今回は背部痛のお話です。いわゆる背中が痛いというのは万人が経験することでしょう。怪我などの外傷は別とすると、この症状を呈した場合には皆さんは整形外科に行かれることが多いと思われます。今回は脊椎や関節・神経などに原因のある整形外科ではなく内蔵による背部痛についてお話をします。
 背中には胸の後ろとお腹の後ろの二カ所に分けられます。胸の後ろでは心臓や肺臓に関連する痛みが起こり、お腹の後ろでは腹部臓器に関連した痛みが起こります。
 心臓に関連する疾患として狭心症や心筋梗塞でも最初の症状が背部痛のことがあります。高血圧の方がいつもと違って背中に痛みを感じた場合には狭心症なども念頭に置く必要があります。冠血管拡張用の舌下錠を内服して症状が軽快するようなら確実です。10分以上続く痛みでは心筋梗塞も考えられますので早急の受診が必要になります。大動脈の壁に穴があいて動脈壁に血液が流入する解離性大動脈瘤などでも頑固な背部痛を訴えることがありますので要注意です。
呼吸器の病気では肺炎、胸膜に水のたまる胸膜炎や肺の一部の嚢胞の破れる気胸などの場合に胸痛が起こりますが、左右いずれかに起こり、背中に起こることは稀です。なお、背中の皮膚の一部分で肋間神経の走行に一致した疼痛を起こす帯状疱疹は、皮疹の出る前に疼痛が起こり、その診断は困難です。いろいろな検査を行っている内に皮疹が出現して診断される事が良くあります。
 腹部臓器の病気により起こる背部痛は急性膵炎によるものが代表的です。原因の一つであるアルコール性の膵炎では背部痛があり、それを消すために更に飲酒を重ねる例が多く、より重症化する原因となります。胆管の結石による急性膵炎では腹痛に加えて背部痛が起こりますが、膵臓の異常に目が向けられると、早期の診断が可能となります。沈黙の臓器と呼ばれる膵臓に生じる膵臓癌では背部痛が唯一の初発症状のことがあります。診断のきっかけとして念頭に置くべき知識です。
 肝臓は自覚症状に乏しい臓器であり可成りの重篤な状態になるまで症状が起こりません。血液検査により肝臓の状態は判定可能ですので、定期的な健康診断が最も大切です。なお、胃や大腸等の消化管の病気では腹痛が主で、背部痛はあまり見られません。
 腎臓では尿路結石が最も多く、大半は左右の腹痛や下腹部痛、血尿などにより診断されます。ただし、腎臓癌などでは大きくなると背部痛を伴うこともあります。
 結論として、頑固な背部痛が続く場合には、内蔵疾患を疑って検査を受けることが、病気の早期発見に必要であると思われます。

背   部   痛
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平成17年6月広報掲載