脾臓とはお腹の中で左の上側に存在する臓器です。上面を横隔膜が覆い、左は膵臓の尾部、肝臓の左葉に接し、下面には左の腎臓があります。聞き慣れない名前ですが漢方の世界では古くから知られています。五臓六腑というのがそれです。ちなみに五臓とは肝・心・脾・肺・腎をさし、六腑とは大腸・小腸・胆・胃・膀胱・三焦のことです。なお、前号まで3回連続して述べた膵臓は漢方の世界には認識されていませんでした。江戸時代の杉田玄白等の「解体新書」の翻訳により日本に紹介されています。
 脾臓の役割は地味なものです。古くなった赤血球や白血球、血小板などの血球成分を壊してその成分を再利用にまわすのがその主な役割です。胎児の時期には血球を作る造血臓器としての役割がありましたが、生まれてからは骨髄がその主役となっています。なお、白血病などの血液疾患の際に骨髄外の造血をすることがあります。
 脾臓には大動脈から脾動脈を経て大量の血液が入ってきます。その為交通事故などで左側を損傷し脾臓破裂を起こすと、お腹の中に多量の出血が起きてショックとなり、開腹手術が必要になることもあります。脾臓を通過した血液は脾静脈となり、胃や腸からの血管と合流して門脈となり、肝臓に流入します。このため血流の下流となる肝臓が硬くなる肝硬変などの時に門脈圧が亢進して脾臓が大きくなることがあります。脾臓の解剖学的な位置の為です。後でその影響についても述べます。
 健康診断の際の腹部超音波検査で脾臓内に異常影が指摘されることがあります。脾臓のリンパ管腫や血管腫などの良性腫瘍がほとんどですが、稀には脾臓自体の悪性腫瘍や他臓器からの転移の場合もあり、超音波像からは鑑別が困難で、CTやMRI等による精密検査が必要となることもあります。
 脾臓の病気の一番は、先に述べた肝硬変や血球成分が異常に増殖する血液疾患などで生じる、脾臓の腫大による脾機能亢進症です。通常の脾臓の倍近くになると機能の亢進がみられます。このために不良な血液細胞の更新という本来の働きが強化されて通常では脾臓を通過する正常に近い細胞も破壊されてしまい、結果として血球減少が起こります。赤血球の破壊により貧血をおこし、血小板の減少により著明な出血傾向が出てきます。それらの対策として大きくなった脾臓を切除することも行われます。
 脾臓の切除により症状が改善しますが、脾臓が無くても全身への悪影響はほとんどみられないので、脾臓の存在意義はまだよくわかっていません。免疫関連の役割等に注目して研究が行われています。

脾臓の病気

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平成15年4月広報掲載