大山漢方堂薬局
特集:刺五加(しごか)
刺五加(しごか) 近畿大学 薬学部助教授 久保道徳
ご存知ですか!? 刺五加(しごか)
そのむかし中国では、たった一把が満車の金銀財宝にも匹敵する、とまでいわれ珍重された刺五加。
第二の高麗人参、の呼び名高い、滋養強壮のニューフェースだ。
名薬再発見 〈花〉
漢方の本場中国では、このところ民間薬として限られた地方でのみ用いられてきた優れた薬用植物の発掘・再評価の気運が高まっていますが、中でもその幅広い薬効のゆえに、世界の注目を集めるようになったのが「刺五加」です。
刺五加は、十六世紀に李時珍が編集した世界最大の薬物書『本草綱目』にも収載されている、由緒正しい生薬ですが、日本ではなじみが薄く、私もつい四、五年前北海道の薬用植物研究所で、この原植物であるエゾウコギの実物とはじめて対面、これがウワサの名薬の素顔だったのか、と感動をおぼえたものでした。
それが最近、飲みやすいエキスの形で日本へも輸入され、隠れたブームをよんでいるようです。早速、私も試してみたのですが、一服飲むなり体がポカポカと温まり手足の指先の血液循環が活発になるのが実感されました。血行を促進する効果に優れたクスリだな、というのが、私の第一印象です。
こいつは冷え症の改善にはドンピシャリなのでは、と、私の研究室にいる大変な冷え症の女性に飲んでみてもらったところ、やはり確かに具合がいいという。
血行がよくなるということは、単に冷え症を改善するばかりではありません。医学的に非常に深い意味合をもった、重大な薬効というべきなのですが、それについてはまたあとでふれるとして、まずは刺五加のプロフィールからご紹介することにしましょう。
原植物エゾウコギは、ウコギ科の多年生の落葉灌木で、中国北東部の黒竜江省、吉林省、河北省などが主な産地ですが、ソ連のシベリア地方、日本の北海道の一部にも自生していることが確認されています。いずれにしても大変寒い地方の植物といえましょう。幹や枝が下向きに生えた鋭い針のようなトゲでビッシリおおわれているのが特徴。ただし薬用になるのはこのトゲではなく、主として地中に長く伸びる根茎の部分です。
なお、ソ連ではこれを「エレウテロコック」と呼び、やはり医薬品としての研究がさかんに行なわれています。
第二の高麗人参 〈茎〉
中国で刺五加の研究が本格的にはじめられたのは1960年ころといわれますが、81年には、その詳細なレポートが、出版されています。
このレポートを読んでまず感じたのは、その薬効が、古くから不老長寿の霊薬として珍重されてきた高麗人参と非常に似ている、ということです。ほとんど「第二の人参」といっていいくらい。というのも、人参がクスリとして最も優れている点は、ある特定の限られた疾患にだけ効くというのではなく、免疫能力を賦活させることによって病気しない体を作る働きをもっていることにあるわけですが、刺五加の薬効も、一言でいうならまさにそれだからです。もっとも、人参も刺五加と同じウコギ科の植物。植物学的には同じ仲間同上ですから、薬効が似ていても不思議はないのでしょう。
刺五加をしばらく続けて服用していると、まずカゼをひかなくなることに気づくはずです。カゼといえば、誰でも年に五、六回はひく最もありふれた病気とされていますが、しかし人間の体というのは、本来健康ならカゼなど絶対にひかないようにできているものなのです。カゼのウイルスのような有害な異物がもし体に侵入してきても、それを異物と認識し、攻撃をしかけ、処理して体の外に排除してしまう白血球だのマクロファージだのといった迎撃ミサイルが、体のいたるところに配備されているからです。これがすなわち免疫機構です。異物の侵入を見張っているミサイルの数は、実に一兆の一億倍という天文学的な数字だといわれます。この免疫機構が正常に働いている限り、どんな病原菌も病気を起こすことはできません。つまり、カゼをひくのは体の免疫力が低下しているしるしであり、そして刺五加を飲んでカゼをひかなくなるというのは、刺五加には私たちの体の免疫力を賦活し、病気に対する抵抗力をつける働きのあることの、何よりの証拠といえましょう。
中国では、刺五加によって胃ガンや肺ガンの症状の改善された例をはじめ、手術後の再発防止、転移の予防などに効果をあげたとの臨床例が数多く報告されていますが、これも刺五加に制ガン作用があるというより、免疫賦活作用によってガン細胞の増殖を抑制したもの、と解すべきなのでしょう。原理的には、カゼをひかなくなることと全く同じことなのです。
体を温め、血行を促進 〈根茎〉
はじめに私の経験をお話したように、刺五加を飲んでまず誰もが実感するのは、体を温め血行をよくする働きに優れているということでしょうが、実はこの血行の促進とは、体に備わった免疫の力を十分に働かせるために、必須の条件でもあるのです。
たとえば、カゼをひいた時のことを考えてみてください。まず寒気がして、やがて熱が出てくるでしょう。ときには四十度近い高熱の出ることも珍しくありません。熱さえなければ仕事を休まずにすむのに・・・・・とうらめしく思われるかもしれませんが、発熱とは、体が侵入したウイルスと戦うために是非とも必要な反応に他ならないのです。
