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Every Day

I Have The GROOVE!

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'12/5/23  Bonnie Raitt / Slipstream (2012)

 ボニー・レイットが6年ぶりとなるニュー・アルバムを発表。
 1971年のデビュー・アルバム以来、一貫してブルースをベースに地味ながらも良質なアルバムを創りつづけ、根強いファンを獲得してきた人だ。1989年にアルバム「Nick Of Time」がチャートのトップに立つと、グラミーのアルバム・オブ・ジ・イヤーまで獲得。さすがに、地味なアーチストの大ブレイクには驚いた。
 その後は、その渋い音楽性は年齢とともにさらに枯れて、ますます完成度が高まるという状況が続いている。今回のアルバムも、派手さはないが、その安定感とクオリティの高さに驚かされるはず。まさに鉄板。
 そんな中でも特に聴くべき所は、ジョー・ヘンリーがプロデュースしたボブ・ディラン作品のもやもやとしたカバー。名盤「Time Out Of Mind」から「Million Miles」と「Standing In The Doorway」がチョイスされ、ギターにビル・フリーゼル、ペダル・スチールにグレッグ・リーズを迎えている。それから、ジェリー・ラファティ「Right Down The Line」のカバーも、懐かしくも意外で嬉しい選曲だ。

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SLIPSTREAM - Bonnie Raitt

'12/5/22  Richard Tee / Real Time Live In Concert 1992 (2012)

 技術的なことはわからないが、どうしてリチャード・ティーが弾くピアノの音は、あんなにキラキラと輝いているのだろう。アコースティック・ピアノにしても、エレクトリック・ピアノにしても、ちょっと聴けばすぐにリチャード・ティーだとわかってしまう、魔法のように繊細なグルーヴをリチャード・ティーは創り出していた。
 リチャード・ティーが49歳で亡くなったのが1993年。その前年にラスト・アルバム「Real Time」を日本の制作スタッフのもとで発表しているのだが、そのアルバム発表にあわせて東京で行われたライヴの音源が、今回ニュー・アルバムとして発売となった。
 ところで、セッション・マンとしてのリチャード・ティーの腕は誰もが認めるところ。しかし、彼のリーダー・アルバムとなると、タッパンジー時代のセンスのいいアルバム・ジャケットばかりが記憶に残り、演奏自体はややスケール小さめの印象となる。これは、同じスタッフのコーネル・デュプリーなどにも言えることで、優秀なセッションマンの宿命というべきか。
 とはいえ、このニュー・アルバムは、アルバム「Real Time」からの曲を中心に、おなじみのナンバーも含め、リチャード・ティー・サウンド全開で、あのキラキラ・サウンドのファンには、素晴らしい贈り物だ。バックのメンバーも、スティーヴ・ガッド、ラルフ・マクドナルド、ジョン・トロペイ、ウィル・リー、ロニー・キューバと、フュージョン全盛時代の豪華メンバーばかりで、フュージョン・ファンとしても文句はあるまい。
 ベスト・トラックはアコースティック・ピアノを弾きまくる「Strokin'」。ここでの躍動するピアノのプレイは、リチャード・ティーのほかでは聴けない圧倒的なものだ。そして、19分40秒という長尺の演奏で、参加メンバーの技術をたっぷとりと楽しめる「It's Time」。さらに、引き続きアンコールで演奏されるのは、リチャード・ティーのソロではお馴染みの「Take The A Train」。スティーヴ・ガッドとの緊張感のあるデュオで10分を超える演奏は聴き所。

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'12/5/20  Santana / Shape Shifter (2012)

 サンタナのニュー・アルバムは、一曲を除いてインスト・ナンバーで固めた作品集。
 取り立てて新しい方向性を見せるわけではない。サンタナらしいラテン・タッチの曲を中心に、熱く胸を焦がすように情熱的なギター・ソロや、攻撃的に燃え上がるようなギター・ソロが満載。どこか聞覚えのあるフレーズも多く、サンタナのギターを腹いっぱい聴けて、彼のファンは十分に満たされるはずだ。
 全体的なイメージとしては、ロックというよりは、アコースティック・ギターの音も目立って、ラテン・フュージョンというのだろうか、良くも悪くも、キレイにまとまってしまったという印象だ。ボーカル曲がない分、ポイントとなる曲もなく、メリハリもつきにくい。終始サンタナのギターが流れていて、知らないうちにアルバム一枚が終わってしまうという感じなのだ。
 個人的には、初期サンタナのような、攻撃的なロックがもっと聴きたいのだけど、まあ40年前の音を期待するのは無理というもの。あのウッドストック以来、いまだに第一線で活躍し続け、しかもこれだけのハイ・テンションを保っていることは驚異的というしかないだろう。

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'12/5/16  Rosemary Squires / Everything's Coming Up Rosy ; Something To Remember Me By (2012)

 イギリスのジャズ・ボーカリスト、ローズマリー・スクワイアーズのアルバムが二枚。紙ジャケ、限定、1800円ということで、そっと発売されている。
 名前だけは聞いたことはあるけれど、作品の数もそう多くはなく、実際にその歌を聴くのは始めて。いかにも白人ボーカリストらしい、クセのない、清楚で、明るいボーカルは完全に自分のタイプ。最近のシンガーに例えるならば、ジャネット・サイデルのような親しみやすさを感じさせるタイプのボーカリスト。ハマりそうです。
 特に、「Everything's Coming Up Rosy」(1963年)のほうは、ファンの間では「赤のロージー」と呼ばれる人気盤だとのこと。しかも、オリジナルの形でのCD化は、今回が初めてらしい。女性ボーカルが好きならば、とりあえずは押さえておくべき一枚でしょう。ちなみに、ローズマリー・クルーニーに「Everything's Coming Up Rosie」という洒落たタイトルのアルバムがあったけど、それは1977年のアルバムだから、こっちのロージーのほうが先なんだね。
 もう一枚「Something To Remember Me By」(1965年)は、前作に比べるとやや硬めの印象で、品格を感じさせる一枚と言ってもいいでしょう。
 でもって、YouTubeで見つけたローズマリー・スクワイアーズの「Smoke Gets In Your Eyes」。これ、白人女性ボーカル・ファンは必見です。歌だけではなく、そのご本人の優しく気品に溢れた表情まで、とても魅力的。完全にハマってしまった。お時間のある人は是非。

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'12/5/14  坂本冬美 / 愛してる・・・ Love Song V (2012)

 2009年、カバー・アルバム「Love Song 〜また君に恋してる〜」が大ヒット。続いて、2010年に第二弾「Love SongsU 〜ずっとあなたが好きでした〜」を発表。そして、今回、第三弾として登場した「愛してる・・・ Love Song V」は全曲書下ろしというオリジナル・アルバムだ。
 このシリーズは、J-POPのヒット曲をバリバリの演歌歌手である坂本冬美が、演歌の余分な装飾を取っ払い、じっくり、しっとりと丁寧に歌い上げるところが肝。すっかり洋楽化された日本のポップスのヒット曲だが、坂本が歌うことによって、実はとても日本的であったということが証明されたものだった。そして、改めて、忘れかけていた「歌謡曲」の魅力を思い出させてくれるものであった。
 そして、この新作は、すべてがオリジナル。シングルとして発売された「人時」は、ホルンの響きが印象的な、「昴」を思わせる谷村新司によるスケール大き目の曲。しかし、旅だ、夜明けだ、星だと歌うよりも、もっと身近な何気ないラブ・ソングがこのシリーズの魅力だったはず。ということで、個人的なお気に入りは「忘却」「そしてまた会いましょう」という川村結花による二曲。
 今回、カバーからオリジナルへと変化はしているけれど、この「Love Song」シリーズで一貫して見せてくれる清楚であって色気も感じさせるアダルトなスタイルは、彼女の歌唱力あってこその独壇場。新しくて古いニュー歌謡曲とでも言っておこうか。

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愛してる・・・LOVE SONGS III - 坂本冬美

'12/5/13  Glenn Frey / After Hours (2012)

 イーグルスのグレン・フライがソロ・アルバムを発表。前作「Strange Weather」が1992年だったから、なんと20年ぶりのニュー・アルバムだ。
 今となってはイーグルスといえばドン・ヘンリーがメインのように扱われているかけれど、自分にとってグレン・フライこそイーグルスなのだ。どちらも、哀愁を感じさせるボーカリストであるが、一方のドン・ヘンリーが演歌臭さを前面に押し出してくるのに対し、グレン・フライは実にダンディにさりげなく哀愁を感じさせるところが魅力なのだ。
 そして、このニュー・アルバムはそんなグレン・フライの哀愁をたっぷりと感じさせるジャジーなスタンダード・カバー・アルバムだ。20年待たせて、これかよとか、ハマリすぎで面白くないという意見も聞こえてくるが、あくまでも「After Hours」というタイトルにあるように、ライブ終了後のリラックスしたお遊び感覚で作った作品だということで、まあ、気軽に楽しみたい。
 取り上げているのは、ナット・キング・コールやトニー・ベネットなどでお馴染みのスタンダード・ナンバー。そんな中でも、バート・バカラックやランディ・ニューマンといったちょい新し目のナンバーも。そして、ブライアン・ウイルソンの「Caroline No」を取り上げているのはウエスト・コースト繋がりということだろう。けど、どうせカバーをやるんだったら、どうしてソウル・ミュージックをやらなかったのか。ひょっとして、ロッド・スチュワートのように、次にソウルのカバー・アルバムが待っていたりして。
 それにしても、グレン・フライという人の歌の上手さがよくわかった。スタンダードをこんな感じで歌いこなしちゃうんだからね。でも、一番シビれたのが、ラストに置かれた盟友ジャック・テンプチンとの共作「After Hours」だったりして。男の物寂しさを感じさせるメロディは、やはりオリジナルを歌うグレン・フライこそ最高だと実感させられる一曲だ。かなうことならばオリジナル・アルバムを期待。

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'12/5/10  akiko / Swingy, Swingy (2012)

 昨年は、ビートルズのカバー・アルバムを発表し、その意外さでファンを驚かせたジャズ・シンガー、akikoのニュー・アルバム。相変わらず軽快なフットワークで、今回は1940年代アンドリュース・シスターズに挑戦だ。
 ニュー・アルバムとはいえ、4曲収録、わずか11分ちょっとという超ミニ・アルバムだけど、軽いお遊び感覚のようで、この程度のボリュームがちょうどいいところなんだろう。
 そして、アンドリュース・シスターズということで、akikoがパートナーに抜擢したのがチャイチーシスターズという女性ボーカル・デュオ。まったく聴いたことのない名前だけど、「チャイチー」というのは「カイデー」の反対ってことかしら、3人のコーラスも軽いタッチでなかなかイイ感じ。
 そして、ところどころに顔を出す日本語の歌詞のモダンな雰囲気がいい。特に、「East Of The Sun」でのムーディなakikoの日本語ボーカルにはゾクゾクとしてしまった。ということで、ベストトラックはバラードの「East Of The Sun」でしょう。だけど、せっかくこのスタイルということならば、やっぱりアップ・テンポの「Mr.Sandman」を選ぶべきか。
 まあ、それにしても、akikoというのは何ともカッコいいジャズ・ボーカリストだ。物凄い実力があるとは思えないけど、センスがいいのかな、何をやってもスカッとした気持ちにしてくれる。このミニ・アルバムもスカッとしました。

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'12/5/9  Norah Jones / Little Broken Hearts (2012)

 決して派手とは言えないデビュー時の音楽性からして、一発屋的な雰囲気さえ感じられたノラ・ジョーンズだけど、いまやすっかりビッグ・ネームになってしまった。なんといっても日本では「ノラ・ジョーンズ以降」なんていう言い方が定着していることで、彼女のデビューがポピュラー音楽史の中でも、重要な出来事であったかがわかる。
 そして、一見すればおっとりとした容姿からは想像しにくいのだが、デビュー時の成功にも関わらず、甘んじることなく、次々と果敢に新しい音楽にチャレンジを続けていく彼女のバイタリティも驚きだ。
 今回のニュー・アルバムもデンジャー・マウスとのコラボレイト。まあ、正直なところ、デンジャー・マウスのことはよく知らないのだが、これもまた新たなチャレンジであり、変化を続けるノラ・ジョーンズ作品の中でも、ひときわ大きな飛躍をみせる作品となった。
 シンプルでありながら、もやもやとした霧に包まれたような不透明なサウンドの中からは、さまざまな音が聴こえてくるようだ。一時期のダニエル・ラノワの仕事を思い出させる音作りだが、ダークでミステリアスな音でありながら、ポップという点を押さえているところは、さすがノラ・ジョーンズ。いいアルバムです。
 ところで、ノラ・ジョーンズを見ていると、子狸的な雰囲気がかつてのリンダ・ロンシュタットに似ているなと、そう気がついたのはつい最近のこと。かつて、リンダに甘い思いを寄せた親父ファンの皆さま方、そう思いませんか。

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Little Broken Hearts - Norah Jones

'12/5/6  Pat Boone / Sings A Tribute To The Ink Spots (2012) ; Eight Classic Albums (2011)

 パット・ブーンのニュー・アルバムは、インク・スポッツのヒット曲をカバーしたトリビュート作品。と、一言で言えば簡単だけど、ポップスの歴史を感じさせられる味わい深い一枚だ。
 パット・ブーンといえば、1950年代に「砂に書いたラブレター(Love Letters in the Sand)」「四月の恋(April Love)」といったラブ・ソングを甘いボーカルで大ヒットさせたクルーナー。個人的にはパット・ブーンが歌う「砂に書いたラブレター」は、いまだにラブ・ソングの10指に入る大傑作だと思っている。
 そして、インク・スポッツというのは、1930年代から40年代にかけて「Java Jive」「Don't get around much anymore」など数多くのヒットを放った、リズム・アンド・ブルースやドゥー・ワップを歌う重要な黒人コーラス・グループ。
 なぜか、今年78歳になるパット・ブーンがインク・スポッツのカバーに挑戦したわけだが、当然に必要になるのがコーラス隊ということで、実力派テイク・シックス(Take 6)が御大のバックを固めるという強力な応援体制となっている点もミソだ。
 さらに「Cow Cow Boogie」では、およそ70年前のオリジナルでインク・スポッツと競演していたエラ・フィッツジェラルドのボーカルがそのまま使用され、パット・ブーン、テイク・シックスとの共演を果たすこととなったのも聴き所。
 最近では、今年86歳になるトニー・ベネットが健在ぶりを示しているけれど、70歳代、80歳代の超ベテランに昔ながらの艶やかな甘いボーカルを求めるのは野暮なこと。年月とともに深い味わいの滲み出ているボーカルと、孫ほどの世代と共演する意気込みを尊敬しつつ、音楽つて素晴らしいなとシンプルに楽しむことにしたい。
 ところで、パット・ブーンといえば、昨年、超お徳用盤でお馴染みのEight Classic Albumsシリーズから、4枚組み106曲入りという強力盤が出ている。ほとんどベスト盤くらいしか入手できなかったパット・ブーンのアルバムだが、ここには50年代のアルバム8枚が収録されている。スタンダード・ナンバーもたっぷり聴けて、パット・ブーン・ファンにも、スタンダード・ファンにも喜ばれそうだ。

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'12/5/3  須藤薫&杉真理 / 恋愛同盟 (2012)

 永遠のシックスティーズ・ディーヴァ、須藤薫と杉真理によるニュー・アルバムは、あの時代の空気がたっぷりと詰め込まれたフル・アルバム。
 1980年代に60年代ポップスを蘇らせた須藤薫が、さらに30年後の2010年代にシックスティーズに挑戦。ポップスという言葉自体、もう死後なのかもしれないが、50年前のポップスを若い人たちはどう捉えるのか、興味深い。自分の世代にとっては最高のポップ・ミュージックといえば60年代ポップスと、決まっているのだけどね。
 60年代ポップス・シンガーといえば、明るく、甘く、そして切なさを持ち合わせなければならないと思っている。そんな要素をすべて満たす数少ないシンガーの一人が須藤薫。ラストの「ウイスキーが、お好きでしょ」をのぞいて、リード・ボーカルはすべて須藤薫となれば、ほぼ須藤薫の待望のソロ・アルバムと言っても、須藤ファンは納得するでしょう。。
 全10曲、どの曲もどこかで聴いたことのあるような、懐かしい香りのするメロディばかり。よく聴けば、1〜5が新曲、6〜10曲はお馴染みのセルフ・カバー。アナログならばA面が新曲、B面がカバーという、そんな意図も感じるね。
 さすがに須藤のボーカルも、全盛期のピチピチ感は薄れているけれど、人生経験とともに、味は深まったと言っておこうか。嬉しいアルバムです。

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恋愛同盟 - 須藤 薫 & 杉 真理

'12/5/2  杏 / 愛をあなたに (2012)

 いまや、テレビに映画にと飛ぶ鳥を落とす勢いの杏のニュー・ミニ・アルバム。
 うわっ、この人はシンガーとしても凄いんだと、新鮮な驚きを与えてくれたデビュー・ミニ・アルバム「LIGHTS」はカバー曲を中心としたアルバムだった。この二枚目となるミニ・アルバムはオリジナルが中心。とはいえ、5曲のうち3曲にタイアップがついているってのは、シンガーとしての実績がミニ・アルバム一枚という中では、異例というかまさに勢いというしかない。
 この人の歌はすべて直球勝負。不器用ではあるが、まっすぐで素直な表現が新鮮だったし、特に、語りかけてくるフォーク・ロック・スタイルは、とてもナチュラルで魅力的だ。前作「LIGHTS」は、なんといっても選曲からして絶妙だった。大ヒット曲のカバー「愛は勝つ」「どんなときも」や、知る人ぞ知る名曲「あなたへ」と、どれもが見事に杏のボーカルにハマっていた。杏のボーカルの稚拙さも、これらの曲がうまくカバーしていたようだ。
 その点、ニュー・アルバムでは、残念ながら、前作に比べると稚拙さがちょっと気になってしまう。それも含めて、すべてこの人の魅力と受け止めたいのだが、恐らく、多忙な中でのレコーディングで時間も足りなかったのだろうと想像する。また、前作の「愛は勝つ」や「どんなときも」に感じられた、のびのびとした気持ちのよさが見つからないのも残念だ。
 とはいえ、この人が他のシンガーにはないユニークな魅力を持っていることは間違いない。さらに、今後が楽しみだ。
 ということだが、改めて「LIGHTS」を聴きかえして、その魅力にため息。杏を未聴の人は、まず「LIGHTS」を聴くことを薦めたい。ホント、凄いんだから。

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'12/5/1  Aretha Franklin / Who's Zoomin Who? ; Arista Singles Collection (2012)

 1980年、アレサ・フランクリンはクライヴ・デイヴィスのアリスタ・レコードへ移籍。アリスタのアレサは最高だなどという人はいないけど、1980年代半ば、「Freeway of Love」「I Knew You Were Waiting」「Jumpin' Jack Flash」などとヒットを連発している頃のアレサは、大きな時代の変化の中でもしっかりと存在感を見せつけていた。
  このアルバム「Who's Zoomin Who?」は、1985年に発表されチャートの上位にランクされた、アリスタ時代を代表する傑作だ。爽快に疾走する「Freeway of Love」は、この頃のポップにはじけたアレサ・フランクリンを象徴するヒット曲でポップチャートの3位にまで食い込んでいる。
 今回、Expanded Editionとして再発されるにあたって、ヒットした「Freeway of Love」「Another Night」「Who's Zoomin' Who」「Sisters Are Doin' It for Themselves」「Ain't Nobody Ever Loved You」のリミックス・バージョンをたっぷりと収録。いかにも80年代らしい作品ではあるが、アリスタ時代ではひときわ輝いていた時期のアレサの魅力に浸りたい。
 また、アリスタ時代のシングルを集めたアルバムも発売されているが、やはり85年の「Who's Zoomin Who?」と86年のアルバム「Aretha」からのシングルが一番イキイキしているな。

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Knew You Were Waiting - The Best of Aretha Franklin 1980-1998 - Aretha Franklin

'12/4/26  Linda Lewis / Say No More ; Lark ; Fathoms Deep (2012)

 リンダ・ルイスはイギリス生まれのフォーキーなソウル・シンガー。
 初めて日本で発売された彼女の作品は、名盤といわれる1972年の「Lark」だったはず。本国からかなり遅れて、鳴り物入りで日本に紹介されたのは、たしか80年代だっただろうか。以来、彼女のキュートなハイトーン・ボイスに雲雀のさえずりのイメージが重なっているのは、始めて聴いたアルバム・タイトルの影響だろう。
 昨年あたりから、リンダ・ルイスのアルバムの拡大バージョンのリリースが行われているが、今年に入って初期のアルバム3枚、「Say No More」(1971)、「Lark」(1972)、「Fathoms Deep」(1973) が相次いでリリースされている。
 ファースト・アルバム「Say No More」は、初CD化。まさに雲雀が自由に飛びまわるかのような軽やかなスタイルは今でも新鮮だ。セカンド・アルバム「Lark」は、ファースト・アルバムの路線をさらに完成度を高めた名盤との評価が高い作品。サード・アルバム「Fathoms Deep」では、ビートが強調され、サウンドにメリハリがついたことにより、よりポップになった人気作。

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'12/4/24  Cathy Carr / Shy (2012)

 「見つめていたい歌姫たち〜Female Jazz Vocal オリジナル紙ジャケ Collection」として発売された作品の一枚。
 てっきりジャズ・ボーカルかと思って聴いていたら、切なく甘酸っぱいボーカルが流れてきて、あわてて解説を読み直してしまった。
 キャシー・カーという女性シンガーは、1957年に「Ivory Tower」という全米2位となるヒットを一発だけ飛ばしたポップス・シンガーだ。1959年の本作では「Blame It On My Youth」や「teach Me Tonight」、さらにエリントン・ナンバーなども取り上げているから今回、ジャズ・ボーカル・コレクションとして発売されたのだろうが、コニー・フランシスのようなキュートな泣き節は親父ファンの胸をキュンキュンと鳴かせる上質なポップスだ。
 なんたってアルバム・タイトル「Shy」ってのがいいね。そして、同タイトルの曲は、シングルとしても発売され、アルバムのトップに置かれたポップス・ファンならコロリと逝ってしまうような佳曲でもある。
 普通なら、なかなか発売しづらいアルバムなんだろうが、ジャズ・コレクションなどという見逃しやすい形の中でも、こういうアルバムが再発売されたことに感謝したい。始めて聴くポップス・ファンにとっては、泣いて喜びそうな贈り物だ。
 ついでに、ジャケットも魅力的。猫もいるぜ。

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'12/4/23  サザンオールスターズのリマスター盤がAmazonでめっちゃ安いぜぇ!

 2008年にサザン・オールスターズのアルバムはすべてリマスター盤として再発売された。そのリマスター盤が現在、Amazonで大安売りだ。
 デビュー作の「熱い胸さわぎ」から、今のところ最新作となる2005年の「キラーストリート」まで14作。今日現在、シングル・アルバムだと最安値で680円、平均で1000円前後というリーズナブルなお値段で入手できる。ワイルドだぜぇ。
 サザンとは同世代の自分としては、サザンのデビューから、いっしょに大人になってきたわけだが、改めて、眺めるとサザンのアルバムは30年で14枚という枚数は、その人気を考えれば、寡作であることに意外な思いがする。自分はリアルタイムで聴いてきたことから、「KAMAKURA」以前はアナログ盤で所有しているので、この機会にエイッと一気に揃えることにした。
 昔の作品を聴けば、その時代の自分を思い出しはするが、どれも天才桑田圭祐の個性が溢れ返る作品ばかりで、音楽性という点ではあまり時代を感じさせないところが凄い。
 この大売出しの期間は不明だが、いつまでもあると思うなCDとお金。早めにゲットを!

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'12/4/22  Philadelphia International Classics : The Tom Moulton Remixes (2012)

 ジャンルなど何も知らずラジオのヒット・チャートを聴いていた自分が、始めてソウル・ミュージックを意識したのがモータウン・サウンド。ジャクソン・ファイブが全盛の時代だった。垢抜けた都会的なソウル・ミュージックは、何よりもわかりやすくポップだった。
 その後、70年代に全盛を誇ったのが、さらに都会的で洗練された、スマートでポップなフィラデルフィア・ソウル、フィリー・ソウルだった。日本では、スタイリスティックス、スピナーズ、オージェイズあたりが人気を得ていたが、特に、スリー・ディグリーズの日本での人気は凄かったと記憶する。流麗なストリングスに象徴される、流れるようなスピード感は、それまでにない新しいスタイルのソウル・ミュージックだった。
 フィラデルフィア・ソウルの中心となったのが、フィラデルフィア・インターナショナル・レーベル。その40周年として発表されたアルバムが、このトム・モールトン・リミックシーズだ。当時、リミックスによりディスコ・ミュージックとして、長尺のディスコ・バージョンの制作を始めたトム・モールトンによるフィラデルフィア・インターナショナルのヒット曲のリミックス集であり、過去のリミックス作品8曲に、新たなリミックス作品などを追加した、全31曲、4枚組みというボリュームだ。
 内容は、スリー・ディグリーズがMFSBとの共演作品も合わせれば5曲。オージェイズとディスコ・バンドのトランプスが、それぞれ4曲づつ。ハロルド・メルヴィン&ブルーノーツが3曲。と、このレーベルの色が明確に出ている。
 中でも、個人的に好きなオージェイズが「Back Stabbers」「Love Train」「I Love Music」というチャート上位の曲を揃えて、スタイリッシュなコーラスと力の違いを見せつけている。さらに、スリー・ディグリーズが「Dirty Ol' Man」「T.S.O.P the Sound of Philadelphia」「Love is the Message」「Year of Decision」「When Will I See You Again」と、レーベルの顔らしく華やかな曲を並べている。
 元来はダンス・ミュージック。軽快なギターのカッティングと、爽快なストリングスの響きは、これからの季節、車の運転にはピッタリだろう。リーズナブルなお値段もありがたい。

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'12/4/15  DCPRG / Second Report From Iron Mountain USA (2012)

 先月のミュージックマガジンは特集が菊地成孔だった。
 しかし、特集記事を読んでいて、奥歯にものが挟まったような、妙に引っかかる注意書きがあった。
 そのあたりの理由は、菊地のブログですぐに明らかになったのだが、「ミュージックマガジンから撤退します」と題されたブログの記事を読むと、菊地がミュージックマガジンに対して、大喧嘩を吹っかけているのだ。
 ミュージック・マガジンといえば、ぼくらの世代にとっては、ガキの時分から中村とうようを指導者と仰ぎ、ロックのバイブルのようにありがたく拝読してきた雑誌だ。しかし、確かに最近では馴染みの本屋が配達してくれるから読んでいるようなもので、かつては隅から隅まで、徹底して読んでいたものが、今では新譜案内程度しか読むことがなくなり、いつまで惰性で読み続けるのかなと疑問を抱いていたこともあり、今回の菊地の喧嘩キックは痛快であり、裸の王様ではないけれど、目を覚まされたような、スッキリとした気持ちにもなった。
 ということで、そんなラジカルな姿勢がそのまま音となり詰め込まれたDCPRGのインパルス移籍第二作だ。
 グルーヴ全開のジャズ&ヒップホップ・ミュージック。がっつりと身体で受け止めてもよし。部分、部分を切り取って、ひとつひとつの楽器に聞き耳を立てても、十分に楽しめる作品だ。ヒップ・ホップを大胆に取り入れているが、ヒップホップが苦手な自分でも、ミュージック・マガジンで菊地が言っていた「ヒップ・ホップはピ・パップだ」という感覚が妙にしっくりと来た。
 4月3日、東日本は春の嵐。帰宅難民となって、二時間、駅で足止めを食わされた中でも、ずっとウォークマンで鳴り続け、時を忘れさせてくれたのが、このアルバムだった。お世話になりました。

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SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA - DCPRG

'12/4/9  Wilson Phillips / Dedicated (2012)

 やや遅咲きながら今年の桜も満開になろうとしている。
 そんな中、届いた、パッと花が咲いたように華やかな、ウィルソン・フィリップスのニュー・アルバムはビーチ・ボーイズとママス&パパスのカバー・アルバム。
 もちろん、ウィルソン・フィリップスといえば、ママス&パパスのジョン・フィリップスとミシェル・フィリップスの間に生まれたチャイナ・フィリップス、そしてビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンの娘であるカーニー・ウィルソンとウェンディ・ウィルソンからなるグループ。親のヒット曲のカバーというのは、ごく自然な流れだ。
 彼女たちのデビューは1990年。シングル「Hold On」が全米1位。アルバムも2位を記録。まだ20歳過ぎの3人のポップスは、キラキラと輝いていた。しかし、あまり音楽活動には積極的ではなかったのか、結婚、出産などもあり、忘れた頃にアルバムが出てくるといった気ままなグループだ。
 恐らく、このアルバムも彼女たちが、子どもの頃から聴いて育った曲を楽しみながらレコーディングしたものなのだろう。ビーチ・ボーイズやママス&パパスを聴いてポップスやロックに目覚めた世代にとっては、そんな彼女たちの思いも共有できるはずだ。
 伸び伸びとしていながら、それでいて微かな陰りを感じさせるボーカルは相変わらず魅力的だ。能天気なバカ・ポップという感じもあるけれど、カントリー・ロックやポップスのファンにとっては、難しいことを考えなければ、きっと文句なく楽しめる作品だと思う。
 とはいえ、「Wouldn't It Be Nice」「God Only Knows」「Good Vibrations」といったブライアン・ウィルソン作品では、それなりに捻りの効いた複雑なコーラスも聴ける。こんな感じで全体も作っていったら、もっと違った作品になったような気もするのだけど。次回があったら期待しよう。

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'12/3/28  Frank Sinatra / The Concert Sinatra (2012)

 フランク・シナトラの1963年の名作「The Concert Sinatra」が再発された。
 このアルバムは、ネルソン・リドルによる壮大なオーケストラをバックに、リチャード・ロジャースのミュージカル・ナンバーを、ストロング・スタイルで歌い上げたシナトラ作品の中でも最硬派といえる作品だ。タイトルを見ると、ライブ・アルバムと思ってしまうが、正真正銘のスタジオ録音盤。
 力作が居並ぶ中、やはり気になるのは真正面から取り組む「You'll Never Walk Alone」だ。シナトラ自身も、かつてこの曲をヒット・チャートに送り込んでおり、セルフ・カバーということになる。個人的には何といってもエルヴィス・プレスリーの名唱で好きになった曲だ。また、サッカー・ファンにとっては、リバプールで歌い継がれているジェリー&ザ・ペースメイカーズのバージョンが有名だろう。
 まあ、どの曲も正攻法。シナトラの粋なボーカルが好きなファンにとっては、この作品はあまりにクソ真面目で、かなり力も入りすぎという感じで、ちょっと苦手と思うかもしれない。
 だけど、多くのファンがこの作品をシナトラの傑作として認めているわけで、せっかくお安く入手できる機会なので、持っていて損はない。こういう作品は、何回も聴いていると、突然、好きになったりするものだ。

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The Concert Sinatra - Frank Sinatra

'12/3/27  尾崎亜美 / soup (2012)

 デビュー35周年を迎えた尾崎亜美のニュー・アルバム。
 シンガー・ソング・ライターとして、他のアーティストにも多くのヒット曲を提供してきたポップな曲作りのセンスもさることながら、ボーカリストとしてもチャーミングな声と力強い歌唱力を持ち合わせた稀なアーティストでもある。
 しかし、親しみやすいキャラからなのか、いわゆる「大物」という感じはしない。しかし、実は35年という長いキャリアの中、ここまでコンスタントに一定のクオリティのアルバムを発表し続けている持久力は、大御所といってもおかしくはないのだ。
 そして、震災を経て制作されたこのニュー・アルバム。ポップで、時に力強く、尾崎亜美らしいアルバムであり、全体から感じられるスケール感や確かな手応えやは、彼女の数多くの作品の中でも上位に位置づけられるものだ。多分、時間がたったとき、何曲かは確実に記憶に残っている作品だと思う。
 印象的な曲は、林立夫、小原礼、鈴木茂というリズムセクションの「1グラムの歌」。林立夫のドラムスは、ボクらの世代では身体にしみついており、聴いていて安心する。そして、鈴木茂のギターもそう。そして、一番気に入っているのは「Crying Dog」。ここでも、鈴木茂のソウルなギターが心に響く。
 ちなみに個人的に最も好きな尾崎亜美のアルバムは「Dinner’s Ready」という作品。地味ながら「五つ数えたら」「雨は止まない」「A Little Kingdom」といった名曲が多い。既に、廃盤になっているのだが、寒い夜にポッと明かりが灯ったようなアルバム。どこか、このニュー・アルバムにも同じような安心感と明りが感じられるのだ。

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soup - 尾崎亜美

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'12/3/21  阿部芙蓉美 / 沈黙の恋人 (2012)

 「highway, highway」を聴いて、こんな心にヒリリと沁みるロックは久しぶりだと思った。
 2008年、名盤「ブルーズ」でデビュー以来、なんと4年ぶりのフル・アルバムとなる阿部芙蓉美のセカンド・アルバムだ。
 この人のボーカルの魅力をいったいどう伝えたらいいのだろうか。溜息のような、吐息のような、儚くたゆたうボーカルは、声というよりも漏れ出した思いのような。しっかりと耳を澄まさなければ、決して捕まえることのできないボーカルだ。
 しかし、このヒリリとしたほろ苦い時間は、4年間も待たせときながら、全9曲40分で終了してしまう。まあ、そんなところも、この人らしさか。
 とはいえ、昨年発表されたミニ・アルバム「町」には7曲も入っていたっけ。これも、岡林信康の「私たちの望むものは」など話題の名演が多し。

沈黙の恋人

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沈黙の恋人 - 阿部芙蓉美

ブルーズ

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ブルーズ - 阿部芙蓉美


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町 - 阿部芙蓉美

'12/3/20  Robert Glasper / Black Radio (2012)

