少女小説についての閑話 其の壱
 作家の縞田理理さんがブログで『ライトノベル』と『少女小説』というのを書かれていて、「ライトノベル」はほとんどが「少年向けライトノベル」で「少女向け」は抜け落ちており、それは「少女向けライトノベル」=「少女小説」には独立した名前が無い為に独立して認識されていないといった内容のことが書かれています。
 わたしの場合は基本が少女小説なので、昨今のライトノベルブームにより少年向けライトノベルの人気作品を少しだけ読むようになった、というのは実状です。
 縞田さんはブログの中で「少女小説」に代わる少女向けエンターテイメント小説の名前がないものかと提案されているのですが、何か良い呼び名が出来るといいですね。
 取り敢えずわたしにはネーミングセンスが皆無なので、提案はできません・・・。
 そろそろ少女小説を読み始めて19年近くになる、という事実にふと気付きました。
 わたしの蔵書の少女小説は当然のようにコバルト文庫が一番多い訳ですが、作家さん別だと多分藤本ひとみさんの作品が一番多いと思います。その次が前田珠子さんか、日向章一郎さん、須賀しのぶさん(そういえば「キル・ゾーン」の感想は最終巻までは書いていませんが、BBも含めて全部読んでいるのです)、橘香いくのさんくらいでしょうか。数えたことがないので、適当ですが。
 多分、藤本ひとみさんのマリナシリーズにはまってなければ、今これほど少女小説は読んでいなかったことでしょう。
 それくらい、マリナシリーズはわたしがコバルト文庫を読むきっかけになった本なのですが、現在10代で少女小説を愛読していてマリナシリーズを読んだことがある方ってどれくらいいらっしゃるのでしょうね。
 ほとんどいないかな。
 さすがに段ボール箱の中に詰め込んで納戸の奥深くに勝手に封印されてしまったマリナシリーズを発掘する気にはなれないので(発掘作業の後のかたづけが大変なので)、わたしの部屋の本棚に並んでいる「見知らぬ遊戯」でも読むことにします。(2005.08.19)
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少女小説についての閑話 其の弐
 最近、あちらこちらの書評系サイトでは少女小説に関する話題を見かけますが、そういったところのご意見を読んでいて思うのは『少女小説に男性読者が少ないのは、少女漫画に男性読者が少ないのと同じ』なのではないかということ。
 かなり乱暴なまとめ方かもしれませんけれど。
 少年漫画って人気作品なら女性でも読みますし、ライトノベルの少年系作品でも面白そうだと思ったら読む女性は多いでしょう。
 でも、男性で人気がある少女漫画を読んだことがある人がどれくらいいるかは疑問です(古い作品だと『ベルサイユのバラ』とか、最近の作品なら『NANA』とか)。
 男性に『ベルサイユのバラ』のオスカルとアンドレや、マリー・アントワネットやフェルゼンについて熱く語られても、ちょっとわたしは引いてしまうとは思いますけれど。
 BL系が少女小説レーベルに混じっているから、というのはあまり関係ないように思います。わたしもBL系作品は読みませんし(幾つか読んだことはありますが、結局数冊でBL系からは離れましたし)。
 『炎の蜃気楼』に関して言えば、あれは途中まではあんな方向に進むとは思いもしなかった、というのが正直なところです。シリーズ1作目の『炎の蜃気楼』が出た当初に読んだわたし(当時中学生)は、「これって歴史上の人物が現代に甦ってくるサイキックな話なのね」と思っていました。CLAMPの『東京バビロン』などが連載されていた頃だったから(確か)、霊とか超能力とかそういうものが登場する作品が多かったような気がします。『炎の蜃気楼』は第2部以降は現在も未読です。
 前に行った少女小説人気アンケート男性からの回答が1割だったのは、このサイトを見てくださっている方のほとんどが女性(であろう)というのもあるのでしょうけれど、実際に少女小説を読んでいる男性も1割くらいではないでしょうか。
 あと、少女小説を男性が読むと、作品に登場する女性に馴染めない部分があるのかもしれないな、と思ったりもします。
 少女小説は女性作家が中心ですし、読者も女性がほとんどですから、内容も登場人物も女性で、結局女性側からの「こんな男性が好き」や「こんな主人公(女性)みたいになりたい」というのと、男性側との温度差もあるかもしれません。

