自由診療と自費診療と保険診療との相違について
 社会保険による医療は、保険診療と呼ぶ一種の規格診療であって、健康保険法の定める所
により保険医はその法の規制に従って診療を行なうことは皆すでに承知している。
 自費診療と言う言葉は、日本に皆保険制度が実施され、あまねく社会の隅々にまで普及す
る以前には存在しなかった。その理由は簡単である。保険制度が生まれる以前は全ての歯科
診療は自費診療であったから、わざわざ自費と呼んで意識して区別する必要はなかった。
 戦後、医療保険制度が普及するに従って、それに相対する形で自費診療という言葉が生ま
れた。それは始め、ただ単に保険が適用されない保険外診療の、経済的側面を意味する言葉
にすぎなかった。やがて保険歯科医療が細部に浸透して普及するに従い、一種の保険用語と
して多用されはじめ、保険歯科医療を唯一とする狭い考え方がはびこり、自費診療を後めた
い物にしてしまった。
 さて一方の、自由診療という言葉はこれも、前述の皆保険医療制度が浸透するに従い生ま
れた言葉であって、社会保険医療制度に相対するところに自由診療は位置づけられる。
 自由診療という言葉の理念は社会保険制度による規制に縛られない、自由主義を基盤とし
た考えであって、社会保険制度より離れてで考えられる限りの、最良にして最善の包括的な
歯科医療を目指しているものである。高度で最新の診療技術を基礎にして、診査、診断、治
療計画、診療、予防を含む全人的な医療の考え方を実現するために、保険制度の制約から離
れて、歯科医としての能力を挙げて自由に実行しようとする意志と誇りを示す言葉である。
 繰り返すが自由診療という言葉は、保険医療制度の枠に捉われる事の無い自由、即ち制度
よりの自由を、示している。近ごろしばしば自費診療と自由診療という似て非なる言葉が混
用されるのは正しいことではない。自費診療も広義では自由診療に含まれると言えなくもな
いが、それによって起きる混乱を防ぐ意味からも、明確な区別によっての使用が必要である。
 社会保険制度は、自由主義国家日本の中にある世界でも特異な社会主義政策であるが、年
月の経過により、制度疲労を起こしている。保険医療によって医師、患者、社会、の相互間
には社会的、倫理的、経済的な多くの問題を起こして、政治問題となって現在国会の論議を
集めて紛糾する処である。日本の歯科医療保険制度は戦後
60年を経て、実際には80/20
らぬ発展途上国なみの
80/06を作った。
このことは医療と政治と経済との悪しき関係の見直しを示唆している。
 我々歯科医師は病客の経済を守るのが第一義ではない、病客の歯の健康を守るのが先ず第
一の義務である。病客の経済の問題には国や企業が保険し、歯科医は病気にだけ専任する自
由を守るために、医療と経済を分離するべきであろう。
 現在のような保険制度の中では医師は強制的に保険経済の片棒を担がされて、社会から悪
者呼ばわりされてなお、自らアクションを起こせない不自由な桎梏の状況にある。歯科医療
の本質を理解出来るのは歯科医師だけであることを自負して、擬物に目を奪われず凛として
自らを律したいものである。
 政治に医療を改革することは出来ない、歯科医療を改革出来るのは専門職としての歯科医
師だけであることを自覚し、進んで政治や経済から離れて真の
Establishment の集団として
改めて旅立つべきではないだろうか。
2002 FEB

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