 ビルボードやiTuneなどで、次々とジャズ・チャートのトップを獲得し続けているのが、ジャズ・ピアニスト、ロバート・グラスパーのこのアルバム。これが、なかなかイイ感じ。実にカッコいいのだ。
 ヒップ・ホップを大胆に取り込んで、ここまで評価を得たジャズというと、かつてのハービー・ハンコックの「Future Shock」を思い出す。まあ、シンガーとしてジャズ・シンガーではなく、R&Bのシンガーが大量に参加していたりして、はたしてこの音楽をジャズと言っていいのかは、怪しいところではあるのだけれど。このアルバムを一聴したところでは、個人的にはあまり縁のない、いわゆるクラブ系といわれるジャンルになると思ったし、自分の好きな音楽と比べれば、ジル・スコットみたいだよということになる。
 とはいえ、エレクトリック・ピアノやヴォコーダー、シンセサイザーなどのエレクトリックなサウンドを多用する中でも、確実に存在をアピールしつづけるアコースティック・ピアノからは、紛れもないピュアなジャズのグルーヴを感じ取ることができる。
 そして、このアルバムは全曲ボーカルの入った、ボーカル・アルバムでもある。しかも、ゲストとして登場するのは、エリカ・バドゥ、レイラ・ハサウェイ、レディシー、クリセット・ミッシェル、ミシェル・ンデゲオチェロといった強力なボーカリストたちだ。
 ロバート・グラスパーは、このエレクトリック・バンドとは別に、アコースティックなジャズ・バンドの活動も続けていくようだ。何となく尻すぼみになってしまったハービー・ハンコックのヒップ・ホップ・ジャズを超えてくれそうな感じもするけれど、これからが楽しみだね。

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Black Radio - ロバート・グラスパー

'12/3/18  Jeremy Pelt / Soul (2012)

 トランペッター、ジェレミー・ペルトは今年35歳。このアルバムで9枚目のリーダー・アルバムということだから、まさに脂の乗り切った中堅どころ。残念ながら、自分としてはこのアルバムが初対面だ。
 クールでスタイリッシュな演奏は、彼のレギュラー・グループの編成からも60年代のマイルス・デイヴィス・クインテットに比較されることが多いようだ。確かに、それぞれメンバーの技術も安定しているようで、落ち着いた演奏で安心して聴いていられるアルバムだ。
 しかし、淡々と繰り広げられるモーダルなプレイにちょっと物足りなさを感じて、焦れてきたところに登場する「The Tempest」が、一気にハジけたパワー・プレイで刺激的だ。リズム・セクションも活き活きとして、むしろこちらのスタイルをメインに据えても、面白いような気もするのだけれど。
 そして、「Moondrift」では女性ボーカルが参加。1曲だけ、ボーカルものってのも、どことなく収まりが悪いのだが、ここではジョアンナ・パスカルというボーカリストが落ち着いた歌で、クールにウェットに、いい感じでこのバンドに溶け込んでいる。ボーカル・ファンとしては、意外なところでいいボーカリストを発見。ちょっと得した気分。
 全体的には、好きなアルバムではあるのだが、良くも悪くも、優等生的な印象が強く残った。まだ、まとまってしまうには早すぎる。次作に大きく期待。

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Soul - Jeremy Pelt

'12/3/17  Gilbert O'Sullivan / Back to Front (2012)

 1972年「Alone Again」の大ヒットともに日本にも紹介されたギルバート・オサリバンの初期のアルバムが再発されている。
 「Alone Again」は今なお、日本ではテレビのCMで使われるなど、そのシンプルで美しいメロディはエヴァーグリーンの魅力を持つヒット曲だ。始めて聴いたときの印象は、誰もがポール・マッカートニーの影響を強く感じるものだった。
 しかし「Alone Again」が日本で話題になった頃、音楽雑誌などで紹介されるこの人の写真は、そのデビュー・アルバム「Himself」にあるようなハンチングを被った散切り頭の、奇妙なポートレイトばかり。確かにノスタルジックなムードを演出するためには、そんなイメージも必要だったんだろうが、このルックスのために際物的なイメージもあったような気がする。
 そして、2枚目の大ヒット「Clair」とともに登場したセカンド・アルバム「Back To Front」は、ギルバート・オサリバンのベスト・アルバムだ。イギリス的な品格を感じるポップ・センスに満ちた、宝石のような曲がぎっしりと詰まった作品集だ。ボーナス・トラックとして「Alone Again」も収録され、彼のビッグ・ヒット2曲とともに、ヒットした「Out Of Question」や「Ooh-Wakka-Doo-Wakka-Day」が収録されるとともに、個人的に大好きなハリケーン・スミスがカバーした「Who Was It?」も入っている。
 演出があるとはいえ、突然、ひと昔前の世界から連れてこられたような、懐かしさやピュアなセンスを感じさせた初期のギルバート・オサリバンの魅力は、ファースト・アルバム「Himself」とセカンドアルバム「Back To Front」で楽しむことができる。
 デビュー以来のイメージを変えて、新しいセンスを取り入れた作品作りを始めたサードアルバム「I'm a Writer Not a Fighter」も、「Ooh Baby」「Get Down」というヒットを生む。キラリと光るポップなセンスは相変わらずだが、彼の世界的な人気はこのアルバムが最後となる。ちなみにボートラとして追加された「Why, Oh Why, Oh Why」はイギリスでのヒット曲だけど、ボクは大好き。

Back to Front

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Himself

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Im a Writer Not a Fighter

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'12/3/15  Emeli Sande / Our Version of Events (2012)

 イギリスのシンガー、エミリー・サンデーの堂々たるデビュー・アルバム。全英チャート初登場1位を記録した作品だ。
 今、イギリスのトップ・アーチストといえば、グラミー賞で最優秀アルバムなど6冠を獲得したアデルということになるが、ジャンルを超えて「歌」を前面に押し出したスタイルは、本格的ボーカリストの時代の到来かと、ボーカル・ファンを喜ばせる。
 そして、このエミリー・サンデーも、アデルに対抗しうる本格的なボーカリストの一人だ。アルバムの冒頭に置かれた、先行シングル「Heaven」から、パワフルでスピード感に溢れた歌に圧倒される。そして、そのまま一気にアルバム一枚、ラストまでリスナーを釘付けにしてしまうだけのパワーがある。
 まだ23歳ということだが、Youtubeなどを観ても、既に成熟しきった印象もある。このアルバムも、デビュー作とは思えないような完成度の高さがあるのだ。

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Our Version of Events - Emeli Sand?

'12/3/12  True Soul: Deep Sounds From the Left of Stax Volume 2 (2011)

 昨年、話題となった超ディープなソウル・コンピレーション・アルバムが、Amazonで今日現在、660円という投売り状態。早速、ゲット。
 True Soulというのはソウルのマイナー・レーベルだということで、何だかよくわからんミュージャン達が、とにかく濃厚でズブズブと音がするほど深いソウルをプレイする。しかも、ご丁寧にDVDまで。これまた、マイナー感たっぷりの映像が楽しめる。
 とにかく思わず口元が緩んでしまうくらい、見事なディープでマイナーなソウル・ミュージックだ。よくぞ、まあ、こんなCDを発売してくれたと感動。ブックレットもボリュームたっぷり濃厚だ。買うなら、今だ。

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'12/3/11  Wayne Shorter / The Complete Columbia Albums Collection (2011)

 ウェイン・ショーターの70年代から80年代にかけてのコロンビアにおける作品のボックス・セット。
 ウェザー・リポートとミルトン・ナシメントとの名盤として名高い「Native Dancer」を別とすれば、ウェイン・ショーターがコロンビアに残したソロ作品の評価は一般的には低い。自分も一応、アルバムは買ったものの、あまりいい印象はない、というよりほとんど記憶にないと言った方が正しい。
 しかし、このボックス・セットには「Native Dancer」(1974)、「Atlantis」(1985)、「Phantom Navigator」(1986)、「Joy Ryder」(1988)というソロ作品のほかに、「Weather Report Recordings of Wayne Shorter Compositions」としてウェザー・リポートの曲の中から、ウェイン・ショーター名義の作品、23曲が2枚のCDに分けて収録されている。
 この二枚が面白い。ジョー・ザヴィヌルという表向きの看板に対して、ウェイン・ショーターはウェザー・リポートの裏看板。ショーターの書いた作品には、ウェザー・リポートの代表作というものはあまりない。つまり、このショーター作品集は、ウェザー・リポートの裏ベスト・アルバムともいえるものだ。しかし、これが実に素晴らしく、強力な二枚だ。へえ、ショーター作品を集めると、こういう感じになるのか、と改めてジャズ史に残る強烈な個性集団の中にあって、自らを主張し続けたウェイン・ショーターの面白さ、そしてウェザー・リポートというバンドの面白さに気づくこととなる作品集だ。
 そして、ウェザー・リポートの後期に並行して制作された3枚のソロ・アルバムは、ウェザー・リポート作品の延長線上にあるような作品。どの作品も、パワフルで今聴けば刺激的で、十分に楽しむことができた。
 トータルで考えれば、文句なく元のとれるボックス・セットだ。

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'12/3/6  Steve Tyrell / I'll Take Romance (2012)

 ポール・マッカートニーの洒落たスタンダード・アルバムの余韻が残る中、これは現代のスタンダード・シンガー、スティーヴ・タイレルによるニュー・スタンダード・アルバム。
 1999年、スティーヴ・タイレルは、まさに「A New Standard」というスタンダードを歌ったアルバムでデビュー。1944年生まれ、それまで、バート・バカラックやB.J.トーマスなどと音楽界で仕事をしてきたとはいえ、55歳という遅咲きのデビューだった。
 特別な美声の持ち主ではないし、ジャズ・シンガーのようにテクニックがあるわけでもない。しゃがれ声で、無骨に馴染みのスタンダードを歌う姿は、とてもシンプルだけど、それが新鮮だったのかもしれない。デビュー・アルバムはジャズ・チャートの3位というヒット。その後も、アルバムはすべてチャートのベスト10に入るという安定した評価を得て、このニュー・アルバムで8枚目となる。
 今回も、相も変わらずシンプルなスタンダード・アルバムだ。きっとファンだって、それ以外を望んでいるわけではないので、それでいいのだろう。気軽にスタンダードを楽しみたい。
 そんな中、気になるトラックとしては、マイケル・ジャクソンとの共演で話題となった日系ソウル・シンガー、ジュディス・ヒルがアルバム・タイトル曲「I'll Take Romance」でデュエットを聴かせる。最近は、様々なアーチストの録音でバック・ボーカルの参加が多いようだけど、ここではジャジーな雰囲気も漂わせる正統派ボーカリストとして魅力的なデュエットを聴かせる。
 そして、あれれと驚いたのが、スタンダード・ソングの中にあって、意外な選曲といえるバリー・マンの「Don't Know Much」。リンダ・ロンシュタットとアーロン・ネヴィルのデュエットで大ヒットした曲。リンダ・ロンシュタットの曲の中でも特にお気に入りの曲なので、何でまたこんな曲を、と調べてみると、リンダ・ロンシュタットにこの曲を紹介し、この曲のプロデュースをしたのがスティーヴ・タイレルだった。きっと、彼にとっても思い入れが強い曲なんだろうと思うと、よけいにこの人が好きになった。

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'12/3/4  Paul McCartney / Kisses On The Bottom (2012)

 ポール・マッカートニーがスタンダード・ナンバーを気持ちよく歌ったアルバム。
 バックの演奏は、とてもシンプル。きっと、イギリスあたりの、地味目なスタジオ・ミュージシャンあたりが演奏しているのかと思ったが、驚くべきことにピアノはダイアナ・クラールだし、ギターはジョン・ビザレリだったりと、大物のアーティストが、自己主張することもなく、淡々とバックをつとめている。さすが、超大物、ポール・マッカートニーだ。
 ポールがこのようなスタンダード・アルバムを作ることには、まったく意外性はない。ポールの作ってきたオリジナルには、ノスタルジックなムードを持ったものも少なくはなかったし、そのボーカルもロック・ミュージシャンというよりは、懐かしいポップス・シンガーのような雰囲気が漂っている。
 スタンダード好きな自分としては、ロッド・スチュワートなどのベテラン・ロック・ミュージシャンがスタンダード・カバー・アルバムを発表する中で、やはりスタンダードを歌ってピッタリとハマるのはポールだろうと思っていた。しかし、きっとポールはスタンダードのカバーはやらないだろうなと、期待をしていなかった。リンゴ・スターがもう40年も前に、ロック・ミュージシャンとしてはいち早くスタンダード・アルバムを作ったが、何となく、ポールは作らないだろうなと、そんな気がしていた。
 ということで、意外ではあったが、期待通りの、ポールの持ち味を十分に発揮した、自然体で暖かい雰囲気のアルバムが完成した。ホントに、ポールらしい作品だ。そうそうたるジャズ・ミュージシャンを並べても、決してジャズを歌おうなどとは思わず、慣れ親しんだメロディを甘く、切なく、楽しんで歌っているのが伝わってくる。
 ポールのほかに印象的なのは、やはりダイアナ・クラールとジョン・ピザレリなど、バック・ミュージシャンもリラックスして、ポールとの共演を楽しんでいるかのような演奏だ。また、ヴィブラホンのマイク・マイニエリが加わったジョージ・シアリング・クインテットのような優雅な演奏もお気に入り。
 逆に、残念ながらアルバムの雰囲気を台無しにしているのが、ポールのオリジナル「My Valentine」「Get Ourself Another Fool」で参加しているエリック・クラプトン。明らかに、場違いの演奏。クラプトンは、こないだもウィントン・マルサリスとの競演盤があったけど、自分としては、どう聴いてもジャズとの相性は悪いと思う。大好きなクラプトンだけど、これは間違い。ということで、iPodではクラプトンの二曲を削除して聴いているけど、とても気持ちがいい。
 アルバムの性格として、ポールのオリジナル作と比べるには無理があるけれど、ポール・マッカートニーを語るには、決して外すことのできない作品となった。いいアルバムです。

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Kisses On the Bottom - Paul McCartney

'12/2/29  Catherine Russell / Strictly Romancin' (2012)

 ジャズ・ボーカリスト、キャサリン・ラッセルのニュー・アルバム。
 2006年のデビュー・アルバム「Cat」以来、2年に1枚のペースでアルバムを発表しているのだが、基本的にスタイルはほとんど変わらない。どれもがノスタルジックな雰囲気を漂わせる、シンプルなジャズやブルースのカバー集だ。
 この人は、デビュー以前から様々なアーチストのアルバムにバック・ボーカルとして参加している。ポール・サイモン、デヴィッド・ボウィ、スティーリー・ダン、シンディ・ローパー、ジャクソン・ブラウン、アル・クーパー、ダイアナ・ロスと名前を挙げれば限り無しだ。というのも、きっとこの人の声質が濃い目ながら、とても素直に耳に入ってくるからなんだと思う。深みと、温もりを感じさせるボーカルは、いつ聴いてもホッとするものだ。
 ということで、シンプルな作品ながら、コンスタントに4枚目のアルバム。きっと、この温もりのあるサウンドの根強いファンがいるのだろうね。そういう人だ。

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Strictly Romancin' - Catherine Russell

'12/2/28  Greetje Kauffeld / Heaven's Open (2012)

 オランダのジャズ・シンガー、フリーチャ・カウフェルトが1969年から1986年にかけて残した録音をまとめたアルバム。
 フリーチャ・カウフェルトの温もりを感じる声質で、ストリング・オーケストラをバックに、美メロのバラードを綴ったこのアルバムは、未発表も5曲含まれるが、自分としてはどれも始めて聴くものばかり。やや地味目な印象もあるけれど、しっとり美しいオーケストラをバックに、リー・ワイリーを思わせる清楚で気品のあるボーカルは超魅力的。
 特に印象に残るのは、アルバム一曲目、バーバラ・ストレイザンドの大ヒット曲「The Way We Were」だ。気負いもなく、オーケストラに身を任せるようにサラリと歌うのだが、これがこの人らしくて新鮮だ。この曲は、アルバムのラストで再度オーケストラのみのバージョンとして登場する。
 あとは、ドン・マクリーンのもうひとつの名曲「Vincent」も、オーケストラをバックにしっとり美しく歌い上げて、思わず聴き入ってしまう。さらに、「The Way You Look Tonight」のバラード・バージョン、これもいいね。
 まあ、ジャズというよりは、洗練された大人のポップス。じっくりと聴きたいアルバムです。

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Heaven's Open - Greetje Kauffeld

'12/2/26  Jasmine Kara / Blues Ain’t Nothing But A Good Woman Gone Bad (2012)

 スウェーデンから登場したジャスミン・カラによるソウル・ミュージックのカバー・アルバム。技巧どうこうではなく、伸び伸びとした勢いで歌い飛ばすところが実に痛快だ。
 本国では2010年に発表されたアルバムで、ジャスミン・カラは1988年の生まれだというから、若干22歳の北欧の女性が、エタ・ジェイムスを始めとするクラシック・ソウルの数々を鮮やかにカバーしている。エタの"Fire"でスタートするアルバムは、すべてチェス・レコードのヒット曲が素材だという。
 このように若い白人女性が、クラシック・ソウルを鮮やかに歌いこなしてしまう姿は、ちょっと以前のジョス・ストーンを思い出してしまった。また、ちょっとニュアンスは違うけど、日本でSuperflyがジャニス・ジョプリンを堂々とカバーしてしまう姿にも重ね合わせることができるだろう。
 とてもパワフルだし、若くて魅力的な声を持っており、様々なタイプの曲にもチャレンジし、柔軟性もある人のようだ。また、バック・バンドのスウェーデンのミュージシャンも、なかなかグルーヴィな演奏を聴かせてくれる。
 とりあえずデビュー・アルバムとしては、鮮やかなカバーで拍手喝采を得られるだろうが、今後、どのような形で活動していくのかが注目だ。

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Ain't No More Room - Single - Jasmine Kara

'12/2/25  Jack DeJohnette / Sound Travels (2012)

 ジャック・ディジョネットのニュー・アルバム。あまりジャズとして堅苦しく聴かなければ、なかなか面白い作品だと思う。
 ジャック・ディジョネットはジャズ界でも重要なドラマーの一人であると同時に、ピアノも堪能であるなど、もっと幅の広いコンポーザーとしての評価も高い人だ。
 そんな多才ぶりから、自身のリーダー・アルバムにおいても、ドラマーの部分が強く出たものと、コンポーザーとしての色合いが強く出たものと、作品によって振れ幅が大きく、しばしばファンを戸惑わせることもある。
 このアルバム全体に漂う緩めのグルーヴ感は、きっとファンを戸惑わせるに違いない。知らずに聴けば、まずジャック・ディジョネットの作品と気づく人はいないと思う。
 自分としては、そんなユルさがけっこう気に入っているのだが、一方ではジャック・ディジョネットに期待するものとはちょっと違うのになというのが、正直な感想ではある。
 1曲目の思わせぶりな脱力ピアノ・ソロに次いで登場するのは、エスペランサ・スポルディングのボーカルも魅力的なクールなサルサ・ナンバー「Luisito Serena Salsa」。リオネル・ルエケのギターとか、アンブローズ・アキンムシーレのトランペット、そしてジャック・ディジョネットのピアノとか、何とも軽く、クールなグルーヴがすっかり気に入ってしまった。これがディジョネットらしくはないがベスト・トラック。
 そして、ブルース・ホーンズビーがボーカルをとる、ザ・バンドを思わせるニューオーリンズっぽい土臭いナンバー「Dirty Ground」。これもディジョネットとしては意外なテイストだけど、ティロ・リーズのソプラノ・サックス、リオネル・ルエケのギター、そしてディジョネットのピアノがイイ味を醸し出す。
 ボビー・マクファーリンが登場すると、空気が一転してしまうものだが、「Oneness」はマクファーリンのボーカルに、ディジョネットのピアノ、そしてルイシート・キンテーロのパーカションという、まさにマクファーリンの世界が広がる。
 やはり、全体的にはゴリゴリのジャズというよりは、パーカッションを中心とした緩いグルーヴ・ミュージックという印象。ジャック・ディジョネットの味わいのあるピアノもたっぷりと聴ける。

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Sound Travels - Jack DeJohnette

'12/2/18  Lyambiko / Sings Gershwin (2012)

 ドイツのジャズ・シンガー、リャンビコが率いるバンド、リャンビコのニュー・アルバム。
 リャンビコという変わった名前は、多分、ボーカリスト、リャンビコの父親がアフリカ出身ということから、アフリカ由来のものだろう。クールなボーカリストでありながら、どこかアフリカの土の匂いのするボーカリストでもある。そして、バックのピアノ・トリオも、大地のグルーヴを感じさせる演奏を聴かせる。
 このニュー・アルバムは、アメリカの大作曲家であるジョージ・ガーシュウィンの曲を取り上げたものだ。アルバム・ジャケットからしてもそうだが、これまでの彼女たちの作品に比べて都会的なイメージが強くなっており、やや彼女たちらしさが薄れているのは残念。
 しかし、ドイツのミュージシャン3人からなるバック・バンドの、グイグイ、ビシビシと決めてくる息のあったアグレッシブな演奏は、相変わらず聴いていても快感だ。

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'12/2/16  The Apollas / Absolutely Right! Complete Tiger, Loma & Warner Bro Recordings (2012)

 美貌と歌唱力を持ち合わせた華やかなソウル・シンガー、ホイットニー・ヒューストンの訃報がマスコミで大きく取り上げられている。彼女の作品はデビュー時から聴いてきたが、世界的に彼女の人気を確固たるものとした「I Will Always Love You」の大ヒットで、逆に自分の気持ちは離れてしまった。以前から、リンダ・ロンシュタットが涙ながらに歌う同曲の大ファンだったから、派手派手コテコテなホイットニー・ヒューストンのスタイルが許せなかったのだろう。
 だからというわけではないが、ホイットニー・ヒューストンというと、彼女の母親であるシシー・ヒューストンが在籍し、エルヴィス・プレスリーのバック・コーラスを勤めていたスイート・インスピレーションズを思い浮かべてしまう。後期エルヴィスのライヴステージの魅力の陰に、ゴスペルをベースとしたスイート・インスビレーションズのディープな女性コーラスがあったことは忘れてはならない。
 ということで、女性コーラス・グループ、アポラズの登場だ。イギリス、ケント・ソウル・レーベルから、60年代に活動したディープな女性コーラス・グループ、アポラズのコンピレーションが発表された。
 アポラズというグループは、60年代の中ごろに8枚のシングルを残すが、ヒットにも恵まれず、アルバムも出していない。Youtubeを探しても、映像も数本しかないグループだ。しかし、イギリスでのノーザン・ソウルの盛り上がりの中で認められたグループで、このアルバムは彼女たちが残した8枚のシングルに、リード・シンガーのリオナ・ジャイルズのソロなど関連音源を加えたマニアックな作品だ。
 自分は名前さえもまったく知らなかったグループだけど、女性コーラス・グループということ、ケント・レーベルの名前、そしてアルバム・ジャケットのイメージで確信を持って入手したが大当たりだ。明らかに当時のシュプリームスやモータウン・サウンドを意識した曲が多いのだが、シュプリームスとは違ったディープでパワフルなスタイルに、まだこんなコーラス・グループが埋もれていたのかと嬉しくなる。

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'12/2/13  Rebecca Ferguson / Heaven (2012)

 海外ではオーディション番組が盛況のようだ。時々、Youtubeで観るのだけど、素人の意外性というのか、その力強い正統派ボーカルに感動してしまうこともしばしばある。
 このレベッカ・ファーガソンも、イギリスのオーディション番組を勝ち抜いてきた一人だ。人懐こい表情と、しばしばアレサ・フランクリンの名前が引き合いに出される、温かみのある個性的な声質が魅力でもある。
 このデビュー・アルバムは、レベッカ・ファーガソンが影響を受けたアデルを手がけたエグ・ホワイトがプロデュースということで、ところどころアデルの雰囲気も感じられるが、デビュー作としては出来すぎという印象だ。全10曲、トータルで35分と、時間的には物足りない気もするが、その分、内容は濃厚で、手堅く作られている。
 そして、レベッカ・ファーガソンはソングライターでもあり、このアルバムでもすべての曲作りに関わっている。シングル「Nothing's Real But Love」をはじめ、どの曲もガッチリと作られた印象的なものが多い。
 ボーカルはやや抑え気味だろうか。オーディションでは、もっとスケールの大きな歌を聴かせてくれたので、これから、まだまだ面白くなりそうな雰囲気感じさせる人だ。早く次のアルバムが聴きたいと思ってしまった。

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'12/2/12  Carole King / Simple Things (2012) ; Welcome Home (2012) ; Touch the Sky (2012) ; Pearls: Songs of Goffin & King (2012)

 キャロル・キングは、1971年「Tapestry」の大ヒット以来在籍しヒットを連発していたオード・レーベルを離れ、1977年にキャピトルへ移籍した。
 キャピトル時代も、1977から1980年まで毎年1作というペースで4枚のアルバムを発表したが、「Simple Things」こそゴールド・ディスクを獲得するも、決して思うような結果は得られなかったようだ。
 これらのアルバムが、セルフカバー・アルバムとして話題となった「Pearls」を除けば、これまで米国でCD化されていなかったことでも、その時代の評価がうかがえる。
 しかし、どれも地味かもしれないが決して悪い作品ではない。これまでも、日本では紙ジャケ限定盤として発売されたこともあったが、今回、4枚のアルバムが、無事にコンコードからお求め安いお値段でCD化されることとなった。めでたし、めでたし。
 1977年「Simple Things」は、アルバムチャートはベストテンに届かなかったが、ゴールドディスクを獲得。シングル「Hard Rock Cafe」がヒット。
 1978年「Welcome Home」は、アルバムチャートで100位にも入らなかった。ディスコ・アレンジがあったりして、彼女らしい手作り感が薄れた印象もあるが、とてもチャート的に惨敗した作品とは信じられない作品。
 1979年「Touch the Sky」も100位に届かず。シンガー・ソング・ライターやカントリー・ロックの時代が終焉に近づいたためだろうか。楽曲的には、キャロル・キングらしい曲が揃っていると思うのだけど。
 1980年「Pearl」は、苦戦するアルバムの売り上げに危機感を感じたのか、昔の宝の山を掘り返したセルフ・カバー集。「Loco-Motion」や「One Fine Day」などのキラー・チューンを揃え、思惑どおりアルバムは44位、シングル「One Fine Day」は12位と見事に復活。
 ついでに、オード時代の輝く名盤の数々は、まとめて「Original Album Classics」で。

Simple Things

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Welcome Home

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Touch the Sky

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Pearls: Songs of Goffin & King

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Original Album Classics

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'12/2/11  Roberta Flack / Let It Be (2012)

 久々、ロバータ・フラックの素晴らしいニュー・アルバムが届いた。昨年、先行して「We Can Work It Out」がシングルとして発売され、事前のアナウンスがあったとおり、ニュー・アルバムは全12曲、ビートルズのヒット曲をカバーした作品だ。
 10年ほど前にクリスマス・アルバムが発表されてはいるが、彼女の前作はというと、1995年の「Roberta」という個人的にお気に入りのスタンダード・カバー・アルバムとなるので、実にそれから16年ぶりの新作といことになる。
 そして、ロバータ・フラックも既に74歳。1年ほど前にも来日して武道館公演を行ったり、まだまだ現役として活動はしているが、正直なところ、ここまで瑞々しいアルバムが出来上がるとは思いもよらなかった。
 一瞬、ウッとひるんでしまうアレンジの「In My Life」でスタートするアルバムは、いかにもロバータ・フラックらしい、キラキラとした、軽やかなボーカルと、穏やかなグルーヴを感じさせる、そして意外なアレンジ連発の驚きと新鮮さに溢れる作品だ。親父ロック世代にとっては耳と身体に染み付いているビートルズのヒット曲に、ロバータ・フラックらしい解釈で思い切ったリメイクを行い、新しい表情を与えている。
 原曲のメロディを生かした曲もあるけれど、歌詞を聴いていて初めてビートルズだと気づくようなものが多い。うっかりすれば、ロバータ・フラックのオリジナルかと思うくらい、まったく別の曲になってしまったような曲もある。
 ビートルズ・ナンバーの歌詞まで染み付いているような人にとっては、きっと最高に楽しめるカバー・アルバムのはずだ。しかし、ビートルズをまったく知らない人たちにとっても、繊細なグルーヴをもつ心地よいソウル・ミュージックとして楽しめるに違いない。
 ラストには、1曲、1972年のライヴ「Here There And Everywhere」が収録されている。シンプルなジャズ・アレンジで、そういえばこの人のデビュー・アルバムのバックはロン・カーターなどジャズ・ミュージシャンだったなと思い出した。今回のニュー・アルバムの思い切ったリメイクも、ベースにあるのはジャズなんだとの種明かしということか。

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Let It Be Roberta - ロバータ・フラック

'12/2/7  Gary Smulyan / Smul's Paradise (2012)

 バリトン・サックス奏者、ゲイリースマリヤンのニュー・アルバム。
 バリトン・サックスといえば、ウエスト・コースト・ジャズが好きだった自分はジェリー・マリガンはずいぶんと聴いてきた。しかし、あとは古くはハリー・カーネイ、そしてペッパー・アダムス、さらに最近では、ロニー・キューバーといったあたり、限られた名前しか浮かんで来ない。
 まあ、珍しい部類の楽器となるのだろうが、自分としてはバリトンサックスに人間的な暖かみを感じてしまう。それは、アルト・サックスやテナー・サックスがしばしば楽器が身体の一部となったような、吹き手との一体感を感じさせるのに対して。バリトン・サックスの場合、どことなくユーモラスでおおらかな音色や、楽器との一体感では逆に、扱いづらそうな楽器と格闘している人間の姿が垣間見えるという意味で、人間的な温かみや親近感を感じてしまうのだ。
 ということでゲイリー・スマリヤン。デイヴ・ホランドのバンドで聴いたことはあったが、彼のリーダーアルバムは初体験。まずバリトン・サックス、オルガン、ギター、ドラムスという組み合わせは、オルガンとギター好きにはたまらない。
 そして、演奏のほうはさすがにバリトン・サックスの第一人者と言われるだけのものがあり、実に鮮やかでスピード感も十分。良くも悪くも正攻法で、全体の構成もしっかり緩急を投げ分けた優等生的作品です。自分の趣味としては、贅沢ではあると思うけど、もうちょっとバリトン・サックスらしい遊び感やペーソスがあってもよかったかなと感じてしまった。

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'12/2/6  Ruthie Foster / Let It Burn (2012) ; Live At Antone's (2011)

 ブルース、ゴスペル、ソウル、フォークとアメリカのルーツを全部ひっくるめて、ズシリと味わい深いロックを聴かせるルーシー・フォスターのニュー・アルバム。
 今回は特にゲストとして4曲でブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマが参加し、ゴスペル色が強くなったようだ。さらにウイリアム・ベルが参加しヒット曲「You Don't Miss Your Water」を取り上げたり、アデルの「Set Fire To The Rain」、ブラック・キーズ「Everlasting Light」、ザ・バンド「It Makes No Difference」、デヴィッド・クロスビー「Long Time Gone」、ピート・シーガー「If I Had A Hammer」と興味津々。
 ルーシー・フォスターのボーカルは、ブルース、ゴスペルに根ざしたものだろうが、妙に白人的なポップで洗練された部分も併せもっているところがおもしろい。彼女のこれまでのアルバムがブルース・チャートにしか登場していないというのは実に意外だ。
 自分が始めて彼女を知ったのは、2007年の出世作「The Phenomenal Ruthie Foster」だったが、その後、6年間に5枚のアルバムが出ているということは、ちゃんと評価もされているということだと思うが、日本で彼女の名前を聞くことはほとんどないのは残念だ。ぜひ、今回のニュー・アルバムで知名度アップを狙いたい。
 また、昨年にはライブ・アルバム「Live At Antone's」も発表されているが、これが彼女の地元テキサスでのライヴで、最高にグルーヴィな作品。ここでは、なんとルシンダ・ウイリアムスやパティ・グリフィンのナンバーまでカバーしている。CDそのまんまのDVDつきで、こちらもお勧めだ。

Let It Burn

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Let It Burn - Ruthie Foster

Live At Antone's

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Ruthie Foster (Live At Antone's) - Ruthie Foster

'12/2/5  Art Blakey / Blue Note Jazz Inspiration (2012)

 昨年からドイツのEMIが発売しているブルー・ノート・レーベルのコンピレーション。2012年になって、アート・ブレイキー、ホレス・シルバー、ジミー・スミス、デューク・エリントン、スイング・クラシックスの5枚が発売に。
 昨年、ハービー・ハンコックを買ってみたら、RVGを含む最新音源を使用して、なかなかスッキリとまとまって好印象だったので、今回も何枚か入手してみた。
 もっぱら聴いているのがアート・ブレイキーのやつ。実は、自分的にはブルー・ノートのアート・ブレイキーといえば、クリフォード・ブラウン、ケニー・ドーハム、リー・モーガン、ルー・ドナルドソン、ベニー・ゴルソンといった目くるめくメンバーが入れ替わり立ち代り登場してきた時期の印象が強かった。
 しかし、この「Blue Note Jazz Inspiration」での選曲は、全9曲中アルバム「Moanin'」「The Big Beat」「The Witch Doctor」から、それぞれ2曲づつが選ばれている。 「Mornin'」「The Big Beat」は、まあいいとして、「The Witch Doctor」というのが面白い。結果的に、9曲中6曲がリー・モーガン、ウェイン・ショーターがフロントの時代のものとなり、全体でも、8曲にリーモーガンが、7曲にウェイン・ショターが参加ということに。まあ、ショーター時代も良いんだけど、クリフォード・ブラウンは、セレス・シルバーは、どうなのとちょっと寂しく、まあヨーロッパ的にはそういう感覚なのかなと納得することにした。
 とまあ、そんな聴きかたをしているベスト・アルバム。廉価盤です。

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'12/2/4  Chick Corea Eddie Gomez Paul Motian / Further Explorations (2012)

