| ☆ 凝固剤(ゲル化剤) |
ゼリーやババロア、水羊羹など冷たく冷して食べるお菓子は、果汁や生クリームなど液体のものを、凝固剤を使って固めたものです。この凝固剤は、専門的にはゲル化剤といいます。ゲル化剤は、分子同士が網目状の構造を作って、液体をゼリー状に固める物質のことです。ゼラチンや寒天、カラギーナン、ペクチンなどのことをいいます。これらのゲル化剤はそれぞれ違った性質を持っています。目的とするお菓子に適したゲル化剤を使うことが大切です。
★ゼラチン
ゼラチンは、牛や豚の皮や骨を原料にして長時間熱水で加熱して抽出したものです。動物の細胞間質には、コラーゲンと呼ばれるタンパク質が含まれています。コラーゲンは、もともと動物の体の中での中で、細胞の構造を保持したりする働きをしています。通常では溶け出したりすることはありませんが、長時間熱水で加熱されるとそれを構成しているタンパク質の構造が壊れ、ゼラチンが溶け出してくるのです。この溶け出したゼラチンを板状に固めて、乾燥させたものが板ゼラチンと呼ばれます。ひも状に乾燥させて粉砕したものが、粉ゼラチンと呼ばれます。熱を加えて溶かしたゼラチンを液体に混ぜて冷却すると、分子が網目状に集まり、その間隙に液体が包み込まれて、独特な弾力を持つゲル構造が出来るのです。ゼラチンを使ったお菓子は、軟らかい弾力性と、粘りがあります。しかし冷して固まったゼラチンのゲル構造も、室温程度の比較的低い温度でも再び溶け出してしまいます。寒天やカラギーナンを使用したお菓子とは違い、必ず冷蔵庫に入れるなどして、温度管理には充分注意しなくてはなりません。ゼリーなど水分の多いお菓子は、冷凍すると組織が壊れてしまいますが、生クリームを加えて、脂肪分を多くしたババロアやムースなどのお菓子は、冷凍保存は可能です。
<タンパク質分解酵素>
キーウイにはアクチニジン。パイナップルにはブロメリンなど、フレッシュフルーツの一部には、タンパク質を分解してしまう酵素(プロテアーセ)を持っています。ですから、動物性タンパク質であるゼラチンを使ったババロアやムース、ゼリーなどのお菓子に、これらのフルーツを生のまま用いると、酵素の働きでゼラチン分子があちらこちらで分解されてしまい、凝固する能力を失ってしまいます。しかしこの分解酵素も、熱が加わると破壊されるので、これらの生のフルーツを用いる場合は、鍋に入れて火にかけるか、レンジで加熱するなどしたのち、冷ましてから使うようにして下さいね。缶詰や瓶詰めのものは、すでに加熱処理されているのでそのまま使うことが出来ます。
その他に知られているタンパク質分解酵素には、イチジクにフィシン、メロンにククミシン、パパイヤにはパパインなどがあります。
(※料理などに使われる青パパイヤには沢山パパインが含まれていますが、私達が普段食しているソロ種のフルーツパパイヤにはわずかな量しか含まれていません。ゼリー液に細かく切った果肉を加えるぶんには、しっかりと固まります。しかし果肉をピューレにして加えた場合には、微量の分解酵素でも影響を受け柔らかくなってしまいます。)
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<タンパク質分解酵素”パパイン”の機能性について>パパイン博士とのQ&A
Q:「パパイアにはタンパク質分解酵素が沢山含まれていると聞きましたが、本当ですか?」
A:「パパイアという植物は、その幹や葉、未熟な果実から出る乳液の中に、タンパク質分解酵素パパインを豊富に含んでいます。 しかし私達が普段食しているソロ種のフルーツパパイヤにはわずかな量しか含まれていません。(某大学での実験結果によると、パイナップル果汁のタンパク質分解酵素活性を「100」としたとき、キウイフルーツ果汁は「89」、パパイア(ソロ種)果汁はわずかに「4」。ちなみに沖縄で野菜として使われる通称「青パパイア」の乳液は、「2000以上」)
Q:「フルーツパパイヤをお肉料理に使うと、お肉が軟らかくなるって本当ですか?」
A:パパインで食肉タンパク質を処理すると、食肉タンパク質は速やかに分解されます。しかしパパイヤを使って食肉タンパク質を処理しても、この酵素は食肉表面から、わずかに0.3mm程度しかに浸み込みませんから、肉を軟らかくするというよりも、食肉を表面から破壊していくと言った方が正しいと思います。またフルーツパパイヤにはパパインがわずかしか含まれていませんので、ほとんど効果がないと思われます。
Q:お肉料理のデザートとしてフルーツパパイヤを食べると、消化を助けてくれるって本当ですか?
