devenir「〜になる」,  entrer「入る」,
  mourir「死ぬ」,  naître「生まれる」,  partir「出発する」,  rentrer「帰る」,  rester「残る」,
  retourner「戻る」, revenir「また来る」,  sortir「出かける」,  tomber「落ちる」,  venir「来る」

Q) どうしてこういう動詞だけが別なの?
 
やはり動詞の意味に関係するのだと思います。arriver を例にすると分かりやすいのですが、これは「まだ
到着していない」か「もう到着しちゃってる」か、どちらかの「状態」しかないでしょ。arriverするという「動作」
を継続することはできないわけですね。だから、arriverというのは「状態」を表しているのです。したがって形容
詞としての性格が強いのでêtreを招く、ということではないかしら。
 「歩く」marcherという動詞がありますが、「場所の移動を表す自動詞」ではあっても、J'ai marché. なんです。
それは「歩き」続けることが可能だから、というわけです。


◆過去分詞

 過去分詞とは、すなわち動詞を形容詞として用いるための形態です。複合過去を作るのに必要です。

@ -er型(allerも含めて)の動詞の過去分詞は -er → -é
という法則で作れます。
A 
-ir型(規則動詞、不規則動詞をとわず)の動詞のほとんどは -ir → -i という法則で作れます。

そのほかの不規則動詞については、パターンにまとめると煩瑣なので、それぞれに覚えてください。
語尾は -u, -t, -s のいずれかになります。

 過去分詞の性数一致
  
それぞれの項目でふれたものもありますが、ここでまとめておきます。

  1.être+過去分詞」の形になる複合過去で
         
Elle est arrivée.
 
 2.受動態で
         
Elle est aimée de tout le monde.
  
3.直接目的が過去分詞の前にあるとき
         ・目的人称代名詞が用いられる場合  
Je les ai vus.
         ・関係代名詞 que が用いられる場合  
C'est la voiture que j'ai achetée. 
       
・combien de... が用いられる場合    Combien de photos avez-vous prises?


◆半過去

   複合過去とならんで代表的な過去時制です。複合過去が「過去の1点で起こった事柄」あるいは「その事柄にともな
   う結果が現在にまで及んでいる状態」を表すのに対し、(つまり、もう起こったこと、として表します)、半過去は「過去
   の1点でまだ完了していない事柄」を表します。あえて言えば「その時・・・であった」という意味になります。

   形態) 
      すべての動詞で共通の語尾を作ります。

            je ....... ais   nous ......ions
          tu .......ais   vous .......iez
          il .........ait    ils ...........aient
       
語幹には、直説法現在形の nous ....... の人称で用いる語幹(つまり......ons の部分をとったところ)
         がそのまま用いられます。
         例外はひとつ。être です。 半過去は j'étais, tu étais, il était, nous étions, vous étiez, ils étaient
         となります。

   用法) 
       ・
多様な用法があるのでさまざまな説明の仕方がされていますが、有名なのは複合過去を「点的過去」、
       半過去を「線的過去」と対比づけて説明するものです。複合過去と半過去が対比的に使われるとき、この
       特徴ははっきりしてきます。
         
Quand je suis entré dans sa chambre, il dormait. 私が彼の部屋に入ったとき、彼は眠っていた。

       ・過去のある時点で「未完了」のことがらを表します。
          
Hier, il pleuvait à 6 heures du soir.     昨日、夜6時に雨が降っていた。

       ・出来事を「線」でとらえることから、繰り返し行なわれた行為,すなわち「習慣」を半過去で表します。
         
Je me promenais souvent au bord de la mer.    私は海辺をよく散歩した。

       ・si +半過去 は実現の可能性がない現在の出来事を仮定するのに用いられます。
          
Si j'étais riche, .....  私がお金持ちだったらなあ (実際にはお金持ちではないのです)
                     (S'il est riche, il doit m'aider. 彼は金持ちなら私を援助してくれなくちゃ
                      と、よく比べてみてください。)
                       
       ・過去時制に置かれた主節に導かれて、「過去における現在」つまり、主節と同時に起こったこと
        を表します。(時制の一致)
            
Il m'a dit hier que sa fille avait de la fièvre.  彼は娘が熱がある、と昨日言った。
        これは、あくまでも主節の時制における事柄を表すためのものなので、現在にまでまたがる事柄
        や、時制を越えた一般的事実については現在形が用いられます。
            
Il a dit que Paris est la capitale de la France. 彼はパリはフランスの首都だと言った。

    
        


◆未来形

  形態)
    