 チック・コリア、エディ・ゴメス、ポール・モチアンというトリオによる、ビル・エヴァンス・トリビュート・アルバム。
 録音は2010年。日本では、2011年夏に発売されたが、米国での発売は明けて2012年となった。もちろん、お値段は輸入盤の方が、ずっとお得。しかし、その間、残念ながら昨年11月には、ポール・モチアンが80歳という年齢で亡くなった。
 ポール・モチアンといえば、ビル・エヴァンス。しかし、自分としては、キース・ジャレットとの70年代、ECM諸作品でのポール・モチアンのイメージが強い。もちろん、エヴァンスとやっても、キース・ジャレットとやっても、その クールなイメージは変わらない。ECMというレーベル自体が知的でクールな印象が強く、どこかその近寄りがたさが魅力のようなところもあったけど、ポール・モチアンのイメージも、そんなECMレーベル・イメージと重なる。
 このアルバムは、ニューヨークのジャズクラブ、ブルーノートで2週間にわたって行われたライヴを収録したもの。もともとベテラン3人のことだから、それぞれの演奏スタイルは既に円熟しきっている。しかし、2週間のライブの中で初競演となるトリオとして、どのように熟成が進んでいくのか興味深いところだが、どの曲がいつ録音されたは不明のようだ。
 ということで、個性的なベテランを集めながら、皆さん、芸も人もすっかり丸くなっているようで、ほどほどの自己主張をしながらもうまくまとめてしまうのは流石にプロだ。全体的に、思ったよりもオーソドックスなピアノ・トリオとして楽しめるアルバムになっている。
 ビル・エヴァンス・トリビュートということからも、知的な演奏が多くなるわけだけど、気分を変えてという意味もあるのだろうか、唐突に登場するのがチック・コリアの「Another Tango」というタンゴ・ナンバー。ゴメスの弓弾きの印象も強烈で、アルバムの中で浮いた感じもあるけれど、もうちょっと聴いてみたいなという気持ちも起きてしまった。客の反応も良くて、本当は、こっちが聴きたいのじゃないかと何だか複雑な気持ち。


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'12/2/1  Celtic Woman / Believe (2012)

 アメリカでも大人気というのが、いまだに信じ難い女性ボーカル・ユニット、ケルティック・ウーマンのニュー・アルバム。
 いわゆるヒーリング・ミュージックということなのだが、自分としてはジャズを聴いているほうがよほど気持ちは癒される。けど、この人たちのアルバムに手が伸びてしまうのはなんでだろう。
 こういうフィルターで不純物をきれいに濾し取ってしまったような音楽は実に味気ないなと感じているはずなのに、この人たちのアルバムには手が伸びてしまうのはなんだだろう。
 頻繁にメンバー・チェンジをしているのに、何も変わらないというのが何とも不思議だけど、なぜか手が伸びてしまうのはなんでだろう〜。
 ということで、やっぱり入手してしまったケルティック・ウーマンのニュー・アルバムは、あれ、まだ録音していなかったっけという感じの「The Water Is Wide」をはじめとするアイリッシュ・ソングや、クラシカルな「Ave Maria」といったいつもながらの、美しいメロディがズラリと並ぶ。
 そして、今回は気になる曲が3曲。ロッド・スチュワートの「Sailing」、サイモンとガーファンクルの「Bridge Over Troubled Water」、エルヴィス・プレスリーも歌った「You'll Never Walk Alone」。どれも、自分的にはツボの曲だけど、彼女たちらしく大きなスケールの盛り上がり系のアレンジで仕上げてくれた。
 やっぱり単純に考えて、彼女たちの魅力は、優しく、伸びやかで、そして嫌味のない、ボーカルの美しさということだろうね。ゴチャゴチャした世の中だから、こういう味気ないかもしれないけれど、穢れのない声が魅力的なんだろう。

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'12/1/29 Connie Francis / At the Copa (2012) ; Brenda Lee / This Is Brenda (2012) ; Dion / Runaround Sue (2012) ; Del Shannon / Runaway (2012) ; Neil Sedaka / Circulate (2012)

 著作権の保護期間である50年が経過したからだろうけど、1961年に発表されたポップスのアルバムが、イギリスの Hallmark という復刻レーベルから、まとめて発売になっている。
 金額が安いこともあるし、コンピレーションで聴くことの多いオールディーズなので、たまにはオリジナル・アルバムを、ということで何枚かを入手してみた。
 コニー・フランシス、ブレンダ・リー、ディオン、デル・シャノン、ニール・セダカとビッグネームがズラリ。一番気に入ったのが、ブレンダ・リー。面白かったのが、ニール・セダカ。スタンダードのカバーが中心になっているアルバムで、これはまったく始めて聴いた。コニー・フランシスのライブ・アルバムも、やや地味目ながら、雰囲気も歌もバッチリ。ディオンとデル・シャノンは、比較的、馴染みのあるアルバム。
 音のほうは、期待厳禁。AMラジオでも聴くような、おおらかな気持ちで聴くこと。

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At The Copa - コニー フランシス

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This Is Brenda - ブレンダ リー

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Runaround Sue - Single - Dion

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Runaway - デル・シャノン

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Circulate - ニール・セダカ

'12/1/26  奥村愛子 / 鍵 (2012)

 昭和歌謡がブームだった時代、「いっさいがっさい」でデビューした奥村愛子の豪快にグルーヴする昭和ジャズ歌謡が帰ってきた。一時期、デビュー時のパワーが消えてしまい、どうしたのかと思ったが、このニュー・アルバムでは元気に復活してよかった。
 奥村愛子の名前もしばらく聞かなくなったけど何やってたんだろと思ったら、tvkの「戦国鍋」の音楽を担当しているということ。Youtube見たら確かに奥村愛子らしい曲が流れてきた。tvkの「戦国鍋」ってのも、彼女らしくていいね。
 ということで、このアルバムに「戦国鍋」の影響はないようだけど、全曲彼女のセンスが匂うようなオリジナルは、お洒落に、豪快に、パワフルな彼女の歌の上手さも含め十分に満足できるクオリティの高さだ。迷うことなく、昭和ジャズ歌謡路線、突き進んでね。

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鍵 こい味詰め合わせ - 奥村愛子

'12/1/23  Malia / Black Orchid (2012)

 イギリスのジャズ・ボーカリスト、マリアのニュー・アルバム。
 これまで、ディープで、クールで、それでいてほのかにポップな香りのあるアルバム作りをしてきた人だ。前作では、突然、レディオヘッドの曲を取り上げたりして驚いたが、基本的にはアルバムのほとんどの曲は、彼女が自ら書いたものだ。しかし、このニュー・アルバムは、ニーナ・シモンに捧げたものということで、全曲ニーナ・シモンでお馴染みの曲をカバーしている。
 シンプルなピアノ・トリオによる、音の隙間を意識させるサウンドと、クールでディープな低体温ボーカル。ニーナ・シモンというよりも、むしろカサンドラ・ウイルソンを感じさせるものがある。曲によっては、ビリー・ホリディかなと思ってしまうものもある。
 「Don't Explain」や「I Love You Porgy」がなかなか味わい深くて気に入っているが、ベスト・トラックは、7分に及ぶ「Wild Is The Wind」だろうか。淡々とした演奏とボーカルがジワリ、ジワリと効いてくる。
 これまでの彼女のアルバムとしては、最もクールな作品で、これまでのベストだろう。じっくりと耳を傾けたいものだ。

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'12/1/22  森恵 / 世界 (2012)

 森恵というシンガー・ソング・ライターを知ったのはYoutubeだ。渋谷でのストリート・ライヴ。吉田拓郎の「落陽」をギターを抱えて歌う姿に感動した。

 この他、Youtubeには彼女のライヴ映像が数多くアップされているけど、どの曲を聴いても、その歌の上手さに唸ってしまうものばかり。いや、単に歌が上手いということではなく、彼女のボーカルとギターには、グイッと聴き手の気持ちを引き寄せる力を感じる。
 既にインディーズからはアルバムも出しているが、メジャーデビュー後は、これまでシングルを2枚。そして、今回、始めてのミニ・アルバムが登場ということになった。ファンの間には、少しとまどいもあるようだけど、このミニ・アルバム「世界」で森恵の曲は、一回りスケールが大きくなったようだ。これまでのシンガー・ソング・ライター然としたものではなく、シンガー、森恵という雰囲気が強くなっている。
 特に、タイトル曲「世界」は、映画のテーマ曲にでも使えそうな壮大なストリングス・アレンジで、ボーカルも一段とスケールが大きくなっている。個人的には、ギターを掻き鳴らして歌う姿により親近感を感じるのだが、そういう意味では「夢の中の夢」というポップなロック・チューンが、これまでのファンからも広く支持を受けるだろう。ストリートから生まれた本格的なボーカリストの今後に、期待は大きいぜ。
 ついでに、森恵が売れれば、一気に有名になるであろう、森恵の路上ライブにおける、偶然ながらも酔っ払いオヤジとの素敵なコラボレーションが楽しめる名作ビデオを。


森恵 / 世界

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世界 - 森 恵

'12/1/18  The Little Willies / For The Good Times (2012)

 リトル・ウィリーズでカントリーをやっているノラ・ジョーンズは、何だか元気で楽しそう。一回きりの趣味のバンドかと思っていたリトル・ウィリーズのセカンド・アルバムが出た。
 ノラ・ジョーンズがすべてリード・ボーカルをとるわけでもなく、時にコーラスに回ったりもする。気に入った仲間同士が集まって、好きな音楽をやっているという雰囲気が伝わってくるグループだ。
 とはいえ、ノラ・ジョーンズに目が行ってしまうのは仕方のないことだろう。やはり、ノラ・ジョーンズのボーカルは、ゆったりとしたリズムで最も魅力を発揮する。そういう意味では、アルバムのラスト、オリビア・ニュートン・ジョンがカバーをしてヒットさせた、ドリー・パートンの「Jolene」がやけに心に染みる。

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'12/1/15  アンジェラ・アキ / SONGBOOK (2012)

 新年になり、NHKで放送が始まった「アンジェラ・アキのSONGBOOK in English」が面白い。
 英語圏のアーティストが歌う楽曲の歌詞を解説するという企画だが、第1回目は「Honesty」の歌詞を、ビリー・ジョエルの人間性まで想像しながら、微妙なニュアンスまで解釈をした。そして、先週、第2回目になると、「Honesty」を日本語で歌うために歌詞をつけるという作業。参加している学生の日本語訳を、的確な言葉に置き換えていくアンジェラ・アキのセンスに感心してしまった。
 ということで、アンジェラ・アキのニュー・アルバムは、まさに英語曲を日本語で歌うという「SONGBOOK」だ。
 自分がアンジェラ・アキを始めて聴いたのは、2005年にマイナー・レーベルから出たミニ・アルバム「One」だった。日本語でボズ・スキャッグスの「We're All Alone」を歌う彼女の力強い歌声と、無骨なくらい力強くストレートなピアノの弾き語りは、かなり衝撃だった。その後、メジャー・デビューするわけだが、残念ながらあのパワフルな歌をアルバム一枚聴きとおせるほど、彼女の音楽との相性はよくなかったようだ。しかし、日本語で歌われる「We're All Alone」や「A Song For You」を始めて聴いたときの強烈な印象は消えることはなく、今回のアルバムは躊躇することなく入手した。
 取り上げているのはビリー・ジョエル、ジャニス・イアン、ボズ・スキャッグスといった70年代のものから、マドンナ、シンディ・ローパー、スマッシング・パンプキンズ、レディオヘッド、さらにはベン・フォールズ、ボーイズ・トゥー・メンと、実に様々。
 相変わらず、力強い歌声が気持ちよい。そして、何より日本語がキレイなのだ。英語曲だからといって、メロディに合わせて英語っぽい発音などせず、徹底してむクリアな日本語で歌われるところが素晴らしいと思う。原曲を知らない人が聴けば、日本語のオリジナル曲と思ってしまうであろうくらい、ほぼ完璧に日本語の曲としてリメイクがなされているところは見事だ。
 言葉にこだわるシンガー・ソング・ライターとしては、中途半端な日本語カバーなぞやりたくないということなのだろう。NHKの番組を観ていてそう感じた。

SONGBOOK [Limited Edition]

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SONGBOOK

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ONE (2005)

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'12/1/14  Charlie Haden Hank Jones / Come Sunday (2012)

 2010年、91歳で大往生したハンク・ジョーンズが、同年の2月にベースのチャーリー・ヘイデンとともに録音した遺作が登場。
 この二人のデュオといえば、1995年に「Steal Away」という異色作が残っている。「Sprituals, Hymns and Folk Songs」というサブ・タイトルが示すとおり、ジャズというよりは、トラディショナルな音楽をシンブルに奏で、敬虔な雰囲気をかもし出すアルバムだった。そして、その15年ぶりの続編がこのニュー・アルバム「Come Sunday」だ。
 アルバム・タイトルは、デューク・エリントンがマヘリア・ジャクソンとともに録音した感動的な組曲「Black,Brown and Beige」の中の一曲。黒人解放の歴史を綴った作品の、メインテーマともいえる祈りのような曲だ。そして、「Come Sunday」を取り上げたことにより、「Steal Away」「Come Sunday」という二作に込めたハンク・ジョーンズの想いが明確になった。また、「Come Sunday」がアルバムのラストに置かれたことにより、この曲が彼の音楽人生を締めくくることになったことは、ハンク・ジョーンズの本意に反することではなかったと思う。
 アルバムは、昔の記憶をたどりながら、丁寧にメロディをなぞるような演奏で埋められている。思わず膝を叩いてしまうな、ジャズ的な絶妙なアドリブの交換なぞは期待できず。日本で育った我々でも、ふと郷愁を感じるような、原曲を愛しむシンプルで懐かしい演奏を楽しみたい。
 また、久しぶりにデューク・エリントンの「Black,Brown and Beige」を聴いた。マヘリア・ジャクソンのボーカルと、ソリストの演奏が素晴らしい、一度は訊いてくべき、スピリチュアルなエリントン、渾身の一作だ。


Come Sunday (2012)

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Steal Away (1995)

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Black,Brown and Beige

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'12/1/10  Seal / Soul 2 (2011)

 ゾクゾクッとするファルセットでスタートする「Wishing on a Star」で、一気にアルバムに引き込まれてしまった、シールの2枚目となるソウル・スタンダード・カバー・アルバム。
 3年前に発表された1枚目のカバー・アルバムも、塩辛声で歌われる馴染みのメロディが、実に心地良く響いたものだったが、今回は、さらに軽いタッチで流れるような耳ざわりが気持ちよい。
 でもって、このアルバムのベスト・トラックは、トップに置かれた美しい「Wishing on a Star」に間違いないと思っているが、実はこの曲は自分としてはまったく馴染みのない曲だった。これは「Car Wash」で知られるローズ・ロイスのヒット曲とのことだが、どうも米国ではあまり当たらず、英国で大きなヒットとなった曲らしい。もう一曲、よく知らなかった曲が「Love Don't Live Here Anymore」で、これもまたローズ・ロイスのヒット曲。今回のカバー・アルバムで二曲もカバーしているということは、きっとローズ・ロイスというバンドが英国人にとっては、特別に馴染み深いものなんだなと改めて感心。
 シールとしては手馴れたもので、ズラリと並ぶ有名曲に対しても昔から慣れ親しんできたのだろう、実に自然に気持ちよさそうに歌いこなしている。中でも「Let's Stay Together」などはハマリすぎ。「What's Going On?」「Oh Girl」といった大物曲に対しても、肩の力の抜けた、シールらしい個性を感じさせるカバーは、こちらとしても安心して聴いていられるし好感も持てる。
 ところで、よく考えたら、自分がシールの2枚のカバー・アルバム以外に、彼のオリジナル・アルバムを一枚も聴いたことがないに気がついた。こりゃ、申し訳ない。
 

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'12/1/9  Doris Day / My Heart (2011)

 ドリス・デイといえば「センチメンタル・ジャーニー」ということで、これが1944年のヒットだから第二次世界大戦のイメージが強いシンガーだ。もちろん、戦後も「ケ・セラ・セラ」の大ヒットなど長く活躍を続けるわけだけど、まさか、ここで彼女のニュー・アルバムが登場するとは思わなかった。
 とはいえ、ドリス・デイも今年87歳。さすがに、このアルバムは80年代に録音されたものが中心だという。それにしても、まさかドリス・デイが歌う「Disney Girls」が聴けるとは。それも、この作品が息子であるテリー・メルチャーとの録音であり、その相棒であったビーチ・ボーイズのブルース・ジョンストンの協力が大きかったためだ。
 しかし、親子で作り上げた微笑ましい作品が、どこか寂しい印象を感じさせるのは、2004年に息子テリー・メルチャーが先立ったためだろうか。ひょっとしたら、そのような状況がなければ、母ドリス・デイはこの作品を発表することはなかったのかもしれない。
 確かに、彼女のそれまでのイメージとは違った、ブルース・ジョンストンの曲を中心に、ジョン・セバスチャンやビリー・プレストンなど、息子の世代のポップスを歌うドリス・デイを聴くのは楽しいことだ。しかし、それらの曲の中に置かれた「My One & Only Love」「My Buddy」「Ohio」という、50年代、60年代に録音された3曲のスタンダードを聴けば、彼女のボーカルの魅力の差は歴然としている。
 ドリス・デイは、楽しかった息子とのレコーディングの思い出を、アルバムとして残したかったのだろう。この作品からは母から息子への優しい愛情を感じる。

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'12/1/8  Susan Boyle / Someone to Watch Over Me (2011)

 今朝、ジャッキー・エヴァンコがテレビに出演して歌っていたけれど、その幼い顔と、成熟した歌声のアンバランスが何とも聴いていて気持ちが悪かった。
 スーザン・ボイルに対しても、その歌声が素晴らしいだけに、ルックスと歌がどうしても一致せずに、ジャッキー・エヴァンコ以上に、いつまでたっても聴いていて居心地の悪さを感じてしまうのだ。
 かつて、クリストファー・クロスがその姿をいっさい見せることなく、大ヒットを重ねていたことがあったけど、アマチュアならいざしも、やはりプロとなったら、容姿、容貌も含めて評価されることは仕方がないことなんだろうな。
 なんてことを思いながら、スーザン・ボイルのニュー・アルバムを買ってしまったのは、アルバム・タイトルになっている「Someone to Watch Over Me」というスタンダード曲が大好きだから。ぜひ、スーザン・ボイルがこの名曲を歌うのを聴いてみたかったから。
 そして、確かにスーザン・ボイルの歌う「Someone to Watch Over Me」は、胸がキュンとなるような可憐なボーカルを聴かせる。大正解。しかし、ヴァースを省略して、2コーラスだけ、1分17秒という超省略形。ぜひ、フルコーラスで歌って欲しかった。アルバム・タイトルとしながら、こういう扱いの意図がまったくわからずに残念だ。
 とはいえ、アルバムの出来はなかなかのもの。冒頭のミュージカル曲「You Have To Be There」の重厚なムードからスタート。「Unchained Melody」「Both Sides Now」「Lilac Wine」などのスタンダードとともに、ディペッシュ・モードやティアーズ・フォー・フィアーズといった英国らしいバンドのカバーも聴き所。様々な世代に対するサービス精神も旺盛だ。
 それにしても、「Someone to Watch Over Me」の扱いは残念。後ろ髪を引かれるような想いで、アルバムは終わる。

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Someone to Watch Over Me - Susan Boyle

'12/1/4  Diana Panton / To Brazil With Love (2011) ; ...Yesterday Parhaps (2011)

 2010年に突然、日本でブレイクしたカナダのジャズ・ボーカリスト、ダイアナ・パントン。きっかけは2009年のアルバム「Pink」と2007年の「If the Moon Turns Green」の日本発売だった。
 そして、年が明けた2011年には、たたみかけるように新作「To Brazil With Love」を発表したかと思うと、さらに2005年のデビュー・アルバム「...Yesterday Perhaps」を押し込んできた。
 心が温かくなるような、優しく、甘いボーカル。日本では、ジャネット・サイデルであるとか、ステイシー・ケントであるとか、最近では、こういうタイプのジャズ・ボーカリストの人気が高い。
 「To Brazil With Love」は、そのタイトルどおり、ボサノバなどブラジル音楽に挑戦したもの。これが、見事なくらい爽やかにハマる。既に、ダイアナ・パントンの魅力にとりつかれているファンにとっては、もう抵抗のしようがないくらい、ツボにズッポリとハマってしまうはずだ。
 そして、もう一枚のデビュー作「...Yesterday Parhaps」は、初々しさも感じるジャズ・アルバム。ギターとベース、あるいはギターとピアノというシンプルなバックも彼女の飾り気のないボーカルにピッタリ。とてもシンプルなアルバムで、個人的には、このアルバムが大のお気に入り。

To Brazil With Love

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...Yesterday Parhaps

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If the Moon Turns Green

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Pink

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'12/1/3  Rory Gallagher / Rory Gallagher ; Deuce ; Live! In Europe ; Blueprint ; Tattoo ; Irish Tour 1974 (2011)

 1970年代に活躍したイギリスのブルース・ロック・ギタリスト、ロリー・ギャラガーの初期ソロ・アルバム6枚が再発売となる。
 同時期に、エリック・クラプトンやデイヴ・メイスンのように、うまくアメリカに進出し成功したブルース・ロックのアーティストたちに比べても、遜色のない魅力をもつ人だが、残念ながら、当時のアメリカで広く支持を得られなかったことからいまだに過小評価をされてきたアーティストだ。
 しかし、変にアメリカナイズされなかったことから、純粋なブリティッシュ・ロックの香りをずっと持ち続けたアーティストでもある。いつまでも、ブルースをベースに、ウェットなポップ・センスと、燃えるようなガッツに溢れた演奏は変わることがなかった。
 今回の再発は、ソロ・デビュー作となる、1971年の「Rory Gallagher」「Deuce」、1972年の「Live! In Europe」、1973年の「Blueprint」「Tattoo」、1974年の「Irish Tour 1974」という6枚。ロリー・ギャラガーの最も熱い時期のアルバムであり、どれを聴いても、ガッツに溢れたブルース・ロックがほとばしる。これぞ、ロックだ。
 お手ごろな金額で、リマスター、ボーナス・トラック入り。聴いたことのない人、買いそびれている人は、この機会にぜひどうぞ。
 これ一枚となると、やはりライブ・アルバムだ。イギリスで最も売れた「Live! In Europe」がお勧め。そして、ロリー・ギャラガーの名前が広く知れることとなったポップな曲の増えた「Tattoo」と、「Tatoo」のナンバーをプレイする「Irish Tour 1974」も親しみやすい。

Rory Gallagher

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Deuce

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Live! In Europe

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Blueprint

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Tattoo

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Irish Tour 1974

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'12/1/2  Wilbert Longmire / Sunny Side Up (2011) ; Wilbert Longmire / Champagne+With All My Love (2011)

 新年おめでとうございます。正月なので、明るい音楽を。
 昨年、ジャズ・ギタリスト、ウイルバート・ロングマイヤーがボブ・ジェームスのタッパン・ジー・レーベルに残したアルバム3枚が再発となった。
 タッパン・ジー・レーベルは、1977年にボブ・ジェームスが立ち上げたレーベルで、80年代にかけて20数枚のアルバムが制作されている。フュージョン・ブームの中で、都会的で洗練された、明るいサウンドを特徴としていた。アルバム・ジャケットも、鮮やかな色使いで印象的なものが多かった。所属するアーティストは、ボブ・ジェームス自身を中心に、ジョアン・ブラッキーン、マーク・コルビー、そして個人的にお気に入りのリチャード・ティーとウイルバート・ロングマイヤーといった人たちだ。
 特に、ウイルバート・ロングマイヤーのアルバム「Sunny Side Up」は、そのジャケットのセンスも含めてこのレーベルを代表するものに違いない。ジョージ・ベンソンが見つけてきたというロングマイヤーというギタリストは、ギターを弾きながら歌も歌うというジョージ・ベンソンのミニチュア・コピーみたいな人だ。しかし、逆にベンソンほどの押し付けがましさはなく、爽やかな印象を与えるところが、このレーベルに向きと言えるのだろう。
 ロングマイヤーはタッパン・ジー・レーベルに「Sunny Side Up」(1978)「Champagne」(1979)「With All My Love」(1980)という3枚のアルバムを発表し、すべてがチャートインしたにもかかわらず、そのまま表舞台からは消えてしまった。
 最もよく知られているのは、アルバム・ジャケットとともに爽やかな曲が印象的な「Sunny Side Up」だろう。イージー・リスニング・ジャズのイメージが強い作品だ。しかし、アルバムのクオリティとしては2枚目の「Champagne」に充実した演奏が多いようだ。そして、3枚目の「With All My Love」になるとボーカルが前に出てきて、ブラコンのイメージが強くなる。キャンディ・ステイトンも歌った「Music Speaks Louder Than Words」をR&Bシングル・チャートにも送り込んでいる。
 再発されたアルバムは、「Sunny Side Up」は一枚で出されたが、「Champagne」と「With All My Love」は、2枚のアルバムが一枚に収められているという、変則的な形になっている。やはり、「Sunny Side Up」の評価が高いということなのかなあ。発売がExpansion Recordsという聞き慣れないところなので、欲しいと思った方はお早めに。

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'11/12/27  Adele / Live at the Royal Albert Hall [DVD+CD] (2011)

 こりゃ、凄いや。DVDで、改めて、アデルというシンガーの魅力がよくわかった。
 ロイヤル・アルバート・ホールを埋め尽くした観客を前に、アデルという人は実に堂々としている。ロンドン生まれのあまり品のよくない、サバけたネエゃんが、素のままを曝け出し、喋りまくる。しかし、一度、歌が始まれば、余計な演出を抑えたシンプルなステージの上、彼女の存在は圧倒的だ。
 今年、世界中で売れまくったアルバム「21」と、このDVD「Live at the Royal Albert Hall」を観て、改めてその凄さがわかったよ。

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'11/12/26  noon / Once Upon A Time (2011)

 ノラ・ジョーンズ以降、世界中に「癒し」系のボーカリストが数多く登場したが、その日本における代表のような人。
 2003年のデビュー以来、すでに8年がたつというのに、その癒しの芸風は1ミリたりともブレることはない。このストレスだらけの世の中で、ゆったりとした時間が必要な人にとっては、掛け替えのないシンガーだ。どれだけ多くの日本人が彼女のボーカルに癒されてきたことだろう。
 自分としても、デビュー以来、気に入って聴いてきたボーカリストではあるが、どうも最近はどのアルバムを聴いても同じだな、と思うようになったというのが正直なところだった。
 しかし、このアルバムはちょっと違う。それは、個人的に大好きなスタンダード「At Last」と「You Belong To Me」を歌ってくれているから。それもボーカル、バッキングとも、曲のもつ熟成した香りを見事に挽き出すクオリティの高いカバーとなっている。そんな思い入れの強い曲が2曲もあれば、他の曲もみんな素晴らしく聞こえて来る。そんなもんだよな。いいアルバムです。


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ONCE UPON A TIME - noon

'11/12/21  Halie Loren / Heart First (2011)

 ジャズ・ボーカリスト、ヘイリー・ロレンのニュー・アルバム。
 この人は、アメリカではあまりメジャーではないようだが、昨年あたりから日本での人気が急上昇中だ。そんなこともあってか、このアルバムはとりあえず日本とアジアでの発売となっている。
 クールでスモーキーな歌声、そして多様される声の裏返りが、何とも魅力的。ジャズ・シンガーとはいえ、ポップなセンスも持ち合わせ、ボブ・マーリーやニール・ヤング、ヴァン・モリソンそして桑田佳祐まで取り上げている。さらに、ソング・ライターとして、自らが書く曲も、なかなかポップなメロディをもつ。どんな曲を、どう歌えばファンが喜ぶか、そこいらのツボを押さえた人で、ジャズ・シンガーとしては、とても取っ付きやすいし、日本でウケるのも当然だろう。
 このアルバムで、特筆すべきはサザ・オールスターズの「いとしのエリー」のカバー。日本盤のボーナス・トラックということで、ちょっと残念だけど。「いとしのエリー」といえば、レイ・チャールズの英語カバーがあるが、それがオリジナルを尊重したものであったのに対し、ここではヘイリー・ロレンのかなり大胆なアプローチを楽しめて面白い。
 もうひとつ、ニール・ヤングの「Lotta Love」のカバーが嬉しい。この曲を明るくヒットさせたのはニコレッタ・ラーソンだったけど、ここではフリューゲル・ホーンが登場してバカラックのような洒落たイメージを演出するかと思えば、ギターが軽くレゲエのリズムを刻む。これもなかなか出来のいいカバーだ。

Heart First - ヘイリー・ロレン

'11/12/19  MISIA / MISIAの森 -Forest Covers- (2011)

 ディズニー映画の幕開けかと思わせるゴージャスなオープニングでスタートするMisiaのカバー・アルバムだ。
 抜群の歌唱力をもつMisiaのことだから、カバー・アルバム好きな自分としても、どんな作品ができるのか楽しみにしていた。既にテレビCMなどで先行して発表されていた「What a wonderful world」や「smile」、そしてライブでも歌われていた「Can’t Take My Eyes Off You」など、おおよその見当はついていたのだが。
 やはり、蓋を開ければ、完全にMisiaの世界だ。スタンダード・ソングのカバーというのは、曲自体がパワーをもっているから、カバーするミュージシャンの力量がよくわかる。曲に完全に負けてしまう歌い手もいるけれど、MISIAの場合は強引にカバー曲を自分の世界に引っ張り込んでしまつたという印象が強く、完全にミュージシャンの勝ち。歌い手と曲との間の力関係を楽しむという点からすれば、MISIAのカバー・アルバムというのは、それほど面白みもないのかもしれない。
 とはいえ、「What a wonderful world」「smile」「Rose」など彼女の歌唱力を活かしたスケールの大きなバラードや、「Can’t Take My Eyes Off You」「Mercy Mercy Me」といったアップテンポのナンバーのノリの良さははいつもながら圧倒的だ。
 得に、グルーヴイなソウル・ナンバーであるマーヴィン・ゲイの「Mercy Mercy Me」が気にいった。バックのリズムは今風のタイトなノリにはなっているけど、これをもっと古いスタイルで間を感じさせる粘りのあるリズムで聴いてみたいもんだ。「Can't Take My Eyes Off Of You」のコーラスは、アレサ・フランクリンのバックで歌っているらしいけど、「MISIA、アレサ・フランクリンを歌う」なんてのはどうだろう。

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MISIAの森 Forest Covers - MISIA

'11/12/16  武田カオリ / Magalog (2011)

 TICAの武田カオリのソロ・アルバムが出た。
 TICAのアルバムもしばらく出ていないので、武田のソロ・アルバムときいてどんなアルバムになるか楽しみにしていたが、内容がCMソング集ということで、ちょっぴり驚き、ちょっぴりガッカリ。
 というのは、武田カオリがCMをやっていたなんて、ぜんぜん知らなかったものだから、アルバムにするほど素材があるということにまず驚いた。そして、CMソングというと、細切れの短編集というイメージがあって、ちょっぴりガッカリしたというのが正直なところだ。
 ということだけど、なんとあの「ロックンロール・ウイドウ」も武田カオリが歌っていたとのことで驚いた。TICAの作品を聴いている限りでは、低体温のクール・ビューティーといった雰囲気で、ロックンロールをやるイメージなどなかったし。ましてや、山口百恵の物真似かなと思うくらい、声質も似ていて、カッコいいカバーだったこともあり、すべてが意外だった。しかも、彼女にはいつのまにか「CMの女王」という称号まで与えられているということで、これまた驚き。
 そして、確かに細切れの曲も含まれて入るが、思ったよりも曲として完成度の高い曲も多いことに安心した。全部で17曲が収録されているのだが、2分半を超えて曲として、それなりの形ができているものが半分程度含まれている。フル・アルバムという感覚はないかもしれないが、ソロのミニ・アルバムとして受け止めるには十分だ。
 やはり、アルバムのベストは、武田カオリのイメージをぶち破り、このアルバムの中でも明らかに異質なグルーヴを放つホンダのライフのCMソング「ロックンロール・ウィドウ」だろう。この時代、ストレートなロックンロールがやけに新鮮に感じられる。そして、これに負けずに素晴らしいのが、パナソニック・ポケットDoltz CMソングという「Didn't Know」の華やかでポップなサウンドだ。キラキラと輝く隠れた名曲かもしれない。これは一聴の価値あり。
 その他の曲も、さすがにCMソングと納得させるキャッチなメロディの魅力的なものが並んでいる。この機会に、TICAもよろしく。

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Magalog -Kaori Takeda CM SongBook- - 武田カオリ

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Johnny Cliche - TICA

'11/12/14  Pink Martini & Saori Yuki / 1969 (2011)

 由紀さおりのアルバムがアメリカを始め、世界各地で話題になっているというので、遅ればせながらゲット。
 これまでも世界各国の音楽をマニアックに取り上げてきたピンク・マルテイーニというバンドについては、一応は聞きかじってはいたので、由紀さおりとのコラボ企画の話を聴いても違和感は感じなかった。しかし、ここまで全面的に由紀さおりをフィーチャーしているとは思いもよらなかった。というか、こりゃ由紀さおりのアルバムをピンク・マルテイーニがプロデュースしたというほうが正しいだろう。
 しかも、このアルバムを初めて聴いたときは、バックのボーカルも演奏も当然、新録なのだが、あ、これは1969年当時の録音のリミックス・アルバムなんだなと勘違いしてしまった。つまり、このアルバムに詰め込まれたサウンドは、1969年、昭和40年代の歌謡曲サウンドそのものなのだ。ちょっと前には、昭和歌謡のプチ・ブームみたいなものがあったけど、その音を海外のアーチストがそのまま再現してしまうというのは驚きだし、ましてや、それが売れてしまうというのは、もっと驚きだ。しかも、現在、由紀さおりはアメリカ・ツアー中だとは。
 でもって、アルバム・タイトルの「1969」は、由紀さおりのデビューの年だという。音楽的にはウッドストックの開催された年、ロックの黄金時代の幕開けの年でもある。そんな時期の日本における邦楽、洋楽のヒット曲を由紀さおりがカバーしている。この年、由紀さおりは「夜明けのスキャット」をヒットさせた。ワンコーラスすべてをスキャットで歌い、おい、おい、なかなか歌詞が出てこなぞ、という歌で、当時、歌謡曲としてはその斬新性が話題となると同時に、由紀さおりの美しいスキャットの魅力も際立った。ピンク・マルテイーニのトーマス・ローダーデールが注目したのも理解ができる。ところで、このアルバムは由紀さおりのアルバムでありながら、彼女のオリジナルは「夜明けのスキャット」のみというのがちょっと残念。「手紙」というヒット曲も好きだったのだがね。
 それにしても、外国人がプロデュースしたとは思えないような、マニアックな曲も含めて気になる懐かしいカバーが満載だ。選曲はいつたい誰の仕業だろう。名曲「夕月」は黛ジュンのヒット曲。彼女は「恋のハレルヤ」や「天使の誘惑」など、本来はパワフルで明るい歌が魅力。「天使の誘惑」には、松田聖子に通じる突き抜け感があった。深夜放送族のアイドル・ディスクジョッキー兼田みえ子の隠れたヒット曲「私もあなたと泣いていい?」には驚き、ラジオ番組「ザ・パンチ・パンチ・パンチ」のモコ・ビーバー・オリーブが歌った「忘れたいのに」には、ついニヤリとしてしまった。いやはや、親父たちには楽しめるアルバムだ。

