多くの方が捻挫を経験していると思います。スポーツをしていて、階段から足を踏み外して、石につまずいて・・・。一番多いのはやはり足の関節の捻挫です。とくに外踝の前下の捻挫が多い。足首を回すように動かしてみると左右でどちらかがぎこちない。訊ねてみると、そういえば昔捻挫したことがある、という患者さんは多いです。
病院へ行けばレントゲンを撮って骨折がないかどうか見る。なければ湿布薬を貼り包帯を巻かれてお大事にと送り出される。しかし、なかなか治らない・・・。
ところで捻挫とは、というと「関節部に外力が加わり、非生理的な運動を強制されたときに生じる関節包、靱帯などの関節支持組織の軽度の損傷である。関節支持組織の断裂などの損傷が生じるが、関節面の相互関係は正常に保たれている」(南山堂医学大事典)。
つまり、無理な力が加わり関節が可動域以上に曲がったり伸ばされたため、骨には異常はないが、靱帯などをけがしたものを捻挫といいます。
捻挫の直後は赤く腫れて熱があり、動かすととても痛い。怪我の状態によっては内出血によって周囲が赤紫色に変色しています。この内出血は日にちとともに吸収されていき、一見治ったようにみえますが、靱帯や関節包にできた傷はなかなか消えません。
捻挫が治ったあとも、なんとなく違和感や抵抗感がある。あるいは冬になるとだるいような痛みが出る、という捻挫後遺症(?)もあります。関節内部の傷の瘢痕が原因ではないかと考えていますが、そのことがからだのバランスを崩すひとつの要素になっていることもあるようです。
− どうしたんだい、熊さん? 足をひきずって。
− これはご隠居さん。みっともないかっこうですみません。おとつい神社の階段を踏み外したときに、足首を挫いてしまいやして。南方先生に診てもらったら骨折はしてないということで、安心したんですが。
− そうかい。わしも昔挫いた足首が寒くなると疼くことがあるんだ。だから冷やさないように気をつけてるんだよ。
− そういう古傷の痛みには針灸がよく効くよって、梅庵先生が他の患者さんに話してました。
− へええ、そうかい。
− あっしの場合はこうして冷やしてるんですが、ご隠居の場合は冷やした方がいいんですかね、それとも温めた方がいいんですかね。
− うーん、温めた方がわしは気持ちいいんだが。
よく質問されるのが、捻挫をしたときは冷やした方がいいのか、それとも暖めた方がいいのか、ということです。
捻挫直後から2〜3日間は冷やした方がいい。冷湿布が簡単で便利なのですが、できればアイシング(*注)をします。熱が引いてくれば、もう冷やす必要はありません。
熱は風邪と同じように生体の自然な反応だから冷やす必要はない、という考えがありますが、傷の修復は受傷の3日後から始まるという研究成果を基に対処することが今は主流です。ですから、受傷後3日間は熱をおさえて痛みのストレスを受けないようにするというわけです。
慢性化した捻挫後遺症の場合は暖めた方がいい。というより、冷やさないように気をつけます。しかし、これはあくまで一般的な話。自分自身のからだが気持ちよいと感じる方法を取るのが一番です。
捻挫は足関節だけに起こるものではありません。初めの引用した定義のように捻挫は関節のけがです。
いわゆる突き指も捻挫といえます。突き指で注意しなければならないのは、けっして元に戻すつもりで引っ張ったりしないことです。けががよけいひどくなるかもしれませんし、捻挫でなく骨折していることもあるからです。
突き指もそうですが、捻挫と骨折を鑑別することは大切です。治っていく経過や期間、日常生活での注意などが違うからです。骨折の可能性のあるときはレントゲンを撮ってもらい確認することがなによりだと思っています。その上で鍼灸治療をすればいいと思います。
※注
アイシングは氷と水で冷やす方法です。氷と水を氷嚢かビニール袋に入れて患部に当てます。どのくらいの時間冷やすかは、その人の炎症の度合によって異なります。
アイシングでは4段階の感じ方を経過します。
第1段階: ジーンとする痛みを感じる。
第2段階: 短時間だがポッとした暖かさを感じる。
第3段階: 針でつつくようなチクチクとした痛みを感じる。
第4段階: なにも感じなくなる。
この第4段階に達したら凍傷の危険性があるので、すぐにアイシングを中断します。しばらく様子を見て、まだ痛みが出るようならもう1回アイシングをします。それ以上はアイシングをしません。
(「スポーツ外傷・障害Q&A」小出清一著 南江堂 1995年 より)
捻挫のとき使う経穴(つぼ)
急性のとき: 患部を囲うように鍼(浅刺)と糸状灸
慢性のとき: 患部の圧痛点に鍼と半米粒大の灸
五行穴の栄穴または兪穴に皮内鍼