回答
じぶんは英語吹き替えを手がける会社に勤めている人間ではありますが、吹き替え業界やそこの技術的なこととなるとあまり知らないので私には具体的な数字をあげることはできません。
ですが有益な情報がないわけではありません。全米規模の労働組合連合――ユニオン――のひとつである映画俳優組合(通称SAG:The
Screen Actors Guild)では俳優のランク別平均賃金が事実上取り決められています。ANIMEの吹き替えに参加している俳優さんの多くはここに属しているので、ここの取り決めどおりの賃金を得ているというわけです。
ここに所属していない声優ですともっと少ないはずです。声優で食べていくためにこの組織に入らねばならないということはないのですが、組合組織に属していない人間の手による番組を放映することはあまり多くはないので仕事の機会はかなり減ってしまうと思います。自社の手がけるANIME作品がTVにかけられることを期待しているような業者はユニオン不所属の声優はきっと避けたがります。
SAGの取り決めた賃金ランクは非常に複雑であるうえに、ANIMEについてはどういう扱いになるのかはよく知らないので、私の推測をここで述べるよりは問題のユニオンによる賃金表をご紹介します。これはSAG公式ウェブサイトのResourcesの欄でみつけたものです。もうひとつ参考になりそうなものをご紹介します。米国テレビ・ラジオ出演者同盟(the
American Federation of Television and Radio Artists)はTV番組、インターネット放送、ラジオ放送、朗読CDなどに出演する人たちの集まりですが、ここも公式サイト上で賃金ランク表を公にしています。
これらの賃金表に目を通すとなんだか割りの良い仕事のように思えるのですが、これは税引き前の最低額ですので、実際に入ってくるお金はここにあるものより少なくなるわけです。声優業の経済的な面については以上のように私はあまり詳しくないので、今度は実際の吹き替え業者に問い合わせました。バン・ズーム・エンターテイメント社からの返信を以下に紹介します。
「どこのスタジオでも一話ぶんを収録するのには二日から一週間かかります。日本では一日で録音してしまうことは知っています。うちでも国産のまっさらの新作アニメーションですと一日で終わります。この場合だと四時間ほどですね。
そんなわけで声優業は仕事がいつでも絶え間なく入ってくるというわけではありません。わが国では吹き替えに関わる役者さんの多くは声優専業ではなく俳優業の片割れとしてこなしています。声優としての次の仕事が始まるまでは本業のほうに精を出すというケースもたくさんあります。声優業のみでは食べていくのに差し障るからです」
それからこういう説明もありました。
「ANIMEの吹き替え声優たちにたいして、国産の新作アニメーションに声を当てる役者さんたちは自分たちのほうが高級だと思う傾向がみられます。お金もずっとたくさん稼いでいますし(両方の仕事をエンジョイしているひともわずかですがいます)。ほとんどの俳優はANIMEの仕事のほうがずっと難しいと考えていますが、かける費用についてはANIMEだと国産ものよりどうしても下回ってしまっています」
わが国のANIME業界関係者の全員が志望者あいてに考え直せと促したがっているわけではないとは思うのですが、ANIMEが好きでたまらないという人たちは厳しくも冷酷な現実について心得ておいたほうがプラスになるとも思います。いつでもやる気に満ちていて腕もあるような人にはいつでもこの業界で職を得るチャンスはあるものです。どういうことを事前に心得ておくべきなのかを知っておくことは声優志望者だけでなく、若い才能を必要としているANIME産業界にとっても有益であるはずです。
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