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'11/12/8  Amy Winehouse / Lioness: Hidden Treasures (2011)

 今年の7月に27歳という若さで事故により早世したエイミー・ワインハウスが残した未発表音源を集めたニュー・アルバム。
 録音時期は2002年のデビュー時のものから、話題となった2011年3月のトニー・ベネットとのデュエットまで様々。しかし、もともと彼女自身の個性でアルバムの統一感を創り上げてきた人なので、録音時期がバラバラだろうがあまり関係なく、どこを切り取ってもエイミー・ワインハウスという個性に満ちた作品になっている。
 先行シングルの「Our Day Will Come」がエイミー・ワインハウスとしてはスッキリとした仕上がりで、もっと彼女の猥雑な雰囲気が好きな自分としてはやや物足りなさを感じていた。しかし、大丈夫。このアルバムには、いつもどおり、まったりと絡みついてくるような、彼女流のポップなセンス溢れるディープなソウル・ミュージックの世界が広がっている。
 彼女の面白さのひとつは、オリジナルの魅力だけでなく、ソウルやポップス、ジャズ・スタンダードの大胆なカバーだ。今回のアルバムには「Our Day Will Come」「Will You Still Love Me Tomorrow」「The Girl From Ipanema」「A Song For You」そして「Body & Soul」と有名曲が並び、スタンダード・ファンはおおいに楽しめる。
 トニー・ベネットとのデュエット「Body & Soul」は、御大とのデュエットとのことで、どうも勝手が違うようで不完全燃焼という感が強いのだが。「A Song For You」は、彼女がギターを抱えて一発録りしたものをベースにしたものだというが、アルバムのラストを飾るにふさわしく、素晴らしい一曲となっている。
 それにしても、これだけの人がアルバム3枚しか世に残せなかったのは残念だ。もっとも、今後も発掘に期待はできそうだけど。

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Lioness: Hidden Treasures - Amy Winehouse

'11/12/7  akiko / Across The Universe (2011)

 ジャズ・シンガー、akikoのニュー・アルバムはビートルズ・ソング・ブック。
 日本の女性ジャズ・ボーカル・ブームが始まったのは、もう10年以上も前のことだろうか。最近は、そのブームも、そろそろ落ち着きつつあるような気がしている。このakikoも、そんなブームの中で登場してきたジャズ・ディーヴァの一人だが、この人は、まだまだ元気だ。
 akikoの場合は、他の多くの女性シンガーたちと比べて、明確に自分の意志を主張してきたアーチストというイメージがある。ある意味、やりたい放題の奔放なスタイルが、この人の魅力でもある。そして、今回の素材はビートルズ。どうやら現代を代表するポップスの作曲家は、バート・バカラックとレノン=マッカートニーと落ち着きそうだけど、いよいよ数あるビートルズ・ソング・ブックに挑戦だ。
 この人は、デビュー時からジャズ・シンガーとしてサラ・ヴォーンやエラのような歌の上手いシンガーを目指すのではなく、ひたすらカッコよさを追求してきたようだけど、このアルバムも、間違いなくカッコいい。
 アルバム冒頭の「Can't Buy Me Love」を聴いて、ひょっとして、もうこの人の世代になるとビートルズ・ナンバーにジョンやポールの声や演奏はそう色濃く刷り込まれていないのではないかと思った。時代が変わって「Can't Buy Me Love」が、ビートルズというバンドを離れて新しいスタンダード・ナンバーとして存在を始めたような気がしてきた。
 それくらい、ビートルズに囚われない伸び伸びとしたビートルズ・アルバムだということなのだが、やはりシビレルのは「Can't Buy Me Love」と「Come Together」というアップ・テンポの攻撃的ナンバー。特に「Come Together」のブンブンうなるベース、そしてピアノ、ギター、ドラムス、こりゃ名演だ。とはいえ、この曲はアルバム「What's Jazz? - STYLE -」に収められていたものの再録のようだけど。ぜひ、ご一聴を。
 ということで、ジャズもロックもない自由奔放なakikoのジャズが十分に楽しめる作品です。よかった、よかった。

Across The Universe

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Across the Universe - EP - akiko

What's Jazz? - STYLE -

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What's Jazz? -STYLE- - akiko

'11/12/4  Blue Note 4cd Boxset (2011)

 EMI Music France から、ブルーノート・レコードの4cd Boxsetが発売になっている。ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックなど、ビッグネームの主要アルバムの4枚組みということで、従来からのファンには目新しいものはないけど、新しいジャズ・ファンには有難い企画だ。
 自分としては、ブルーノートも必要最低限のところは一応押さえてあるので、必要のないアルバムかなとは思いつつ、限定盤ということで、ちょっと気になるし、お値段も手ごろなので、ウェイン・ショーターのボックスをゲット。
 予想どおり、普通のCDケースと同じ厚さの紙箱に、意外としっかりとした可愛らしい紙ジャケが4枚収まっていた。しかし、紙ジャケはシンプルで、裏には曲名しか書いてなくて、演奏者のクレジットはない。
 しかし、音の方はボーナス・トラック入りのリマスター済。もちろんRVGもある。一応、EMI Music Franceというちゃんとした会社からの発売だから、音の心配はないようだ。
 うちでは、もっぱらこういうボックス・セットはドライブ用ということで、車の中に置いており、場所もとらずに重宝している。
 収録アルバムはこんな感じ。
 ウェイン・ショーター「Night Dreamer 」(1964)「Juju」(1964)「Speak No Evil」(1964)「Adam's Apple」(1966)
 ハービー・ハンコック「My Point Of View」(1963)「Empyrean Isles」(1964)「Maiden Voyage」(1965)「Speak Like Child」(1968)
 アート・ブレイキー「Mornin'」(1958)「Africaine」(1959)「Buhaina's Delight」(1961)「The African Beat」(1962)
 キャノンボール・アダレイ「Somethin' Else」(1963)「Them Dirty Blues」(1960)「And The Poll Winners」(1960)「Bossa Nova」(1962)
 デクスター・ゴードン「Doin' Allright」(1961)「Dexter Calling」(1961)「Go!」(1962)「Our Man In Paris」(1963)
 ジョー・ヘンダーソン「Page One」(1963)「Our Thing」(1963)「In' N' Out」(1964)「Mode For Joe」(1966)
 ダイアン・リーヴス「Quiet After The Storm」(1994)「That Day」(1997)「Bridges」(1999)「The Calling」(2001)
 カサンドラ・ウィルソン「Blue Light 'Til Dawn」(1993)「New Moon Daughter」(1996)「Travelling Miles」(1999)「Belly Of The Sun」(2002)
 チェット・ベイカー「Chet Baker Sings」(1954)「Chet Baker Big Band」(1954)「Chet Baker And Crew」(1956)「The Most Important Jazz Album」(1964)
 ボビー・マクファーリン「Spontaneous Inventions」 (1985)「Simple Pleasures」 (1988)「Bang Zoom!」 (1996)「Beyond Words」 (2002)


Wayne Shorter

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Herbie Hancock

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Art Blakey

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Cannonball Adderley

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Chet Baker

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Cassandra Wilson

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Joe Henderson

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Dianne Reeves

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Dexter Gordon

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Bobby Mcferrin

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'11/12/3  JUJU / DELICIOUS (2011)

 待望。「JUJU'S JAZZ ALBUM」と題されたジャズ・スタンダード・アルバム。毎度、JUJUファンとしては、ただ、ただ、これいいよと言うしか言葉はない。
 以前からジャズ好きを公言してきた人だから、ジャズ・アルバムはいつか出してくれるだろうと楽しみにしていたし、期待も大きかった。時々、日本のJ-POPシンガーが、ちょっとジャズやってみましたとかいって、聴いているのも恥ずかしい作品を出したりするが、このアルバムはまったくレベルが違うのでご安心を。
 バックは島健を中心にジャズ・ミュージシャンで固め、取り上げている曲も、日本人好みのスタンダード中のスタンダードという「You'd Be So Nice To Come Home To」「Cry Me A River」「Lullaby Of Birdland」から、JUJUらしい選曲と思える「Candy」「Girl Talk」「Lush Life」まで、ジャズ・スタンダードをバランスよく並べている。
 それにしても、JUJUのボーカルは不思議だ。ジャズ・ミュージシャンをバックにジャズを歌っているのに、JUJUの歌がいつものJUJUと同じようにしか聴こえないのだ。ジャズだからといって、肩肘張ることもなく、肩の力を抜いてサラリと歌ってしまう。この力の抜け具合には、ふと美空ひばりを思い出してしまった。いやはや、たいしたもんだね。確かに、彼女のジャズに対する思いは強いようだけど、歌を歌うということにおいては、ジャズだからといって特別なことではないように感じられるのだ。
 ということで、彼女はちょっと前に、J-POPのカバー・アルバムを出したけど、今度はジャズ・スタンダードのカバー・アルバムを出しましたということになるわけだ。スタンダード・ソングという文化がない日本のJ-POPファンは、どうもオリジナル至上主義みたいな考えが強いようで、いろんなアーティストが日本語曲のカバー・アルバムを出すと、オリジナル曲をやれとか、オリジナル・アーチストの方がよかったとかいう抵抗勢力が出てくるのだけれど。このジャズ・スタンダードのカバーに対しては、どんな反応があるのか楽しみ。それから、JUJUを知らないジャズ・ボーカル・ファンが聴いたら、このアルバムをどう評価するかもちょっと楽しみだな。
 どの曲も好きだけど、一曲といえばラテン・ナンバー「Quizas,Quizas,Quizas」がお勧め。そして、アルバムの始めと最後に「A Woman Needs Jazz」「みずいろの影」というジャズ・アレンジの日本語オリジナルが自然に置かれているのもお洒落だ。
 そして、どうせ買うならばDVD付の初回生産限定盤。DVDには10月10日にブルー・ノート東京で行われたスペシャル・ライブが収録されている。それも、全7曲、約35分の大盤振舞い。このアルバムに収録された曲を気持ちよく歌うJUJUを観ていると嬉しくなる。
 しかし、この日のライブは今月末にDVD「2011.10.10 Special Live at BLUE NOTE TOKYO」として発売される予定だけど、それは全14曲。ということは、そのうちの半分、7曲を今回のオマケで放出してしまったということになる。太っ腹だね。まあ、そのライブDVDには、初回ではライブCDが付いてくるということ。うーん。あの手この手でファンをソソるわ。これも買わねばならぬのか。
 ところで、丁寧なクレジットや解説もついて有難いのだけど、字が小さすぎで、色使いも見づらく、解読不能の部分が多いのが残念だ。オジサンの視力の衰えも激しいもんでよろしくお願いしますね。

DELICIOUS

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2011.10.10 Special Live at BLUE NOTE TOKYO

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'11/11/30  The Rolling Stones / Some Girls 〜 Deluxe Edition (2011/1978)

 ローリング・ストーンズ、1978年の傑作「Some Girls」のデラックス・エディションが登場。
 最近は、デラックス・エディションのブームで、あまり必然性を感じない音源を抱き合わせての発売もあるようだが、これは「Some Girls」録音時のアウト・テイクを12曲、Disc 2にまとめての発売ということで、まさに正統派デラックス・エディション。ましてや、ローリング・ストーンズの全盛期は、1971年の「Sticky Fingers」から1978年の「Some Girls」であると心に決めている自分としては、最高に嬉しい贈り物だ。大歓迎。
 それにしても、ストーンズの70年代リマスターが登場ということで大騒ぎしたのは、ちょっと前のこと。できたら、そんときにデラックス・エディションとして出してくれれば、もっと偉いと褒めてあげたのに、これじゃ、あんときのリマスターはどうしたらいいのって感じ。
 まあ、いいや。オリジナルの「Some Girls」がそのまんま入っているDisc 1は、いつ聴いても素晴らしい。特に、大ヒット曲「Miss You」は、自分の大好物。ストーンズ・ナンバーでも5本の指に入るパワフルな傑作。中途半端なボーナス・トラックを付け加えていなかったところも偉い。
 そして、Disc 2。アルバム未収録の全12曲は、さすがにストーンズと思わせるキレてる演奏揃い。どちらかと言えば、カントリー、ブルース、ロックンロールと、ルーツ・ミュージックを素材に、シンプルで荒削りな演奏なんだけど、そこがまたストーンズらしくてカッコイイ。ギターの音が、ピアノの音が、ペダル・スティールの音が、生々しくていいね。
 これをアルバムに採用するとなると、さらに本気で作りこんでいくことになるのだろうけど、この12曲に、2、3曲、骨太の曲が加われば、単独のアルバムとして出してもおかしくないクオリティの高さ。やはり、ストーンズはレベルが違うんだな。しかも、70年代のストーンズだもの。まさに史上最強のロック・バンドだ。

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'11/11/27  Etta James / The Dreamer (2011) ; Etta James / Call My Name (2011/ 1967) ; Etta James / Losers Weepers (2011/1970)

 立川談志が亡くなった。享年75歳。改めて生前のビデオを観た。いつまでも自分の芸に満足せず、常に新しい何かを求めて、もがき続けているような高座での姿に胸が熱くなった。最後は声を発することのできなくなった談志の無念さが痛い。
 エタ・ジェイムス、73歳。ニュー・アルバムは彼女にとって最後のアルバムになるだろうとアナウンスされている。エタ・ジェイムスは、近年、認知症と白血病を患っており、そのような体調からこの作品をラスト・アルバムと決断して制作に取り掛かったのだろう。具体的にどのような状況で録音がなされたのかはわからないが、これもまた聴いていて胸が熱くなるアルバムだ。
 正直なところ、彼女の作品としては、物足りなさが残る。当然、かつての迫力も期待できるはずもなく、歌の上手さだけで無難に作られたという印象が強い。果たして、エタ・ジェイムス本人は、この作品をどう受け止めているのか。まだ、ここまで歌うことができるのに、この作品をラスト・アルバムとしてピリオドを打たなければならなかったエタ・ジェイムスの無念さが痛いのだ。
 この作品に、彼女自身の言葉が添えられている。「I wish to thank all my fans who have shown me love and support over all these years. I love you all. - Etta James」。
 彼女のラスト・アルバムを飾るに相応しい名唱は、ドロシー・ムーアの大ヒット「Misty Blue」のカバーだ。
 そんな状況が関係しているのか、エタ・ジェイムスが60年代から70年代にかけてチェス、カデット・レーベルに残した作品の復刻が始まっている。
 「Call My Name」は1967年の作品。ボーナス・トラックとして当時の録音を12曲収録。当時、まだ29歳。チャート的には恵まれなかったようだが、ヒット作「Tell Mama」の前作に当たるアルバムなので、爆発的なパワー全開で悪かろうはずもない。アルバム本編でも一部「I Prefer You」などチャートに入った曲もあるようだが、ボーナス・トラックも面白い。アレサ・フランクリン「Do Right Woman, Do Right Man」、ソニー&シェール「I Got You Babe」、そしてドアーズ「Light My Fire」なんてところ。そして、ジャズの名曲、エロール・ガナーの「Misty」を彼女らしく力んで歌っているのも嬉しくなる。
 「Losers Weepers」は1970年の作品。ボーナス・トラックも11曲収録。30代になり充実した時期のアルバムであると感じられる。アルバム・タイトル曲「Losers Weepers」は、お馴染みの「I'd Rather Go Blind」を意識した曲。デューク・エリントンの「I Got It Bad And That Ain't Good」も取り上げている。そして、ボーナス・トラックではビージーズの「Sound Of Love」、ガーシュインの「The Man I Love」、アソシェイション「Never My Love」と、相変わらず守備範囲の広さを楽しめる。

The Dreamer

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Call My Name

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Losers Weepers

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'11/11/25  (WISH LIST) Crusaders / Crusaders 1 (2012:1972) ; Crusaders / Southern Comfort (2012:1974) ; Crusaders / Chain Reaction (2012:1975) ; Crusaders / Those Southern Knights (2012:1975) ; Crusaders / Free As The Wind (2012:1976) ; Crusaders / Images (2012:1978) ; Crusaders / Standing Tall (2012:1980)

 1960年代にパシフィック・ジャズで活動していたジャズ・クルセダーズが、70年代になりブルー・サム・レーベルへ移籍し、グループ名から「ジャズ」をはずし、「クルセイダーズ」と名を変えて、強力なファンク・フュージョン・バンドとして生まれ変わった。
 ウェイン・ヘンダーソン(Tb)、ウィルトン・フェルダー(Sax)、ジョー・サンプル(Key)、スティックス・フーパーにラリー・カールトン(G)を加えたメンバーは、まさに鉄壁。自分としては、この時期のクルセイダーズが大好物。
 しかし、なぜか米国での70年代のクルセイダーズの扱いはとても寂しい。ほとんどオリジナル・アルバムはリマスターされておらず、90年代に初めてCD化されたままの状況で、一部「Gold」というベスト・アルバムでリマスターが行われている程度のものだ。
 今回、日本でユニバーサル・ミュージックから70年代作品が再発されることになった。1100円という限定盤ではあるが、まさか、90年代の音のままで出すことはないと信じたい。期待してます。
 特に「Crusaders 1」から「Free As The Wind」までは、彼等の全盛期でどれも強力な作品ばかり。
 ところで、今回「The 2nd Crusade」「Unsung Heroes」「Scratch」という3枚が抜けちゃっているけど、どうしたんだろう。大人の事情があるのかな。
 いずれにしろ、大好きなクルセイダーズのアルバムの再発は大歓迎。皆さんも、ぜひどうぞ。

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'11/11/23  Dinah Washington / Eight Classic Albums (2011) ; Sarah Vaughan / Eight Classic Albums (2011) / Anita O'Day / Eight Classic Albums (2011)

 最近、ホントにいいの?と思いながらも、手軽に利用させてもらっている英国 Real Gone Jazz のエイト・クラシック・アルバム・シリーズ。なんたって、リマスターされた8枚のオリジナル・アルバムを、4枚のCDに詰め込んじゃって、 5.99ポンドというから、英国では700円ちょっと、日本では、1000円〜2000円で叩き売っちゃおうという企画。
 マイルス・デイヴィス、コルトレーンをはじめ様々な大物ジャズ・アーチストがこのエイト・クラシック・アルバム・シリーズに名前を連ねている。ジャズ初心者はもちろん、もう長い間ジャズを聴いてきたファンにとっても、やっぱり嬉しいシリーズだ。
 とはいえ、とりあえず気になるのは音質の問題。音質音痴の自分だから、自信はないけれど。リマスターと書いてあるし、ちょっと前の古い普通のCDに比べても、音のレベルも高いし、クリアにもなってるし、自分としては音質に対する不満なく聴いている。
 4枚入りのCDのケースは、シングル・アルバムのケースの倍以上の厚みがあって、ちょいと嵩張るけど仕方ないか。安いんだから、もっと簡単なケースでもいいんだけどね。
 当然、解説などはないけれど、演奏者のクレジットはアルバムごとに大雑把なものがついている。
 あまりに安いものだから、既に手元にあるアルバムが何枚か含まれていても、軽い気持ちでつい注文してしまう。じっくり聴くのもいいけれど、車の中に置いておくとか、気軽に聴くためのアルバムと考えた方がいいのだろう。
 ということで、ボーカル・ファンとしては、ダイナ・ワシントン、サラ・ヴォーン、アニタ・オデイというの3人のビッグネームが出ているのでご紹介。
 まず、ダイナ・ワシントン。「DINAH JAMS (1954)」「FOR THOSE IN LOVE (1955)」「IN THE LAND OF HI FI (1956)」「THE SWINGIN’ MISS D (1956)」「WHAT A DIFF’RENCE A DAY MAKES (1959)」「THE TWO OF US (with BROOK BENTON) (1960)」「I CONCENTRATE ON YOU (1960)」「SEPTEMBER IN THE RAIN (1960)」という8枚が収録されている。
 ブルースの女王、ダイナ・ワシントンとクリフォード・ブラウンの共演による名盤「DINAH JAMS (1954)」。「縁は異なもの」という人気のあるタイトル曲を含む「WHAT A DIFF’RENCE A DAY MAKES (1959)」。ブルック・ベントンとのデュエット盤「THE TWO OF US (with BROOK BENTON) (1960)」など、54年から60年にかけて発表されたブルース・フィーリングたっぷりの大人のジャズ、ポップスが楽しめる。
 次に、サラ・ヴォーン。「HOT JAZZ (1953)」「THE DIVINE SARAH SINGS (1954)」「SARAH VAUGHAN with CLIFFORD BROWN (1954)」「IN THE LAND OF HI FI (1955)」「SWINGIN’ EASY (1957)」「SARAH VAUGHAN SINGS GEORGE GERSHWIN VOL 1 (1957)」「SARAH VAUGHAN SINGS GEORGE GERSHWIN VOL 2 (1957)」「SARAH VAUGHAN AND BILLY ECKSTINE -THE IRVING BERLIN SONGBOOK- (1957)」「CLOSE TO YOU (1960)」という、EP盤含む9枚を収録。
 ジャズ・ボーカルの最高峰、サラ・ヴォーンは、こちらもクリフォード・ブラウンとの共演盤「SARAH VAUGHAN with CLIFFORD BROWN (1954)」や「IN THE LAND OF HI FI (1955)」「SWINGIN’ EASY (1957)」など、どれをとっても堂々とした作品ばかり。53年から60年にかけての若き日の名唱が楽しめる。
 そして、アニタ・オデイ。「THIS IS ANITA (1955)」「PICK YOURSELF UP WITH ANITA O’DAY (1956)」「ANITA SINGS THE MOST (1957)」「ANITA SINGS THE WINNERS (1958)」「ANITA O’DAY SWINGS COLE PORTER WITH BILLY MAY (1959)」「ANITA O’DAY AND BILLY MAY SWING RODGERS AND HART (1960)」「WAITER, MAKE MINE BLUES (1960)」「TRAV’LIN LIGHT (1961)」
 白人ジャズ・シンガーの第一人者、アニタ・オデイの代表作は、これでほとんど揃ってしまうのではないかと言ってもいいくらいの中身が濃い。53年から61年にかけて、アニタの絶頂期の記録。

Dinah Washington

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Sarah Vaughan

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Anita O'Day

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'11/11/21  Trombone Shorty / For True (2011)

 遅ればせながら、新時代のジャズ・ミュージシャン、トロンボーン・ショーティーを聴いてその勢いに圧倒された。
 ジャズなのか、ヒップホップなのか、ロックなのか、いまある音楽をすべて消化して、「ニューオーリンズ」というキーワードでひっくるめて力強くアウトプットしたような音楽だ。
 アルバムはトロンボーン・ショーティー名義になってはいるが、トロンボーン・ショーティーを中心としたオーリンズ・アヴェニューというバンドによるものと考えたほうがよさそうだ。
 今時、珍しく一曲、一曲の長さが短い。長くて4分。とにかく、もったいぶらないのが良い。ダラダラやらずに、美味しいところを一気に爆発させる。言いたいことだけ言って、やりたいことだけやって、さっさと終わりにしてしまう潔さがカッコ イイし、気持ちがいいね。
 ニューオーリンズ・ジャズの特性であるホーン・アンサンブルを重視したサウンドづくり。そして、ニューオーリンズならではのグルーヴイなファンク・ミュージック。プロデュースは、なるほどギャラクティックのベン・イールマンだ。
 ゲストはウォーレン・ヘインズ、ジェフ・ベック、キッド・ロック、レニー・クラヴィッツ、アイヴァン・ネヴィル、シリル・ネヴィルといった強力な布陣だが、アルバム1曲目のリバース・ブラス・バンドによる分厚いサウンドが最高にご機嫌だ。彼等とはもっともっと、やってほしかったね。
 ところで、トロンボーン・ショーティーことトロイ・アンドリュースというジャズ・マンには、2005年に「The End of the The Beginning」という正統派ジャズ・アルバムがあった。これまたイカスぜ。

Trombone Shorty / For True

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フォー・トゥルー - トロンボーン・ショーティ

Troy Andrews Quintet / The End of the The Beginning

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The End of the Beginning - Troy Andrews Quintet

'11/11/19  Roberta Flack / Love Songs (2011)

 Amazonをフラフラしてたら、ロバータ・フラックの新しいベスト・アルバムを見つけ、たまらなく聴きたくなってゲット。
 70年代の初めに「The First Time Ever I Saw Your Face」(愛は面影の中に)と「Killing Me Softly With His Song」(やさしく歌って)が大ヒット。特に、「Killing Me Softly With His Song」は、初めて聴いたときは、ハナタレのガキのくせして、その曲のあまりの美しさに呆然としてしまった記憶がある。その後も、繊細な美しい声と都会的なセンスのボーカルで、一味違ったクオリティの高いヒット曲を出す。ダニー・ハザウェイやピーボ・ブライソンなど男性ボーカリストの相性もよく、素晴らしいデュエットを聴かせてくれたのも、この人らしいところだ。
 この「Love Song」というタイトルのベスト・アルバムは、ライノからの発売。数年前にもライノからはベストは出ているが、今回は英ライノ版ということだろうか、ほとんど曲も同じで特に新しい音源が入っているわけでもない。しかし、何回聴いても溜息が出るような素晴らしい曲ばかり。ロバータ・フラックを知らない世代には、これを聴いて自分と同じように呆然となってほしいもんだ。それくらい美しい曲が詰まっている。
 ところで、最近のロバータ・フラックはというと、彼女のサイトを覗いてみたところ、現在ビートルズのカバー・アルバムを製作中とのこと。そして、先行シングルとして「We Can Work It Out」が米iTunesからリリースされている。YouTubeでも観れるような、観れないような・・・。アルバムが楽しみだね。
 さらにところで、ロバータ・フラックといえば思い出すのが、72年、73年に先の2曲で、グラミーを2年続けて受賞した大歌手であるにもかかわらず、どういう事情があったのか、なんと高橋真梨子と矢沢永吉のカバー・アルバムを作っているのだ。別に小銭を稼ぐ必要もなかったと思われるのだが、日本を代表するともいえそうな二人のシンガーの美しいメロディに惹かれたのだと信じたい。どちらも、彼女らしい美しいアルバムに仕上がってます。

We Can Work It Out

Love Songs

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FRIENDS

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Stop The World

'11/11/17  The Puppini Sisters / Hollywwod (2011)

 1940年代に活躍したアンドリュース・シスターズなど、ノスタルジックな女性コーラス・グループのスタイルを踏襲するプッピーニ・シスターズのニュー・アルバム。
 中心人物は、イタリア人のマルセラ・プッピーニ。そこにステファニー・オブライエンとケイト・マリンズという二人のイギリス人がフロントに立つ3人のコーラス。そして、バック・バンドとしてはギター、ベース、ドラムスという3人も含めてプッピーニ・シスターズというユニットのようだ。デビューが2006年で、クリスマス・アルバムも含めて、これが4枚目のアルバムとなった。多分に遊び心を感じるグループで、正直なところ、ここまで活動が継続するとは思っていなかった。
 これまでも古いアンドリュース・シスターズのカバーだけではなく、ケイト・ブッシュやブロンディ、モリッシー、そしてバングルズのカバーなどにも挑戦したりして、選曲のセンスも興味深い人たちだけど、今回のアルバムは映画の挿入歌のカバー集だ。「紳士は金髪がお好き」の「Diamonds Are A Girl's Best Friend」から「ゴッドファザー」の「Parle Plus Bas」まで、一筋縄ではいかないなと思わせる選曲のような気がするけど、どうなんでしょう、映画ファンの皆さん。
 どの曲も、微妙に遊び心を感じさせる好奇心を満たしてくれる作品。特に「Moon River」の間奏で流れる音、お、テルミンかと思ったけど、「Musical Saw」とのクレジット。つまり、「のこぎり」だ。なるほどね。
 ところで、リーダーのマルセラ・プッピーニ。マルセラ&ザ・フォゲット・ミー・ノッツというバンドでも活動中。基本はロックのようだけど、プッピーニ・シスターズの活動もなるほどなと思わせる、好きな人はハマりそうな音が聴ける。

The Puppini Sisters

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Hollywood - The Puppini Sisters

Marcella & The Forget-Me-Nots (MP3)

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Born Beautiful - Marcella and The Forget Me Nots

'11/11/15  The Beach Boys / Smile Sessions (2011)

 「史上最も有名な未完成アルバム」が、遂に正規リリース。ということで、ありきたりな言葉だけど、このアルバムは間違いなく宝石箱だ。
 1966年から67年にかけて、未完成に終わっていたビーチボーイズのアルバム「Smile」。40年の時を経て、2004年にブライアン・ウイルソンが完成させた時には、ビーチボーイズ・ファンはみな感慨深いものがあったはずだ。そして、そのブライアン版「Smile」をベースに、66年当時の残されたビーチボーイズの膨大な音源を編集して完成したのが、このビーチ・ボーイズ版「Smile」だ。
 溢れるようなアイデア満ちた音源集であり、まさにキラキラと輝く原石がいっぱい詰まった宝石箱のように感じる。「Heroes And Villains」「Good Vibrations」といった有名曲も含み、耳に馴染みのあるような、心地よいフレーズが次から次へと現れ、アルバムはくるくると表情を変え、実に鮮やか。全体を通して「Smile」という組曲を聴いているように感じられる。「Our Prayer」から「Good Vibrations」までの19曲。改めて、ビーチボーイズ版「Smile」は素晴らしい作品だった。
 ところで、このアルバムにはボーナス・トラックが8曲も追加されている。気前よくサービスしているつもりだろうがボーナス・トラックは要らなかった。「Good Vibrations」で気持ちよくで終わらせて、アルバム「Smile」を完成させてほしかつた。それくらい、クオリティの高い作品になっているんだからね。
 自分は、一応はビーチボーイズのファンではあるのだけれど、一通りの作品は聴いてきたけれど、海賊盤まで集めるほどのディープなファンではない。そんなファンには、このスタンダード盤で十分すぎるくらいだろう。それ以上のディープなファンには、音源満載の2枚組みのデラックス・エデイション。さらに5枚組みのコレクターズ・ボックスが用意されている。
 とりあえずスタンダード盤を買うつもりだけど、どうしても他の音源も気になるという人は、iTunesでボックス・セットが入手できる。すべてのトラックを1分30秒間、試聴することができるので、とりあえずいろいろと聴いてみることをお勧め。どうしても欲しい音源があったら、それだけでもダウンロードすればいいんじゃないだろうか。実際、試聴しているだけでも、かなり楽しめるものだ。

スタンダード盤

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The Smile Sessions - ザ・ビーチ・ボーイズ

デラックス・エデイション

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コレクターズ・ボックス

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The Smile Sessions (Box Set) - ザ・ビーチ・ボーイズ

'11/11/14  Ramsey Lewis / Solar Wind (2011)

 アメリカでは高い人気を誇るジャズ・キーボーディスト、ラムゼイ・ルイスのアルバムが一枚、Wounded Bird Records から再発となった。
 1974年の大ヒット作「Sun Goddess」の前作にあたる、同じ1974年の作品だが、「Sun Goddess」に比べてしまうと、かなり地味目の印象。ということで、Wounded Bird Records が不憫に思って拾い上げ、初CD化ということなのだろうか。
 しかし、これが渋くも捨てがたい好アルバム。アルバム・ジャケットに写るラムゼイ・ルイスの表情もいつもと違う。全9曲中、4曲ではあるがスティーヴ・クロッパーがギターで参加、そのうち3曲では、クロッパーがプロデュースも手がける。そんなことで、グルーヴがピタリと地につくような気がする。アルバム全体のイメージが違う。実はこれまで脳天気な感じで、あまり好きになれなかったラムゼイ・ルイスの印象がちょっと変わった。
 やはり、スティーヴ・クロッパーが参加した4曲の安定感が目立つ。特にポール・サイモンの「Loves Me Like A Rock」がご機嫌だ。

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'11/11/10  手嶌葵 / Collection Blue (2011)

 手嶌葵のニュー・アルバムは、映画やCMなど様々な形で発表されてきた作品を集めたコンピレーション・アルバム。ではあるが、彼女としては現在のところベストといいたい一枚だ。
 無色透明の印象が強かった手嶌葵のボーカルだが、「コレクション・ブルー」というタイトルで、へえ本人は「青」のイメージなのかなと納得しそうになったけど、よく考えたら「葵」だから「青い」で「ブルー」か。なんだ駄洒落かよと意外な遊び心にちょっと嬉しくなった。
 最近では「コクリコ坂から歌集」で、新しい表情も見せてくれた手嶌葵だが、このアルバムでも雑然と詰め込まれた曲が、実に様々な表情を見せる。デビューの頃は、あまり柔軟性がないのかなと思っていたけど、こうして見てみれば、いろんなタイプの曲に挑戦して、決してそんなことはないんだなと納得。そして、かつて彼女が醸し出してきた「儚さ」や「危うさ」は、同時に線の細さも感じさせるものだったが、今や堂々とした安定感を感じさせる。
 それにしても、テレビCMで流れる吉田拓郎の「流星」のカバーは素晴らしい。拓郎以外のアーティストが歌うなどということは想像もできないくらいに、拓郎の個性がムンムンとするような曲にチャレンジし、ガッツリと自分のものとしてしまったことに対しては、拓郎ファンとして感動さえ覚えるのだ。最近、自分でも何気なく「流星」を口ずさむ時、気がつくと拓郎ではなく手嶌葵のイメージを浮かべていることがある。それくらい、このカバーは強烈に焼きついたのだ。

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'11/11/5  Elvis Presley / Elvis Presley (Legacy Edition) ; Elvis Is Back! (Legacy Edition) ; G.I. Blues - The Alternative Album Version (2011)

