インフルエンザ

 急激な発熱と上気道炎症状に、関節痛・筋肉痛・全身倦怠感な
どの全身症状を伴う急性伝染病。

新型インフルエンザについて
 2009年5月以降、国内でもブタ由来の新型インフルエンザが流行
しています。1918〜1930年に流行したスペインかぜと同じ型なので、
80歳以上の人は免疫がある方が多いのですが、80歳未満の人は
免疫がありません。免疫がない人が多いため、最初の年は夏でも
流行しますが、次のシーズンからは他のインフルエンザと同様に冬
の流行となります。

 新型インフルエンザは他のインフルエンザと違う点は、潜伏期間
や感染期間がやや長いことです。潜伏期間は普通は他のインフル
エンザと同様2〜3日間ですが1週間になることもあります。感染
期間は成人では解熱後3日で、他のインフルエンザが解熱後2日
なので少し長くなります。乳幼児が成人より長くなるのは他のイン
フルエンザと同様です。

 迅速診断キットによる診断では、新型インフルエンザは他のイン
フルエンザよりも発症からより長い時間が必要で、12〜24時間た
たないと陽性とはなりません。

原因
 インフルエンザウイルスの感染によって発症します。現在のイン
フルエンザウイルスはA香港型、新型、B型の3種類があります。
Aソ連型は2011年のシーズンから分離されていません。

 感染期間は発症前1日と発症後3〜5日間で、学童〜成人で
は学校保健法で定める解熱後2日までの隔離で適切です。
これに対して乳幼児では発症後は約7日間のウイルスの排泄が
ありますので解熱後3〜4日までの隔離が必要です。

症状
 潜伏期間は2〜3日間です。
インフルエンザの症状は、発熱・頭痛・咳・関節痛・筋肉痛・全身
倦怠感などがあります。発熱は39℃前後の高熱が悪寒を伴って
突然始まり、2〜4日間続きます。咳は約1週間続きます。
このような典型的な症状は、小学校の高学年から成人でよくみ
られます。他にも次のような症状が出ることもあります。咽頭痛・
鼻汁や、嘔吐・下痢・腹痛などの腹部症状、また発疹などです。
成人では微熱のことも時々あります。

 これに比べて小学校の低学年以下の小児では、他のウイル
ス性のかぜとほとんど同じ症状です。

 流行は年によって差があります。毎年、12月〜3月にみられ、
ピークは1月下旬〜2月上旬です。
 
診断  
 診断は流行状況と症状・診察および迅速診断キットを使用して
行います。迅速診断キットでA・Bの型までの診断ができます。流行
中に典型的な症状があれば迅速診断キットなしで診断できます。

 迅速診断キットは一定のウイルス量があってはじめて陽性を示
す検査です。インフルエンザ発症早期ではウイルス量が少ないた
めに陰性と出ることもあります。
迅速診断キットの感度(インフルエンザにかかっている人で診断
キットでも陽性と出る率)は80〜95%、特異度(インフルエンザに
かかってない人で診断キットでも陰性と出る率)は90〜100%です。

合併症
1.頻度が高いもの
1)肺炎
インフルエンザそのものによる場合と細菌の二次感染によ
る場合があります。
2)小児では肺炎の他に中耳炎、熱性けいれんもよくみられ
ます。
2.頻度が低いもの
1)筋炎、心筋炎
2)小児では他にReye症候群(脂肪肝を伴う脳炎で、けい
れんや昏睡などの脳症状がみられる)や脳症があります。

インフルエンザ脳症は日本では年間100〜300人程度の発
生があります。重度の脳障害やてんかんなどの後遺症が
残るのが約30%、死亡率は15〜30%です。
1〜2歳をピークに6歳以下に多くみられます。
熱性けいれんではけいれんの時間が10分以下ですが、脳
症では30分以上続いたり短くても繰り返します。意識障害
がみられれば脳症の疑いが強くなります。
インフルエンザの発症から神経症状発現までの期間は約
1.4日と短いです。

治療
 安静を保つことが大切です。
アスピリンはReye症候群を起こすことがあるので使いません。
4種類の抗ウイルス剤がありますが、いずれも発症48時間以内
に開始しないと効果がありません。