 新書館のウイングス文庫に関しては、書店によって扱いが異なるとは思うのですが、わたしが利用している書店では、大抵は少女小説系のレーベルに並んでいます。ビーンズ文庫の次か、ルビー文庫の次くらいに。ルビー文庫の次に並ぶと、多分誤解する人が増えるのかもしれませんけれど、でも大抵ビーンズの次にルビー(角川書店のBL系レーベル)を並べている書店が多いです。
 昨日行った書店では、MJ文庫の続きに並んでいたので、それはちょっと・・・と思いましたが。(2005.08.30)

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少女小説についての閑話 其の参
 一部で言われている、コバルト文庫においてBL作品と非BL作品が分けられていない件については、わたしは別に気にしていないので特に意見はありません。
 コバルト文庫でのBL作品は一時期よりは減ったようにも見えますが、コバルト文庫でBL作品を発表する作家さんがある程度定まったとも言えるように思います。一時期はラインナップを見ているとBL系作品の作家さんがかなりいらっしゃいましたが、淘汰されたようにも見えます。
 少女小説がライトノベルの一部としてカテゴライズされるかどうかに関しても、実はどちらでも良いのですが、ライトノベルとしてカテゴライズされている限り、おまけのような扱いになっているようで、それだけはどうかと思います。

 雑誌『ダ・ヴィンチ』9月号の特集で「ライトノベル読者はバカなのか?」というのがあって、その中で《初挑戦 ライトノベルを読んでみたら》というのがありました。これは、ライトノベルを読んだことが無い女性にライトノベル(少年系)を読んでもらうという企画なのですが、わたしは男性に少女小説を読んでの感想が聞いてみたいです。
 そこで指定図書を挙げるとしたら、氷室冴子/著「なんて素敵にジャパネスク」(集英社コバルト文庫)、折原みと/著「時の輝き」(講談社X文庫)、津守時生/著「三千世界の鴉を殺し」(新書館ウイングス文庫)とか。
 あと、ロマンス小説を男性が読んだら、とか。多分、BL系と同じくらい拒否反応が出るような気もするんですけどね。
 前に宝島社から出ている「この文庫がすごい!2005年版」で作家の岩井志麻子さんらが官能小説を読む企画があったのですが、これはこれで結構面白かったです。で、男性はハーレクインなどのロマンス小説は読まないだろうな、とふと思ったものでした。多分、女性は官能小説は許容範囲であっても、男性にとってロマンス小説は許容範囲に無いように思うのです。
 近頃の少女小説は、コバルト文庫やWH文庫において、少しこういったロマンス小説の雰囲気漂う作品が増えてきているように思います。
 一つとして、主人公が既に恋人状態である、もしくは結婚している、という状況。
 少年系ライトノベルでは「結婚」というものそのものが存在していないような世界なのに対して、少女小説では「結婚」という状況すら過程の一つになりつつあります。
 毛利志生子さんの「風の王国」は結婚から始まる物語ですし、橘香いくのさんの「有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険」は二人が結婚して「コラリーとフェリックスのハネムーン・ミステリー」になりましたし、須賀しのぶさんの「流血女神伝」でのカリエも結婚後に出産、更にまだまだま怒濤の人生の展開。森崎朝香さんの作品も、どれも結婚が絡んできていますし、妊娠、出産と物語は続きます。
 こういう展開となるともう、男性は未知の領域でついていけない部分があるのかもしれないように思います。
 以前は【恋愛成就もしくは結婚】=【大団円】と御伽話的展開(王子様と結婚していつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし)で完結する物語が多かったのですが、最近は結婚さえも過程の一つで、そこから更に次の過程へ進んでいく作品が増えているように見受けられます。そういえば、野梨原花南さんの「ちょー」シリーズや「よかったり悪かったりする魔女」シリーズも結婚して更に物語は進むタイプです。
 少女小説が《恋愛成就で完結》しなくなったことも、男性読者が少ない理由かな、と思ったりもします。・・・あれ?いつのまにか、少女小説を男性が読まない理由の考察になってますね。(2005.08.31)