 恐らく、ポップスやロックのCDで、最も再発の多いアーチストはエルヴィス・プレスリーだろう。もちろん、故人であるので純粋な新録はないのだが、毎年、毎年、手を変え、品を変え、何枚ものCDが登場している。コンピレーションあり、オリジナル・アルバムのリマスターあり、どこから持ってきたのかわからない音源があったりと、まあ人気の証でもあるのだ。
 コンピレーションは手元に何枚もあるので、今さら手を出そうとは思わないが、自分が弱いのはレガシー・エディションという言葉。何故か、これだけは買っておかなくちゃならないという気になってしまうのが困りモノだ。
 ということで、気がつけば、今年のプレスリーはレガシー・エディションとして「Elvis Presley (Legacy Edition)」と「Elvis Is Back! (Legacy Edition)」の二枚が登場した。
 プレスリーのレガシー・エディションは、昨年の「On Stage」からは、どうも2枚のアルバムのカップリングという形にしているようで、「Elvis Presley (Legacy Edition)」もそう。1956年、衝撃のデビュー・アルバム「Elvis Presley」とセカンド・アルバム「Elvis」を併せ、さらにシングル「Heartbreak Hotel」など12曲を追加した形だ。
 特に新しい音源もないようで、ディープなファンには無用のアルバムだけど、ポップス、ロック初心者にとってはマスト・アイテムだ。まさに、ここからロックンロールの歴史がスタートした。当時は、革命的な音楽であったはず。初期プレスリーのヒット曲は、すべてこれで聴けちゃうのじゃないかと思えるくらい、初期ヒット曲満載の作品だ。
 そして「Elvis Is Back Legacy」も、60年の「Elvis Is Back」と、続く61年の「Something for Everybody」とのカップリング。それに、シングル「Stuck On You」など12曲を追加している。
 「Elvis Is Back」はデビュー数年とはいえ、キングの貫禄を感じさせはじめた作品。音楽的にも幅広く懐の深さは半端じゃない。一方の「Something for Everybody」は、ビルボード・チャートで1位を獲得しているが、目だったヒット曲もないことから、恥ずかしながら、今まで本気で聴いたことのなかった一枚。しかし、アルバムの成熟度としては「Elvis Is Back」の上をいくものだ。個人的には、遅ればせながら再発見。
 ついでに、今年、気になって入手したのが「G.I. Blues」の別テイクで構成された「G.I. Blues - The Alternative Album Version」。オリジナルのテイク違いだけでアルバムを作ってしまおうという、マニアックな企画で、オリジナルとのカップリングでなければほとんど面白さは伝わらないだろう。しかし、聞き比べてみれば、違いは歴然とした興味深いものばかり。どうやら、オリジナル音源はいっしょに収録できない大人の理由があるようだ。この音源は春に出た「G.i.Blues: The Cafe Europa Sessions」という約100テイク、4枚組という、怖くて手が出せなかったアルバムからのものからのものだろうか。

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'11/11/1  Tom Waits / Bad As Me ; Original Album Series (2011)

 トム・ウエイツの7年ぶりのスタジオ新作が登場。
 ひっくり返されたオモチャ箱から化け物が飛び出してきたような世界は相変わらずだ。トム・ウェイツは、異形の音楽を創り出すことによって、自らのロックにパワーを与えるという特異な手法を編み出した。このアルバムでも、トム・ウェイツは這いずり回るわ、咆えるわ、化け物屋敷のような世界が繰り広げられている。
 そんな中で、今回の話題はストーンズのキース・リチャーズの参加だ。「Chicago」など4曲でギターを弾き、また「Last Leaf」ではヘロヘロ・デュエットも聴かせる。まあ、強烈なトム・ウェイツの個性を相手になかなか思うようにはいかないながら、苦戦しているキースのギターを聴くのも楽しい。
 ところで、このニュー・アルバムでは、デビュー時を思い出させるような、美メロの曲がかなり増えているのだ。サウンドこそ、現在のトム・ウェイツの音で、咆えるようにしか歌わないからこそ、美しいメロディが悲しく響く。
 オモチャ箱のようなサウンドも、かなりスリムに整理ができてきたような気がするし、美しいメロディの復活といい、次の作品にはさらに期待をしたい。
 ついでに、最近、ハヤリの「Original Album Series」からトム・ウエイツ、初期の5枚がお求め安い値段で登場。自分としてはデビュー作「Closing Time」と、2枚目の「The Heart Of Saturday Night」は、名盤と呼ぶべき作品だと思っている。最近のトム・ウェイツもいいけれど、やはりいまだに棚から取り出して聴くのは、ノスタルジックなホコリにまみれた独自の世界を築き上げたこの2枚だ。これに「Nighthawks At The Diner」「Small Change」「Foreign Affairs」を加えた5枚組み。

Bad As Me

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Original Album Series

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'11/10/31  Lee Ritenour / Gentle Thoughts ; Sugar Loaf Express (2011)

 いやはや懐かしい。1970年代、クロスオーバー・ブームの中、日本で人気の高かったリー・リトナーの作品が再発に。
 クロスオーバーは、やがてフュージョンと名前を変え、自分としてはあまり耳にすることはなくなったが、多分、30年ぶりに聴いたリー・リトナーのアルバムは思った以上に輝いていた。
、  当時、日本では渡辺貞夫が「California Shower」などで大当たり。たびたび来日し、そのナベサダとライブで共演していた若きギタリスト、リー・リトナーも人気絶頂だった。
 当時の名だたるクロスオーバー系のギタリストたちと比べると、それほど強烈な個性があるとは思えないリー・リトナーだったけど、自分もこの「Gentle Thoughts」と「Sugar Loaf Express」は、かなり聴きまくった。
 改めて聴いてみると、切れのよさと、柔らかなサウンドを持つ、洗練された都会的なギタリストだったんだなと思う。今回、発売された2枚のアルバムは、ダイレクト・カッティングという、直接アナログの原盤をカッティングする一発勝負の録音方法で制作されたもの。そして「Gentle Thoughts」はテイク2ということで、オリジナルとは違ったテイクとなっているが、デイヴ・グルーシン、ハーヴィ・メイソン、アーニー・ワッツなどスタジオ・ミュージシャンの名手を集めたグループの演奏は見事だ。
 もう一枚「Sugar Loaf Express」は、スタッフのギタリストだったエリック・ゲイルとの競演盤だ。「Gentle Thoughts」に比べて、よりセッション的な感触が残るアルバムだが、ダイレクト・カッティングという緊張感のある状況の中で二人のギタリストの競演はなかなか聴き応えがあるものだ。

'11/10/29  Phoebe Snow / Second Childhood ; It Looks Like Snow ; Never Letting Go ; Against the Grain ; The Very Best of Phoebe Snow (2011)

 今年の4月、フイービ・スノウが60歳という若さで亡くなった。しかし、その3ヶ月後に日本の松本龍という大臣が、自分の名前を引き合いに出して辞任会見を行うとは、思ってもいなかったことだろう。
 その会見のおかげで、松本氏は、音楽ファンからは、意外といい奴なのかもしれないなという意見が出たりしたが、またその他の一般国民からは、最後までわけの分からんことを言う奴だと思われたに違いない。
 その後、偶然にフイービ・スノウの追悼企画として、ファンの間では評価の高い初期の作品が紙ジャケで発売されることになったが、松本氏のおかげで売れまくっているという話はまったく聞かない。
 しかし、それじゃあ勿体ない。フィービ・スノウの作品は、どれも聴けば聴くほど味が出るものばかり。とてもユニークなシンガーだが、コクのあるボーカルは、メローで都会的な雰囲気と、ブルージーな泥臭い雰囲気を併せ持ち、黒人の血もながれ、ジャズ、ブルース、ゴスペルと幅広い素養を感じる人だった。アルバム・チャートも、ジャズ、R&Bと両方のチャートに顔を出していた。
 レオン・ラッセルのシェルター・レコードからのデビュー・シングル「ポエトリーマン」と、ファースト・アルバム「Phoebe Snow」が大ヒットしたのだが、その後、コロンビア移籍後に発表されたセカンド・アルバム以下4枚のアルバムが、今回、紙ジャケで再発売となつている。
 1976年のセカンド・アルバム「Second Childhood」は、ジャズ色が強いアルバムで地味な印象を与えるが、自分としては落ち着いた雰囲気で気に入っている。ジャズ・チャートでも10位を獲得。
 同じく76年のサード・アルバム「It Looks Like Snow」では、作風はソウル、ゴスペル色を強くし、ぐっとポップになっている。「Autobiography (Shine, Shine,Shine)」「Stand Up on the Rock」「Don't Let Me Down」「Shakey Ground」など力強い曲が並ぶ。ビートルズの「Don't Let Me Down」やスタンダード「Teach Me Tonight」の解釈などは見事だ。彼女のアルバム一枚を選ぶとすれば、このアルバムを薦めたい。恐らく、自分が最も多く聴いた作品はこれだ。
 1977年、4枚目の「Never Letting Go」は、前作の流れを汲みながらも、味わい深い自作曲が並ぶ。シングル・カットした「Love Makes a Woman」、ポール・サイモンの「Something So Right」、スティブン・ビショップの「Never Letting Go」といったカバーが際立つが、全体的にはじっくりと落ち着いた雰囲気のアルバム。先の松本氏が辞任を決めた時、聴いていたアルバムはこれではないかとの憶測も流れた。
 そして、78年の5枚目のアルバム「Against the Grain」は、ポール・マッカートニーの「Every Night」の鮮やかなカバーで幕を開ける。そして、ダン・ペンの名曲「Do Right Woman, Do Right Man」、さらに「He's Not Just Another Man」、パティ・オースティン「In My Life」など、強力なカバーが並び、アルバム全体に力が漲って、サード・アルバムを超える勢いを感じさせる作品となった。
 フィービ・スノウの初期作品は、セカンド・アルバム「Second Childhood」やベスト盤を除くと、輸入盤でも入手が難しい状況なので、気になる人はこの機会に。いつまでも、あると思うな金とCD。
 ついでに、最近発売になったお手頃価格の「The Very Best of Phoebe Snow」を。とりあえず、一枚という人には便利だろう。

Second Childhood

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It Looks Like Snow

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Never Letting Go

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Against the Grain

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The Very Best of Phoebe Snow

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'11/10/27  Noel Gallagher's High Flying Birds (2011) ; Beady Eye (2011)

 ノエル・ギャラガーのリリースしたソロ・アルバムを聴いて、多くのロック・ファンはスカッとした気持ちになっただろう。
 昔のロック・バンドは、ビートルズにしても、ストーンズにしても、メンバー間の喧嘩の話題が耐えなかった。みんな仲良く、まじめに働いてます、などというバンドは、まともなロック・バンドではない。そういう意味では、兄弟喧嘩の話題の多かったオアシスも、ロック・バンドらしいロック・バンドだった。
 そして、この春、ノエル・ギャラガーを除いたメンバーによるバンド、ビーディ・アイがデビュー。なんだ、これじゃあ、まったくオアシスじゃないかと思いたくなるポップな作品が届けられた。しかし、どこかモヤモヤとした気持ちが残った。確かに、オアシスの看板であったリアムのボーカルがあり、いかにもオアシスっぽいのだが、あのオアシスが持っていたヌケの良さみたいなものが、なんだか足りないのだ。
 とはいえ、まあ順調といえる新グループのスタートをみて、2015年のオアシス再結成の話題という提案などもあり、残されたノエル・ギャラガーは追い詰められちゃって大変なんだろうなと心配をしていた。
 そして、ノエルのアルバムが届けられ、そのあまりにスカッとした作品に驚いた。ハイ・フライング・バーズの名前にふさわしく、ビーディ・アイには感じられなかった、天高く抜けていくような、あのオアシスのヌケ良さのがあった。ノエル・ギャラガーのボーカルも、オアシスから耳に馴染んだもの。リアムからボロクソに言われていたが、決してそんなことはない。自分としては、ノエルのボーカルのほうが好きかも知れないと思った。
 ということで、ビーディ・アイよりも、はるかにノエルの作品のほうが、オアシスらしいし、はるかに完成度も高いようだ。うーん、オアシスというのは、ノエル・ギャラガーのバンドだったんだな、ということになってしまった。

Noel Gallagher's High Flying Birds

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Beady Eye

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'11/10/22  Lonnie Smith / Foxy Lady (2011;1994) ; Purple Haze (2011;1995)

 オルガンのロニー・スミス、ギターのジョン・アバークロンビー、ドラムスのマーヴィン・スミッティ・スミスというトリオによるジミ・ヘンドリクスへのトリビュート・アルバム2枚が紙ジャケ再発。
 最近のヴィーナス・レコードは、旧譜を紙ジャケ、1500円というありがたい再発を繰り返している。新譜は、相変わらず3000円近い金額でプラケースということで、これじゃあ、新譜を買わずに再発待ちなんて気持ちにもなりかねないなあと心配もしてしまう。
 このロニー・スミスの2枚も、ちょっと前にも紙ジャケ再発されたような気がするが、またまた1500円で登場。以前から気になる作品だったけど、自分の中のオルガン・プチ・ブームの勢いに乗じてゲット。
 このオルガン・トリオは、普通のオルガン・トリオとはかなり趣が違うような気がする。.ルー・ドナルドソンや初期のジョージ・ベンソンなどと活動し、R&Bやファンク・テイストの強いロニー・スミスに対して、ECMの印象が強いジョン・アバークロンビーという組み合わせのミスマッチ感も興味深いところ。ジミ・ヘンドリクスという異次元の存在を素材とすることにより、かろうじて繋がっているような緊張感が面白い。
 ロニー・スミスとアバークロンビーとのコンビネーションの妙といったものは、あまり感じられない。それぞれが、ジミ・ヘンドリクスに立ち向かうという感の強い演奏だ。しかも、二人ともいつもの彼等のプレイとは雰囲気が違う。特に、アバークロンビーの、いつもに増してハードで切れのいいギターが印象に残る。
 ところで、「Foxy Lady」の1年後に「Purple Haze」が発表されているが、この二枚のアルバムは、同時期の録音で、結果的に二枚分の音が録れてしまったからだという。

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'11/10/20  菊地成孔 DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN / ALTER WAR IN TOKYO (2011)

 ワハハ、痛快、痛快。菊地成孔のニュー・アルバムを聴いて、とにかく嬉しくなった。
 エレクトリック・マイルスへのトリビュート・バンドともいえる菊地成孔率いる「デイト・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン」がインパルス・レーベルからメジャー・デビューだ。
 マイルス・デイヴィスの、あのサウンドが、40年という時の流れを越えて、この日本にしっかりと息づいているのだ。自分のようなエレクトリック・マイルスのファンならば、必ずや泣いて喜ぶ、超ファンクでグルーヴィなサウンドが渦巻く。
 かつてロック・ファンの自分がマイルスにハマったように、最近のロックに物足りなさを感じているロック・ファンにはぜひ聴いてもらいたいもの。特に、暴れまわるギターはロックに飢えているファンの心も鷲づかみするに違いない。
   それにしても、インパルスからリリースされた日本人初のアルバムが、こういう過激な作品であったというのは、いやはや、痛快、痛快、ワハハハハ。

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'11/10/16  瑠璃色の地球 / Standard Songbook

 日本生命のCMで流れる手嶌葵の「瑠璃色の地球」が話題だ。
 オリジナルは松田聖子が1986年に発表したアルバム「SUPREME」に収録されている。シングルとしてリリースする予定もあったようで、プロモーション・ビデオも制作されているが、結果的にシングル・カットされることはなかった。


 作詞は、松本隆。「地球」に包まれた「二人」という壮大な視点のラブ・ソングだ。いま、まさに地球的規模の災難から立ち直ろうとする日本人にとっては、これくらいスケールの大きな愛と希望の歌が必要なのだろう。

瑠璃色の地球 松田聖子 歌詞情報 - goo 音楽

 松田聖子のオリジナルは、ファンの間でも評価の高い「SUPREME」に収録。やはり希望や未来を感じさせる歌は秀逸だ。

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 あるいは、松田聖子のバラード・アルバムとしては最強の「SEIKO Ballad 20th Anniversary」で、他のバラードと併せて聴くのもお勧め。

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 中森明菜が始めて松田聖子をカバーした曲がこの曲。個人的には、どこまでも寂しさがつきまとう中森明菜のバージョンが一番気になる。

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 MIOによる、この曲としては珍しいR&B系のバージョン。力強い歌声は、淡々としたカバーが多い中で、R&Bで育ってきた人たちには支持されるはず。

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 歌を大切にする気持ちがよく伝わってくる沢田知可子のバージョン。優しさに包まれて、癒されます。

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 辛島美登里の祈りのようなバージョン。清聴すること。

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 手嶌葵については、いまのところリリース予定はないらしい。早く、フル・バージョンを聴いてみたい。

'11/10/11  Joanna Wang 王若琳 / The Things We Do For Love (2011)

 ジョアンナ・ウォンのニュー・アルバムは、お得意の英語ヒット曲のカバー集。
 相変わらず、ジョアンナ・ウォンのボーカルは、とても魅力的だ。ハスキーな声で、縮れたヴィブラートのかかったボーカルは、宇多田ヒカルとも共通している。どちらも自由奔放なスタイルは、上手いのだか、下手なのだかわからないけど、リスナーを惹きつける魅力とセンスの良さはは並外れたものがある。
 アルバムは変則的な作りになっている。1枚目は英語のカバーが7曲と、そのアコーステック・バージョン3曲。バート・バカラック「Raindrops Keep Fallin' On My Head」、キャロル・キング「You've Got a Friend」などは定番。そして、10CC「The Things We Do For Love」、キャット・スティーブンス「Wild World」、フールズ・ガーデン「Lemon Tree」となると、センスがキラリと光る。さらに、スティーリー・ダン「Dirty Work」、オインゴ・ボインゴ「Stay」とくれば、もう脱帽。
 そして、2枚目はこれじゃ売れないと思ったのか、中国語のヒット曲が5曲という中途半端なもの。ちなみに1曲目「償還」は、テレサ・テンの「つぐない」の中国語バージョン。しかし、ジョアンナ・ウォンの中国語もなかなか魅力的。つい逆引き的に元歌を聴いてみると、中国の曲もいいなと思ってしまった。
 Youtubeのポップス弾き語りでファンになった人には、嬉しいアルバムだが、何かお手軽すぎる印象があって、どうしたのかなとちょっと心配にもなってしまう。
 心配といえば、日本で先行して発表されたアルバムがある。「バーニーの大冒険」という、物語風のコンセプト・アルバムみたいなもの。彼女は、以前にも「New Tokyo Terror 〜 The Adult Storybook」という、物語的な作品を趣味的(失礼!)に、オマケで作っていたけど、どちらも、才能が溢れすぎて、いまひとつ自分には馴染めない。スマン。
 

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'11/10/9  (WISH LIST) Connie Stevens / Complete Warner Bros.(2011) ; Joanie Sommers / Complete Warner Bros. Singles (2011) ; Shelby Flint / Complete Valiant Singles (2011) ; Girls of Petticoat Junction / Sixties Sounds (2011)

 ずいぶん前から、出る出るといって、発売が延期になったり、中止になったりと、ガール・ポップ・ファンの期待をもてあそぶコニー・スティーヴンス、ジョニー・ソマーズ、シェルビー・フリントのコンピレーション・アルバム。
 どうやら、11月8日には発売されそうな気配。HMVからも、改めてアナウンスがあったしね。
 しかも、今回はガールズ・オブ・ペティコート・ジャンクションという、60年代のTV「Petticoat Junction」に出演した女優たちによる、素敵にゆるいアルバムも併せて登場する。これも注目。


Connie Stevens

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Joanie Sommers

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Shelby Flint

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Girls of Petticoat Junction

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'11/10/6  Chris Connor / Sings Gentle Bossa Nova (2011;1965) Chris Connor / A Weekend In Paris (2010;1964)

 屈指の白人ジャズ・シンガー、クリス・コナーが1965年に発表したボサ・ノバ・アルバムが、多分、初CD化。
 この時代は、ジャズ・シンガーが同時代のロックやポップスのヒット曲を取り上げることが多いが、このアルバムもビートルズの「A Hard Days Night」で幕を開け、ペトゥラ・クラークの「Downtown」へ。そして、「A Taste Of Honey」「The Shadow Of Your Smile」といった感じで続いていく。
 そんな選曲の中、落着いたオーケストラ・アレンジをバックに、クリス・コナーがジェントル・ボサ・ノバとあるように、暖かく包容力のあるボーカルで歌いこなす。しかし、全体的にはとても地味なアルバムだ。できれば、「A Taste Of Honey」とか「Feeling Good」などのように、押しの強い曲をもう1〜2曲入れといたらよかったのに。
 とはいえ、軽く流して聴くにはピッタリのアルバムだ。友達の家に遊びにいって、もしこのアルバムが流れていたら尊敬してしまうよ。
 そういえば、この作品の1年前、1964年に発表された前作「A Weekend In Paris」が、昨年の暮れに例の999円シリーズで出ている。
 あまり話題になることのない地味なアルバムのようだけど、これが「Gentle Bossa Nova」に比べると、ガッツリとした作品だ。特に1曲目の「It's Not For Me To Say」がいい。そして、ジュリー・ロンドンの「Cry Me A River」も聴きどころ。

Sings Gentle Bossa Nova

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A Weekend In Paris

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'11/10/5  Sophie Milman / In The Moonlight (2011)

 ロシア生まれ、カナダのジャズ・ボーカリスト、ソフィー・ミルマンの4枚目となるアルバム。
 この人の人気はジャズ・シンガーとしては抵抗なくポップなアプローチにチャレンジする潔さにあるのだと思う。そのスカッとした歌いっぷりに、前作では「小股の切れ上がったシンガー」などと、訳のよく分からない評価をしてしまった。
 しかし、ポップで、クールで、そしてちょっと小粋な歌を聴けば、ペギー・リーやジュリー・ロンドン、クリス・コナーといった大人のムードを漂わせる先輩白人女性ボーカルの後継となる素材であると思う。今年で27歳、これからますます女っぷりも上がることだろう。楽しみ、楽しみ。
 この作品は、これまでのアルバムに比べると、やや地味目の印象というか、落ち着いた演奏が並んでいる。「In The Moonlight」ということなので、夜の雰囲気でいこうということだろう。それでいながら、スカッとしたカッコよさを感じさせるところは、やっぱり本物なんだと再認識。
 特に印象的な曲はビートルズのレパートリーだった「Till There Was You」だ。ペギー・リーも歌っていた甘いメロディのミュージカル・ナンバーだが、ソフィー・ミルマンはアコーディオン、アコースティック・ギターにアコースティック・ベースという編成でカバー。シンプルなボーカルにアコーディオンの響きが粋だ。

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'11/10/4  Daryl Hall / Laughing Down Crying ; John Oates / Mississippi Mile (2011)

 なんと14年ぶりとなるダリル・ホールのソロ・アルバムが登場。
 あの頃のまんまの、艶のあるしなやかなボーカルは、65歳という年齢をまったく感じさせることなく、全盛時と変わらないロックン・ソウルを聴かせてくれる。というか、80年代の音をそのまんま演っている、その自信、プライドがすごいと思う。「Eyes For You」なんて、まるきり「I Can't Go For That (No Can Do)」だしね。
 確かにダリル・ホールが作り上げた洗練されたロックン・ソウルは、80年代を象徴するサウンドに違いない。アコースティック・ギターのサウンドも爽やかに、あの時代のサウンドに浸れば気持ちも安らかに癒されるはずだ。
 一方、この春には相方であるジョン・オーツの3年ぶりのソロ・アルバムも発表されている。
 ダリル・ホールの陰に隠れがちな人だが、ソロになってからは相方よりも挑戦的な活動を続けている。新作は「Mississippi Mile」というタイトルどおり、ズブズブと深みにはまったようなブルースやR&Bのカバーもディープな作品集。
 中にはホール&オーツ時代のヒット曲「You Make My Dreams Come True」のカバーもしているが、これもルーツィな解釈で、ダリル・ホールの姿勢とは対照的だ。
 洗練されたダリル・ホールに対して、泥臭い音を追求し続けるジョン・オーツということで、自分としてはオーツさんを応援したいなと思っている。いいアルバムです。

Daryl Hall / Laughing Down Crying

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John Oates / Mississippi Mile

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'11/10/3  安富祖貴子 / The Blues (2011)

 沖縄出身のジャズ・ボーカリスト、安富祖貴子(あふそたかこ)の5枚目となるアルバムが登場。
 2006年のデビュー以来、毎年、1作というハイペースでアルバムを発表してきたが、ようやく一息。4作目からは2年ぶりの作品となる。
 ここ数年、日本では多くの女性ジャズ・ボーカリストが登場してきたが、そのほとんどが、癒し系というか、薄口のボーカリストだった。そんな中、この安富祖貴子は珍しくも濃い口のボーカルで、デビュー時からディープなボーカルは独特の存在感を示していた。
 このニュー・アルバムについて、プロデュースの井上陽介は「原点回帰」的なアルバムを目指したと言っており、アルバム・タイトルにしてもストレートに「The Blues」というもの。「St.Louis Blues」「Everyday I Have The Blues」と続くスタート。さらに「Afro Blue」「Left Alone」「Willow Weep For Me」などディープな選曲。すべて彼女らしいアルバムだと思う。
 ということなのだけど、実は自分としてはもっと違うアルバムを期待していた。安富祖貴子の前作「Sweet Soul Days」におけるオーガニック・ソウルへの挑戦は成功だったと思う。それまでとは違った開放的なボーカルこそ、彼女には似合っていると思ったし、次の作品も、きっと新しいスタイルのソウル・ミュージックに向かうものだと思っていたのだ。
 残念ながら「原点回帰」となったニュー・アルバムではあるが、「Left Alone」「Willow Weep For Me」など重量級の曲は、聴き応えのあるものだし。特に、「Afro Blue」はその熱い演奏を含めてベスト・トラックだ。そして、個人的に大好きなエタ・ジェイムスの名曲「I'd Rather Go Blind」のカバーにも満足。
 きっと、いつかはまたソウル・ミュージックへ挑戦をしてくれることを期待しています。

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'11/10/2  George Benson / Benson Burner (2011)

 うわ。懐かしい。まさか、こんなアルバムがCD化されるとは、さすが Wonuded Bird Records だね。
 1976年、ジョージ・ベンソンのアルバム「Breezin'」が突如、アルバムチャートのトップに。さらにシングル「Breezin'」と「This Masquerade」の大ヒットで、グラミーまで獲得。クロスオーバー、フュージョン・ブームの中、ジョージ・ベンソンは一気にビッグネームとなった。
 その年、そんな勢いに便乗してリリースされたのが、このコンピレーション・アルバムだ。1966年、67年に録音されたものだが、自分としてはこのアルバムを、「Breezin'」以上に愛聴していた記憶がある。都会的に洗練され、お洒落な音楽となっていた当時のベンソンに比べると、ジャズ初心者の自分にとってはゴリゴリのジャズが物凄くカッコよく刺激的だったのだ。
 内容的には、「It's Uptown」「The George Benson Cookbook」という二枚のアルバムからの演奏を中心に、オルガンのロニー・スミスのアルバム「FINGER-LICKIN' GOOD SOUL ORGANL」などに収録されていた初期の演奏を加えた2枚組、全27曲。当時のジョージ・ベンソン・カルテットのメンバーである、オルガンのロニー・スミス、バリトン・サックスのロニー・キューバー、ドラムスのジミー・ラブレースをメインに、キング・カーティス、メルヴィン・スパークス、ハワード・ジョンソンなどが参加している。
 バンドのリーダーはジョージ・ベンソン名義ではあるけれど、オルガンのロニー・スミスをかなり重用しており、二人のリーダー・アルバムといっても、おかしくはない。それくらい、二人のコンビネーションはいい感じだ。そして、ロニー・キューバーのバリトン・サックスの音色も、このバンドの演奏に個性を与えている。
 ジョージ・ベンソンは、フュージョン時代に軽やかなギターと、ギタリストとは思えない素晴らしいボーカルで、スポットを浴びたアーティスト。しかし、今から思えばこのアルバムに収められた時期のジャズこそ、長く聴き続けられるはずだ。今さら、「Breezin'」を聴く気にならないけれど、このアルバムに収録されたジャズは色あせることなく今尚、濃厚でガッツリと聴くことができる。

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'11/10/1  Superheavy / Superheavy (2011)

 Amazonのカスタマー・レヴューではボロクソに言われているアルバムだけど、どうしてそこまで否定されるのか不思議でたまらん。自分にとっては、とても気持ちのいい作品だ。ロック・ボーカル・アルバムの快作というべきだろう。
 メンバーは、ミック・ジャガー、ジョス・ストーン、ダミアン・マーリーという3人のボーカリスト。そして、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートと「踊るマハラジャ」のA.R.ラフマーンという、確かにメンバー構成は、奇想天外ともいえるもの。
 しかし、何といってもミック・ジャガー、ジョス・ストーン、そしてダミアン・マーリーのボーカルの絶妙なコンビネーションに圧倒される。ミックは、これまで何枚かのソロ・アルバムも出してきたが、ストーンズ以外でミックのボーカルがこんなにしっくりときたことはなかったような気がする。ジョス・ストーンもミック・ジャガーという強力な対戦相手を見つけて、これまでにない魅力を発揮している。
 サウンドとしては、基本はロックだが、レゲエ、インド音楽といったところを、無理なく絡めている。ミック・ジャガーの思い描いた「音の理想郷」などというのは言い過ぎ。全体を通して聴いてみれば、このアルバムは立派なロック・アルバムだ。
 そして、やっぱりこのアルバムの肝はミック・ジャガーとジョス・ストーンという骨太な二人のボーカリストということになる。久々に、いいロック・ボーカルを聴いた。

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'11/9/29  Papa John Defrancesco / Philadelphia Story ; Deep Blue Organ Trio / Wonderful! ; Joey DeFrancesco / 40 (2011)

 時に無性に聴きたくなるオルガン・ジャズ。そう多くのアルバムを買うわけではないのだが、気づいたら手元に今年発売になった3枚のオルガン・ジャズ・アルバムがあった。
 まずパパ・ジョン・デフランセスコのオルガン・トリオ。デフランセスコ(OR)、息子のジョン・デフランセスコ・ジュニア(G)、グレン・フェラコン(DS)というトリオに、ジョーイ・デフランセスコがトランペットで2曲に参加。なんたって、アルバム1曲目、テンプテーションズの「Papa Was A Rolling Stone」が、めちゃカッコイイ。ハイハットにギターのカッティング、そしてオルガンにトランペット、どれも切れてる。しかも、余裕があるから、なおさら憎い演奏だ。もう、この1曲だけで、このアルバム駆って良かったと思うはず。曲名も、パパ・ジョンに引っ掛けたものかもしれんが、とにかくカッコイイ。次に、クリームの「Strange Brew」が出てきたり、余裕の1枚といったところだろう。お気に入りです。
 次に、ディープ・ブルー・オルガン・トリオ。クリス・フォアマン(OR)、ボビー・ブルーム(G)、グレッグ・ロッキンガム(DS)というメンバー。この面子からすれば、ギターのボビー・ブルームの知名度が最も高そうだ。特に、日本では若いころ、渡辺貞夫と活動していたことでおなじみだ。このアルバムは、スティービー・ワンダーの曲を集めたものだが、多分このグループでの活動も長いようで、タイトによくまとまった演奏だ。手堅いというか、渋いというか、ハッタリみたいなものがなく、玄人好みってのは、こういうやつだろうな。
 そして、ジョーイ・デフランセスコのアルバム。パパ・ジョンの息子であるジョーイ・デフランセスコ(OR)、リック・ズニガー(G)、ラモン・バンダ(DS)というトリオ。ジョーイ・デフランセスコも、タイトルにあるように、もう40歳か。若いころは、スラリとマスクも良かったのだが、体型もドッシリとしてきて、音楽も堂々としたもの。この3枚の中では、最もスケールの大きさを感じさせるし、音作りも洗練されている。今を感じさせるオルガン・ジャズといえば、やはりこの人なんだろう。

Papa John Defrancesco

Deep Blue Organ Trio

Joey DeFrancesco

'11/9/28  Tony Bennett / DuetsU (2011)

 御年85歳になるトニー・ベネットがビッグ・アーチスト達を相手にデュエット・アルバムを発表。
 2006年にもアルバム「Duets」を発表し、ビルボードで3位を獲得。その続編となる本アルバムも、きっとチャートの上位に食い込むに違いない。
 というのも、このアルバムでは先日、惜しくも亡くなったエイミー・ワインハウスとのデュエットが収録されていることが大きな話題となっているからだ。
 そのエイミー・ワインハウスとの共演曲は「Body And Soul」。Youtubeでも早い時期から流されているが、エイミー・ワインハウスが人間国宝級の大歌手とのデュエットに緊張する様子や、時にビリー・ホリディを思わせる悲しみを湛えた歌声が胸に詰まる。あっという間の3分間で、デュエットということもあり、彼女の魅力が十二分に発揮できたとは感じられない。できれば、まるまる1曲を歌って欲しかったな、とはいえスタンダードの名曲を歌う姿を残してくれて良かった。
 他にはアレサ・フランクリンやウイリー・ネルソンといった大歌手との共演もあるが、今さらという感じでそれほど興味はわかない。やはり、レディ・ガガやエイミー・ワインハウス、ノラ・ジョーンズ、キャリー・アンダーウッドといった若手との共演が微笑ましくていい。中でも、レディー・ガガの伸びのある颯爽としたボーカルには驚いた。
 御大はといえば、誰が相手でも、淡々と枯れきった歌をマイペースで聴かせてくれる。ほんとに85歳かよと疑ってしまうくらい素晴らしい。

'11/9/27  Nancy Wilson / The Swingin's Mutual! ; June Christy / Duet ; Vi Velasco / Cantando Bossa Nova ; Vi Redd / Bird Call (2011)

