| 鳥取県人権救済手続条例案に対する会長声明 | |
| 平成16年12月7日 | |
| 鳥取県弁護士会 | |
| 会長 太田 正志 | |
| 平成16年12月1日に鳥取県議会に鳥取県人権救済手続条例の制定を求める議案が上程されたが、鳥取県弁護士会は、同条例案について意見表明する。 | |
| 第1 | 当会は、鳥取県人権救済条例案が、国によって構想されていた人権擁護機関に対立するものとして地方ごとに救済機関を設置すべきであるとの理念から提起されたものであること、鳥取県が人権救済機関の設置に向けて率先して行動しようとしていること、については賛意を表明するものである。 |
| しかしながら、今議会に上程された条例案の内容については想定される人権救済機関の機構・権能について、つぎのような問題点が存し、これら問題点を解消した上で、改めて議会に提案されるべきと考える。 | |
| 第2 | 鳥取県人権救済手続の対象から見る性格 |
| 1 | 鳥取県人権救済手続条例の人権救済の対象とされる事件は、公権力や社会的強者からの人権侵害のみならず私人間の問題についても対象とするものである。 |
| 人権理念の本来の出発点は、自由権が国家権力からの自由を基礎とするものであったことからも明らかなように、公権力が私人間の問題に踏み込まないところにあるが、本条例は、私人間の問題であっても氏名を公表したり、人権救済推進委員会の調査に対して協力を拒んだ場合に過料の制裁を課すものであり、国家に代わり鳥取県という行政権力が私人間の問題に過度に干渉する結果となりかねない恐れがある。 | |
| この点、人権救済の実行性、調査の困難性の問題は、主に行政機関側による人権侵害事例において加害者たる行政機関側が勧告等の結果に従わず、また調査そのものを拒むとの実情から指摘されてきたものであり、対等な私人間の場合にまで一律に既定するべき背景事情はない。 | |
| 2 | もちろん、私人間の問題についても、本条例が救済対象として掲げている「虐待」や「差別」の問題など現実に救済が必要となっている分野があることは否定できないが、これらについても強制力を持った調査方法を取るには令状主義に準じた手続のチェックの機構が必要であり、そのような機構が何ら構想されていない状況で制裁のみを課すことには問題がある。 |
| 第3 | 独立性の問題 |
| 鳥取県人権救済手続条例では、その救済機関とされる人権救済推進委員会の独立性について、職務権能行使についての独立性は保障しているものの、その機構上の独立性については議会の同意を得て知事が任命するものとなっており担保されていない。同条例は、私人間の人権侵害をも対象とすることから考えると、任命がこのような形でしか行われないとすれば、まさに行政機関の市民生活への干渉を招くための道具となりかねない性質を持つものである。 | |
| これについては、委員の選任過程においての独立性を担保するために、議会内に推薦委員会を設け、その推薦委員会の委員として県議会議員のみならず司法、メディア、弁護士会、学識経験者等の外部委員を置くなどの対処により、上記の弊害を生じないための工夫を考えるべきである。 | |
| また、事務局の職員及び専門委員の選任についても、上記の独立性担保が働くような工夫が望ましい。 | |
| 第4 | 救済対象としての人権についての問題 |
| 同条例は、人権侵害の内容を定義しているが、この定義は限定解釈の原因となりかねないものであり、憲法、国際人権条約に既定される人権すべての擁護を目的とする機関であることを明示すべきである。とりわけ、国家を始めとする行政機関による侵害を対象とすることを明示すべきである。この点、条例案の第17条3項3号の規定は行政庁の行う処分全体を救済対象から除外する趣旨と解釈できる点で問題である。 | |
| 以上 | |