尿のpH(ペーハー)は目まぐるしく変わる


 

 


拙著「出てますか?弱酸性尿」のカバー裏面を飾る上図の尿pH変動カーブは、私が制作し、ちゃんと著作権を登録してあるものです。
こんな稚拙な図ではございますが、たぶん、世界で最初!(?)のものかもしれません。
もしかして、「ヒトの尿pHが絶えず目まぐるしく変化している」ということぐらい、とっくの昔に医学や人体生理学の分野では常識になっていたのかもしれない…、との不安もないではありません。でも、こと獣医領域においては、私の知る限り、犬や猫の尿pHが絶えず変動しているなんてことは、教科書にも参考書にもどこにも書かれていなかったことです。

だから、ペットの診療で尿のpH検査が必要なとき、昔から動物病院では毎月一度だとか、毎週一回だとかの定期検査を続けてきたのです。もしも、絶えず変動するのが尿pHの正常な姿であることを獣医大学で教育しておれば、こんな無意味な詐欺的行為を平気で続けられるわけがありません。本当に獣医師たちも知らなかったのです。

そのように私には思えてなりません。だからこそ、獣医学の教科書を書き換えるきっかけになれば幸いと思い、あえて自腹を切ってまで拙著の自費出版に踏み切った次第です。
しかも、きわめて意外なことに、pHチェッカーを使って私が自力で集めたデータによると、ヒトの尿pH変動カーブと犬や猫のそれとが完全に一致していたのです。
ホンマカイナ? まさかネ?、とは疑ったもののデータが示す事実は通念・常識より重し。
(実例として、猫の五つ子から得た尿pHの折れ線グラフがあります。ご参考にどうぞ)

いつもながらの群盲撫象かもしれないと多少はためらいつつ、こんな奇妙な現象を公表できるのも「自由医師」(従医に非ず)のオレだけではなかろうか? 国会図書館に永久に残しておくだけの価値ある新知見ではなかろうか? などという雑念が募りにつのった挙句、大金(私にとっては)をはたいて自費出版に踏み切る決意がつきました。というわけですので、拙著の眼目は第2章「尿のpHは目まぐるしく変動するのが正常です」にあります。

なお、上図右上に「ストラバイト尿石」と書いてありますが、これは間違いです。作図して著作権を登録した当時(2004年8月)は、まだこの呼び方が一般的で広く普及していたため、さすがの私も逆らえませんでした。しかし、臨床獣医師向けの業界専門誌に私見が掲載され(2005年1月発行)、ようやく堂々と尿晶(ストラバイト)と呼ぶのが正しいのだ、と言えるようになった次第です。
 

 

尿pH変動カーブの3特徴

どういうわけか、ヒト(雑食動物)と犬や猫(肉食動物)の尿pH変動が同じみたいです
Dr.中島健次著「出てますか?弱酸性尿」第2章第2〜4節(p.38〜47)より転載

 


〔特徴その1〕 ヒトもイヌもネコも、尿のpHは5〜8くらいの範囲内で目まぐるしく上昇・
         下降を繰り返している

 ただし、この変動範囲は、検査に使用したpH試験紙の測定限界がpH5,0〜8.0であるためであって、実際にはpH4〜9くらいにまで変動範囲が拡がるのかもしれません。でも、それを調べるには別の種類のpH試験紙が必要となり、面倒なので調べていません。
 pH7.0が中性ですので、pH6.8〜6.0を弱酸性、pH5.8以下を酸性と呼ぶのが妥当なのかもしれません。しかし、イヌやネコの尿に出現する微小な三重燐酸結晶やそれが肉眼可視大の砂粒の結晶に発達したストラバイトが溶けて消えるのは尿pH6.6以下です。故に、pH6.8を安全な弱酸性尿と決めることができません。
 そんなわけで、あえてpH6.4±0.2を望ましき弱酸性尿と勝手に決めさせていただきました。こうしておくと、
「ヒトもワンコもニャンコもちゃんと」という気に入りのキャッチフレーズを生かせるからでもあります。ただし、あくまでも私の個人的な見解にすぎません。したがって、痛風や糖尿病などで酸性尿を出し続けている方々が、pH6.8でも安全な弱酸性尿なんだと考えられたとしても、それはもちろん、ご自由です。
 弱酸性尿の厳密な範囲の定義はともかく、上図に示したとおり、尿pHが5〜8の範囲内で絶えず変動を繰り返している。これこそが正常で健康な証拠だと思われます。たとえば、

