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京都文化企画室
2011年 西川 充  りさいたる を終えて

11月6日(日)は一週間程前から雨の予報が出ていました。 一週間前の国民文化祭・日本舞踊の祭典も雨でしたから、 周期的に仕方のないことなのかなあと半ば諦めの境地で、天候に一喜一憂することはやめようと 二、三日前から考えていました。 

当日目覚めると、降りだしそうな天気ながら何とか持ちこたえていました。 前回のりさいたるの反省から、今回はできるだけいつもと同じ足取りで本番を迎え、 稽古の延長線上にある本番として舞台を勤めようと心に決めていました。 朝の哲学の道のウォーキング、朝の買出しーいつもと同じ朝の営みから一日が始まりました。

9時過ぎに楽屋入りしました。「充の会」のはじめの方の出演者―真由奈さん、 涼帆ちゃん、多田さん、仲野さん、優佳ちゃんはもうお化粧にかかっていました。 各所へ挨拶を済ませた後準備にかかりました。「ぼちぼちお願いします!」という声がかかり化粧司さんのところへ。 ベルトコンベアに乗ったように衣装、鬘と順調に準備が整っていきました。その間にも沢山のお客様が楽屋を訪ねて、 お声をかけてくださいました。道家さんの陰アナが入り、一中節さんへの挨拶を済ませ下手に控えました。 「行平を想う松風だよ。もう充ちゃんは捨てなさいよ!」と鯉矢先生がアドバイスしてくださいました。 幕が開いたらまずお客さまの入りが気にかかるのですが、それは一切忘れて松風になろうと思いました。

水音に続いて都一中先生の三味線が始まり「げにや浮世のわざながらことにつたなき海女小舟の」と 都乙中先生の唄を聞いているうちに、私は須磨の浦に佇んでいました。 「汐汲みくるまよるべなき」という唄と共に、くるまを引っ張りながら舞台中央へと歩を進めました。 「見れば月こそ桶にあれ」「三年はここに須磨の浦都へ帰り給いける」−詞の一つひとつが身に沁みていきました。 「狂おしき身を妄執の雲にまぎれて」と雲を見上げた時に涙がこぼれました。哀れな松風に酔っていました。 舞台稽古の時に演出の先生に「きまりがはっきりしすぎているよ」と注意されていたので、 自分としては精一杯優しい気持ちでポーズを決めました。

後は楽屋に走り込み、何人もの人々が私を取り囲んで「旅」への用意が着々と進められていきました。 「時間通りに開けてもいいですね?」と狂言さんが確認に来られた時には、もう準備が完了していました。 下手から地下を通り抜け花道にスタンバイしました。

長唄独特の浮き立つような演奏が始まりました。私は気分を一新して元気に花道を出ました。 今ではあっという間に行き過ぎる江戸から京への旅を、楽しくご案内できればという想いで踊りました。 「吉田通れば」のところは女っぽくと注意されていたのですが如何でしたでしょうか。 その後の岡崎のところは、逆に弱いと指摘されていました。 一瞬のうちに踊り分けることは本当に難しく、私の技量ではまだまだですので今後も一層勉強を重ねていきたいと思います。 最後は京都へ辿り着き祇園祭に酔いしれました。さあフィ二ッシュです。舞台稽古でタイミングを変更するように注意を受けていましたし、 稽古の時にいつもグラグラしていましたので、石にかじりついてもきれいに終わりたいと念じていました。 何とか無事に幕が下りました。

「本番が一番よかったよ!」と、音合わせ・舞台稽古・本番と見守り続けてくださった演出の先生が声をかけてくださいました。 お亡くなりになった西川鯉先生に頼まれたので私を立派に育てなければならないという想いからだとは理解していながらも、 今日まで何かにつけて厳しく注意されることばかりで少々めげていた私は、この言葉を聞いた時、天にも昇る気分でした。 まだまだお目だるいところも随分あると思うのですが、今、私が発揮できる力を十分出しきったということで評価してくださったのではないかと思っています。

私を支えてくださいましたスタッフの皆様、京都にとどまらず東京等遠方よりご来場いただきました皆様、本当に有難うございました。

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【お稽古場】
■京都 ハウスデラッセ/池坊学園/長岡産業文化会館/京都新聞文化センター
■大阪 朝陽会館(大阪天満宮正面前)詳細は下記のところまでお問い合わせ下さい
■東京 国立能楽堂 詳細は下記のところまでお問い合わせ下さい
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