尿のpH(ペーハー)の正常値とは?


 



 


ヒトもワンコもニャンコもちゃんと
毎日一度は出しましょう  弱酸性尿を出しましょう♪

 〔毎日一度でも弱酸性(pH6.4±0.2)の尿が出ますように!〕

 このようにお勧めする理由は、単純明快。健康なヒトや犬・猫たちの尿が、おおよそpH5〜8の範囲内で絶えず目まぐるしく変動しているからです。
 年がら年中、いつもpH5前後の酸性尿しか出ていない
痛風糖尿病の方々にとり、いきなり健康人並に尿pHを目まぐるしく変化させるのは至難のワザです。
 尿がアルカリ性になったまま低下せず、
ストラバイト(尿晶)で苦しむ犬や猫の飼い主さんたちに、尿pHが目まぐるしく変化するよう努力すべし、などと申しても無理な話です。

 そこで、とりあえず、せめて弱酸性の尿くらいは出るようにして欲しいというのが私の本旨でありまして、尿を弱酸性に維持することが正しいだなんて、一言も申しておりません。
 

 

 

 尿のpHの正常値はpH6付近とか、pH6.2〜6.4くらいとか、いろんな説があるようです。
そんなふうに「正常値」なるものを決めたがるのは、尿=体液という間違った考えに影響されているからだと思います。
 動物の体内の状態は、ホメオスタシス(恒常性維持機能)によって常に一定の狭い範囲から逸脱しないようコントロールされています。たとえば、ニンゲンの血液・リンパ液・組織液や細胞液など体液は、pHの正常値がpH7.35〜7.45とされています。これより低下するとアシドーシス(酸血症)、上昇するとアルカローシスと呼ばれる病気になります。

 いっぽう、尿は体内の不要物や有害物を体外へ捨てるためのものであって、体液ではありません。捨てる廃液に恒常性の維持はムダなこと。だから、尿はホメオスタシスに管理されることなく、pH5〜8くらいの広い範囲内で常に上昇・下降を繰り返しているのです。
したがって、正常値なんてものがあるわけないのです。ネコもイヌもヒトも、尿のpHは絶えず目まぐるしく変化してこそ、健康で正常な姿ということになるわけです。

 

 

Dr.中島健次著「出てますか?弱酸性尿」p.32〜35より転載

第2章 尿のpHは目まぐるしく変動するのが正常です

第1節 尿pHのいわゆる「正常値」

 


「正常人尿のpHは5〜8(通常6)の間にあって、植物性食品の摂取時にはアルカリ性(主にKHCO
2)に、肉食時には酸性(主にNaH2PO4)に傾いて血液の酸塩基平衡を保持させる。一般に肉食動物の尿は透明で酸性であり、これに対し草食動物ではアルカリ性(Ca,Mgの燐酸塩や炭酸塩)でかつ混濁している。尿をアルカリ性下に放置すれば尿酸アンモニウム・燐酸カルシウム、酸性下に放置すれば尿酸・尿酸水素ナトリウムなどの結晶(尿沈渣)を析出する」(岩波書店『岩波生物学辞典』、第3版、1983)

「ヒトの正常尿は弱酸性(pH6付近)を呈し、肉類を多くとれば酸性に傾き、果物や野菜を多食すれば酸性が弱くなり、中性ないし弱アルカリ性になる。正常尿では不快でない特異臭を有するが、微生物の作用で尿素が分解すればアンモニア臭を発し、腐敗した尿はアルカリ性を呈する」(平凡社『世界大百科事典』、1964)

「健康な人の尿pHは弱酸性(pH6.0〜6.5)が正常ですが、体内の環境をできるだけいつも定まった状態に保つように、腎臓が体内の過剰な酸またはアルカリを排泄して調節しているので、pH4.5〜7.5付近を変動します」(保健同人社『国民医学大事典』、1980)

「尿路に感染が生じるとpHがアルカリに傾くため、日頃pHの変化は尿路系への感染の有無の判断の材料になる。しかし、尿pHに関する要素は多く、あまり単純ではない。尿中に異常物質が出現したときは、その性状によってpHが規定されることがある。例えば糖尿の場合では、尿は異常物質である糖によって酸性を示すことになる。一方、腎臓での物質の再吸収・分泌もpHに与える影響は大きい(中略)。また、尿pHは食餌に依存している。犬、猫のような肉食動物では尿pHは動物性蛋白の摂取量によって変動するが、一般に犬や猫ではpH5〜7の変動はあるがpH6.2〜6.4程度が常態と考えられる。しかし、食餌が一定していなければ、当然ながらかなりアルカリ性まで変動する。尿の酸性度は飢餓、発熱、アシドーシス、酸性化合物投与で上昇するが生体の恒常性維持機能により、それほど大きくは動かない。アルカリ度も同様に大きく動くことはないが、細菌性膀胱炎では膀胱粘膜に対する影響が大きい」(学窓社『獣医学臨床シリーズ17 尿検査』、1999)

