視神経炎 optic neuritis
@概念:急性の視力低下を来たす視神経原発の疾患で脱髄などの機序が推定されている。
A疫学:日本では成人人口10万人に1.6人/年、全ての年齢に起こり得る。両眼性は約1/3。
B成因:若年者〜中年では脱髄性変化が多いと考えられ回復は比較的良い。動物実験で髄
鞘に対する自己抗体が推定されてる。視神経炎の約1割が多発性硬化症に移行し、多発性
硬化症の約2/3に経過中に視神経炎を伴う(急性横断性脊髄炎と視神経炎の合併はDevic病
と呼ばれる)。血清学的に自己免疫疾患が推定されることもある。高齢者では視神経栄養血
管の循環障害が多いと考えられ回復不良のことが多い。後部虚血性視神経症という概念もあ
るが、虚血の直接の証明ができず脱髄との鑑別は難しい。小児ではウイルス感染に対するア
レルギー反応や髄膜炎の波及が比較的多く、一般に両眼性の視神経乳頭炎タイプで発症し
予後良好である。このように単一疾患でなく,種々の機序を含むものと推定される。
C分類:検眼鏡所見上、乳頭腫脹を伴う視神経乳頭炎(papillitis)と乳頭所見が正常な球後神
経炎(retrobulbar optic neuritis)に大別される。頻度は同等。
D臨床像:しばしば感染症や眼球運動時の球後痛が先行する。視力障害の程度は種々だが
数日かけて悪化し、明るさを失い白っぽく感じられ、中心暗点を呈する。
E検査所見:視力が低下し、求心性瞳孔障害を呈する。視野障害は中心暗点とマリオット盲
斑の拡大(盲斑中心暗点、ラケット状暗点)を示すことが多い。中心フリッカー値の低下、色覚
障害、コントラスト感度低下、視覚誘発電位(VEP)のP100成分の減弱と潜時遅延を示す。CT・
MRIでは急性期において視神経の腫脹・高信号と造影効果が認められる。


F診断・鑑別診断:上記の症候と検査所見を総合して診断するが、種々の視神経症の充分な
除外が必要である。画像診断の進歩により視神経の炎症所見がT1脂肪抑制で造影したMRI
画像で高頻度に捉えられるようになり、多発性硬化症の脳脱髄プラークの検出にも適し、側
脳室周囲白質が好発部位である。多発性硬化症によるものではさらに髄液検査でIgG上昇・
オリゴクローナルバンド・ミエリン塩基性蛋白陽性、VEPで著明な潜時遅延、MRIで脱髄プラー
クなどが認められる。


MRIで検出される視神経の腫脹 MS脱髄斑
G治療:半数以上に自然回復傾向が見られ、1999年のわが国の多施設トライアルでは、ステ
ロイドパルス療法は視力に関しては回復速度を速くするが長期では視力に有意差はなく、中
心フリッカー値に関して優位差があったとしている。しかし、種々のタイプを含む本疾患の中に
ステロイドパルス療法が有効な例があり、今後その適応の見極めが急務である。現状では視
力不良例・回復傾向の乏しい例・多発性硬化症や自己免疫疾患が原因として疑われる場合に
入院の上ステロイドパルス療法を行う(メチルプレドニゾロン1g点滴静注3日間)。回復不良例
では3クールまで施行可能である。パルス療法により3年後の多発性硬化症への移行率は有
意に低下する。注意すべきことは、ステロイド内服は長期的には無効であるのみならず再発率
を有意に上昇させるので、禁忌である。
H予後:約75%が良好な視力に回復するが、1〜2割は再発する。多発性硬化症によるものは
脳脊髄を含めて新しい病変を繰り返し再燃しながら増悪する(ステロイド内服は再発率を高める
ので注意)。
swinging flashlight
testで検出される
求心性瞳孔障害
Goldmann視野で検
出される中心暗点