 〔ヒトの場合〕 ・豚カツや焼肉を食べたら急に酸性の尿が出た。
          ・サツマ芋を食べたとたん尿がアルカリ性になった。
          ・寄席で大笑いしたら、それまでの酸性尿がアルカリ性に変わった。
          ・昼寝をして起きたらアルカリ性の尿が出た。
          ・でも、それらは一過性に終わり、やがてスーッと弱酸性に落ち着いた。

 〔イヌやネコの場合〕
          ・生肉を食べさせたら急に酸性の尿が出た。
          ・ご主人様の帰宅に歓喜(副交感神経興奮)し、尿がアルカリ性になった。
          ・嬉しくてピョンピョン跳ね回っていたら、疲労して尿が酸性化した。
          ・ぐったりして寝そべっているうち、やがて弱酸性の尿が出るようになった。

 このように目まぐるしく変動するのが健康なんだと思われます。したがって、何を食べても酸性の尿しか出ない。何も食べず空腹なのにアルカリ性の尿が出続ける。何を食べようが何をしようが常に弱酸性の尿が出続ける。こういう状態は、ヒトにとってもイヌやネコにとっても異常であり、不健康な証拠ではないでしょうか。
 となると、いろんな本に載っている、いわゆる尿pHの正常値とか標準値とは、いったい何のことなんだろう。もしも、弱酸性状態にある尿pHを正常値だとするのであれば、その正常値なるものは、次節に述べるように夜と朝ではかなり違ってしまうのが通常のようです。それ故、
pH5〜8の範囲内で絶えず目まぐるしく変化するのが尿pHの正常な姿である 、と私は考えました(これが拙著第2章第1節「尿pHの正常値とは?」についての私見です)
 

 

 


ヒトもワンコもニャンコもちゃんと
毎日一度は出しましょう 弱酸性尿を出しましょう♪

 拙著『出てますか?弱酸性尿』の出版後に反省させられたのですが、この書名も、上記の
スローガンも、本を読めない人々に誤解を与えかねない不適切なものであったようです。
 いつのまにか日本人の国語読解力が著しく劣化してしまい、若者たちの多くはマンガや短文、会話文、絵文字などしか読めなくなってしまったのでしょうか?

 きちんと本文を読んでいただければ、尿pHを弱酸性に保つのが理想だなんて私はどこにも書いておりません。絶えず目まぐるしく変化してこそ正常なんだ、というのが私の主張です。

 でも、年がら年中、いつも酸性尿を出し続けている痛風や糖尿病患者の皆さんや、いつもアルカリ性の尿を出し続けているペットの飼い主さんに、いきなり健康なヒト・イヌ・ネコと同じように尿pHが目まぐるしく変化するように努力すべし、なんて言ったって無理な話です。
 だから、とりあえずの努力目標として、せめて毎日一度くらいは弱酸性尿が出るようにしてほしい、というのが書名とスローガンの趣旨に他なりません。
 何卒、誤解なきよう、お願い申し上げます。敬具 Dr.中島健次拝(2007/06/05追記)
 

 

 

 
〔特徴その2〕 ヒトもイヌもネコも、活動中の昼間の尿pHは絶えず酸性やアルカリ性に
         変動しつつ、夜になると次第にpH6.8付近で安定する場合が多い

 この傾向は健康な娘夫婦に見られましたが、むしろ2歳の孫娘で顕著のように感じられました(pH6.2〜7.6の範囲内で変化)。同様に、室内暮らしのペットでも目立ちました。たとえば、
「動物病院で指示された○○食の効果で、日中は理想的な弱酸性状態を維持していた。それなのに、夜になるとアルカリ性の尿が出てしまう。何故なんでしょうか?」
 こういった質問のメールが、pHチェッカーご利用の飼い主さんたちから何度も私の元に寄せられています。何故かと聞かれたって、おいそれと簡単に回答できるわけがありません。まさか、獣医学の教科書やペット関係の雑誌などに答えが載っているはずもないし、うっかり気軽に知り合いの院長たちに教えを乞うのも気が引けます。
 そんなこんなで、予備知識ゼロ、手探り同然の状態で私なりに真剣に考え、メールで問い合わせてこられた飼い主さんたちに次のように回答しました。

