<第6話>

モーヤンは混乱していた。自分は犯人ではない、犯人を知っているが、今はいえない、と言った。どうしたらいいのかわからなくて、姿をかくしているとも言った。「モーヤン、人が殺されているのよ。あなたが犯人でないなら、警察へ行って、本当の事を話すべきじゃないの」「わかってる。だけど、今はだめだ」「じゃ、いつならいいの?」「1週間たったら、必ず警察に行くよ。それまでここで会ったことは秘密にしてくれ」モーヤンとはそれきり会うことはなかった。ノブはイヤな予感がすると言った。「どういうこと?」「だって、犯人を知っているのに言えないってことはモーヤンの身近な人が犯人ってことだろ?だとすると、おれたちの知る限り、リサかアキさんしか考えられない」「まさか。アキさんはあの時、私たちと一緒にいたのよ。犯人であるわけないじゃない」「とすると、リサか」「それもない。だって、売れっこのアイドルなのよ。そんなリスクをおうと思う?」「じゃあ、誰が犯人だって思うわけ?」「まだ、私たちの知らない何かがあるのよ。アキさんたち姉妹のこと、調べてみない?」ユミの提案で二人はリサとアキの過去と現在を調べることにした。

<第7話>

リサとアキの姉妹は箱根の出身だった。とすると、立花の事件に関係があるかもしれない。姉妹を知る友人の話によると、子供の頃、リサは友達の男の子と遊んでいるうちに道に迷い、その男の子をおきざりにして一人で山道から家にもどったことがあったという。その男の子はそれから2日後、近くを散策していた観光客に発見され無事にもどったが、その時の恐怖がずっと残り、あまり学校にも来なかったらしい。その少年の名は立花啓一。「啓一ってまさかオフ会のメンバーの?」「そして、殺された立花隆一はその兄」「偶然チャットをとおして啓一君とモーヤンがあってしまった」「だけど、その時は啓一君もモーヤンもリサ姉妹との関係を知らなかったと思う」その後、何が起こったのか、まだユミとノブにはわからなかった。しかし、この事件の犯人候補がまた増えてしまった。それは啓一だ。

<第8話>

「だけど、啓一君と隆一は兄弟なのよ。おにいさんを殺すと思う?」「わからないよ。事故って可能性もあるって警察は言ってたし」「ねえ、掲示板を利用して目撃者を探してみようか」二人はホームページの尋ね人の掲示板に書き込んでみた。最初はいたずらもあったが、一人だけ真実に思える反応があった。その書き込みは、女性からのようだ。現場は民家のない山道だったが、たまたま箱根のホテルに泊まっていたその人は朝の散歩に出かけて現場を目撃したという。男性2名、女性1名で口論しているところをみたが、そのまま通り過ぎたという。そうしたら、大きな叫び声とがけを何かが落ちていく音が聞こえ、女性と男性が逃げるようにその場を立ち去ったという。「警察に知っていることを話てほしい」と、掲示板にかきこんだが、「それはしたくない。なぜなら、その現場にいた女性は友達だから」とあった。

<第9話>

それからその女性は掲示板に書き込んでこなかった。このことを警察に連絡して発信元を調べてもらうことにした。その結果、なんとその女性は加藤アキだとわかった。警察がアキに事情を聞き、その現場にいたのは隆一、啓一とリサだと話た。口論の後、隆一がガケに落ちた。アキはそれをリサから聞いたが、おそろしさで告白できず、私たちが掲示板にのせたことを知って、観光客を装って書き込んできたのだ。そして、書き込むことで警察が動くことを知っていた。すぐに、警察はリサに事情を聞いたが、泣いてばかりで取り調べがすすまなかった。一方、啓一は行方不明のまま。リサとアキは仲のいい姉妹だった。それを隆一の出現で子供のころのリサと啓一のいきさつを思い出す結果になった。せっかく忘れかけたイヤな記憶がリサを苦しめていた。それに、隆一はそれをネタにアキにつきまとっていたらしい。啓一は子供のころの恐怖からなかなか立ち直れなかった。さしせまった状況においこまれると、パニック状態になり、精神が不安定になった。しかし、リサを恨んでいたわけではない。むしろ、タレントになって活躍するリサを応援していた。名前を変えてファンクラブにも入っていたようだ。でも、隆一は違っていた。弟の啓一のことでリサを恨んでいた。