 ジャズ名盤 999 BEST & MOREシリーズ第4期が発売になった。内容は「BEST」から「MORE」の方に、どんどん移ってきて、初CD化などというマニアックな作品が多くなってきた。懐に余裕があれば、安いし、欲しい作品はたくさんあるが、とりあえず女性ボーカル物を3枚ゲット。
 まず、ナンシー・ウイルソンとジョージ・シアリングの「The Swingin's Mutual!」は、シアリング・クインテットの演奏だけのトラックと、ナンシー・ウイルソンのボーカルの入ったトラックが混在する作品。ヴィブラフォンの加わったシアリング・クインテットは、クールにスイングして大好物。人気絶頂のクインテットと、デビュー間もない、初々しさを感じるナンシー・ウイルソンとの組み合わせが聴きもの。全曲にボーカルがないので、やや薄味の感もあるが、スッキリした印象もある。
 ジューン・クリスティとスタン・ケントンの「Duet」は、お勧めの一枚。まさに、ピアノとボーカルのデュエットだが、弾きすぎず気品を感じさせるケントンのピアノをバックに、清楚ながら毅然としたクリスティのボーカル。スペースを残した音空間が心地よいし、二人の間合いもスリリング。こんなライブ、聴いてみたいな。そして、こういうアルバムもなかなかない。
 ヴァイ・ヴェラスのアルバム「Cantando Bossa Nova」は、国内初CD化。これからも、なかなか出ないだろうということで、マストな1枚。このアルバム・ジャケットは、目にすることは多かったが、ジャケットから漂う微妙なチープ感から音楽の内容を判断すると、大間違いだ。ヴァイ・ヴェラスは、フィリピン出身というボーカリストだが、なかなか洗練されたボサノバを聴かせる。ちなみにズート・シムズも参加というのも、ウリになっているようなので念のため。
 ところで、ヴァイという珍しい名前、どっかで聞いたなと思い出したのが、今年の春にやはり999シリーズで出ていたヴァイ・レッドという女性サックス奏者。これが、またいい味を出している素晴らしいボーカリストでもある。この4人の中では、一番お気に入りのボーカリスト。これも、買い逃すと次にいつお目にかかれるかわからないアルバムなので、入手できるうちにどうぞ。


Nancy Wilson

June Christy

Vi Velasco

Vi Redd

'11/9/25  ペドロ&カプリシャス / 別れの朝 ; さようならの紅いバラ (2011)

 ペドロ&カプリシャスのファースト・アルバム「別れの朝」とセカンド・アルバム「さようならの紅いバラ」が初CD化。
 しかし、この復刻はペドロ&カプリシャスというグループというより、当時のリード・ボーカルであった前野曜子メモリアル・コレクションという位置づけのものだ。
 前野曜子は、1973年、大ヒット「別れの朝」などシングル3曲、アルバム2枚を残し、グループを脱退するわけだが、これだけの実力派ボーカリストの抜けた穴は、グループにとって大きな痛手となるはずだった。しかし、その穴を埋めたのは、これまた実力派、高橋真梨子だった。さらに、高橋は「ジョニィへの伝言」「五番街のマリーへ」という名曲を立て続けにヒットさせ、前野の名前はあっという間に忘れられてしまった。
 しかし、年齢としては1歳違いながら、当時の高橋真梨子に比べて、はるかに成熟したボーカルを聴かせた前野曜子への待望論は根強く、1979年、映画『蘇える金狼』の主題歌でソロとしてカムバックするも、その後、大きな話題もなく、1988年、40歳で早世。
 1971年のファースト・アルバム「別れの朝」は、大ヒットしたタイトル曲を中心に、洋楽、邦楽のカバー曲を集めている。「ある愛の歌」「雪が降る」「忘れないわ」といったスケールの大きな歌に、前野の実力を感じさせる。ジャニス・ジョプリンの「Move Over」のカバーも、ジャニスほどのパワーはないながら、前のらしい繊細さを感じさせるボーカルが魅力だ。一部、男性ボーカリストがリードをとる曲もあるが、そんなチープさも昭和の洋楽カバーらしさと笑って流したい。ボーナス・トラックとして、3枚目のシングル「そして今は」を収録。
 1972年のセカンド・アルバム「さようならの紅いバラ」は、2枚目のシングルであるタイトル曲を中心としたもの。当時、プレスリーの歌で人気のあった「この胸のときめきを」がいい。ファーストに比べて、全体的に軽めの印象。一方、ボーナス・トラックとして前野曜子のソロ・シングル2枚のAB面が収録されており、これは一聴の価値あり。
 なお、前野曜子メモリアル・コレクションとしては、今後、来年の1月にかけてソロ・アルバムなど関係する5枚のアルバムが発表される予定だ。

別れの朝

さようならの紅いバラ

'11/9/23  Miles Davis / Live In Europe 1967 (2011)

 マイルス・デイヴィスの1967年欧州ツアーの記録。ダイジェスト盤に引き続き、CD3枚+DVD1枚というボックスが到着。
 最近のマイルス・ボックスは立派な装丁のものが多かったので、今回も無意識にそんなものが届くと思っていた。ところが、手にしたのは見開き8面になるデジパック仕様。まあ、ブートレグ・シリーズと銘打ってあるからには、そんな立派なものじゃおかしいかもしれないね。
 CD3枚には、欧州ツアーのうち3日間の素晴らしい演奏が収録。ツアーの期間中、演奏曲はそう大きく変わるものではないので、「Agitation」「Footprints」など5曲は、3日分が収録されることになるが、そんなことはなんのその、まったく気にならない。
 一方、DVDは昨年発売された、驚異の71枚組「Complete Columbia Album Collection」に入っていたDVD「Live In Europe '67」と同じもの。かと思いきや、何故か以前のDVDに入っていた「Walkin'」が1曲削られている。大人の事情があるのかもしれないが、そのまま出せば手間もいらないのに、わざわざ1曲を削除したのはなんでだろう。
 ということで、マイルス・ファン必携のアルバムであることは間違いない。しかし、そうでもないジャズ・ファンは、昨日も書いたが1枚に凝縮させたダイジェスト盤、ハイライト盤があれば十分だろう。というか、このハイライト盤自体が、物凄くクォリティの高い作品になっている。ひとつのアルバムとしてみた場合、曲にダブりがなくスッキリと並ぶハイライト盤こそ、優れていると多くのジャズ・ファンは判断すると思うのだが。

3CD+1DVD

1CD

'11/9/21  Miles Davis / Miles Davis Quintet-Live in Europe 1967 (2011)

 個人的には、今年のジャズ・アルバム最大の目玉と思える、マイルス・デイヴィスの1967年ヨーロッパ・ツアーのライブ盤が発表された。
 「Best Of Bootleg Vol.1」と銘打つように、既に海賊盤としてはよく知られた音源だが、海賊盤をほとんど聴かない自分としては、凄い凄いと噂だけを耳にしていた憧れのライブだ。
 4枚組みのボックスとしての登場だが、同時にハイライト盤として、1枚に10曲70分をぎゅっと詰め込んだものが、今日現在1000円を割る超お得価格で発売されている。昨日、うちに届いたのは、ボックスは遅れているようで、ハイライト盤だけが到着。
 ぶっちゃけ、素晴らしいの一言。1枚だけでも腹一杯という感じもする。アコースティック・マイルスで最も好きなのは、「プラグド・ニッケル」のライブ・ボックスだけど、この演奏はプラグド・ニッケルを超えたバンドとしての高い成熟度を感じさせる。このクインテットは、アコースティック・ジャズの最高峰と言われるが、その名に恥じない作品だ。
 マイルス・デイヴィス、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウイリアムス、それぞれがハイ・テンションな演奏を繰り広げ、一人ひとりのプレイを拾い聴きして見つける驚きは、このグループならではのものだ。
 1枚でこの充実感。これで、DVDつきの4枚組みが届いたら、どんなことになるんだろう。ボックス・セットというのは、実際、身体に応える。体力を整えて、本体の到着を待つことにしよう。
 マイルスの大ファンでないのならば、このシングル・アルバムで十分だ。というか、実はこれだけでも凄いアルバムなのだ。

'11/9/20  Jimi Hendrix / In The West ; Winterland (2011)

 やはりジミ・ヘンドリクスは素晴らしい。本物は、年を経ても光を失うことはないようだ。ジミ・ヘンのアルバムが2枚登場。
 まず、「In The West」は1972年に発表された、68年から70年のライブ・コンピレーション。初CD化ということだが、このアルバムには古くからの熱烈ファンがいるようで、曲順の入れ替えや、2曲の差し替え、さらに3曲のボーナス・トラックの挿入など、これじゃ「In The West」じゃないなどという意見も。しかし、初めて聴くファンにとっては、何の文句のつけようもないパワフルなアルバムだ。ここまで天才的なヒラメキに満ちたインプロビゼーションを聴かせるロック・アーチストは、後にも先にもジミ・ヘンを超える者はいない。
 そして、「Winterland」は、1968年の10月10日から12日の3日間に行われたサンフランシスコのウィンターランドでのライブ音源。4枚組みのボックスも出ているが、これはそのハイライト盤ということで、3日分の切り貼りアルバムだが、「In The West」に比べて統一感のある流れを感じる。それにしても素晴らしい。4枚組みボックスも買わずにいられなくなりそう。

In The West

Winterland

'11/9/19  Association / And Then... Along Comes The Association ; Renaissance (2011)

 1960年代後期に「Cherish」「Windy」「Never My Love」といった大ヒットをもつフォーク・ロック・グループ、アソシェイションのアルバムがモノ・バージョンで再発されている。1966年のデビュー・アルバム「And Then... Along Comes The Association」と、1967年のセカンド・アルバム「Renaissance」の2枚だ。
 彼等は「Cherish」などのヒット曲だけを聴いていると、ポップなコーラス・グループのような印象を受けるが、実はアルバムを聴けばもっとロックなイメージの強いバンドだ。デビュー・ヒット「Along Came Mary」なんかも、R&Bの影響も感じさせるボーカルで、かなりのお気に入り。基本的には、フォーク・ロックを代表するバーズに近いバンドではあるが、時おり聴かせるビーチ・ボーイズのような高度なコーラス・ワークが素晴らしい。
 今回は、両アルバムとも、最近ハヤリのモノ・バージョンということで、確かに、「Cherish」を聴いても、今までのCDとは別物で、演奏もコーラスもはるかに力強い。そして、どちらもシングル・バージョンやインストなどボーナス・トラックもたっぷり聴き応え十分だ。
 デビュー作「And Then... Along Comes The Association」は、ナンバー・ワン・ヒット「Cherish」を含み、アルバム・チャートでも5位を獲得した。「Message Of Our Love」は、テルミンなども登場し、ビーチ・ボーイズを思わせる実験的作品で面白い。
 2枚目「Renaissance」は、シングル・ヒットもなく地味な印象のためか、チャート的にも振るわなかった。しかし、個人的には、アルバムとしてもまとまっていいと思う。シングル「No Fair At All」は「Cherish」「Never My Love」路線を狙ったものだが、残念ながら不発だった。同じくシングル「Looking Glass」も悪くないんだけどな。

And Then... Along Comes The Association

Renaissance

'11/9/18  Stacey Kent / Hushabye Mountain (2011)

 ブルー・ノートへ移籍したステイシー・ケントのキャンディド時代のコンピレーション。
 甘く、スインギーに、そして囁くような優しい歌声。決して、ジャズ・ボーカルの王道といわれるスタイルではないけれど、この人のボーカルで癒されるジャズ・ファンは多い。
 パートナー、ジム・トムリンソンのサックスを中心としたバックも、ステイシー・ケントのボーカル同様、とても清楚だ。アルバム・タイトルに「Hushabye Mountain」をもってきたあたりも、そんな彼女のスタイルを象徴しているよう。
 全10曲という小ぶりな内容も、もっと聴いてみたいなと思わせ、なんだか彼女らしい。

'11/9/15  Nick Lowe / The Old Magic (2011)

 最近では、すっかり激渋アルバムでおなじみになったニック・ロウ。もう62歳。とはいえ、ロック・ミュージシャンも高齢化が進んで、還暦過ぎたロッカーも今では珍しくもないか。
 とはいえ、今回、あっと驚いたのが、早い時期から公表されていた、ポップな色使いのアルバム・ジャケット。ニック・ロウのジャケットは、作風同様に渋いものが続いていたので、ひょっとして今回は内容も思い切りポップなものになるかと、ちょっと期待もしていた。
 結果としては、相変わらず渋めのロマンス・グレー・ロックではあるが、近作にない軽やかさを感じるはず。4年ぶりのアルバムということで、60歳代に突入して初めての作品。不思議に、フットワークも軽快になる、これぞ「Old Magic」なのか。
 それにしても、若きニック・ロウを知っている自分たちの世代は、かつての彼の姿に現在の姿を重ねて、その音の違いを楽しんでいるのだと思うけど。若いファンたちは、いったいどういう聴き方をしているんだろう。この渋いロックを。興味あるな。
 ところで、問題はこのポップなジャケットだ。「The Old Magic」ってことで、何か仕掛けがあるように思えてならない。実は、この女性は60歳だとか。まあ、そんなに若くもないし、美人とも思えないのだけど、何か気になるね、このジャケット。
 曲としては、どれも渋いし、軽やかで、聴いていて疲れなくてとてもいいアルバムだ。ベスト・トラックとしては、ニック・ロウが軽快にステップを踏んで歌う姿が目に浮かぶ「Restless Feeling」をあげておこうか。いいね。

'11/9/10  Horacee Arnold / Tribe ; Tales of the Exonerated Flea (2011)

 今月のジャズ批評誌、特集「ジャズ・ロックって何だ?」で、隠れ名盤としてジャケットがちょこっとだけ紹介されていたホレス・アーノルドのアルバムをゲット。
 70年代にチック・コリアやビリー・ハーパーなどと活動をしていたドラマーだが、正直なところ、自分としてはほとんど名前にも記憶が無い。今回は、興味深い再発をしている Wounded Bird Records からの発売ということで、再発レーベル買いというところ。この人のリーダー・アルバムは2枚だけで、その2枚が今回発売されている。
 73年に発表された「Tribe」は、「部族」というタイトルだが、もっぱらスピリチュアルな香りのする傑作として評価されているようだ。メンバーは、ジョー・ファレル、ラルフ・タウナー、デヴィッド・フリードマン、ラルフ・マクドナルド、ジョージ・ムラーツ、そしてビリー・ハーパー。中心になるのは、ジョー・ファレルのフルート、ソプラノ・サックス、ラルフ・タウナーの12弦ギター、そしてフリードマンのヴァイブ。メンバー構成などからも、リターン・トゥ・フォエヴァーを想起させる、透明感と緊張感のあるプレイが聴ける。ラストには「500 Miles High」も収録されている。ひょっとしたら、こちらは初CD化かも。
 そして、もう一枚は74年作「Tales of the Exonerated Flea」。こちらのメンバーは、ヤン・ハマー、リック・レアード、ラルフ・タウナー、ジョン・アバークロンビー、ソニー・フォーチュン、デヴィッド・フリードマン、ジョージ・ムラーツなど、前作に劣らぬ豪華メンバー。中心は、ヤン・ハマーのキーボードと、ソニー・フォーチュンのソプラノとフルート、そしてアバークロンビーのギター。こちらの作品のほうがずっとスピード感もあり、はるかにジャズ・ロックだ。ジャズ批評誌に紹介されていたのも、こちらの盤だ。そして、ボートラが1曲。
 どうやら、2枚とも、知る人ぞ知るといったアルバムらしいけど、いやはや、なんとも70年代らしい作品だ。しかも、なかなか格調の高い、ハイ・クオリティなアルバムだ。出会えたことに感謝。

Tribe

Tales of the Exonerated Flea

'11/9/9  Benny Green / Source (2011)

 70年代にリアルタイムでフォークやロック、ブルースにハマった音楽ファンの「男」というのは、ほとんど例外なくギターが一応弾けるものだと思っている。自分もそう。だけど、たまらなくピアノが弾ければなと思うことがある。それは、ゴキゲンなジャズのピアノ・トリオを聴いたとき。マイルスやコルトレーンを聴いても、トランペットやサックスはやりたいとは思わないのに、ジャズ・ピアノは弾いてみたくなる。
 このベニー・グリーンも、そんな気持ちにさせるピアニストの一人だ。ここで発表されたニュー・アルバムは、ベースにピーター・ワシントン、ドラムスにケニー・ワシントンという安定したバックを引き連れた、彼にとって10年ぶりというピアノ・トリオ作品。
 ソニー・クラークの「Blue Minor」からスタートして、聞き覚えのある曲を、どっしりと腰の据わった王道スタイルで快調に弾き倒す。新しいことをやっているわけでもないけど、古臭いというわけでもない。ジャケットの顔をみると、なにやらヌメッとして、爬虫類的な雰囲気も漂わせているが、品質は保証されている。とても安定感のあるピアノ・トリオの演奏を聴くことのできるアルバムだ。

'11/9/4  Nina Vidal / Love, Pop & Soul - The Cover Sessions Vol.1 (2011)

 ニーナ・ヴィダルというシンガーは、日本ではiTunesのチャートで高い評価を受けているジャズ・ソウル系シンガー。自分も一応、デビュー時から何前だけは知っていたが、濃厚なフェイスとは違って、やけに洗練されたシンガーだなという物足りない印象だけがあった。彼女の3枚目となるカバー・アルバムが発表された。ポール・マッカートニーの「My Love」に惹かれてゲット。
 改めて聴いてみれば、とてもクールでポップなシンガーだ。冒頭のフリートウッド・マックの「Dreams」を聴いて、誰かに似ているれけど、なかなか思い出せずに悶々としたが、やっと出てきた名前は、ローラ・ニーロ。洗練された都会のセンスを持ち、ソウル・ミュージックにも大きな影響を受けたシンガーだ。そして「And If The Rain」なんかは、シャーデーそのまんまという感じがあったりもする。ま、だいたい、そんな雰囲気をもった人だと思ってもらいたい。
 取り上げている曲は、アルバム・タイトルにある通り、ポップスやソウル・ミュージックのカバー。フリートウッド・マック、シンディ・ローパー、ソフトセル、ジョニー・ヘイツ・ジャズ、ジェームス・テイラー、アイズレー・ブラザース、マリア・ヒタなどなど、ジャンル、時代とも、広範囲にわたるものだ。
 どうやらクラブでの受けもいいようで、確かに都会的で、耳に心地よいボーカルは、どの曲も気持ちよく聴ける。一方では強力な個性に欠ける部分もあり、強く印象に残る曲が少ないのも気になる。とはいえ、味付けは薄口ではあるが、自分としては大好物のポールの「My Love」は取り上げてもらっただけでも表彰モノ。そして、すっかりスタンダードになってきたスティングの「Fragile」もシャーデーっぽく処理されていい感じ。アイズレー・ブラザーズの「For The Love Of You」もメロディの良さが際立っていいし、この曲を選んだことに敬意を表したい。
 そして、ピアノ、ベース、そしてチェロというバックで歌われるスタンダード「I'll Be Seeing You」は、アコースティックな演奏に、ニーナ・ヴィダルの落ち着いたボーカルで、最もジャズ的なトラック。自分としてはかなり気に入っているのだが、このアルバムの中では、ちょっと異質な感じになってしまい残念だ。今後は、こういうジャズ・アルバムにも期待したい。

'11/9/1  山中千尋 / Reminiscence (2011)

 最近ではピアノだけではなく、ジャズ誌にエッセイを連載するなどペンの腕前も高く評価されている山中千尋。自由奔放で攻撃的な文章は、まさにピアノをペンに持ち替えたかのような芸風だ。これは第二の山下洋輔だよ、きっと。
 でもって、本業のピアノの方はといえば、今年でデビュー10年目。人気はますます上昇中。いまや絶好調で、新作が次々と湧き出るように発表されている。しかも、作品の鮮度はまったく落ちていない。勢いに乗っているというのはこういうことだろう。
 このニュー・アルバムも、そんな勢いを感じさせるアイデアに溢れた一枚だ。それは、一曲目「Rain,Rain And Rain」に象徴的。演奏が面白くて仕方ないという気持ちが表れた、伸び伸びとした弾けるような曲だ。ピアノは地面に跳ねる雨粒だろうか。ドラムスは雨垂れの音だろうか。映画「雨に歌えば」のシーンを思い出させる、ハッピーなプレイ。これぞ、今の山中千尋のイメージそのもの。
 一方、対照的なのが一転して音数を抑えたバラードでのプレイ。「This Masquaerade」「You’ve Got A Friend」というお馴染みの大ヒット曲での余分な装飾を排除したピアノは、原曲のメロディの魅力を活かしたシンプルなもの。ジワリと胸に迫る。特に、バックに微かにフェンダーローズが流れる「This Masquerade」が素晴らしい。
 全体的にとてもカラフルでポップなアルバムだ。ジャズ・ファン以外にも十分にアピールできるはず。きっと、この作品でファンをさらに広げるに違いない。硬派なジャズ・ファンは、はたしてどんな評価なのだろう。
 ところで、自分は山中千尋のライブを観たことがないので、彼女の雑誌への連載エッセイを読んで、ひっくり返った。彼女を、美しき女性ジャズ・ピアニストだとばかり思っていたけど、それは大間違いのようだ。ぜひ、その美しい顔に似合わず、危ない毒を吐き続ける彼女の文章を一読されたい。まさに奇才、山中千尋、ますます楽しみ。

'11/8/29  Steve Cropper / Dedicated ; Booker T. Jones / Road from Memphis ; Booker T. & MG's / Mclemore Avenue ; Booker T. & MG's /Universal Language (2011)

 ブッカー・T&MG’s関連の動きが活発だ。
 まずは、スティーヴ・クロッパーのニュー・アルバム「Dedicated」が出た。たまらなく懐かしい香りだ。ゆっくり深く息を吸い込み、芳醇な香りを楽しみたい。
 スティーヴ・クロッパーの新作は、ドゥー・ワップ・グループ、ファイブ・ロイヤルズのカバー集。とりたてて新しいチャレンジもないのだが、スティーブ・クロッパーの個性を十分に活かした味わい深い作品が出来上がった。
 思い切ってひとつのグループのレパートリーに絞り込んだのが、チャレンジといえば、そうかもしれない。よく知られた懐かしのヒット曲の寄せ集めではないことが、アルバムに落ち着き、あるいは統一感を与えることとなったようだ。
 バック・バンドのメンバーは、ベースのデヴィッド・フッド、キーボードのスプーナー・オールダム、ドラムスにスティーヴ・フェローンとスティーヴ・ジョーダンという鉄壁の布陣。そして、曲ごとに変わるボーカルも、スティーヴ・ウィンウッド、ベティ・ラヴェット、B.B.キング、ルシンダ・ウイリアムス、ダン・ペン、ケブ・モ、シャロン・ジョーンズなど、思わず唸るようなメンバーが並ぶ。
 この豪華なメンバーを、中心でクロッパーのギターがギュッと締めていれば、もう文句の言いようのないグッド・ミュージックが生まれてくるのは当たり前。
 特にシビれたのは、アルバムタイトルにもなっている、ヒット曲「Dedicated To TheOne I Love」での、飲んだくれたようなルシンダ・ウイリアムズのよれよれボーカルだ。いやはや、このオバはん、歳を重ねるにつれカッコよくなるわ。
 そして、ブッカー・T・ジョーンズのソロ・アルバム「Road from Memphis」。ドライブ・バイ・タッカーズの参加でロックなアルバムとなつた前作はグラミーを受賞した。
 このニュー・アルバムはThe Rootsのメンバーが全面的にバックアップ。The RootsといえばHipHopのイメージ強く、いよいよブッカーTもHipHopかと、苦手な自分はちょっと心配したが、意外なくらいオーソドックスなソウル・ミュージックでひと安心。
 ニール・ヤングまで参加した前作ほどの刺激はないかもしれないが、歯切れのいいドラムはファンキーだし、オルガンもグルーヴィで伸び伸びと気持ちがいい作品になった。
 また、MG’sの旧アルバムも今年になって2枚、復活している。
 ひとつは、Stax時代の「McLemore Avenue」(1970)。ビートルズ「Abbey Road」のカバーだ。さらにビートルズのカバーをボーナス・トラックとして追加。以前は、間が抜けた感じで、ピンと来なかったアルバムだったが、どうやら「Come Together」でスタートしないのが原因らしい。オルガンによる「Golden Slumbers」からまったりとスタートするのだが、改めて聴いてみれば、そこかしこで彼ららしい味のある演奏を見つけられる。
 もう一枚、「Universal Language」(1977)はドラムスのアル・ジャクスンが亡くなってメンバーが変わった後のアルバム。知らずに聴けば、彼らとは思えないような、グッとモダンなサウンドだ。フュージョン全盛時代を反映してのサウンドだろう。ブッカー・T・ジョーンズもスティーヴ・クロッパーが、時代のサウンドに挑戦する姿を楽しもう。

Dedicated

Road from Memphis

Mclemore Avenue

Universal Language

'11/8/25  山下達郎 /Ray Of Hope (2011)

 山下達郎の6年ぶりのニュー・アルバム「Ray Of Hope」が出た。
 シュガー・ベイブ時代から聴いてきたファンからすれば、もはや人間国宝のようなアーチスト。ニュー・アルバムが出ると聞けば、もうありがたく拝聴する以外ない。
 デビュー以来、36年間、寡作とはいえ安定してアルバムも発表し続け、もはや熟練した職人の技を見るような音作り。CDという大量生産による工業製品であるはずなのに、一枚一枚に工芸品のような職人の魂や自信、誇りを感じる。
 マスコミやネット上では、繰り返し、絶賛の評論やインタビューが取り上げられ、同じような質問に答え続ける山下本人も含めていささかうんざりといったところ。人間国宝ともなれば、もはや誰にも批判的な意見は言わせないような雰囲気も漂い始めるのも仕方がない。そんな中、ミュージシャンとしては山下に劣らず論客として知られる菊地成孔が、このアルバム、山下達郎に対して「加齢を感じました」と評したことが新鮮だった。
 ということで、自分としてはいつまでも昔のポップな山下達郎が好きなわけで。最近の山下の音楽は、凄いとは思いつつも、親しみやすさは薄れている。例えば、ファンには名曲といわれている「蒼茫」よりも「ダウンタウン」の方 がずっと好きだ。確かに、年齢を重ねれば、その年に相応しい歌が生まれるわけで、山下の作品も年々スケールが大きくなつていくのがわかる。だけど、やつぱり「サーカス・タウン」が好きだし、「ラスト・ステップ」が好きなのだ。
 そんなファンには初回限定盤がお勧め。「Joy 1.5」として、懐かしいライブ録音がおまけでついている。収録曲も「素敵な午後は」「THE THEME FROM BIG WAVE」「ONLY WITH YOU」「二人の夏」「こぬか雨」「砂の女」など、オールド・ファンが泣いて喜びそうな全7曲。これはマストだね。
 いわゆる伝統的工芸品などという「いいもの」や「本物」が好きな人は、この「Ray Of Hope」を繰り返し聴きいていただくことをお勧めしたい。自分としては、「Joy 1.5」に刺激されて「Circus Town」や「Spacy」そして「It's A Popin' Time」を引っ張り出して聴きこんでしまった。やっぱ、山下達郎は凄い。

(初回限定盤)

'11/8/21  Sly Stone / I'm Back (2011)

 スライ&ファミリー・ストーンのスライ・ストーンが30年ぶりに新作を発表。
 スライといえば、一時期にはドラッグで廃人のようだとか、行方不明説や死亡説まで流れたりしたものだ。いまさら、本気でニュー・アルバムを待っていたファンもいないだろうし、ましてや、そのクオリティまで期待をする能天気なファンはいないだろう。
 しかし、このアルバムは、ホントに新録音なのかなと疑いをもってしまうくらい、昔のまんま。淡々と、昔の曲を、以前のようなグルーヴでプレイしていく。変わらないことが、いいことなのか、悪いことなのか、なかなか難しいところだが、まったく期待をしないで聴いた自分としては、ちょっとした驚きだ。
 ドアーズのレイ・マンザレク、ハートのアン・ウイルソン、カーマイン・アピス、ジョニー・ウインター、ジェフ・ベック、ブーツィー・コリンズと、錚々たるゲスト・ミューシャンを配しながらも、勿体無いことに、あまりその存在を感じさせないところが、さすがスライ、ということなのだろう。
 それにしても、「Dance To The Music」「Every People」「Family Affair」「Stand」「Thank You」「Higher」とヒット曲をズラリと並べたてているのに、懐メロ的なチープさはない。「昔のまんまだぁ」と、叫びつつ、怒涛のファンクに浸っている幸福感をあなたも。

'11/8/14  Paul McCartney / McCartney (2011)

 ポール・マッカートニーのファースト・ソロ・アルバム「McCartney」(1970)が新装発売に。
 今年スタートしたポールのアーカイヴ・コレクションの第一弾は傑作「バンド・オン・ザ・ラン」だった。そして、第二弾が「McCartney」と「McCartney U」というのはファンにとっては意外だったはずだ。
 発売当時、あまり評価されなかったこのファースト・ソロ「McCartney」を聴くのは、ほんとに久しぶり。今聴けば、いろんな思いとともに、そう悪くもないじゃんという気になってきた。
 しかし、あの時代、ロックの黎明期に、バンドが解散して主要メンバーがソロ・アルバムを発表するという前例というのは、そうはなかったのではないか。だから、あのビートルズのメンバーが解散した後、物凄いソロ・アルバムを作るなどと期待したファンはそうはいないはずだ。複雑なバンド内のグチャグチャな人間関係とか、契約上の面倒くさいゴタゴタを乗り越え、ある種の悲壮感みたいなものも漂ったりする中で、はたしてどんなソロ・アルバムが完成するのか、確かに期待はあっても、不安も大きかったような気がする。結果として、このポールのアルバムは、ファンにとっては、肩透かしというか、落胆というか、やっぱりなという受け止めもあったはずだ。そして、同時にバンドの解散とはこういうものなのだということを示してくれたような気もする。
 それにしても、やはりビートルズのメロディ・メイカーとしての期待が大きいのだろうが、ビートルズ解散後のソロ活動で、ポールほど、ぼろ糞に言われたメンバーはない。それは、この「McCartney」であったり、ウイングスの「ワイルド・ライフ」であったりするのだが。特に、このアルバムの不評は、その後に発表されたジョンのアルバムの素晴らしさ、また、次のポールの次作「Ram」の高評価により、ほとんど見直されることなく40年がたってしまったようだ。
 改めて聴いてみれば、ポールの秀でたポップ・センスはそこかしこには感じられるわけで、やはり、作り込み不足というか、お手軽に作ってしまった感は強い。まあ次の傑作「Ram」にしたつて、力の抜けた軽いセンスが光っているものだったから、必ずしも力を入れることがいいわけではない。あえてチープな手作り感を残したかったのだろうか。ソロ・アルバムというところで、そういうところでプライベート感を表現したかったのだろうか。あのポールが何故という興味がつのる。
 今となれば、こういう手作り感覚も、面白がって受け止めるられる時代。早すぎた実験作というのは褒めすぎかもしれないが、まあ発表するタイミングを間違えたというしかない。
 ポールのアーカイヴ・コレクションは、発売順序にどういう考えがあるのかわからないが、「バンド・オン・ザ・ラン」の次に「McCartney」と「McCartney U」という、あまり評価の高くない作品をもってきたことには、ポールのなんらかの意図があるはず。今後の発表は、「Ram」「Venus & Mars」と、傑作がきて、次に「Speed Of Sound」「Wings Over America」「Linda McCartney Wide Prairie」「Wild Life」。そして、ようやく自分も大好きな二枚「Red Rose Speedway」「London Town」が登場する。この順番の謎は興味深い。

'11/8/11  Quicksilver Messenger Service / Quicksilver Messenger Service ; Anthology Box 1966-1970 (2011)

 サンフランシスコを代表するバンドといえば、グレイトフル・デッド、ジェフアーソン・エアプレイン、そしてクイックシルバー・メツセンジャー・サービスという名前が並ぶ。
 しかし、神格化されたグレイトフル・デッド、後にジェファーソン・スターシップと改名しながら長い間ヒットを連発し続けたジェファーソン・エアプレインという二つのビッグ・ネームと比べると、かなり見劣りするイメージのクイックシルバー・メッセンジャー・サービスの名前が生き延びていることが不思議な気もする。
 しかし、デッドとともに、ジャム・バンドのハシリともいえる熱いツイン・ギターを看板に、エアプレインとも共通するブルージーなボーカルとコーラスを聴かせるスタイルは、当時のサンフランシスコの空気を伝えてくれるバンドに違いない。
 なぜか、つい最近、ファンに人気のファースト・アルバム「 Quicksilver Messenger Service」(1968)が再発売された。彼らの代表作であるセカンド・アルバム「Happy Trails」(1969)も、昨年再発売されている。
 彼らは、その後、3枚目のアルバム「Shady Grove」(1969)、シングル・ヒット「Fresh Air」を含む4枚目の「Fresh Air」(1970)、5枚目の「What 'Bout Me」(1970)とヒット作が続くことになる。しかし、ライブ・バンドらしさを前面に押し出した1枚目、2枚目のアルバムが最も濃厚で聴き応えのある作品だ。個人的には、この2枚のアルバムこそギター・バンドとしての彼らの魅力を最も伝えるものと思っている。熱い。
 そして、ここで彼らのアンソロジー・アルバム「Anthology Box 1966-1970」がリリースされるようだ。CD3枚、DVD1枚の4枚組。CDには、まさに彼等らしい、個人的にも大好きな、60年代のスタジオアウトテイクやライブ音源をたっぷりと詰め込んだいる。またDVDには、熱いライブパフォーマンスを収録。期待は大きい。

'11/8/10  Leon Russell / Live In Japan ; The Best Of Leon Russell (2011)

 最近では、マイルス・デイビス、エラ・フィッツジェラルドと、1960年代の日本公演のライブを出したりして、おやおやと思っている中、レオン・ラッセルの1973年、日本公演のライブが登場した。
 レオン・ラッセルは大ブレイクした1972年の「Carney」のあと、1973年に「Leon Live」という2枚組みのライブ盤を出しているが、その後、名盤「Will O’ The Wisp」が発表された1975年に、日本限定で73年武道館におけるライブ盤「Live In Japan」を発表している。
 今回、初めてCD化されたその「Live In Japan」は、オリジナル全9曲に、ボーナス・トラックとして1971年、ヒューストンでのライブ7曲も収録された豪華版だ。
 レオン・ラッセルといえばカーペンターズでもお馴染みの「This Masquerade」や「Song For You」という稀代の美メロディを作り出す繊細さと、ライブでは狂ったようにアーシーでグルーヴィなロックンロールをプレイするという豪快さという二面性をもつ。また、ドクター・ジョンとも比較される酒とタバコで焼けたようなアジのある声質と粘っこいボーカルもレオン・ラッセルの魅力。
 昨年のエルトン・ジョンとの競演盤が好評だった勢いで発表となったものだろうが、全盛期の勢いのある熱気に満ちたライブ盤の登場は、暑いに夏をぶっ飛ばす、思いがけない贈り物だ。
 なお、今年の5月にはひっそりとベスト・アルバムが出ている。先のエルトン・ジョンとの「If It Wasn't For Bad」も含めて、70年代の中心とした全16曲。「This Masquarade」「A Song For You」「Lady Blue」といつたメロディメイカーぶりは、こちらで堪能したい。