A:フルーツパパイヤにはわずかな量のパパインしか含まれていません。また、唾液の中には、シスタチンといわれるパパインの阻害物質が含まれていますので、実際にはさらに分解が起こりにくいと考えられます。 これに加えて、パパインの最適pHは6程度ですが、胃の中はpH
1.5〜2.5と、強い酸性ですから、パパインは非常に働きにくい条件です。 以上のことを考えると、パパイアをデザートに食べても、食肉の消化を助けることは、まずないだろうと言えます。これらは一種のフードファディズムですね。
注:フードファディズム(food faddism)〜食物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に信じたり評価すること。
★寒 天
寒天を使ったお菓子は、ゼラチンとは違って堅くて弾力がなく、くずれやすい性質があります。比較的高い温度でないと溶け出さないので、和菓子などにはよく使われます。透明感や弾力性に欠けるため、あまり洋菓子では使われませんが、飾りのフルーツに塗る艶出し液として使ったりします。寒天はテングサなどの海藻を原料として作られています。本来海藻の中で、細胞壁を保持する働きをしていますが、テングサを熱水で加熱すると、寒天の成分が溶け出してきます。この煮汁をきれいに裏漉して、凍らせて乾燥させたものが、私達が目にする寒天です。棒寒天、糸寒天、粉寒天などに加工されて販売されています。寒天は酸に弱い特性があり、酸味の強い果汁などを加えて加熱すると、組織がばらばらになってしまいます。そこで、寒天に酸味の強い果汁を混ぜ込んで固める場合には、まず寒天を充分煮溶かして、粗熱を取った後、手早く果汁を混ぜ込むようにしなくてはなりません。また寒天を使ったお菓子は、他のゲル化剤より水分が分離し易いので、砂糖を多く用いて、保水性を高めるなどの工夫が必要です。
★カラギーナン
あまり一般的には知られていないゲル化剤ですが、欧米では牛乳を使ったデザート類や冷凍デザート類に幅広く使われています。最近、日本でも業務用を中心にかなり使われるようになっています。カラギーナンは、スギノリ、ツノマタなどの海藻を原料に作られています。同じ海藻類から作られている寒天とは、全く違った性質を持っていて、ミネラルやタンパク質の作用によってゲル状に凝固するという特性を持っています。したがって牛乳などのミネラル分を多く含む食品が加わると、急激にゲル化を引き起こします。食感も寒天とは違い、弾力あり、軟らかく、滑らかです。また他のゲル化剤と違うところは、冷凍しても本来の特性が失われることがなく、また常温でも溶け出さないなど、高低温に安定した性質を持っています。
★ペクチン
ペクチンは、かんきつ類やりんごなどの果実などに多く含まれている、天然のゲル化剤です。果実に砂糖を加えて煮詰めると、徐々にとろみが付いてきてジャムになるのは、このペクチンの働きによるものなのです。果実に含まれるペクチンの量は、果実の成熟度によって大きく違ってきます。熟していないものには、ペクチンが少なく、熟し過ぎていても逆にペクチンの量が減ってしまいます。適度に熟した果実は、自ら持つ酸味とペクチン、加えられる砂糖によって、ゼリー状の網目構造を作るのです。しかしもともとペクチンの含有量が少ない果実もあり、その場合は市販のペクチンを補ってやる必要があります。現在ではペクチンはジャム製造用だけではなく、目的別に加工され、牛乳を用いたデザート類やお菓子の上がけ用ゼリー(ナパージュ)などにも使われ、使用用途が広がっています。これらのペクチンは大別して、HMペクチンとLMペクチンに分けられます。HMペクチンは固まる為に強い酸と多量の砂糖を必要とするので、ジャムを作ったり、他のゲル化剤では固められないような酸味の強い果汁ゼリーを作る場合などに使われます。一方LMペクチンは、固まる為に、強い酸や多量の砂糖を必要としませんが、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分によって固まる性質があり、牛乳を用いたデザート類や甘味、酸味を押さえたデザート、上がけ用ゼリーなどに使われます。
| 各種ゲル化剤の使い方 | ||||
| ゼラチン | <板ゼラチン> たっぷりの水に10〜15分ぐらい浸して、充分柔らかく戻してから水気を切って用います。 <粉ゼラチン> 分量の4〜5倍の水にふり入れ、軽く攪拌し、ゼラチンが充分水分を吸収してから用います。 材料が加熱されて熱い場合には、そのまま加えて余熱で溶かします。冷たい材料に混ぜ込む場合は、湯煎で予め溶かしておき、手早くかき混ぜて合わせます。ゼラチンは40〜50℃で溶解します。 |
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| 寒天 | <棒寒天、糸寒天> たっぷりの水に浸け、浮かび上がらないように表面に布巾を被せて一晩おき、寒天が白くなり、指で簡単にちぎれるくらいになるまで充分戻してから用います。戻した寒天は水気を切り、分量の水の中に入れ90℃以上に加熱して煮溶かします。砂糖は、寒天が完全にに溶けてから加えないと、寒天がダマになって残ってしまいます。 <粉寒天> 水に溶けやすいので、水に浸して戻す必要はありません。また凝固力が強いので、普通の寒天の約半量が基準です。 |
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| カラギーナン | 砂糖と合わせてダマにならないようにして、加熱する材料と合わせて、カラギーナンの種類によっても違いますが85℃以上に加熱し溶解します。 | |||
| ペクチン | 砂糖と合わせてダマにならないようにして、加熱する材料と合わせて90〜100℃に加熱し溶解します。 | |||