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少女小説についての閑話 其の四
 指定図書に追加。
 荻原規子さんの「西の善き魔女」シリーズの男性の感想が聞いてみたいです。
 自分が読んだ作品しか挙げていかないので、かなり選出に偏りが見られますが「西の善き魔女」は少女小説の王道を行く作品だと思うので。
 この作品は新書版→ハードカバー→文庫版と3タイプ出ていますが、わたしとしてはハードカバーが一番お気に入りです。
 一番読み易いのは文庫版だと思いますが。
 文庫版で出版されて、予想外の薄さにちょっと驚きました。
 紙材が違うだけでこんなに薄くなるのか、と感心したくらい。
 男性で荻原規子さんの作品を読んでの感想って、見たことがないです。

 近頃の少女小説はFT系の作品が多いのですが、そこでの主人公の立場で多いのが「お姫さま」。
 「流血女神伝」のカリエ、「西の善き魔女」のフィリエル、「なんて素敵にジャパネスク」の瑠璃姫もお姫さまです。でも、お姫さまという立場にあって所謂「お姫さま」という言葉から連想される「お姫さま」ではないところが少女小説。受身ではなく、自分から動いて外へ向かって進んでいくタイプが多いように思います。というか、わたしがそういう主人公が好きなので、そういうタイプの主人公が登場する作品ばかりを読んでいるともいえるのですが。
 だって主人公が活動的でなければ面白くないですし。
 で、漫画だと「ベルサイユのバラ」が王道なのは、やっぱりお姫さまが行動的だから。
 更に、お姫さまと王子様の立場関係、ですね。
 この漫画も読み始めた最初は絵柄にちょっと引くのですが、読み始めるとかなりのめりこみます。
 物語が激動のフランス革命期だからとか色々あるでしょうけれども、一つはお姫さまの立場が王子様との関係において、お姫さまが上ということがあるのだと思います。
 マリー・アントワネットとフェルゼンで言えば、フランス国内においてフランス王妃であるマリー・アントワネットとフェルゼンとでは絶対的にマリー・アントワネットの方がフェルゼンよりも地位が高い女性です。
 オスカルとアンドレでは、オスカルの方がもちろん貴族で地位もある女性ですし。更にちょっと珍しいのは、オスカルが女性であることを特に隠したり偽ったりしていない、ということでしょうか。男装の麗人のオスカルですが、色んな小説や漫画において男装をしている女性は性別を偽っていることが多かったりします。オスカルはそれがないのです(少女小説でいえば、高殿円さんの「遠征王」シリーズのアイオリアが女王ですが男装の麗人ですね。しかし、アイオリアは女タラシで後宮に暮らす夫人たちも皆女性という点ではちょっと違いますが)。
 立場や地位や身分が高い女性が主人公で、ヒーローはそれよりも下の立場という関係。
 その関係があって初めて恋愛に障害が発生したりする訳ですが、この立場の関係は必要不可欠なんじゃないかと考えてしまいます。
 で、わたしとしては「黙ってわたしについてこい」と言わんばかりのオスカルと、黙って付き従うアンドレの関係が理想的です。
 ・・・「遠征王」のアイオリアとナリスも同じですね。
 あと、茅田砂胡さんの「スカーレット・ウィザード」のジャスミンとキングの関係も女王様と海賊だから似たようなものですし。
 ということは、やっぱりこういう関係って王道というか、少女漫画や少女小説の中では必須なのではないかと。
 少年系の小説や漫画では多分こういう設定はあり得ないのではないでしょうか。
 桜庭一樹さんの「GOSICK-ゴシック-」シリーズはちょっと微妙な立場関係にありますが(ヴィクトリカは塔に囚われたお姫さまですから)、これは桜庭さんが女性っていうのも関係しているようにも感じられます。
 少年系であり得ないと思うのは、これが《お姫さまと騎士》の関係とは少し違っていて、ジェンダーの逆転みたいな部分が少年系では多分受けないだろうなと思うからです。
 少年系ライトノベルはあまり詳しくなくほとんど憶測なので、なんともはっきりしたことは言えませんが。(2005.08.31)

