小児の斜視 strabismus

  

T.両眼視の発達
1) 両眼視のレベル:(1)→(3)と高くなる。大型弱視鏡で検査する。
(1)同時視:外界の物体を両眼で同時に見ている状態( ⇔ 抑制:眼位ずれが長く続き
複視が持続するとそれを避けるために片眼の資格を抑制する抑制が見られる。小児で
はこれが起こりやすい)

(2)感覚性融像:両眼の網膜像を感覚的に融合させひとつの物体として認知する。
  c.f.運動性融像:眼位ずれに対して、眼球の視線を合わせるために輻湊あるいは開
  散し一つに融像した網膜像を得る眼球の動きをいう。

(3)立体視:感覚性融像が成立した上で、左右網膜像の少しの違い(=両眼視差)から
三次元的な立体感を売る。

2) 両眼視成立の必要条件
(1) 左右眼に著しい視力の差がない:1眼が1.0のとき、他眼が0.3以下では立体視が成
立しない。

(2) 左右眼に著しい不等像がない:限界値は5〜7%。
(3) 顕性斜視がない:感覚性融像が可能な眼位の状態にある。
(4) 網膜正常対応:解剖学的な中心窩に機能的に網膜の視機能の中心点がある。 
  c.f.機能の中心が中心窩にない場合は偏心固視と呼ばれる。

3) 両眼視機能の発達
  両眼視は6歳までに完成するが感受性期は1〜2歳で・両眼からの入力により大脳皮
質に両眼視細胞が形成される。感受性期に片眼遮蔽や斜視があると両眼視細胞の形成が
障害され、感受性期を終える(臨界期)と両眼視機能はそれ以降いくら発達の機会を与
えても形成されない。


U.斜視総論 strabismus, squint
1) 概念:両眼の視線が正しく目標に向いてなく、ずれている状態。その根底には感覚
面の異常(抑制・弱視・対応異常など)や運動面の異常(過動など)を伴う症候群であ
る。

*斜位:一眼を遮蔽する、完全暗室にするなど、両眼の同時視覚入力を阻害すると、
の人固有の眼位の安静位をとり、これを斜位という(内斜位・外斜位)。両
眼開放し固
視するときは眼位は正位である。これは生理的な現象である。
*偽内斜視:子供は鼻根部が広いので見かけ上内斜視に見える。
2) 分類
・共同性・麻痺性
・外斜視・内斜視・上斜視・回旋斜視
・乳児内斜視・調節性内斜視
・恒常性・間欠性
3)検査法
1) 眼位ずれの検出:角膜反射、遮蔽試験

2) 眼位ずれの定量:プリズム、大型弱視鏡による定量

3) 運動制限、下斜筋過動のチェック 
4) 発症時期:写真、ホームビデオを持参してもらいカメラのフラッシュに対する角膜反
射の位置をチェックする。
5) 視力検査:調節麻痺剤を使用し正確な屈折検査後に行う。視力検査は3歳ごろから可
能になり、それまでは縞模様を用いたTeller acuity cardなどを用いて類推する。小学
校就学までは、多くの視標を同時に提示すると判断に困難を生じる「読み分けへ困難」
が見られ、視力検査時に「字ひとつ視標」を用いる。
7) 頭位異常・斜頚:それぞれ先天眼振・先天性上斜筋麻痺を示唆する。
6) 両眼視機能の検査





V 斜視各論

(1) 乳児内斜視 infantile esptropia
・発症時期:生後1年以内に発症(6カ月以内発症を先天内斜視 congenital esotropia
として区別することもある)

・原因:不明。
・治療:当科では診断が確定して眼位ずれが確実に定量される2歳ころまでに手術を行
うが、手術の時期に関しては施設により見解の相違がある。立体視獲得の立場からは早
期手術が推奨されるが、実際には両眼視の獲得は困難なことが多い。

 
   治療前 右眼固視      左眼固視         手術後
(2) 調節性内斜視 accommodative esotropia

・発症時期:生後2年前後(この時期までに調節性輻輳が可能になる)。
原因:遠視によるぼけを補正するために強く焦点調節が起こると、調節性輻輳により眼
位が内斜視する。

 *近見反応の三要素と呼ばれるものは、焦点調節・輻輳・縮瞳で、これらは中枢で連関
している。調節に伴う輻輳を調節性輻輳、輻輳に伴う調節を輻輳性調節と呼ぶ。)

・+2D以上の遠視があれば疑う。斜視角が動揺し、時に注視する時に内斜が著明になる。
治療:調節麻痺剤で正確に遠視の度を測定し、遠視矯正眼鏡を装用。
 
     治療前        遠視眼鏡装用後
(3) 部分調節性内斜視 partial accommodative esotropia
 乳児内斜視と調節性内斜視の要素をあわせ持つ。しばらく遠視眼鏡を装用させ残った斜
視について手術治療を行う。

(4) 外斜視 exotropia
 年齢に関係なく発症する。
間歇性外斜視 intermittent exotropia:注視する時は正位であるが、疲労時・ぼんや
りしている時・眠い時・暗闇などで外斜する。輻輳も一般に不良である。進行して恒常性
外斜視に移行することがある。程度がはなはだしく目立つ時、眼精疲労を訴える時は斜視
手術を行う。

・恒常性外斜視 constant exotropia:外斜視のまま正位にならない。両眼とも視力がよ
く両眼視機能が期待できれば機能的な手術適応であるが、両眼視を得られなくても外見上
の問題で手術をすることがある。

(5) 続発性斜視
  外傷や全身疾患など融像を阻害する要因があると小児では容易に眼位が障害される。
(重症筋無力症・眼筋麻痺・眼窩壁骨折・腫瘍など)

(6) 下斜筋過動症 overaction of inferior oblique
  内上方(下斜筋の作用方向)で眼球が過度に上内転運動する。程度の大きいものに下斜
筋の切腱術を行う。
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