「夜になると寒いので電気マットや電気カーペット、赤外線コタツなどにペットが寄ってくる。電気製品から放射される電磁波の影響ではなかろうか。思い当たることがあれば、どうぞ電気製品から1m以上離れたところにペットの寝場所を移動してみてください」

 寝場所を移しても効果がないという飼い主さんには、
「夜になると窓やドアを閉じて室内が密閉状態になる。そのため、もしかしたら、電磁波が酸素分子に衝突して発生するというプラスイオンの影響によるのかもしれない。よって、換気励行。ときどき窓を開けて室内に新鮮な外気を入れてみてください。寒くて窓を開けるのが嫌なら、市販のマイナスイオン発生器を使ってみられてはいかがでしょうか

 電磁波対策は万全だという飼い主さんには、
「夕食のテーブルにペットが足をかけ、ご馳走ちょうだいとせがむ。いけないと知りつつも可愛さに負け、スイカやらキュウリやらブロッコリーなどを食べさせてしまっているかもしれない。どうぞ野菜・果物は絶対禁止(強力なアルカリ性食品だから)、肉食オンリーの食餌に徹してみてください」 あるいは、

「一家のご主人が帰宅したとき、激しい歓喜によって副交感神経が興奮し、尿がアルカリ化するのかもしれない。疲れて止めるまでピョンピョン跳ね回らせておきましょう。乳酸などの疲労物質が溜まれば、必ず尿は酸性化します」

 などなど、どれも苦心してひねり出した回答で、それなりに質問者にご納得いただけたようです。でも、これらが正解だと断言できるレベルにはまだ達しておりません。
  しかし、上図に示すように、夜になると安静時の尿pHが中性付近で安定してくるのは、ごく一般的な現象とみてもよさそうです。
 何故なら、朝から晩まで一日中、昨日も今日も一年中、ほとんどいつもpH5.0とか5.2という病的な酸性尿を出し続けていた当時の私でさえ、夜になるとpH5.4、ときにはpH5.6に上昇することがあったからです。
 さらに、毎日一度でいいから弱酸性〜アルカリ性の尿が出るようになりたいと、暗中模索の試行錯誤を始めてから、ときどき、何も思い当たる理由がないのに、夜になると突然、pH7.2前後のアルカリ性の尿が出てきてビックリさせられることが少なくありませんでした。
 この奇妙な現象の原因は、たぶんリラックスによるのではなかろうかと考えております。夜の暗闇が心を落ち着かせてくれるせいなのか。あるいは、今日の仕事をみんな片付けた、あとはフロに入って寝るだけだ、という充足感や安心感のせいなのか…。
 とにかく交感神経の緊張がゆるんでアドレナリンも消え、代わりに副交感神経が作動。すると、どういうメカニズムなのか不明なものの、尿pHがいわゆる正常値とか標準値と言われている弱酸性状態よりも若干高めへ上昇するのではなかろうか。
 そして、野生動物が危険に包まれた夜を警戒しながら眠らなければならないのに対し、安全で快適な室内で暮らしているイヌやネコたちは、飢餓も寒暑も恐ろしい敵に襲われる心配も皆無です。そのため、人間と同様の、あるいはそれ以上のリラックスに伸び伸びと浸っていられるのではなかろうか。それが、夜間における尿pHアップの原因ではなかろうか。どうも、そんな気がしてなりません。
 ただし、確たる証拠があるわけではなく、あくまでも私見にすぎません。3年以上も、連日連夜、自分の尿pHをチェックし続けている私が直感的に思いついただけのことです
 

 

 

 
〔特徴その3〕 ヒトもイヌもネコも、朝、目が覚めて最初に排泄する朝一番尿(朝食前)
         は、pH5.8前後にまで低下する場合が多い

 就寝前に中性近くまで上昇した尿pHは、一晩中、上がりっぱなしになっているのかというと決してそんなことはありません。一日のうちでヒトや哺乳動物の体温が最も低下するとされている丑三つ時(午前2時頃)から明け方にかけて、pH6.0以下に下がるのが通常のようです。酸性尿を出し続けていた私はもちろんのこと、健康な娘夫婦や孫娘もそうでした。
 また、アルカリ性の尿が出続けて困っているイヌやネコたちでも、生活習慣や食餌内容の改善によって、ヒトと同じように朝一番尿が酸性に傾くことが確認されました。
 実は、健康人の朝一番尿が酸性になると初めて聞いたのがテレビです(「発掘!あるある大事典」、2002/02/09夜9時、フジテレビ放映)。オフザケ半分なテレビ番組での話が本当のことなのかどうか、これを自分で確かめたくなったことも、尿pHのデータ集めを思い立った動機の一つです。
 「あるある」のホームページを検索し、改めて当時の記録を読んで放映内容を再検討してみますと、残念ながら私の嫌いな「
酸性・アルカリ性体質説*に立脚しているようです。でも、健康に役立ちそうなことも書いてあったので、要約して紹介させていただきます。