〔拙著には書かなかったのですが、この獣医師用教科書には怪しいと思われる記述も少なくないようです。たとえば、
@糖尿病患者の尿が酸性なのは尿糖のせいだとのこと。しかし、中性の水道水に砂糖を溶かして測定したところ、pHに変化なし(もちろん砂糖の量を段階的に増やして実験しました)。さらに、私の尿がアルカリ性になったとき、ビーカーに採取した尿に砂糖を加えて撹拌し、完全に溶かしてからpHを測定してみたのですが、やはり一向に酸性化する気配が見られませんでした。まさか砂糖だからいけなくて、ブドウ糖なら酸性化するなんてことは…? 
A酸性度の上昇=pH値低下ということなんでしょうが、pHの上昇・下降は恒常性維持機能(ホメオスタシス)によって大きな変動はないとのこと。血液など体液の場合、確かにホメオスタシスの作用によってpH7.4±0.5が正常値とされています。だが、体液ではなくて体内からの廃液にすぎない尿の性状に、ホメオスタシスは無関係なのではなかろうか。現に尿のpH値はpH5〜8以上に大きく変動しています(測定に使用したpH試験紙の測定可能範囲がpH5.0〜8.0のため、実際はpH4〜9くらいの幅で変化しているのかもしれない)。pH2くらいの強酸性の尿や、pH10くらいの強アルカリ性の尿が出ない理由は、ただ単に生体の細胞や組織が耐えられないからであって、ホメオスタシスの働きによるのではなさそうです。〕

 以上ざっと書き抜いてみたのですが、pH値が粗めの1.0や0.5刻みで示されている例が多く、pH試験紙による比色判定の難しさがうかがわれます。この点、私の発明した特許pHスティックでしたら0.2段階ずつ測ることができますので(第8章参照)、もう少し中身の濃いデータがとれるかもしれない。そう考えて一念発起。本来なら自分自身の尿で済ませたいところですが、あいにく私の尿は病的な酸性尿なため(2006年3月現在、すっかり改善されて毎日必ず数回は弱酸性〜弱アルカリ性の尿が出るようになりました)、参考程度の価値しかなさそうです。
やむなく、まだ30代前半の健康な娘夫婦に尿pHの測定を頼み、二人に丸1週間分のデータをとってもらいました。
 それと並行し、pHスティックご利用の飼い主さんたちから、愛犬愛猫の尿pHのデータをメールで教えていただくのとともに、拙宅ご近所の健康なイヌやネコの尿pHも積極的に測定させていただきました。民間の一個人にできることには限界があり、これくらいが精一杯の努力です。
 こうして集めたデータを整理し、ためつすがめつ眺めているうちに、イメージとして一つの曲線が浮かんできました。それを模式的に図示してみたのが
これです。
 「イヌやネコは肉食動物なので雑食のヒトとは違うはずである。たぶん、ヒトの尿よりも酸性に傾くだろう」と予想していたのですが、集まったデータにそんな傾向は見られず、どういうわけかヒトもイヌもネコも同じような尿pHの変動カーブを描くように思われました。
 もしかしたらイヌやネコの家畜化が急速に進み、もはや肉食動物ではなくなってしまったのでしょうか。そういえば、近年とみに野菜や果物などを好んで食べるイヌが少なくないらしいので驚きです。植物を消化できる酵素を持たず、歯型も腸管の長さも完全に肉食動物そのものだというのに、なんでムシャムシャとスイカやブロッコリーを食べるのか、全くわけが分かりません。
 それとも、ヒトの方が急速に肉食動物化しつつあるのでしょうか。もともと木の実が主食の果食動物とも、草の実が主食の穀食動物とも言われ、そのための臼歯が揃っているにもかかわらず、ライオン並みに肉を飽食する人々が少なくないようです。まさかとは思いますが、尿pH変動カーブで見る限り、ヒトもイヌもネコも同類らしく思えてなりません。

 しからば、上記成書に書かれている「尿pHの正常値」とは何か?
これにつきましては、どうぞ次節「
尿のpHは目まぐるしく変わる」をご覧願います。

〔追記〕 菜食オンリーのベジタリアンも結構だけど、ヒトが草食動物のはずはありません。もしも、牛や馬みたいに草だけで生きていけるなら、飢饉で餓死者が出ることもなかったでしょう。それと同様、犬も猫も草食動物ではありません。山中などで見かける捨て犬や捨て猫たちが、雑草、木の葉、ドングリなどを食べて生きられない事実を思い知るべし。犬も猫も肉食動物なんです。肉だけで生きられるのだから、野菜や果物を食べさせる必要なし! どうぞ変な迷信に惑わされませんように!
 なお、散歩の途中で犬が野草を食べ、猫が庭の芝などを食べるのは、ビタミンなどの栄養摂取が目的ではありません。昔から言われているように、元気を回復するため、嘔吐神経を刺激して毒物や腐敗物を吐き出すため、消化管内の寄生虫を駆除するため、など何らかの生理的欲求によるものだと思われます。 (2006/03/26 追記)

 

 

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