すべての動詞に共通する未来形語尾を用います。この語尾はよく見ると<r +avoirの活用形>だとお分かりに
    なると思います。(nous, vous はav-の部分がありませんが。)これは偶然ではなく、そもそも未来形語尾は動詞
    の不定法(たとえば-er)にavoirを組み合わせて出来あがったものなのです。

          
je ....rai     nous ....rons
        tu ...ras     vous ....rez
        il .....ra       ils ....ront

   語幹については規則動詞と不規則動詞に分けて説明します。
    
    @-er型規則動詞
        現在形の je....... の活用形を語幹に用います。
       例) chanter :  je chante (現在形) → je chanterais, tu chanteras, il chantera,
                                 nous chanterons, vous chanterez, ils chanteront
          acheter :  j'achète (現在形)  → j'achèterai, tu achèteras, il achètera,
                                 nous achèterons, vous achèterez, ils achèteront
    A不規則動詞
        未来形用の特殊な語幹を持ちます。
          
être → je serai,  avoir → j'aurai,  aller → j'irai,  faire → je ferai
        prendre → je prendrai,  partir → partirai,  venir → je viendrai,  
        finir → je finirai   pouvoir → je pourrai,  vouloir → je voudrai

                                                              etc.
  用法)
     ・これから起こるかもしれない事柄を表すのに動詞の未来形を用います。未来形には「推測」のニュアンスが
     強いので、未来の事柄であってもその実現を断言するニュアンスでは、現在形を用いてかまいません。
           
Il part demain.    彼は明日出発する。
           
Il partira demain.   彼は明日出発するだろう。
    
    ・未来形が命令のニュアンスで用いられることがあります。
           
Tu prendras un parapluie puisqu'il pleut.  雨が降っているから傘を持っていきなさい。

    ・未来の事柄についての仮定は、未来形を用いずに現在形でかまいません。
           
S'il fait beau demain, je sortirai.   明日晴れなら、出かけるだろう。
            


◆その他の時制
 
  今まで、@現在形 A複合過去 B半過去 C未来形 の4つの時制を紹介してきました。このうち、@現在形
  とA複合過去の関係は、複合過去にavoir あるいはêtreの現在形が使われることから、単純時制(助動詞を使わ
  ない)と複合時制(助動詞+過去分詞)の関係であると考えられます。
   ならば、ということでご紹介するのですが、B半過去 C未来形 にも複合時制があるのです。

・半過去の複合時制 : 大過去 (avoir または être の半過去+過去分詞)
    1.過去の、ある時点ですでに完了している出来事を表現します。
      
Il a lu une lettre qu'il avait mis sur la table.  彼はテーブルの上に置いた手紙を読んだ。
        (この例文を、上記の「複合過去の用法」に出した例文と比べてみてください。)

    2.過去時制に置かれた主節に導かれて、「過去における過去」、つまり主節の行為の時点ですでに
    完了していることを表します。(時制の一致)
      
Il a dit qu'elle avait déménagé.  彼は彼女が引越ししてしまった、と言った。

    3.Si +大過去 は過去の事柄について事実と異なる仮定をする表現です。
      
S'il avait fait beau hier, je serais sorti.  昨日晴れてたら外出したのに。

・未来形の複合時制 : 前未来 (avoir または être の未来形+過去分詞)
    未来の、ある時点ですでに完了している出来事を表現します。
      
Quand je serai chez lui, il sera sorti.  私が彼の家に行くときには、彼は出かけているだろう。

  また、これとは別に、小説や新聞などの文章語で用いられる「単純過去」という時制があり、これは「現在と切り
 離された過去」を表します。
  その複合時制に「前未来」という時制があります。
  いずれも、ここでは説明を省略します。

  なお、これらの時制はすべて直説法というモードに属しています。直説法は「出来事を現実のなかの出来事」と
して表現するモードで、次に説明する「条件法」や「接続法」と対立します。
  


◆条件法
  出来事を「ある条件のもとで起こりうる出来事」として表現するモードで、現在形と過去形があります。

  形態)
    すべての動詞に共通の語尾を持ちます。

      je ....... rais    nous ..... rions
     tu .......rais    vous ......riez
     il ..........rait    ils ..........raient

    この形は、r の後ろに「半過去」の語尾を付け加えたものだと考えられます。

    語幹は「未来形」の語幹と共通しています。したがって、je viendrai なら未来形、je viendrais なら条件法
    ということになります。これが条件法現在です。