<第10話>

話は急展開をみせた。リサと隆一が口論になり、それを啓一が止めようとした。ところが、興奮した隆一がリサをガケからつき落とそうとした。啓一はパニック状態になり、叫びながらリサを助け、隆一が反動で足をすべらせガケから落ちた。事故だったのだ。しかし、リサと啓一はそのまま現場から立ち去ったってしまった。新聞で隆一が死んだことがわかってリサはアキに真実を話た。アキは悩んだすえ、私たちが掲示板に書き込んだことを言ったため、それを利用して告発した。しかし、啓一はいったいどこへかくれているのだろう。そして、モーヤンはなぜ姿をかくしているのか。まだ、何か隠された事実があるのか。

<第11話>

モーヤンは一週間たったら、警察へ行くと言っていた。しかし、その一週間がたったが、モーヤンは姿を現わさない。そんな時、モーヤンからユミあてに郵便物が送られてきた。中にはフロッピーが入っていた。「この郵便が届く頃にはぼくはこの世にいないかもしれない。だから、真実を誰かに聞いてもらいたくてこれを残します」そんな書きだしではじまった文書には事件の経緯が書かれていた。モーヤンは隆一のストーカー行為をやめさせようと説得を続けたが彼は止めようとしなかった。最初は彼のアキに対する想いがそういう行為に走らせていると思っていたが、それは少し違っていた。隆一はアキに真実を聞き出そうとしていたんだ。それは彼等が学生の頃、隆一とアキの間に子供ができたことが発端となっていた。結婚を反対され、泣く泣く別れたが、その時アキは妊娠していた。子供は生まないとアキは隆一に告げたが、実際は出産し、その子は施設に預けられた。隆一はそのことを最近知ったらしい。隆一はどうしてもその子に会いたいと思っていた。なぜなら、隆一は白血病の宣告をうけ、あまり長く生きられないと思っていたからだ。だから病院をだまって抜け出してはアキに事実を聞き出そうとしていたのだ。

<第12話>

モーヤンはいろいろ調べていくうちにさらに重大な事実を知った。それはモーヤンが1年前に起こした交通事故で幼い少女が重傷をおったことだ。突然道路に飛び出した少女はその後自分で歩くことができなくなった。その少女が隆一とアキの子供だった。それを知ったアキは復讐のためにモーヤンに近づいた。しかし、モーヤンを愛してしまったアキは復讐を実行できずにいた。事実を知ったモーヤンはアキの前から姿をかくした。そんな時、妹のリサから呼び出されたモーヤンは箱根で隆一の事故を目撃する。啓一とリサが現場を去った後、隆一が落ちたガケをおりて救出しようとしたが、隆一は消えていく意識の中で、このままにしてくれと、言ったという。モーヤンは隆一の願いをききいれた。それからモーヤンはリサに何度も警察に届けるようにせまったがリサは、逆に交通事故でアキの子供に重傷をおわせたモーヤンをせめた。モーヤンからの文書の最後の部分にはこう書いてあった。「これが運命だといいきかせるには辛すぎる。だけどアキを愛していた」

<第13話>

モーヤンは苦しんでいたんだ。彼が起こした交通事故の被害者がアキの娘だなんて、悲しすぎる。モーヤンは自殺するつもりなのか、それとも。ユミがこの文書をどうしようかと考えていた時にノブから電話がはいった。「ユミちゃん、大変だよ。モーヤンが死体で発見されたって」テレビのニュースによると、自宅にもどったモーヤンが死んでいるのを宅配便の配達員が発見したという。現場のテーブルにはワイングラスが2つおかれ、白い菊が飾られていた。指紋はふきとられ、目撃者はいない。犯人はリサなのか、アキなのか。ノブとユミはアキの子供を探しだすことにした。その結果、またも悲しい現実を知ることになった。その子供は1週間前に肺炎で亡くなっていた。モーヤンはこのことを知っていたのだろうか。すぐにユミたちはその子供のお墓を探した。小高い山の上の小さなお寺でユミがみたのは、白い菊で飾られたお墓の前でモーヤンの写真を抱いて死んでいたアキだった。

<第14話>

事件は終わった。モーヤンを殺害し、自殺を図ったアキ。殺されると知りながらアキを愛していたモーヤン。悲しい結末だった。その後、啓一は保護され、病院に入ったことがわかった。リサは芸能界から去り、養護施設で働いている。ユミはもうチャットにはまることはなかった。なぜなら、ノブという素敵なメールフレンドができたからだ。

(終わり)