'11/8/8  杏 / Lights (2010)

 まっすぐで、爽やかで、とても気持ちのいい歌声だ。すでに1年も前に出ていたモデルの杏によるミニ・アルバムをゲット。
 森永ミルクキャラメルのテレビCMで杏が歌う「どんなときも。」が話題になつていたが、CMで流れていたのはサビの部分。最近、遅ればせながらフルバージョンを聴いてドキッとした。「どんなときも。」の素晴らしさは、曲のはじめ、低音域で淡々と語りかける部分にあった。技術的にはどう評価されるのかはわからないけれど、この語るように歌う、ナチュラルな歌唱スタイルにグッときてしまった。
 変な言い方だけど、この人はカラオケ・ボックスで歌っていても違和感がないはずだ。この自然体の歌声は、われわれの身の回りに普通にいそうな感覚なのだ。でもって、こんな歌を目の前で歌われたちゃったら、絶対に惚れちゃいそう。
 ストレートなボーカリストといえば、松たか子なんかもそうだけど、この杏のほうがもっとナチュラル。松たか子は頑張っている感じが抜けないけれど、この人は肩の力も抜けて、驚くほどに自然体だ。
 特に低音域での語りかけ唱法には、強い説得力がある。「どんなときも。」は、何回聴いてもゾクゾクとしてしまう。そして、驚いたのが浜田真理子の「あなたへ」を簡単にカバーしてしまっていること。あの淡々とした曲の中、微妙な節回しを聴かせたり、5分近い曲を飽きさせない。ひょっとすると、凄いテクニシャンかと思わせる。さらに、デビー・ブーンの大ヒット「You Light Up My Life」を日本語で歌うのも新鮮。しかし、ちょこっと出てくる英語部分も伸び伸びと気持ちをよく聴かせる。ホントに素晴らしい。
 ということで、選曲も含めて、嫌いなところの無いほぼ完璧な好盤。こうなれば、早くフル・アルバムを聴いてみたい。でも、ミニ・アルバムだからこそ、こういうクオリティの高い作品となったのか。いずれにしても、ともさかりえ以来の逸材におおいに期待したい。

'11/8/2 John Coltrane / Original Album Series (2011)

 ジョン・コルトレーンとマイルス・デイヴィスが好きです。などというと、ジャズの初心者みたいでちょっと恥ずかしいのだが、結局、何年もジャズを聴いてきた結果がそうなんだから仕方ない。
 この二人の音楽は、いまだに新しい発見があつたりして、何年聴いても飽きないんだな。多分、自分でジャズを演奏する人は、もつと早く、彼らの魅力がわかるのだろうが、自らジャズをプレイしない自分としては、これからも何年もかけて、じっくりと少しづつ分かっていくのだと思う。
 ということで、コルトレーンの「Classic album series」は、アトランティック時代のジョン・コルトレーンの5枚組み。「Giant Steps」「Coltrane Jazz」「My Favourite Things」「Coltrane Plays the Blues」「Coltrane's Sound」の5枚。アトランティックのコルトレーンとしては実に収まりがいい。
 ジョン・コルトレーンといえばインパルス時代で独自の境地に到達するわけだが、アトランティック時代のコルトレーンは、他のサックス奏者の上のステージへ駆け上っている時期だ。特に「Giant Steps」と「My Favourite Things」という二枚のアルバムは新たなジャズを切り開いたものでジャズ・ファン必聴の作品であり、それぞれのタイトル曲はジャズ史に残るトラックだ。
 そして「Giant Steps」の後に録音された「Coltrane Jazz」。また「My Favorite Things」と同時に録音された3部作「Coltrane Plays the Blues」「Coltrane's Sound」。どれも、コルトレーンらしい好盤だが、個人的には、地味ながら自信を感じさせる「Coltrane Plays the Blues」がお気に入り。
 しかしながら、このシリーズの欠点は、紙ジャケットながら、印刷された文字が小さくて、ぜんぜん読めないこと。まあ、今ではネットを探せば、細かいデータも含めてたいていのことはわかっちゃうからいいけどね。
 お手軽な金額で、この5枚が揃うわけだから、コルトレーン入門者には当然お勧めだ。

'11/8/1  Miles Davis / The Unissued 1956/57 Paris Broadcasts (2011)

 マイルス・デイヴィスのクールの極みともいえる映画音楽の名盤「死刑台のエレベーター」が録音されたのは、1957年ヨーロッパ・ツアー終了後のこと。バルネ・ウィラン、ルネ・ユルトルジュ、ピエール・ミシュロ、そしてケニー・クラークというヨーロッパ勢を中心としたグループでツアーの後、そのメンバーで「死刑台のエレベーター」を完成させたわけだ。となると、そのツアーで彼等がどのような演奏をしたのか、興味のあるところ。
 このアルバムには、そのツアーでの演奏が収録されているのだが、残念ながら「死刑台のエレベーター」のヒントになるようなものはまったく見当たらない。「Bags’ Groove」「Tune Up」「Four」「Walkin’」など、大きな観客の反応の中、マイルスお馴染みの曲をツアー・バンドで淡々とこなしていく。
 ツアーのために揃えたバンドだったのだろうが、さすがマイルス・デイヴィスは快調に、彼らしく凛々しいプレイを聴かせてくれる。ドラムのケニー・クラークは元気がいいが、他のメンバーはバルネ・ウィランにしてももっぱら引き立て役として控えめだ。だから、なおさらマイルスが引き立つ。マイルスの演奏をヨーロッパの観客にお披露するためのツアーだと考えれば、まあ、こういうことになるのだろう。
 最近は、こういうラジオ音源を使った発掘モノが増えてきて、音の悪さにも慣れてしまったが、このアルバムの音の酷さは如何ともしがたい。熱心なファンの資料用って感じかな。

'11/7/28  America / Back Pages (2011)

 アメリカのニュー・アルバムは、カバー・アルバムと知って、発売を楽しみ待っていた。しかし、ニュー・アルバムととも元メンバー、ダン・ピークの訃報までが飛び込んできた。
 確か、ダン・ピークは宗教上の理由からグループを脱退したはずだけど、自分が聴いているアメリカのアルバムは、いつもダン・ピークが在籍中のものばかり。彼はいつまでもアメリカのメンバーだ。久々のアルバムを複雑な思いで聴くことになった。
 それにしても1972年のデビュー以来、40年間、メンバーの脱退があったとはいえ、解散もせずに活動を続けているバンドというのも貴重な存在だ。最近ではベスト・アルバムやライブ作品が増えてきたとはいえ、それはそれで彼らの安定した人気を証明しているものなのだ。
 そして、このアルバムは、カバー・アルバムとはいえ、70年代に全盛期を迎えたバンドとしては珍しく、60年代、70年代に止まることなく、80年代からつい最近の曲までカバーしている。また、有名曲以外もカバーして、新しいオリジナル・アルバムを聴いているような新鮮さや緊張感もある。
 1曲目にはサイモンとガーファンクルのカバー。「America」を選曲したのは軽い洒落っ気からだろう。そして、ジミー・ウェブの「Crying In My Sleep」もカバーしているが、これはガーファンクルのソロ・アルバム「Watermark」に収録されていた佳曲だ。この何とも渋い選曲が、このアルバムのスタンスを表しているようだ。
 そして、当然に取り上げるだろうと思ったCSN&Yは、ジョニ・ミッチェルの「Woodstock」。しかし、CSN&Yのカバーというよりは、スチール・ギターを取り入れてマシューズ・サザン・コンフォートを意識したカバーのように感じられる。デビュー時に、ニール・ヤングに似ているといわれたデューイ・バネルは、バッファロー・スプリングフィールドの「On The Way Home」でしっかりニールの曲をカバー。
 ビーチ・ボーイズの「Caroline No」、マーク・ノプラーの「Sailing To Philadelphia」、そしてジェイムス・テイラーの「Something In The Way She Moves」と、どれもこれも渋すぎる。
 また何とも不思議なのはゾンビーズの「Time Of The Season」。深読みしてみると、この曲の作者であるロッド・アージェントが結成したバンド、アージェントに参加していたラス・バラッドが80年代にアメリカのアルバム・プロデュースに関わっていた。そんなことが関係しているのだろうか。例の溜息が入っていたりして、まったくアメリカらしくない曲なんだけど、こういうことがあるのがカバー・アルバムの面白さでもある。
 そして、とても興味深いのがファウンテインズ・オブ・ウェインの「A Road Song」という曲。この曲は、まだ公式な録音がされていない曲。それが、まさにアメリカのために書かれたような曲なのだ。オリジナルのファウンテインズ・オブ・ウェインのバージョンは、YouTubeで流れているが、これまでもライブでは評判のよかった曲らしい。8月に発表されめアルバムに収録される予定だが、YouTubeでのファウンテインズ・オブ・ウェインの演奏を聴くと、今回アメリカがほとんどそのままコピーしているのがわかる。つまりオリジナルからしてとてもアメリカっぽいということ。これも、ファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャーがアメリカのアルバム「Here & Now」でプロデュースに関わっていることが関係しているのだろうか。
 また、ニュー・ラディカルズ「Someday We’ll Know」とジン・ブロッサムズの「Till I Hear From You」という二曲も、時代的に他の曲とは違っているが、こういう曲が入ることで、アルバムの雰囲気が懐メロ・アルバムと一線を画することにもなっているようだ。
 そして、ラストはアルバム・タイトルにもなっているボブ・ディランの「My Back Pages」。アメリカがカバーするならば、バーズのバージョンだろうなという予想はハズレ。しみじみとピアノとハーモニウムをバックに歌う。有名な歌詞「Ah, But I was so much older then, I'm younger than that now.」の余韻が心に残る。

'11/7/26  John Coltrane / Unissued Seattle Broadcast (2011)

 最近、ちょっとテンション落ちてるな、ここらで一発、景気をつけてみようということで、コルトレーンのニュー・アルバム「Unissued Seattle Broadcast」に挑戦。
 フリー・ジャズへ向かった後期コルトレーンを聴くにはそれなりの覚悟が必要だ。よし、ということで聴き始めたが、さすが朝から通勤電車で後期コルトレーンはキビしいな。サックスが、ドラムが、ピアノが、頭の中で暴れまわる。が、人込みのなかで、人知れず、暴走するコルトレーンを聴くのもなかなか刺激的。だんだんと馴染んでくれば、快感に変わり、テンションも上昇し、満員の京浜東北線の車内では最高潮。ああ、スッキリした。
 1965年、サックスのファラオ・サンダースと、ベースのドナルド・ギャレットを迎え、フリーの嵐の中に突入していくコルトレーン・カルテット。賛否両論、好き嫌いはいろいろある。フリー・ジャズがいまいち理解できていない自分としては、好んで聴きたい音ではないけれど、コルトレーンだから聴くんだよ。すでに解脱したコルトレーンの解き放たれたサックスには、ただただひれ伏すのみ。
 それにしても、ラジオ放送からの録音ということで、音質的には酷いものだが、このグループの荒々しい勢いは妙に伝わってくる。1曲目こそ、わけのわからない曲だが、「Afro Blue」「Lush Life」「My Favorite Things」と、お馴染みの曲ならば、しっかり受け止められる。なんだかんだ言っても、ファラオ・サンダース以外は、十分に理解可能。極めつけは、やはりラストの「My Favorite Things」。ドラム・セットに雷が落ちたのではないかというようなエルヴィン・ジョーンズのぶち切れたプレイは強力だ。この後、グループを去ることになるエルヴィンもピアノのマッコイ・タイナーも、ハイテンションで暴れまわり、おい、おい、決して嫌いじゃないだろという勢いだ。ただ、途中で演奏がフェイドアウトしてしまうのが残念。
 初心者厳禁。コルトレーン凄いわぁ、と思っていて、音質なんてどうでもええわ、というファンのためだけのアルバム。

'11/7/25  Ann Hampton Callaway / Boom! (2011)

 ボーカリスト、アン・ハンプトン・キャラウェイとリズ・キャラウェイの姉妹によるニュー・ヨークの名門ジャズ・クラブ、バードランドでのライヴ盤。
 二人のおしゃべりも挟みながら、小さなクラブでのリラックスした雰囲気を存分に味わえるアルバム。それぞれがソロ活動で十分なキャリアを積みながら、時に二人でライヴを行うというスタイルは、ニュー・ヨーク版の由紀さおり、安田祥子姉妹というのは悪い冗談。
 姉アン・ハンプトン・キャラウェイは、最近では良質なガッツリとしたジャズ・ボーカル・アルバムを発表している。妹リズ・キャラウェイは爽やかなボーカルでブロードウェイやアニメ映画の歌の吹き替えなどでも活躍中。
 ビートルズ、バカラック、ジョニ・ミッチェルなど彼女たちが聴いて育つたヒット曲をメインに取り上げており、同世代の音楽ファンにとつては、聴きなれたメロディに親しみのもてる作品だ。安田姉妹との大きな違いは、声質がかなり違い、それぞれの個性がハッキリとしていること。そんな異質な二人のデュエットも、なかなか楽しい。
 自分としては、最近のアン・ハンプトン・キャラウェイの作品が気に入っており、本気のジャズを期待したことから、このアルバムでのリラックスした、ラフな雰囲気はちょっと期待はずれということだが、これは、これで楽しめる。これまで聴いたことのなかった妹リズ・キャラウェイの作品に興味がわいてきた。

'11/7/23  Cornell Dupree / Doin' Alright (2011)

 今年、5月8日、ファンキーを絵に描いたようなギタリスト、コーネル・デュプリーが亡くなった。この人を意識し始めたのは、70年代、あのスーパー・バンド、スタッフのメンバーとしてだった。60年代からソウル・ミュージックを裏から支え続けたメンバーが集まり、一躍、表舞台へ登場したバンドだ。既にリチャード・ティー、エリック・ゲイル、そしてコーネル・デュプリーが逝ってしまったわけだが、日本においても押し寄せるウネリのようなパワフルなグルーヴに圧倒されたステージが懐かしい。
 そして、そのコーネル・デュプリーから思ってもいなかった贈り物が届いた。亡くなる2ヶ月前、今年の3月にソロ・アルバムを完成させていたのだ。録音時の映像がYouTubeに流れているが、酸素吸入をしながらのセッションの様子がわかり、痛々しくも感じるが、この作品にかけるコーネル・デュプリーの思いも伝わってくる。
 コーネル・デュプリーは、決して派手なスタイルのギタリストではない。フロントに立つより、アレサ・フランクリンやダニー・ハザウェイなどのバックにまわった時の渋いプレーが評価されてきた。そして、スタッフの諸作品はクロスオーバー時代を象徴するものでもあった。しかし、残念ながらデュプリー自身のソロ・アルバムとなると、それほど高い評価を得ているとは思えない。自分としても、コーネル・デュプリーを聴きたいと思ったとき、ソロ第一作の「Teasin'」以外に手が伸びることはほとんどなかった。
 しかし、この遺作はデュプリーにとっても、ファンにとっても特別な一作となるはずだ。ファンク・ナンバー「Doin' Alright」に始まり、グルーヴィなシャッフル・ナンバー「I Ain't Got You」、ブルージーなギター・ソロがたっぷり聴ける「I Got A Woman」、そしてハンク・クロフォードでお馴染みソウルフルな「Help Me Make It Through The Night」と、ひとつひとつ個性のはっきりとした曲がガッツリと並ぶ。確かに受け止めたぜ。
 そして、恐らく、格別な思いで録音したであろう「Rainy Night In Georgia」には驚いたし、泣けた。ブルック・ベントンのヒット曲だが、ディープなボーカルとともに印象的だった、あのギターのフレーズはコーネル・デュプリーのもの。自分はあの名イントロが流れてくればゾクゾクとする世代。この曲をどう料理するのか、期待して聴いていると、主メロディがいつまでも現れない。まさにカラオケ状態。ボーカルの影に隠れがちな、コーネル・デュプリーの渋い歌伴ギターの名人技を十分に味わうことのできるトラックだ。
 普通ならあり得ないトラック。ひょっとして、コーネル・デュプリーは、人生の最後には、これをやりたかったのかもしれない。ボーカル抜きのカラオケで、たっぷりと歌伴ギターを聴かせる。そう決めていたのかもしれない。バッキング・ギタリストとしての美学、ここにあり。

'11/7/21  JUJU / You (2011)

 いま最も好きなシンガーであり、最も好きな声の持ち主。
 このニュー・アルバムも、すべて肯定的に受け入れちゃう。だけど、ちょっと心配なのは、とてもよくできているアルバムだとと思うけど、できすぎというか、あまりに曲に声がはまりすぎ。既に売れる形ができており、ある意味ワンパターンとも言われちゃいそう。
 それにしても、JUJUの声の魅力。すっと耳に入ってくるのだが、耳にサラサラと触れる微妙なザラつき感と、適度に陰りを感じさせる声が、とても心地よいのだ。
 そろそろ、もっと別の刺激が欲しくなる頃。とはいえ、前作のカバー・アルバムでもわかるように、この人は歌が上手過ぎ。どんな曲でも自分の形に持ち込んでしまう。それがワンパターンと感じちゃうのかな。
 ということで、じっくり聴いても、軽く聞き流してもOKというJUJU。このアルバムもフル回転で徹底的に聴き倒すことになりそう。
 そして、次はいよいよジャズだな。「Cry Me A River」なんてどう?シックにクールにジャズを歌ってほしい。

'11/7/20  手嶌葵 / コクリコ坂から 歌集 (2011)

 震災により大きな傷を負った日本人の心を癒す、清涼剤のような映画がジブリ作品「コクリコ坂から」。クラシックで爽やかなラブ・ストーリーは、舞台が60年代の横浜という懐かしい日本を思い出させてくれる映画だ。
 まさにその時代、その場所で生まれ、育った自分としては、淡く懐かしい記憶が甘酸っぱい感覚とともに蘇える。使われる音楽は、ノスタルジックでジャズの香りのする当時の音を意識したもので、テーマ曲はジブリの声ともいえる手嶌葵の清潔感のあるボーカルが効果的だ。
 サントラ盤もでているが、もうひとつの「コクリコ坂から」ともいえるのが、手嶌葵のニュー・アルバム「コクリコ坂から歌集」。作詞、作曲は、監督の宮崎吾朗、谷山浩子、武部聡志の手によるもの。映画で使われた曲も含めたコンセプト・アルバムとして、宮崎吾朗監督が作詞を手がけることにより、映画とは別の形で「コクリコ坂から」を表現した新しい試みとして興味深い。
 手嶌葵の透明度の高いボーカルは、制作者の意思や、歌う曲によってどんな色にでも染まるまっ更なキャンバスのようだ。涼しげでキリリとした歌声が、懐かしいアレンジに乗って50年という過ぎ去った時の彼方から聴こえてくるようだ。
 最近では、映画のテーマ曲などの洋楽スタンダードのカバーで、新たな面を見せてファンを驚かせてくれたし、また、テレビのCMにも流れている吉田拓郎「流星」では、拓郎とはまったく違う個性で、堂々とした素晴らしいカバーを聴かせてくれた。
 手嶌葵のもつ可能性に対する期待が高まる中、このアルバムではノスタルジックなポップスへの挑戦によりまた新しい表情を見せている。「朝ごはんの歌」を聴いて思いだしたのは、かつて手嶌葵がカバーしたユーミンの「チャイニーズ・スープ」。なるほどメロディを大切にするということでは、美メロの女王、ユーミンのカバー・アルバムなんて面白そう。「海を見ていた午後」や「卒業写真」なんてのはハマリすぎだろう。それから「やさしさに包まれたなら」や「生まれた街で」とか、どれもハマリそう。ああ、聴いてみたいなユーミン・カバー・アルバム。期待しています。

'11/7/11  Paul Simon / Paul Simon ; There Goes Rhymin’ Simon ; Live Rhymin’ ; Still Crazy After All These Years (2011)

 素晴らしいニュー・アルバムを発表したポール・サイモン。好評に応えるように70年代初期の名盤が廉価でまとめて再発となっている。
 メロディ・メイカーとしてのポール・サイモンは、サイモンとガーファンクルの時代から、この70年代のソロ時代に最も輝いていた。1972年「Paul Simon」、73年「There Goes Rhymin’ Simon」、74年「Live Rhymin’」、75年「Still Crazy After All These Years」と、どれも聴きのがすわけにはいかない傑作揃いだ。
 あの当時、ロック・ファンの間では、なかなかサイモンとガーファンクルが好きだと言える雰囲気はなかった。カーペンターズとともに、日本での人気は高く「明日に架ける橋」や「サウンド・オブ・サイレンス」の大ヒットでファン層が広がれば広がるほど、白い目で冷たく見たくなるのが硬派のロック・ファンの常だ。正直なところ、ボクもカーペンターズやサイモンとガーファンクルが好きなのに、他人には言えず、一人密かに楽しんでいた記憶がある。
 そんなサイモンとガーファンクルは、最大のヒット・アルバム「明日に架ける橋」を最後にあっけなく解散してしまう。そして、解散後のモヤモヤとした気持ちを吹き飛ばすように登場したのが、1972年ポール・サイモンのソロ・アルバム「Paul Simon」。シングル第一弾の「Mother And Child Reunion」がレゲエ、第二弾も「Me and Julio Down by the Schoolyard」とリズムを強調して、あえてサイモンとガーファンクルのイメージを壊そうとしたのかもしれない。第三弾のシングル「Duncan」では、S&Gらしさでバランスをとったとはいえ、ソロ・アーチストとして新しい個性のアピールに成功した。
 次の「There Goes Rhymin’ Simon」でもリズムにこだわる。シングルも「Kodachrome」「Loves Me Like a Rock」と明るく軽快な曲。そして、次に「American Tune」では昔からのファンにサービス。アルバムのクオリティとしては前作を上回る。穏やかで芳醇なメロディ・ラインは完成度も高い。ゴスペル・コーラスをうまく使い、ニュー・オーリンズの香りが印象的な傑作となった。
 「Live Rhymin’」は、サイモンとガーファンクル時代の名曲をソロでどう表現するかがポイント。数曲を弾き語ると、その後は、ガーファンクルに変えてゴスペル・コーラスをパートナーとしてS&G時代の曲を再演。見事に新しい音楽に生まれ変わっている。ライブ・アルバムといえば、ファン・サービスだったり、穴埋め的な作品だったり、箸休め的な意味合いが強いが、これは違う。前向きなチャレンジが生み出したライブ・アルバムだ。
 そして、ポール・サイモンの最高傑作は「Still Crazy After All These Years」だ。ヒット曲も、ガーファンクルとの「My Little Town」、フィービ・スノウとの「Gone At Last」、そして「50 Ways To Leave Your Lover」「Still Crazy After All These Years」と充実。ニュー・ヨークのジャズ系スタジオ・ミュージシャンとともに、クールで都会的なサウンドを作り上げた。サイモンの作り出すメロディも洗練されて、粒揃いの曲が並び、ポール・サイモンにとっての代表作となった。

'11/7/6  Paul Simon / So Beautiful Or So What (2011)

 ジャズしろ、ロックにしろ、ミュージシャンが本当に創造的な作品を残すのは、20代、30代のころなんだと思う。確かにベテランになって出てくる円熟味とかアジというようなものはあるけれど、結局は、若いころの創造性を越えることはできないのじゃないかと思う。
 なんてことを考えたのは、ポール・サイモンのニュー・アルバム「So Beautiful Or So What」が素晴らしいから。この人は、今年で70歳になるということだが、70年代に活躍したミュージシャンとしては、数少ない現役感をプンブンと感じさせる人だ。もともとポール・サイモンは若いころから老成したイメージだったこともあり、あまり歳をとった感じを与えない。それにしても、この衰えを感じさせないアルバムは凄い。
 頭からグイグイと攻撃的なリズムで攻め込んでくる。想定以上のパワーに、おっ、と思わずこちらも気合が入ってしまう。思えばサイモンとガーファンクル時代の名盤「明日に架ける橋」での「いとしのセシリア」や「手紙が欲しいで」あたりから始まった、衰えることのないリズムへのこだわり、リズム・フェチぶりは健在だ。
 恐らく熱心な研究の成果なのだろうが、どこかで聴いたことがあるようでいて、新鮮に響く様々なリズムが次々と現れてくる。この楽しさ、心地よいグルーヴ、そして完成度の高さは、若いころの作品と並べてもまったく見劣りすることはない。傑作です。


'11/6/29  Neil Young / Treasure (2011)

 ニール・ヤングのニュー・アルバムは、アーカイヴ・シリーズ9枚目の作品だ。
 現役感バリバリのアーチストがコンスタントに新録アルバムのリリースを続ける中、並行して、過去の発掘モノもシリーズ化して出していくという、まさに前代未聞の企画は着実に進行中だ。ニール・ヤングらしいなと単純に捉えられてしまいがちだが、これって実はとても凄いことなんだと気がつく。
 そして、今回のアルバムは、1984から85年にかけてのツアーのライヴだ。ニール・ヤングにとっての80年代というと、1982年「Trance」、1983年「Everybody’s Rockin’」、1985年「Old Ways」と、一作ごとに作風は大きく変化した、ニールとしても異常に振れ幅の大きな時代だった。ファンとしては、どこまで本気で、どこまで冗談かもわからない、やや不安を覚えた時期でもあった。
 そんな時代に、カントリーのミュージシャンをインターナショナル・ハーヴェスターズとして率いたツアーのライヴ音源を集めたものだ。スライド・ギターのベン・キース、ベースのティム・ドラモンド、ドラムスのカール・ヒンメル、そしてピアノのスプーナー・オールダムなど、「Old Ways」へ繋がっていくおなじみの顔ぶれ。「Trance」「Everybody’s Rockin’」というドタバタが嘘のように、穏やかな表情をみせた「Old Ways」のためのツアーだったのかもしれない。
 ヒステリックないつものニール・ヤングに比べて、カントリーを演るときのニールの表情は、いつも穏やかで気持ちがよさそうだ。時にカントリーを演ることで、自分の中でバランスをとっているのかなと、ホッとした気持ちで聴いていると、アルバム中盤からはだんだんとハードなロックが顔を出してくる。そして、最後に登場する「Grey Riders」でついにブチ切れる。ギターの音が歪み、引きつってくる。ふふふ、やっぱニール・ヤングはこれじゃなくちゃね。

'11/6/28  J.D. Souther / Natural History (2011)

 J.D.サウザーを聴くと、いつも甘酸っぱい思いが込み上げてくる。
 6人目のイーグルスと言われたJ.D.サウザーは、長い間イーグルスの曲作りにかかわってきた。かつてグレン・フライとバンド活動をしたり、アルバム「ならず者」の裏ジャケでイーグルスのメンバーとともにドゥーリン・ダルトン・ギャングを演じたり、まさにイーグルスの準メンバー的な位置づけにあると思われる。特にイーグルスの「Best Of My Love」や「New Kid In Town」など哀愁漂よう曲作りには、サウザーの存在が大きく影響していると思われる。
 そんなJ.D.サウザーのニュー・アルバムは、イーグルスの「Best Of My Love」「New Kid In Town」「Sad Cafe」やリンダ・ロンシュタットの「Prisoner in Disguise」「Faithless Love」、そしてサウザー自身が歌った「You’re Only Lonely」「Silver Blue」といったセルフ・カバー・アルバムだ。新曲も含む11曲は、どれも派手さはないのだが、胸に染みる良質なメロディをもつ名作ばかり。
 アコースティックなサウンドのシンプルなアレンジではあるが、安易な弾き語り的なアルバムとはちょっと違う。サックスやトランペットなどもワンポイントで使い、クールで憎い味付けがされた、ダンディで大人の魅力に溢れたアルバムだ。そして、作品の完成度の高さは、このアコースティック・アルバムが特別な企画ではなく、サウザーが作り続けてきた作品の延長に自然にあるように思えてきた。
 どの曲も好きだけど、さすがヒット曲「You’re Only Lonely」はいい。だけど、やはりボクは「New Kid In Town」が大好き。それにしても、改めて、J.D.サウザーはいい仕事をしたなと感謝。

'11/6/27  エンレイ / テレサの羽根〜ふたつめの伝説〜 (2011)

 エンレイは、6年前から舞台などもこなしながら日本で活動する中国のシンガー。舞台でもテレサ・テンの役を演じるなど、テレサそっくりの声が話題で、彼女が歌う「時の流れに身をまかせ〜パート2」という曲を聴いたのは昨年のこと。
 逸る気持ちを抑えて、アルバム発売を待った。声が似すぎているからこそ警戒感もある。安っぽい物まね芸はすぐに飽きる。そして、今回、ようやくアルバムが発表となって期待と不安が半分づつでゲット。
 しかし、よく似ている。アルバム全10曲、どれを聴いてもテレサ・テン?と思ってしまうくらいよく似ている。ファンの期待に応えるかのように、テレサ・テンのレパートリーも数曲取り上げて、テレサを意識したアルバムつくりになっている。しかし、テレサ・テンを彷彿とさせる歌声も、物まねの無理やり感はなくナチュラルな歌にホッとする。だから、聴いていても気持ちがいい。
 これだけ似ていれば、逆に比較されてしまうのは仕方のないこと。今のところ、スケールが一回り小さなテレサ・テンという印象。しかし、テレサの持ち味であった切なさ、優しさは、この人の歌からもヒシと伝わってくる。きっと多くのテレサ・テン・ファンは好意的に受け止めるだろうし、応援もしたくなるような人だ。
 ちなみにテレサ・テンのカバーは「香港」「別れの予感」「恋人たちの神話」そして、オリジナルのその後を歌う「時の流れに身をまかせ〜パート2」。アルバム全体からすると、カバー曲のほうがテレサ・テンとの違いが感じられる。

'11/6/15  Marcus Miller / TUTU Revisited (2011)

 マイルス・デイヴィスの「TUTU」デラックス・エデイション発売のタイミングを計ったかのように、マーカス・ミラーの「TUTU REVISITED」が発表された。
 これはマイルスの「TUTU」をマーカス・ミラーのグループで再演したツアーのライヴということだが、ツアーは2009年に行われたということで、今回の「TUTU」再発とは直接には関係のない企画のようだ。しかし、マーカス・ミラーにとって、若干27歳で、マイルスとがっぷりと組んで創り上げた「TUTU」の仕事は、大きな意味のあるものであったことは間違いない。
 マーカス・ミラーのアルバムを聴くといつも思ってしまうこと。聴き終わったとき、結局、マーカスのベースだけが強く印象に残ってしまうということだ。これだけ強烈な個性を主張という点では、この人は最近のミュージシャンでは最右翼だ。彼のベースから弾き出される音ひとつで、一気にマーカス・ミラーの世界に変えてしまう。彼独自のグルーヴが確立している。これって、まるで、マイルスみたいだ。
 そして、今回、トランペットのクリスチャン・スコット、サックスのアレックス・ハンという20代の若いミュージシャンをフロントに立ててのライヴ。これまたマイルスの姿を思い出さずにはいられない。自分が20代でマイルスから教えられたことを、マイルスの曲を通して、そのまま次の世代に伝えていこうということだろう。
 若い二人も頑張っているが、マイルスがいない分、オリジナルの「TUTU」以上にマーカス・ミラー一色に染まっているアルバムとなった。個人的には「TUTU」は、それほど聴いていなかったので、「Man With The Horn」の「Jean Pierre」や「Aida」に胸躍る。


'11/6/14  Miles Davis / Tutu (2011)

 マイルス・デイヴィスは、1960年代から70年代にかけて神だった。
 その後、長期休養を経て1981年、「The Man With The Horn」で復活。早すぎた晩年へと突入していく。
 ボクは、この晩年のマイルス作品を聴き返すことはほとんどない。神がかり的な時代が終わり、やはりマイルスも人間なんだなと思わせる時代。たまに聴くのは、「The Man With The Horn」と「We Want Miles」くらいのものだ。
 まさか、晩年のマイルス作品の中から「TUTU」がデラックス・エデイションとして登場してくるとは思いもよらなかった。なんでもマイルス生誕85周年企画という、ようわからんもの。確かに、ジャケットも素晴らしいし、マーカス・ミラーのサウンド・メイクも時代の先端を行っていたものだ。
 しかし、マイルス・ファンとしては、全編にわたるマイルスのミュート・トランペットには抗することはできないのだが、マーカス・ミラーの完成された音の中で、主役扱いとはいえ、道具として使われているという印象が拭えない。そこには、かつてのマイルス作品から発せられる輝くようなオーラは感じられないのだ。しかし、見方を変えてマイルスをゲストとして大々的にフューチャーしたマーカス・ミラーのアルバムとして聴けば、これは傑作といって間違いないのだろう。多分・・・。
 とはいえ、このアルバムにオマケとして付けられたのDISC2はいい。やはりマイルスはライヴになると俄然良くなる。1986年のニース・ジャズ・フェスティバルでのライヴが収録されているのだが、全盛期に比べれば爆発的なパワーこそなくなつているものの、マイルスらしいグルーヴ溢れる演奏が聴ける。
 特に「Opening Medley」「New Blues」「Maze」と続く約30分間の、息もつかせぬ流れはお見事だ。ここを聴くだけでも、このアルバムを買った甲斐があったとホッとする。その後には「Human Nature」「Time After Time」という晩年の十八番も登場し、個人的にはあまり好きではないのだが、ヒット曲ファンも満足させてくれるはずだ。

'11/6/13  Madeleine Peyroux / Standing On The Rooftop (2011)