熱が出て体温が上がれば、当然体は温められます。体が温まれば血行もさかんになるでしょう。発熱の最大の目的もここにあります。
カゼのウイルスという異物を迎え撃つ免疫のミサイルは、血液にのって体を巡回しているわけですから、それが異物侵入の合図とともに現場へ急行し、十分な免疫力を発揮できるためには、血液の流れがよくなければならないでしょう。そのための最もてっとり早く確実な方法が、発熱だったというわけなのです。
ですから、高熱の出る激しい症状のあらわれるのは、病気が重篤なしるしなのではなく、自然治癒力が正常に働いて、治癒の方向性を示している証拠であり、むしろ喜ぶべきことなのです。
いずれにせよ、血行をよくするということが私たちの健康を守るうえでいかに重要なことか、おわかりいただけるでしょう。刺五加は、私たちの体に備わった免疫力そのものを増強する作用があるばかりでなく、血行を改善することにより、その免疫力が十二分に力を発揮できるコンディションをつくってくれます。つまり刺五加の健康増進作用には、病気になりにくい体を作ることと、万一病気が侵入してきても正しい治癒反応を導いていち早く撃退してしまう、という二重の意味ががある、ということなのです。
なお、刺五加の投与で慢性関節リウマチの痛みが緩和したとの報告も見られますが、これも刺五加に鎮痛作用があるというより、やはりその血行促進作用によるものと考えるべきでしょう。炎症の起きている部分は、周囲の組織に比べ血行が悪くなっており、それが痛みを起こす最大の原因だといわれます。したがって、血行を改善してやれば、痛みもおのずとやわらぐというわけなのです。
同様のことは、ガンの激しい痛みについてもいえるでしょう。異常増殖してガチガチに固まったガン細胞は、血管を締めつけてその部分の血行をきわめて悪くさせています。刺五加の働きで血行が改善されれば、痛みが軽減するばかりでなく、投与した制ガン剤がガン細胞に届きやすくなり、まさに一石二鳥の効果が得られる、というわけです。
NASAも注目した薬効 〈果実〉
さきに私は、刺五加は特定の病気の専用治療薬ではない、といいました。しかしこれは、個々の疾患の治療に効果がない、ということではありません。すでに中国では、動脈硬化、高血圧、脳卒中、狭心症、心筋梗塞といった働き盛りを襲う循環器系の疾患をはじめ糖尿病、慢性肝炎、胃・十二指腸潰瘍、リウマチ、アレルギー病からガンに至るまで、幅広い分野で臨床に用いられ、効果をあげているといわれます。
ことに注目すべきは、刺五加の中に、血栓を溶かす働きのある有効成分のあることが明らかにされたことです。血栓とは、血管の中で血液が固まって血流をストップさせてしまう現象のことであり、これが心臓の筋肉を養っている冠状動脈に起これば心筋梗塞、脳の動脈に起これば脳梗塞と、ともに死亡率の高い重大な病気をもたらす直接の犯人です。
血栓症の予防にビタミンEが有効であることは、以前から知られていますが、しかしビタミンEには血行をよくして血栓をできにくくする作用はあっても、すでにでき上がった血栓を溶かす働きは、期待できません。経口的に服用して血栓を溶かすことのできる薬は、新薬ではいまだ開発されておらず、その意味でも刺五加の存在は大変に貴重なものといえましょう。
もう一つ、刺五加の効能の中でぜひあげておかねばならないのは鎮静作用です。おそらく、ストレス対抗ホルモンといわれる副腎皮質ホルモンの分泌をコントロールすることによって自律神経のバランスを回復させ、神経の興奮や異常緊張を解く、というメカニズムによるものなのでしょう。不眠症や心因性インポテンツの治療にはすでに用いられ、効果をあげているといわれますが、ストレスに対する耐性を高めるという点から、集中力や記憶力の増進にも役立つのではないか、との期待も寄せられています。また、伝えられるところによれば、NASA(米航空宇宙局)からは、高度のストレスにさらされる宇宙飛行士の食事に刺五加エキスを添加したい、との引き合いがあったともいわれます。
このように多方面にわたるさまざまな薬理効果をもち、応用のきわめて広いことが、刺五加の最大の魅力。しかも、その効能はすべて動物実験や臨床実験によって科学的に証明されています。現代人に多い半健康状態の建て直しには、高麗人参と同様、安心しておすすめできるもの、といえましょう。
1980年のモスクワ・オリンピックでのソ連選手の金メダル独占のカゲには、この刺五加エキスによる体力づくりがあずかって力あったということです。とするなら、三年後のソウル・オリンピックは、韓国勢の人参と、ソ連、中国勢の刺五加との力競べの場になるのではないか――と、私はひそかに楽しみにしている次第です。
以上、JPS製薬MRご紹介記事より引用
双参(そうじん)とは!? ![]()
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