2005(平成17)年12月23日
鳥取県弁護士会臨時総会
「鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例」の施行規則検討委員会委員推薦を拒否し、同条例の改廃を求める総会決議
 鳥取県から平成17年11月17日付けで鳥取県弁護士会に要請がなされた「鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例」の「施行規則検討委員会」の委員推薦につき、現状の条例の存続を前提とする限り、当会として、委員の推薦を行わないこと、また今後同条例の施行に関し、いかなる協力もなしえないことを表明するとともに、県及び県議会に対し、改めて本条例の施行前における改廃を強く求める。
 以上決議する。
( 理 由 )
 鳥取県は、平成17年11月17日付けで当会に対し、「鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例の施行規則検討委員会の委員推薦について(依頼)」と題する文書を発し、同年10月12日に県議会で成立した「鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例」(以下、「本条例」という。)の施行規則策定のための検討委員会(以下、「施行規則検討委員会」という。)を設置するので当会から2名の弁護士を委員として推薦するよう依頼した。
 当会は平成17年11月22日の常議員会で本問題を協議したところ、出席者全員が一致して委員の推薦に反対の意見を表明した。
 すなわち、当会は、本条例が成立する以前の時点において、県議会に対し平成16年12月7日及び平成17年10月8日の二度にわたり、本条例の問題点を指摘し制定に反対する会長声明を発してきた。さらに、本条例成立後の同年11月2日には、同条例の危険性に鑑みその抜本的手直しを求める日本弁護士連合会会長声明も発せられた。当会としては、同年10月8日の会長声明において、憲法違反のおそれすらある重大な欠陥を有するとの指摘まで行って本条例の危険性について警告したにもかかわらず、県議会がなんらその問題点に関する本質的な議論をしないまま僅か4日間のうちにこれを成立させたことは甚だ遺憾で看過しえないところである。当会の基本的な立脚点は、本条例の改廃を求める点にあり、その問題点がなんら改善されていない本条例の存続を前提としたままでの施行規則検討委員会への委員の派遣協力は、本条例の制定そのものを追認することに他ならない。
 ところで、本条例に何らかの問題点があることを前提に、規則の制定段階や人権侵害救済推進委員会の委員として弁護士が積極的に関与することによって、本条例の恣意的・濫用的な運用による二次被害が防止しうるかの議論が存在する。県もかかる期待を弁護士会に寄せている。しかし、例えば、人権侵害救済推進委員会が行う調査に協力しない当事者に対して「5万円以下の過料」が科される問題は、条例で過料を科す要件や拒否できる要件についてはすでに明確に規定されており、規則制定や運用のレベルで過料の制裁の発動を止めることは、下位法が上位法を変更するという法理論上の限界があり困難である。
 すでに指摘しているように、本条例は人権侵害救済推進委員会の県からの独立性や委員の公平・中立性の制度的保障もなければ、人権侵害の規定の定義もあいまいであって、いたるところに規則・運用レベルの対応では賄いきれない重大な欠陥が露呈している。
 にもかかわらず、鳥取県は、当会に対する施行規則検討委員会の委員推薦依頼を行う以前の段階で、そのホームページにおいて本条例についてのQアンドAのコーナーを設けて、すでに本条例に重大な欠陥が存在しないとの前提に立ち、統一的な解釈基準を示している。例えば「5万円以下の過料が科されずに調査を拒否できる要件である『正当な理由』とは、法令で特段の定めがある場合のほか、職務上の守秘義務に当たる場合が考えられる」として「正当な理由」を極めて限定的に解釈している。当会は、県のかかる二面的な態度、すなわち当会に対しては本条例の問題点を認め、二次被害を防止するために運用面での協力を求めながら、他方で対外的には、一切弁護士会との協議を待つことなく、議会の制定した条例を施行しなければならない立場から早々と、「確定的解釈・見解」を公表する姿勢を到底受け入れることはできない。県のかかる二面的な態度は、本条例の欠陥を運用面の改善というレベルで対処することの危険性を象徴しているといわざるをえない。
 当会としては、施行規則検討委員会に参加し規則制定に関与することは、「条例の文言解釈の限界」を前提に当会に極めて狭い解釈の幅の範囲内での運用改善に協力を求められることになるものと考えている。そして、当会が協力したことのみが一人歩きし、対外的にはさも問題点が改善されたかのような誤った受け止められ方がなされることを懸念せざるをえない。
 上記の理由から、当会会長は、本年12月1日、鳥取県知事との面談の際、当会としての委員推薦の見込みが乏しいことを県に伝えるに至った。その結果、今日までに県は、施行規則検討委員会の設置についてはこれを当面凍結し、この代替案として、本条例の改廃についても議論の対象とする有識者の懇話会の設置を提案し、その委員の推薦を当会に対し要請するに至っており、当会としてはその姿勢を評価するものである。
 しかしながら、施行規則検討委員会の設置については当面凍結されたとはいえ、未だなお形式的には委員推薦依頼は継続しているとも考えられること、また、当会としては違憲の疑いのある本条例の改廃がなされない限り施行に協力することはない立場を明示すべきであると考えられることから、改めて県及び県議会に対し同条例の施行前の段階での改廃を強く求めるものである。
以上、当会臨時総会において決議する。