     条件法過去は、条件法現在の複合形。つまり、助動詞(avoir/être)の条件法現在+過去分詞です。

  用法)
   多岐にわたるので、主な用法のみを説明します。
    
    条件法現在
    @ 語気緩和 
        je voudrais.... j'aimerais.... などでていねいなニュアンスを出します。
         
Je voudrais travailler dans ce bureau.   この会社で働きたいのですが。

    A 断言を避ける
        
La grève continuerais encore quelques jours. ストはもう数日続くものと思われます。

    B si+半過去・大過去で仮定された条件下で起こると推測される、現在の事柄を表します。
        
S'il habitait près d'ici, je passerais chez lui. 彼がこの近くに住んでいるなら、私は彼の家に
                                         寄るのだけれど。

    C 過去時制に置かれた主節に導かれて、「過去における未来」、つまり主節の行為から見てこれから起こる
       事柄を表します。
       Il a dit qu'elle viendrait en retard.   彼は彼女が遅れて来ると言った。

    条件法過去
     
@ 語気緩和
         
J'aurais dû lui dire ça.    彼にそれを言っておけばよかったんだけどなあ。

    A 断言を避ける
         
Il aurait déjà fini ce livre.     彼はもうこの本を読み終わっているでしょう。

    B si +半過去・大過去で仮定された条件下で起こると推測される、過去の事柄を表します。
         
S'il avait fait beau hier, je serais sorti.  昨日晴れてれば、外出したんだけどな。 

    C 過去時制に置かれた主節に導かれて「過去における未来完了」、つまり主節の行為から見て、未来の
       ある一点で完了している事柄を表します。
         
J'ai dit qu'il serait parti fin de ce mois.  今月の末には彼は出発してしまっている、と私は
                                       言ったのです。
         


◆接続法
   
実際に起こりうるかどうかは別にして、今のところ話者の頭の中にしか存在しない出来事を表すのに用い
   られ、原則的にqueで導かれる従属節のなかに出てきます。接続法を用いるかどうかは、主節の形で決まり
   ます。
    接続法には現在形(およびその複合形の接続法過去)、と半過去形(およびその複合形の接続法大過去)
   がありますが、接続法半過去・大過去は現代では用いられることがなくなってしまい、接続法現在・過去で
   代用してしまいます。

 形態)
        
être    que je sois    que nous soyons
            que tu sois   que vous soyez
            qu' il  soit
   qu'ils   soient

        
avoir    que j'aie     que nous ayons
               que tu aies   que vous ayez
             qu'il ait     qu'ils  aient

    このふたつの動詞以外では語尾が次のようになります。
   
            
que je .......e    que nous .......ion
          que tu ......es    que vous .......iez
          qu'il ...........e     qu'ils ............ent


     語幹はおおむね、直説法現在の ils の活用語幹が用いられますが、例外的なものも多数ありますので、
     いくつか紹介します。

        finir : que je finisse   aller : que j'aille   venir : que je vienne
        pouvoir : que je puisse   savoir : que je sache   mettre : que je mette
        prendre : que je prenne   connaître : que je connaisse
        faire : que je fasse   etc.

  接続法が用いられる場合

  1.名詞節で

    1)感情や意志などを表す主節のあとで
       
je demande que....  je désire que....  je souhaite que.....
       il faut que.....   il est nécessaire que....    être étonné que.....
      être désolé que....   etc.

       ex) Il est nécessaire que je fasse les courses.  買い物をしなければ

    2)疑惑や不確実を表す主節のあとで
       
douter que....   être possible que...  ne pas penser que.....
      ne pas croire que....   etc.

       ex) Je ne pense pas qu'elle vienne ici.   彼女は来るとは私は思いません。

  2.形容詞節で

    1)先行詞に「唯一のもの」のニュアンスがつく場合
       
ex) C'est le meilleur chanteur que je connaisse. これは私の知る最高の歌手です。

    2)希望がこめられる場合
       
ex) Je cherche un ami qui parte en voyage avec moi.
                      
私は一緒に旅行に出かけてくれるような友達をさがしている。
             cf.) ...... qui part en voyage... とここを直説法にすることも可能ですが、その場合、

             
具体的な条件として「一緒に旅行に行く人」を探していることになります。

  3.副詞節で
      
avant que....   en attendant que....   jusqu'à ce que......
     afin que....    pour que.....    de peur que......
     bien que.....   malgré que......   à condition que......
     pourvu que..... etc.
                      

接続法過去は、主節の事柄に先だって完了していることを表します。

   ex.) Je suis content qu'il soit venu.   私は彼が来てくれてうれしい。
           

   

      
   

 

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