 抗インフルエンザウイルス剤
 ( ノイラミダーゼ阻害薬 )
インフルエンザウイルス表面に存在するノイラミダーゼは
新しく産生されたウイルスが感染細胞から遊離するのに
必要な酵素です。この酵素を阻害することで気道の上皮
細胞から感染性のインフルエンザウイルスが遊離するの
を阻害し、感染の拡大を阻止すると考えられます。
インフルエンザA型・B型の両方に有効です。
内服薬、吸入薬、注射薬の3剤4種類があります。これら
の4種類の作用機序は同様なので併用はしません。
  1.タミフル(オセルタミビル)
内服薬です。従来のカプセル(成人および37.5kg以上の
小児に使用可)に加え、2002年7月にドライシロップ(1歳
以上で使用可)も発売されました。
  2.リレンザ(ザナミビル)
吸入薬です。従来は成人のみが保険適用でしたが、2006
年2月に5歳以上の小児にも適用が追加になりました。
  3.ラピアクタ(ペラミビル)
点滴の注射薬です。2010年1月に発売されました。
1回の点滴でタミフルやリレンザの5日間と同様の効果
があります。通常は1回のみの使用ですが、重症の場合
は5日間まで使用できます。2010年10月に小児(生後1ヵ
月以上)にも適用追加になりました。
  4.イナビル(ラニナミビル)
吸入薬です。2010年10月に発売されました。1回のみの
吸入で効果があります。
成人や10歳以上の小児は40mg(20mgを2本)、10歳未満の
小児は20mg(20mgを1本)を1回、吸入します。


 タミフルの有効性は主要症状を1日以上短縮させることです。
ただ、インフルエンザウイルスの排泄は短縮できません。

 タミフルの1歳未満の投与について
生後7日のラットにタミフル1000mg/kg(小児投与量の500倍)を
投与した場合、高濃度の脳内移行による死亡例が認められて
います。このため1歳未満では使用しないように販売元の中外
製薬から文書が出されています。
 一方、第36回日本小児感染症学会での1歳未満児のタミフ
ルの副作用報告では重篤な副作用は認められていません。
以上のことから、タミフルの必要性が高い場合は、保護者へ
十分説明した上での使用は問題ないと思われます。

予防
1.インフルエンザワクチン
 インフルエンザワクチンを毎年10月〜12月頃に接種します。
2010年のシーズンからインフルエンザワクチンに変更があり
ます。従来のインフルエンザワクチンにはA香港型、Aソ連型、
B型の3種類のインフルエンザウイルスに対するワクチンが
入っていました。2010年のシーズン以降のインフルエンザワ
クチンには新型、A香港型、B型の3種類のインフルエンザ
ウイルスに対するワクチンが入っています。
インフルエンザワクチンは接種して2〜4週間後より約5か
月間予防効果があります。

 1歳未満ではインフルエンザの予防効果はない?
厚生科学研究「乳幼児に対するインフルエンザの効果に関する
研究」の結果によると、1歳以上ではインフルエンザ様疾患の発
症予防効果があったが1歳未満では有意差がなかったと言って
います。ただし、インフルエンザ様疾患の指標に用いたのは発
熱のみです。つまりインフルエンザ予防接種後に"かぜ"にかか
った割合を調べているわけです。

2.タミフル
 2004年7月にタミフルカプセルに予防効能が追加されました。
また、2009年12月にはタミフルドライシロップの予防効能も追
加されています。
同居者がインフルエンザにかかった場合に最大10日間の予防
使用ができます。
予防対象者は65歳以上の高齢者とハイリスク疾患患者です。
ハイリスク疾患患者とは慢性呼吸器または心疾患患者、代謝
性疾患患者(糖尿病など)、腎機能障害患者です。
患者と接触48時間以内にタミフルを1日1回(治療量は1日2
回を5日間)、7〜10日間予防使用します。37.5s以上の小児
では10日間予防使用します。予防効果は内服期間中のみです。
予防使用は保険給付の対象外(インフルエンザワクチンと同
様)です。

3.リレンザ
 2007年1月にリレンザに予防効能が追加されました。
同居者がインフルエンザにかかった場合に10日間の予防使
用ができます。
予防対象者は65歳以上の高齢者とハイリスク疾患患者です。
ハイリスク疾患患者とは心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿
病など)、腎機能障害患者です。
慢性呼吸器疾患の方はリレンザで気管支攣縮(れんしゅく)や
呼吸困難が起こることがあり、対象外です。
患者と接触36時間以内にリレンザを1回2吸入を1日1回(治
療量は1回2吸入を1日2回、5日間)、10日間予防使用します。
成人及び5歳以上の小児で予防使用します。予防効果は吸入
期間中のみです。
予防使用は保険給付の対象外です。

4.イナビル
 2013年12月にイナビルに予防効能が追加されました。
同居者がインフルエンザにかかった場合に10日間の予防が
できます。
予防対象者は65歳以上の高齢者とハイリスク疾患患者です。
ハイリスク疾患患者とは慢性呼吸器または心疾患患者、代謝
性疾患患者(糖尿病など)、腎機能障害患者です。
患者と接触48時間以内にイナビル20mgを1本、1日1回、2日間
吸入投与します(治療量は20mgを2本、1回のみの吸入)。
予防に用いる場合、成人及び10歳以上の小児が対象です。
予防使用は保険給付の対象外です。

 インフルエンザウイルス感染予防の基本は、毎年ワクチン
接種を受けることであり、タミフル、リレンザ、イナビルの
予防使用はワクチン接種に置き換わるものではありません。


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