「体内に溜まった不要な酸性老廃物(乳酸、ケトン体、燐酸、尿酸)を速やかに体外へ排除すれば、健康なアルカリ体質を取り戻すことができる。そうするには就寝3時間前の夕食に、タウリンを多く含むイカ、タコ、貝類を食べるとよい。そうすると、胆汁分泌が促進されて肝機能が向上する」
「さらに、寝る前にアクティブレスト(腕と足の軽い運動)やリンパマッサージを行ってから、コップ1杯の水を飲む。これで腎機能が向上するから、体内に溜まっていた不要の酸性物質が寝ている間に腎臓で順調に濾過され、尿に移行する」
「その結果、何もしないで寝た前日の朝一番尿がpH6.0前後であったのに対し、今朝の朝一番尿はpH5.8前後へと、より酸性に傾いていた(番組に登場の青年男女3人の朝一番尿はpH5.7〜5.9)。ほんのわずかな違いにみえても、酸性物質の体外排出が順調に行われたという証拠であり、望ましきアルカリ体質になっていることを示している」

 根拠なき体質説はさておき、肝機能と腎機能が正常なら、夜間、睡眠中に体内の酸性物質が腎臓で順調に濾過される。だから朝一番尿がpH5.8前後の酸性になる。これが健康であることの証拠である、とするテレビ「あるある」の見解には文句なく納得できます。
 何故なら、ヒトもイヌもネコたちも、私が集めた尿pHのデータは、それが真実であるらしいことを充分に告げているからです。
 ただし、もうじき5歳の孫娘の朝一番尿はpH6.2が最低で、これ以下に低下したことがありません。もしかしたら、成長盛りの幼犬や子猫の尿pHも、幼児と同じように弱酸性かもしれないのでご注意願います。
 
 この続きは、第2章第5節「尿pHの測定タイミング」をご覧ください
 

 

 


 *
酸性・アルカリ性体質説に異議あり(拙著第1章p24〜25より転載)
 書店の実用書コーナーに、体質や体質改善法をうたった健康書がたくさん並んでいます。
「体内の細胞液や血液・リンパ液などの体液がpH7.4前後5の弱アルカリ性に保たれている状態を健康で望ましい『アルカリ性体質』といい、体液が酸性に傾いた状態を『酸性体質』という。「酸性体質になると熟睡できず、寝ても翌朝に疲れが残り、集中力が続かずにイライラしやすい。やがて必ず高血圧や糖尿病などの生活習慣病が出てくるから、なるべく早くアルカリ性体質に戻さなければいけない」
 とっても説得力がありそうなお話で、思わず私も引き込まれそうになりました。だが、ちょっと待てよ。マユツバかもしれない。
 あやしい、と気付いたのがお笑い礼賛のテレビを見ていたときです。笑う門には福来たる。腹の底から大笑いすると、副交感神経が活発に働いて健康なアルカリ性体質になる。というご高説を拝聴しながら疑問が湧きあがってきました。
 便秘体質とか虚弱体質というのであれば、科学的データがなくたって何となく言葉の意味することがわかります。それに対し、笑うだけでヒトの体液が酸性から弱アルカリ性に改善される、というのは本当なんでしょうか?
 現代は情報開示が求められる時代です。もしも、本当に真実であるというなら、実験に協力した被験者たちの体液pHがこんなふうに変化した、という科学的データをきちんと揃え、われわれの前に開示してほしいものです。
 ヒト細胞の細胞液pHの測定は非常に困難だと思われますので、せめて体液の代表として血液pHの測定データくらいは充分に蓄積し、それに基づいて酸性・アルカリ性体質を論じるなり、体質改善効果を論じるべきではないかと思われます。
 もしも、すでに体液pHの測定データに基づく体質説が存在しているのなら、私の不勉強をお詫びします。が、そうでないのなら、空理空論、インチキな妄想邪説と批判されても反論できますまい。(文責:Dr.中島健次) 
 

 

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