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少女小説についての閑話 其の五
 そういえば、【ライトノベル読者は作家買いをしない】という説を読んだことがあるのですが、少女小説読者に関しては作家買いをするのでは無いかと思います。
 わたしがそうだからなのですが、わたしの周囲では以前から作家買いをする人が多かったです。
 少女小説に限らず、活字好きな人はお気に入りの作品を見つけるとその作家さんの作品を一通り読んでみようとするものだとばかり思っていたので、【ライトノベル読者は作家買いをしない】という説を読んだ時は驚きました。
 「こんな面白い作品を書く作家さんなら、他の作品も面白いに違いない。是非読んでみよう!」と考える傾向は、ライトノベル読者には当てはまらないものなのでしょうか。少女小説読者は、結構作家買いの傾向にある、とわたしは考えているので、少年系ライトノベル読者と少女小説読者は多分タイプが異なるのではないかと。
 だとしたら、少年系ライトノベルと少女小説は読者層にかなり隔たりがあると考えられるので、二つは別物としてカテゴライズしてしまった方がすっきりしてしまって良いのかもしれません。
 カテゴライズに関してはわたし自身はどっちでも良いという考えに変わりはありませんが、少女小説は少女小説として確立されたジャンルであって、『ライトノベル』という言葉で一括りにしてしまうのはおかしいような気もしてきました。
 だって、確実に読者層が異なる訳ですから。

 BLに関して言えば、これが少女小説レーベルに存在しているのは、少女小説読者とBL系小説の読者がリンクしている部分があり、ついでに作家もリンクしている部分があるため、自然と共存する形になってきたのかな、という気もします。
 最初にコバルト文庫にBL系作品が登場した際には「BL系小説もかなり地位と販路を確立して来たんだな」というくらいに容認していたのですが、少女小説レーベルで出版されるようになって一気に市場を拡大したようにも見られます。なんといっても、雑草社の「活字倶楽部」で取り上げられるBL作品数が明らかに増えてきているのですから。まぁ、前から多かったといえば多かったんですけど。この雑誌、多分読者の90%は女性でしょうから。
 BL作品の市場拡大はここ数年で顕著です。
 専門レーベルではなく、少女小説レーベルでの出版によりBL作品が他の少女小説と一緒に並ぶようになったことで手に取りやすくなったことと、軽めのBL作品が沢山出るようになって、BLというジャンルが受け入れやすくなった部分もあるのだと思います。あさぎり夕さんなどはまた別ですが。
 わたしがこれまでに読んだBL作品は数える程しか無いのですが、作家買いをしていたらBL作品を手に取ってしまっていたのでした。買う際にはBLだとわかって買っていましたが、作家買いをするとたまにBLに流れていく場合もあるのではないかと。

 作家買いをすると他ジャンルに流れていくという傾向は、別にBLに限る訳ではなく、コバルト文庫から一般小説に移っていった作家さんは沢山いらっしゃる訳ですから、そういった作家さんが一般小説を書くようになられたことで、一般小説を読むようになった少女小説読者さんも多いのでは無いでしょうか。
 少女小説だと藤本ひとみさん、唯川恵さん、図子慧さん、山本文緒さん、岩井志麻子さん(コバルトで書いていらした頃は姓が違いますが)等。
 少女小説と一般小説を両立されている作家さんだと、小野不由美さんとか(「十二国記」は講談社文庫からも出版されていますが)。
 ライトノベルだと、乙一さんや米澤穂信さんでしょうか。角川スニーカー文庫の出身者ですから。
 ただこの方たちは女性読者も多そうなので、女性読者が多いライトノベル作家さんの方が一般小説でも成功しているように思われます。
 基本的には、少女小説作家の方が結構一般小説に流れていく傾向が強いような気がします。

 余談ですが、図子慧さんのコバルト文庫から出ている作品が好きでした。一般小説の方とはまた違った内容です。「ピュアミント」三部作はかなりお薦めなのですが(普通の女子高生が主人公の物語)、多分今では図書館くらいでしか読むことが出来ないのではないかと。新古書店では出版年が古すぎて引き取らないでしょうから、置いていないでしょうし。(2005.09.02)

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