 マデリーン・ペルーのデビューは、一般的には大きな話題にはならなかったが、ボクのようなビリー・ホリディを好きなポップス・ファンには強い印象を残した。ジャズとポップスの狭間に誕生した彼女の音楽は、埃だらけのラジオから流れてくるような、ノスタルジックな音楽。そして、メローなブルース感覚はまさにビリー・ホリデイが1990年代に突如復活したようなものだった。
 やがて、マデリーン・ペルーの評価も上がり、ジャズ・アルバム・チャートでトップを獲得するようにまでなり、次第に彼女のやりたい音楽ができるようになってきたのだろう。自作曲も増えてきたけど、ボクは申し訳ないがあまり彼女のオリジナル曲には興味がもてない。マデリーン・ペルー流のカバー曲の料理法にこそ彼女の魅力があると思っている。
 このニュー・アルバムでも、ビートルズの「Martha My Dear」、ボブ・ディランの「I Threw It All Away」、ロバート・ジョンソンの「Love In Vain」と大物カバーを3曲取り上げている。フォーキーな「Martha My Dear」、ダークな雰囲気が立ち込めるような「Love In Vain」と、思い切ったチャレンジで聴き所はやっぱりカバー曲なのだ。
 彼女のアルバムは、ジャズ・チャートで上位にランクされているが、彼女の目指す音楽は、ジャズではなく、またデビュー・アルバムのようなノスタルジックなものでもなく、もっと洗練されたアメリカン・ミュージックなんだと思う。でも、ボクはいまだに、彼女のデビュー時の印象を追い求めて聴き続けているのだけどね。

'11/6/11  チーム・アミューズ!! / Let's Try Again (2011)

 桑田佳祐が中心となった被災者支援プロジェクト。桑田佳祐、サザン、福山雅治、BEGIN、ポルノグラフィティ、Perfumeたちのヒット曲を、スターズ・オン45的にメドレーで聴かせる。
 「本商品と本作品の音楽配信によりアミューズが得られる利益のすべては、アミューズ募金を通じて日本赤十字社及び地方公共団体に対して寄付され、被災者救済のための救援活動及び復興支援活動等の資金として使われます。」ということで、それがすべて。理屈抜きに楽しみましょう。
 ネットでも配信されていたこのCDの最大のウリは、オマケのDVD。メイキング映像など約37分間、これがたっぷり楽しめる内容。桑田佳祐ってのは、ホントに人柄がいいね。そして、ハラボーは年とってずいぶんとキレイになった。学生時代から聴き続けてきた同年代のファンとしては、嬉しいぜ。Perfumeとハラボーの絡みもお楽しみ。

'11/6/8  Jazz For Japan (2011)

 「ジャズを愛する日本の友人たちへ」とアメリカ西海岸のジャズ・ミュージシャンたちによる「東日本大震災被災地復興支援CD」が発売。
 スティーヴ・ガッド、ピーター・アースキン、マーカス・ミラー、クリスチャン・マクブライド、ネイザン・イースト、トム・スコット、ケニーG、デヴィッド・T・ウォーカー、リー・リトナーといったお馴染みのメンバーが顔を並べる。
 演奏される曲も「処女航海」「シュガー」「ソー・ホワット」「ソフィスティケイテッド・レディ」など、親しみのある曲がズラリと揃えられている。アルバムの性格上、あまり肩肘張った曲を取り上げても仕方ないし、限られた時間で録音されたものであろうから、アレンジも耳慣れたシンプルなものが多い。
 そういう意味では、面白みに欠けるアルバムだという意見は言うべきではないだろう。海の向こうで、多くのミュージシャンが趣旨に賛同して集まり、日本への気持ちを込めて演奏をした成果なのだ。そう思うと、この選曲は、日本人の嗜好を踏まえたもののようにも思えてくる。ただ、ひたすら有難いと思ってしまう。
 はじめはちょっと地味でイマイチかなと思ったりして、確かに驚くようなチャレンジもあまりないのだが、さすがにこれだけのミュージシャンが揃えば当然という、鉄板の演奏は繰り返しの視聴にも耐えうる安定感。立派なものだ。
 そんな中でも、いくつかの演奏にはハッとさせられた。まず、いま個人的にコルトレーンがマイ・ブームということもあり「ミスターP.C.」に惹きつけられた。ピアノ・トリオにラリー・ゴールディングスのオルガンが加わったカルテット演奏だが、オルガンのグルーヴが沸き立つスピードのある演奏は新しい。リッキー・マイナー&トゥナイト・ショウ・バンドによるウェイン・ショーターの「フットプリンツ」は、ちょっと違うかなと思いつつも、スマートなアレンジが新鮮に感じられる。マーカス・ミラーがブチブチ・ベースを弾かせて、ケニーGがサックスを吹くという「ウォーター・メロン・マン」も意外な組み合わせ。ケニーGって、ジャズ・ミュージシャンなんだね。

'11/6/5  Pizzicato One / 11のとても悲しい歌 (2011)

 ピチカート・ファイブの小西康陽によるソロ・プロジェクトがこれ。知らずに聴けば、ハイセンスな激渋歌モノ・コンピレーション・アルバムだ。
 様々な海外のボーカリストを起用して制作した洋楽のカバー・アルバムということで、まさに小西の趣味全開のアルバムということになるのだが、本人の「何よりも、じぶんが独りきりで聴きたい、と思う音楽を作りました。」という言葉にすべて納得。
 取り上げている曲は「 ワン」「イマジン」「アイ・ワナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー」「バンバン」など有名曲から、ボクも知らない曲まで、いろいろ。懐かしい映画「マッシュ」のテーマ「もしもあの世に行けたら」という選曲にはゾクゾクと。
 起用したボーカリストはマリーナ・ショウ、マルコス・ヴァーリというビッグ・ネームから、ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズという驚きの名前も。個人的に好きなグウィネス・ハーバードには、ちょっと嬉しくなる。
 巷で評判のマリーナ・ショウの「イマジン」はアルバム全体からすれば、小西的なセンスも希薄でやや浮いているような気がする。これを聴いてこのアルバムを判断しないほうがいい。最も気にいっているのはロージーというボーカリストの「ワン」だ。スリー・ドッグ・ナイトのソウルフルなナンバーを、アコースティック・ベースがブンブンと唸るジャジーなアレンジで聴かせる。気に入った。
 本来ならば、あちらこちらから寄せ集めて作るコンピレーション・アルバムを、自分で好きなように作ってしまったという小西康陽にとっての贅沢。これを一緒に楽しめる人は幸せです。

'11/5/28  Amanda Brecker / Blossom (2011)

 父ランディ・ブレッカーと母イリアーヌの間に生まれたサラブレッド、アマンダ・ブレッカーのサード・アルバム。
 デビュー・アルバムはポップなアルバムながら、セカンドでボサノバに挑戦。いよいよサード・アルバムはジャズが聴けるかと期待するも、見事に裏切られる。しかも、キャロル・キングとジェイムス・テイラーのカバーで固めるという想定外の作品となった。しかも、リズム・セクションにリー・スクラーとラス・カンケルを配置するという徹底振り。プロデューサー、ジェシー・ハリスは確信犯だ。
 取り上げた曲は、キャロル・キングの「つづれおり」から5曲。そして、ジェイムス・テイラーはデビュー作、「スイート・ベイビー・ジェイムス」「マッド・スライド・スリム」「ワン・マン・ドッグ」からの6曲。70年代初期の、まさにシンガー・ソング・ライター全盛期の名曲を並べて、ボクなんかは、懐かしすぎて思わずクラクラしてしまう。
 ということになれば、フォーキーで土臭いサウンドになるかと思うと、これが洗練されたセンスのいい音作りがなされている。それは、大きくはダイアナ・クラールのバックで知られるアンソニー・ウィルソンの都会的なギターに追うところが大きいはず。そして、ラリー・ゴールディングスのキーボードも洒落ている。ロック、ジャズ、それぞれのフィールドから選んできた、この絶妙なバランスはジェシー・ハリスのヒットだ。
 ところでアマンダ・ブレッカーはというと、相変わらず、穢れを知らないクリアな美声で、親父心をくすぐってくれる。しかし、今回は、ジェシー・ハリスの見事なプロデュースで、その美声が生かされたようだが、美しいだけでは、そういつまでも続くことはないはず。今後、どんな挑戦をするかを楽しみたい。

'11/5/21  Cannonball Adderley / Great Love Themes ; Laurindo Almeida / The Look Of Love (2011)

 Jazz名盤ベスト&モア・シリーズ第3期から気になる美女ジャケ・アルバムを2枚。
 1枚はジャケットで黒人女性が優しく微笑む、アルト・サックスのキャノンボール・アダレイがストリングス・オーケストラとともに吹き込んだ、いわゆるウイズ・ストリングス・アルバム。取り上げているのが映画音楽のラブ・テーマということで「Great Love Themes」という原題だけど、日本タイトルとして「枯葉」とつけてしまうところに、この人の日本での認識具合がよくわかる。
 テーマがテーマだけにポップなイージー・リスニング・アルバムとなってしまうのは仕方ない。イージー・リスニング好きなボクとしては、個人的に歓迎。しかし、流麗なストリングスをバックに、いかにサックスを美しく歌わせるかがポイントになるはずなのに、「I Concentrate On You」などでは、つい熱くなりすぎてしまうのも笑って許そう。
 「Stella By Starlight」は、ボクがジャズのウイズ・ストリングスに始めてハマった曲。チャーリー・パーカーの「Stella By Starlight」は、オーケストラをバックに天空高く舞い上がるようなソロが素晴らしいプレイだった。キャノンボールのプレイもそこそこかな。問題の「枯葉」も、有名な「Somethin' Else」に比べれば、ちょっと寂しいか。とはいえ、名手キャノンボール・アダレイの作品だ、心して楽しむべし。
 もう1枚は、金髪の美女が謎の表情を浮かべる、ボサノバ・ギターのローリンド・アルメイダがヒット・ポップスをカバーした、これまた立派なイージー・リスニング・ミュージック。
 ローリンド・アルメイダというと、パシフィック・ジャズでバド・シャンクと競演したり、後にLA4などというユニットでの活躍が印象的だが、このアルバムは徹底したイージー・リスニング。それ以外の何物でもないわけで、とても気持ちがいい。BGMにどうぞ。


'11/5/16  安室奈美恵 / Checkmate! (2011)

 去年、突然うちの嫁が安室ちゃんのDVDが欲しいと言い出し、DVDだけではなんなのでDVDつきの「PAST < FUTURE」を彼女のアルバムとしては10年ぶりくらいにゲット。あまりのカッコよさに、続けてニュー・アルバムもゲット。
 今回のアルバムは、安室奈美恵が参加した他のアーチストの作品を集めたもの。そして、このアルバムのために録音したAI&土屋アンナ、AFTERSCHOOL、川畑要、山下智久とのコラボ曲を4曲収録。これがこのアルバムの肝。
 ロック・ファンとしては、なんと言ってもAI&土屋アンナとの競演「Wonder Woman」が痺れる。これは凄いです。AIと土屋アンナの二人と絡むからいいんだろうね。これだけスピードと勢いのある、息もつかせぬロック・チューン、素晴らしいです。
 もうひとつ、韓国のAFTERSCHOOLとのコラボ「make it happen」が元気づけてくれる。単純なポップ・チューンかもしれないけれど、これもAFTERSCHOOLの勢いをうまく利用したコラボだが、韓国の人気アイドループの中心で歌う安室ちゃんの姿が、JPOPだけでなく、アジアの現在のポップス界における彼女の位置づけを象徴しているようだ。
 やっぱ、このアルバムはDVDつきを買ったほうがいいでしょう。安室奈美恵の魅力というのは、とうていCDだけでは収まりきらないものだと思うよ。あの安室ちゃんも、知らないうちに33歳か。すっかり個性も確立して、堂々とした存在感、大物感を漂わせようになってしまったね。

'11/5/14  Joe Farrell / Penny Arcade ; Upon This Rock ; Canned Funk (2011)

 ジョー・ファレルというマルチ・リード奏者、チック・コリアの「Return To Forever」でのフルートの印象は強かったが、特にボクの気を引くアーチストではなかった。しかし、ここで Wounded Bird Records からCTI時代のアルバムが3枚出ると知った、ジャケットを見たときなぜかピンときた。
 とりあえず入手したのが「Penny Arcade」。ハービー・ハンコックやスティーブ・ガッドも参加しているが、これが骨太のファンク・アルバムだ。「Return To Forever」のイメージでいると、ファレルのガッツリ系のサックスに持っていかれるはず。そして、ギターのジョー・ベックが光っている。ジャズというよりはロックを感じさせる尖がつた絶妙のバッキングには思わず唸ってしまう。ハービーのキーボードと張り合うようにな瞬間もいい。ジョー・ベックは、今回の3枚のアルバムのすべてでキーマンとなっている。
 そして、慌てて買ったのが「Upon This Rock」と「Canned Funk」という残りの2枚。「Upon This Rock」は、その手の人たちにはサンプリング・ネタとして有名だという曲。ドラムスとともに、ここでもジョー・ベックのギターがグイグイと演奏を引っ張っていく。うーん、カッコイイ。タイトルからして、明らかにロックを意識した作品。ここでのベックはマイルスとやったときのジョン・マクラフリンのよう。ボクの知っている限り、こんなに輝いているジョー・ベックは知らんよ。ということで、ジョー・ベックのことばかりになっちゃったけど、ジョー・ファレルもベックに乗せられているのか、頑張ってゴリゴリとした力強いサックス吹いてます。
 でもって、もう一枚。タイトルも強力「Canned Funk」。バンド一丸となって熱いファンクが飛び出すようなタイトル曲がいい。前作からの同メンバーで、バンドとしても音が凝縮して濃厚なジャズ・ファンク・サウンドを作り出している。バンドとしてのまとまりのせいか、前2作ほど突出感はないが、やはりここでも注目はジョー・ベック。何だか、どれもジョー・ファレルのアルバムというよりはジョー・ベックのアルバムという雰囲気がしてくるが、それはそれで良し。ジョー・ファレルはラストの「Spoken Silence」で、妙に健康的なフュージョン・ミュージックを披露。ヒット狙いにいったのか、ジョー・ベックもお付き合い。全体の流れからすれば不似合いだけど、佳曲でもあり、それも良し。
 ということで、驚くほど素晴らしかったジョー・ファレルの再発3枚のアルバムは、実はジョー・ベックのギターが主役だったのだ。

'11/5/4  Simone Kopmajer / New Romance (2011)

 オーストラリア出身のジャズ・ボーカリスト、シモーネ・コップマイヤーのニュー・アルバム。
 今回は、クラシックの人気曲に歌詞をつけて歌うという、新たなチャレンジ。選曲はクラシックをほとんど聴かないボクでも知っているようなポピュラーな曲が多いけど、リストの「愛の夢」やら「ラ・カンパネラ」なんてのも揃えて、これは日本人向けの企画なんだろうな。
 シモーネは、相変わらず女性らしい柔らかなボーカルで、丁寧に端正な歌を聴かせている。もうデビューしてから10年は経つのだろうが、いまだに初々しさを感じさせるところが、きっと日本のオジ様ファンの胸をくすぐるのだろう。日本で毎年のようにアルバムがリリースされる理由もわかるような気がする。そういう意味では、クラシックの美しいメロディは、素直なシモーネの芸風にもよく似合っているといえる。
   バックのメンバーも、あえてジャズにしてやろうという気負いもなく、クラシックの香りも適度に残しつつ、とてもナチュラルな感じでジャズとクラシックを溶け合わせることに成功している。いつもの米国録音ではなく、地元ウィーンで地元のミュージシャンと録音されたということも、このアルバムの端正な雰囲気作りに影響を与えているに違いない。

'11/5/3  細野晴臣 / HoSoNoVa (2011)

 細野晴臣のニュー・アルバム。セールスポイントは「1973 年のファーストアルバム「HOSONO HOUSE」以来、38年ぶりに原点に立ち返って歌う全曲ボーカル・アルバムが完成」とのこと。
 ボクの好きな細野晴臣は「HOSONO HOUSE」から「トロピカル・ダンディー」「泰安洋行」まで、YMOの香りがしだした「はらいそ」はあまり好きになれなかった。そして、YMOもノー・サンキューだった。そのなかでも今でも一番好きなのは「トロピカル・ダンディー」だ。
 「トロピカル・ダンディー」は、これまた大瀧詠一で最も好きな「ナイアガラ・ムーン」とちょうど同じ時期に発表されている。当時、両巨匠が揃った「トロピカル・ムーン」というコンサートが開催されたことは、いまだにボクはあちこちで語り草っている。そんなライブの経験もあってか、二人の二枚のアルバムにはコトのほか、強い愛着を感じているのだ。
 そして、この「HoSoNoVa」という作品。歌詞カードを開くと、まずはじめに細野氏の「今回のソロ制作状況は1975年のソロ「トロピカル・ダンディー」にそっくりだと思い始めている。」というコメントが書かれており嬉しくなった。聴き手側からいえば、確かにトロピカル、エキゾティックな無国籍感や、ゆったり余裕の漂流感、そして横丁の旦那的な小粋な物腰、これらは「HOSONO HOUSE」よりは「トロピカル・ダンディー」に相通じるものがある。
 そして、そんな細野らしい雰囲気をプンプンとさせているのが、このアルバム中のベスト「Kimona Girl」だ。「辰巳の茶屋で生まれ浮き名を流す女」という鳥肌ものの歌詞は細野ならではの世界。さらに、鈴木・ローウェル・茂のミステリアスなギターが感動的。久々、傑作と言える楽曲に出会った。

'11/5/1  大瀧詠一 / A Long Vacation (2011)

 日本ポップス史に燦然と輝く名盤「A Long Vacation」の30周年記念バージョンが発売になった。
 しかし、ラジオ「GO! GO! Niagara」を聴いていた世代にとっては、何ともくすぐったい作品ではある。あふれるポップス・センスを、照れ隠しなのか、これまた旺盛な遊び心で包んでいたソロ活動の中、突如として提示された大瀧ミュージックの集大成「A Long Vacation」は、どうにも眩しすぎるアルバムだった。
 だから、ボクとしても、やはり大瀧アルバムで最も好きなのはいまだに「Niagara Moon」であるし、「A Long Vacation」の中では「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」が一番しっくりと落ち着く作品だと思っているのだ。
 アナログ盤からCD、10周年、20周年と何枚も買いなおしているアルバムだ。さらに最近の大瀧のアニバーサリー・アルバムの出し方には、ちょっと疑問も持ち始めて、さすがに今回の30周年はスルーしようかと思っていた。しかし、レコード・コレクターズで改めて本作品のオリジナルのリリースが1981年3月21日だと読んでハッとした。確かに、懐かしき新婚時代、ボロマンションには、いつもこの「A Long Vacation」が流れていた。うちの嫁と結婚したのは、このアルバム発売の3日後、1981年3月24日だったのだ。ということで、ゲット。
 作品のクオリティの高さは改めて言うまでもない。今回の聴き所は、レコード・コレクターズ誌でも本人が言っているように、おまけの純粋カラオケ・バージョンなのだ。30年を経て登場した大瀧のしなやかなボーカルに隠されていたバックのサウンドはとても新鮮だ。伝統を踏まえつつ、1980年代という時代を取り込んだ極上のポップスは、フフフ、なるほどねと思わせたり、ウワッ、こんなフレーズが、こんな音がと驚きも満載だ。
 やはりカラオケでも「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」にホッとする。それまでとはやや路線を変えた作品の中に、あえてこの曲を置いたところに「GO! GO! Niagara」世代は安心を覚えるし、巨匠本人もそうなんだと信じたい。


'11/3/28  Debbie Gibson / Ms.Vocalist (2011)

 1980年代後半に現れた天才ポップス・シンガーというのがデビー・ギブソンの印象だった。
 特に、デビュー・アルバム「Out of the Blue」とセカンド・アルバム「Electoric Youth」をチャートのベスト10に送り込み、セカンドはトップに登りつめた。そして、この2枚のアルバムからシングル・ヒット9曲を生み出した。この勢いは間違いなく時代をリードしていたはずだ。そして、その声質はまさにポップスを歌うために生まれたような人だった。さらに驚くべきことに、アルバム全曲を当時10代だった彼女がすべて書いたという。まさに、天才。
 しかし、その勢いは長くは続かなかった。信じられないくらい、あっという間に急落した。その後も継続して活動はしていたようだが、パタッと名前を聞かなくなって20年。そして、昨年、日本で企画されたのがこのアルバム。日本のヒット曲を英語で歌う、エリック・マーティンのヒット企画の女性版だ。
 エリック・マーティンについては、まったく興味が持てなかったが、デビー・ギブソンとなれば話は違う。しかし、様子見のまま年が明け、米国での発売が決まって今回ゲットとなった。
 ポップス・ボイスはまだ健在だ。スローな曲が多い中でも、さすがに歌は安定している。日本のマイナー・メロディは、彼女の声質にもよく似合っているようだ。満点とは言わないが、久々の作品としては及第点のアルバムといっていいだろう。
 しかし、彼女の大ヒット「Lost In Your Eyes」の日本語バージョンはいったいどういう意図なのか。わざわざ日本のヒット曲に英詞をつけて歌いながら、どうして不自然な日本語をつけて歌う必要があるのか。それなら、日本の曲をそのまま日本語で歌うべきだったろうな。


'11/3/21  Neil Diamond / The Bang Years 1966-1968: the 23 Original Mono Recordings (2011)

 ニール・ダイアモンドが60年代にバング・レコードに残した音源によるコンピレーションがオリジナル・モノ・レコーディングで登場。
 ボクにとってのニール・ダイアモンドといえば、プレスリーがカバーした「スイート・キャロライン」や「クラックリン・ロージー」が聞きはじめだった。もちろん本アルバムにも収録されたモンキーズの「I'm A Believer」の作者とは知っていても、ポップな作風にしてはやけにビターな声質で、やや違和感を感じていて、それがまた強く印象付けられた人だった。その後、70年代には超ビッグなスターとなっていくわけだが。
 このアルバムは、そうしたニール・ダイアモンドがビッグになる以前の作品集。とはいえ「Solitary Man」「Cherry, Cherry」「Girl, You'll Be a Woman Soon」「Kentucky Woman」「Thank the Lord for the Night Time」さらにモンキーズの「I'm A Believer」など良質なヒット曲が満載。
 ところで、このアルバムで最も気に入っているのはトップテンヒットとなった「Girl, You'll Be a Woman Soon」。この曲は、後に映画「パルプ・フィクション」のサントラにアージ・オーヴァーキルのバージョンも収録され、なかなかカッコ良かったけど、決定版は日本で大ヒットしたクリフ・リチャードのカバー。「燃ゆる乙女」という邦題で、クリフ・リチャードの「溜息」が聴かれ、子どものボクも何だかからないけど凄いなあと思っていた。きっと当時のポップス・ファンのお姉さま方は心を濡らしたに違いない。
 ということで、ニール・ダイアモンドのオリジナル・モノ・レコーディングがいい。最近は、ステレオ録音が鬱陶しくなるくらい、モノラルがいい。モノラルだと胸を張って言えるようになったのは、ビートルズのモノ・ボックス効果なんだろう。さすが、いつまでたってもビートルズだ。

'11/2/26  Phil Spector / Wall Of Sound ; The Ronettes / Be My Baby ; Darlene Love / The Sound Of Love ; The Crystals / Da Doo Ron Ron (2011)

 この3〜4日はフィル・スペクターが創り出す音の壁にどっぷりと浸かって過ごしている。
 なんでもフィル・スペクターのフィレス・レコーズの創設50周年にあたるということで、フィル・スペクター、クリスタルズ、ダーレン・ラヴ、ロネッツのベスト・アルバムが発売になったのだ。それがとてもリーズナブルなお値段でもあるし、音も非常に聴きやすいものになっている。ジャケットもなかなかイイ雰囲気で、ポップス・ファンとしたら、これは迷うことなく買ってもバチは当たらないだろう。
 フィル・スペクターの創り出したウォール・オブ・サウンドには、普遍的な魅力とパワーが吹き込まれていた。いつ聴いても甘酸っぱい懐かしさは感じさせるが、ホコリっぽい古臭さなどは微塵もなく、いつまでもキラキラとした輝きを湛えているポップスの金字塔だ。
 ロネッツは「Be My Baby」の決定的なヒットで知られるスペクター・サウンドを代表するアーチストだ。フィル・スペクターが惚れ込んだロニー・ベネットのボーカルはとても魅力的。1枚選ぶとなれば、このアルバム。
 ダーレン・ラヴはクリスタルズの代役として「He's A Rebel」をヒットさせた後、ソロとして活動をスタート。初ヒット「(Today I Met) The Boy I'm Gonna Marry」は、ボクも大好きな名曲。
 クリスタルズは「Da Doo Ron Ron」の大ヒットでお馴染み。個人的には、ロネッツに比べるとリード・ボーカルの魅力がないためか、いまいち愛着が持ちづらいグループだけど、間違いなくスペクター・サウンドを代表するグループのひとつではある。
 最後にフィル・スペクター名義のアルバムは、ロネッツ、クリスタルズなど、ライチャス・ブラザーズまで彼のプロデュース作を詰め込んだ、ベスト・オブ・ウォール・オブ・サウンドといった内容。他の3枚を入手した場合は多くの曲が重複することになる。かといってこれ一枚19曲ではフィル・スペクターのほんの入り口にすぎないという微妙なアルバム。
 

'11/2/22  Aretha Franklin / The Great American Songbook (2011)

 ソウル・ミュージックの女王、アレサ・フランクリンがコロンビア時代に残したスタンダード・ナンバーのコンピレーション。
 全18曲ながらミックス違いが2曲入っているものの、新たな音源などはない。3月に発売が予定されている「Take a Look: Aretha Franklin Complete on Columbia」という12枚組みボックスの先遣隊的な役割を担っているアルバムのようだ。
 アレサ・フランクリンといえば、アトランティック時代のスケールの大きな爆発的な唱法で圧倒的に評価を高めたのだが、それ以前、コロンビア時代もぜんぜんイケテいる。今からすれば、彼女らしさが生かされていないということになるのだが、ダイナ・ワシントンのようなジャズやブルースを感じさせるスタンダード・シンガーとして、それなりの評価も得ていた。ただ、アトランティック時代が凄すぎるのだ。1961年から65年にかけてのレコーディングということだがら、1942年生まれのアレサとしては、19歳から23歳までの若かりし日の記録だ。それにしちゃあ上手い。やはり只者じゃない。
 この時代のアレサのアルバムはほとんど持っていないけど、それにしても、なかなかイイ音だ。音に無頓着なボクでもそう感じる。アルバム・ジャケットも「Aretha Franklin Yeah!!!」の使いまわしだが、これもなかなかイイ感じ。こりゃ、下手すると12枚組みを買うハメになってしまうかもしれない。ヤバイよ、ヤバイよ。

'11/2/19  Joe Pass / A Sign Of The Times (2010)

 ジャズ名盤999ベスト&モアというシリーズ。ジャズの名盤を超お手頃な値段で提供してジャズ聴き始めのファンにはありがたいシリーズだ。ボク自身も過去に、名盤ブームといわれる中、廉価盤でジャズを聴き漁ったものだったが、さすがに999円というシリーズはなかったはずだ。
 しかし、一般のジャズ・ファンにとってはこの「ベスト&モア」シリーズの「モア」が面白いところでもある。レコード会社の担当者の趣味が、この「モア」の部分に籠められているだ。このジョー・パスの「A Sign Of The Times」(ノーホエア・マン〜ひとりぼっちのあいつ)も日本盤初登場ということだけど、この「モア」がなければまず日の目を見ることはなかったアルバムだろう。
 ボクはジョー・パスといえばパシフィック・ジャズ時代が大好き。特に名盤「For Django」は個人的にはパスのベストだと思っている。そんなパシフィック時代にパスは妙なアルバムも作らされている。半年ほど前にこのシリーズで登場した「Stones Jazz」も変り種だったが、この「A Sign Of The Times」はもっと変。これはジャズ・アルバムではなく、イージー・リスニング・アルバムだ。
 でもって、ボクが気に入ったのもそこ。バート・バカラックのように大きく女性コーラスをフューチャーした、1965年という時代を感じさせるポップス・アルバムだ。パスのギターとさわやかな女性コーラス、そして全編にチェット・ベイカーのフリューゲルホンもフューチャーされた、ラウンジ系のBGM狙いのイージー・リスニング・ミュージック。バート・バカラックが好きな人には間違いなく気に入ってもらえそう。

'11/2/16  Rod Stewart / The Best Of... The Great American Song Book (2011)

 最近はスリムクラブかよと突っ込みを入れたくなるロッド・スチュワート。
 まさかの「Vol.4」。まさか、まさかの「Vol.5」。もう何が起きても驚かないと思っていたはずなのに驚いてしまった「The Best Of...」。ということで発売されてしまった「The Great American Songbook」シリーズのベスト盤だ。
 確かに、新曲で悩むこともないし、昔ながらのアレンジが受けて「Vol.1」から「Vol.5」まで、ビルボード・チャートが4位、2位、1位、2位、4位と、バカ売れしている美味しい商売だ。これはレコード会社的にも簡単にはやめられるはずがない。
 1曲「You'll Never Know」を除いて、すべて既発売というのも、なんだか寂しいな。未発表曲がほとんどないということは、それだけ効率的にアルバムが作られているということだろうから、ますます美味しい仕事だったということになる。てなぐあいに、なんだか文句たらたら言ってるけど、結局、聴いているとホッとしてしまうのも、ロッドの愛すべきスタンダード・ナンバーなのだ。
 まあ、ベスト・アルバムが出たってことは、これでホントに一区切りということなんだろう。提案。これだけ楽をしてしまったら、今さら新曲だけでニュー・アルバムってのも考えにくいから、スタンダード・ナンバーをルーズなロックン・ロールで演るってのはどうだろう。うん、なかなかいいアイデアだな。

'11/2/12  Miles Davis / Bitches Brew Live (2011)

 エレクトリック・マイルスこそ、ポピュラー音楽の最高到達地点だという信念は、いまだに揺らぐことはない。
 そのエレクトリック・マイルスの記念碑的作品「Bitches Brew」録音前後に行われたライブの音源が発表となった。収録されているのは69年8月のニューポート・ジャズ・フェスティバルでのライブ音源と、70年8月のワイト島ロック・フェステイヴァルでのライブ音源。ワイト島のものは、既によく知られたものだが、ニューポート・ジャズフェスのものは、新たな発掘音源だ。
 この時期のマイルス音源は、音質的にはいろいろあっても、演奏自体は悪かろうはずがない。というか、ここには予想をはるかに超えたスリリングな会心のプレイが詰め込まれている。
 ワイト島音源は、マイルスのほか、ゲイリー・バーツ(ss)、チック・コリア(elp)、キース・ジャレット(org)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds)、アイアート・モレイラ(perc)というメンバーで、集まった多くのロック・ファンに殴り込みをかけ、熱いグルーヴをぶちまけた熱演は、すでに定評があるものだ。
 一方、初登場のニューポート音源は、マイルス、チック・コリア(elp)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds)というロスト・クインテットからウェイン・ショーターが欠けたロスト・クァルテットという珍しいメンバー。しかし、ここでもショーターの不在をものともせずに強烈なグルーヴを巻き起こす。特に、次々と音を繰り出し、マイルスと渡り合うジャック・ディジョネットとチック・コリアの攻撃的なプレイは、まさに最強のロスト・クインテットの面目躍如。
 それにしてもアルバム・ジャケットが海賊盤かと思うような、あまりにチープでお粗末なもので残念。発売の情報を聞いたときには、とても正規盤とは思えなかった。こりゃマイルスが生きてたら、ただじゃ済まないぜ。

'11/2/1  Hakuei Kim / Trisonique (2011)

 イケメン・ジャズ・ピアニスト、ハクエイ・キムが率いるピアノ・トリオ、トライソニークのアルバム。
 このトリオを始めて観たのは、昨年夏のヨコハマ・ジャズ・プロムナード。楽しみにしていたのだが、思いのほか勢いのある演奏は良かったのだが、いまいちバンドとしてのまとまりが感じられず期待はずれな部分もあった。
 そんなことからも、このアルバムへの期待は大きかったのだが、リリカルなピアノとスリリングなバンドの演奏は、十分にその期待に応えてくれるものだ。しかし、スローな演奏ではピアノが際立つが、アップテンポのナンバーでは杉本智和& 大槻“カルタ”英宣というリズム・セクションが俄然面白い。
 去年のライブでも唯一好印象を残した「Take Five」は、このアルバムの中でも白眉といえる。クールなピアノも、もちろんいいのだが、この曲でのピアノはとても熱いし、このリズム隊との絡みならば、このようなホットな演奏のほうが断然魅力的だ。もう一度ライブを聴きたい。

'11/1/30  Eva Cassidy / Simply Eva (2011)

 1996年、惜しくも33歳の若さで夭逝し、その後、静かに輝きを始めたダイヤモンド、エヴァ・キャシディのニュー・アルバム。
 すべて彼女自身のギターでの弾き語りによる未発表音源集だが、彼女の歌には、ただ、ただ感動するだけだ。取り上げている12曲は、多分「San Francisco Bay Blues」を除いて馴染みのレパートリーだが、どれも新鮮だし、スリリングなものばかり。
 エヴァ・キャシディのボーカルの魅力は、もちろん歌のうまさではあるが、圧倒的な存在感を示すようなボーカリストではない。どちらかといえば、ちょっとしたことで崩れ落ちてしまいそうな、脆さ、危うさを感じさせながらも、力強く歌う姿が感動を呼ぶところなkのだと思う。
 原曲のメロディを思い切ってアレンジする彼女の能力は「Over The Rainbow」の素晴らしいカバーで広く知られているが、このアルバムでも「San Francisco Bay Blues」が初出ということもあり、その歌いまわしがとても新鮮だ。かつてフィービ・スノウもこの曲の大胆なカバーを歌っていたが、エヴァ・キャシディのチャレンジにも拍手。
 完全に彼女にマイっているファンにとっては、どの曲もボーカルも、ギターの音もどれもが心に染みる名演揃いということになるだろうが、カーティス・メイフィールドの「People Get Ready」、シンディ・ローパーの「True Colors」、サンディ・デニーの「Who Knows Where the Time Goes」そして、もはや別の曲といっても過言ではない「Over The Rainbow」へと続く、よく知られた名曲たちの流れは、静かながらも圧巻である。


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