大山漢方堂薬局 漢方薬・鍼灸・東洋医学専門
岡山大学医学博士 徳島大学薬学修士 大山博行![]()
特集:男性の更年期と漢方薬
相談@ 疲れやすくて、やる気が出ない
2年くらい前から「すぐイライラする、疲れやすい、やる気が出ない」といった症状があります。
病院に行っても「異常なし」との診断ですが、漢方薬でやる気を出すことはできますか?
(47歳・男性)
お答えします。
ストレスの多い働き盛りの年代の「やる気が出ない」という症状は、かつては「初老期うつ病」と思われていたのですが、
最近では、そのなかに「男性の更年期障害」というべきものが含まれていることがわかってきました。
男性更年期障害は、ホルモンバランスの変化に、加えて過剰なストレスが加わると、起こりやすいと考えられています。
漢方でいえば、生命エネルギーである「氣」の失調を来した状態で、「氣」の働きが不足する「氣虚」が疑われます。
こうしたとき、漢方では「氣」を補う薬を用います。
特に男性には、男性ホルモンのような作用がある「山薬」という生薬を含む「六味地黄丸」「八味地黄丸」などがよく用いられます。
また、「地黄」や「附子」には免疫系を高める働きもあります。
男性の更年期障害とは?
次の10項目のうち、3つ以上あてはまる場合、
あるいは1と7のどちらかがある場合は、
男性の更年期障害を疑ってよいわれる。
1.性欲の低下がある
2.元気がなくなってきた
3.体力または持続力の低下がある
4.身長が低くなった
5.「日々の楽しみ」が少なくなったと感じる
6.もの悲しい気分、怒りっぽい
7.性機能(勃起力)が弱くなった
8.最近、運動する能力が低下したと感じている
9.夕食後、うたた寝をすることがある
10.最近、仕事の能力が低下したと感じている
男性の更年期障害に効く漢方薬
体がだるい、気力がない、→ 「氣虚」→ 補中益気湯(虚)、八味地黄丸(虚〜中)、六味地黄丸(虚〜中)
疲れやすい、内臓下垂
抑うつ傾向、のど・胸のつかえ、 → 「氣滞」→ 香蘇散(虚)、大柴胡湯(実)
頭重感、腹が張りやすい
冷えのぼせ、顔が赤い、 → 「氣逆」→ 桂枝加竜骨牡蛎湯(虚)、柴胡加竜骨牡蛎湯(実)
発作性の頭痛、気が動転しやすい
「氣」の失調には、
「氣」の量が不足する「氣虚」、
「氣」の流れが滞る「氣滞」、
「氣」の流れが逆流する「氣逆」があり、
そうした病態に応じて漢方薬が処方される。
(虚)=虚症、 (中)=中間証、 (実)=実証
相談A 更年期のゆううつに効く漢方薬はありますか?
親の介護に明け暮れて日々悶々としています。少しでも楽しく毎日を送りたいのですが、
更年期のゆううつに効く漢方薬はありますか? (51歳・女性)
お答えします。
女性の更年期障害は、昔から「血の道症」といわれてきました。
「血の道症」とは、つまり月経にまつわる、さまざまな症状、閉経した後の症状(更年期症状)も含めたものです。
女性の「血の道症」では、「氣血水」の「血」の失調を中心に考えます。
血の失調を整える代表的な漢方薬が「当帰芍薬散」「加味逍遙散」「桂枝茯苓丸」「折衝飲」などで、
なかでも、精神的なストレスが多く焦燥感のあるような人には「加味逍遙散」がよく効きます。
上半身の熱感があるような人に向く薬で、「寝つきが悪い、怒りっぽい」という症状のある人にもよく効きます。
この方の場合、「氣」の働きが不足している「氣虚」もあるようなので、
「氣」を補って元気を出す「補中益気湯」などが有効でしょう。
相談B うつ病も漢方薬で治せますか?
現在、うつ病を患っています。男性更年期症害の症状を聞いて、うつ病の症状と似ていると感じました。
更年期障害に効く漢方薬で、うつ病も治療できるのでしょうか? (36歳・男性)
お答えします。
男性の更年期障害の中には、抑うつ症状のある場合があります。
たしかにうつ病の症状と似ていますが、うつ病と男性の更年期障害とは、分けて考えた方がよいでしょう。
うつ病であれば、まず精神神経科に受診してください。
抗うつ薬を服用している人で、気持ちは安定したが、いまひとつ元気が出ないという場合には、
「補中益気湯」や「香蘇散」などの「氣」を補う漢方薬の併用が有効です。
担当医に相談してみるのもよいでしょう。
ただ、うつ病には自殺をはかるような危険な症状もあるので、
自己判断で抗うつ薬をやめたりするのは危険です。
女性の更年期によくみられる症状
抑うつ、のぼせ、イライラしやすい、めまい、発汗、肩こり、脱力感、不安、不眠、頭痛、耳鳴り、冷え、手足のしびれ
女性の更年期障害に用いる漢方薬
漢方薬の例 主な症状
加味逍遙散(虚) 便秘傾向あり 背中・上半身の発作性熱感あり
桃核承気湯(実) 便秘傾向あり 背中・上半身の発作性熱感なし S状結腸部の擦過痛*あり
女神散(実) 便秘傾向あり 背中・上半身の発作性熱感なし S状結腸部の擦過痛*なし
当帰芍薬散(虚) 便秘傾向なし 浮腫傾向、貧血あり
桂枝茯苓丸(中〜実) 便秘傾向なし 浮腫傾向、貧血なし 安静時の動悸・不安、不眠なし
柴胡桂枝乾姜湯(虚) 便秘傾向なし 浮腫傾向、貧血なし 安静時の動悸・不安、不眠あり
*(擦過痛)・・・腹診で左下腹部のS状結腸あたりを軽くこすった際に現れる痛み。
相談C 漢方薬で、認知症(痴呆症)はどこまで改善されますか?
母が4か月前に脳血管性の認知症(痴呆症)と診断されました。新薬を処方されていますが、あまり改善がみられません。
ずっと続けて服用させるのは心配です。できれば漢方で治療させたいと思うのですが、
漢方薬で認知症(痴呆症)はどこまで改善できますか? (母・78歳)
お答えします。
認知症(痴呆症)は、脳梗塞など、脳血管障害によって起こる「脳血管性認知症」と、脳が広範囲に萎縮して起こる「アルツハイマー 型認知症」の2つに大きく分けられます。我々の研究では、脳血管性の認知症(痴呆症)に対し、大きく7種類の漢方薬が有効、アルツハイマー型認知症(痴呆症)に対し、大きく5種類の漢方薬が有効であろう、ということがわかってきました。
脳血管性認知症は、漢方では「血」の巡りが滞る「於血」の状態と考えられます。
この「於血」を改善する漢方薬が、「冠心二号方」「続命湯」「釣藤散」「黄連解毒湯」という漢方薬です。
また、脳循環改善作用、脳代謝改善作用、遅発性神経細胞壊死改善作用、を持つ漢方薬は、「続命湯」「黄連解毒湯」です。
西洋医学的な臨床試験の結果でも、発症から5年以内の軽症〜中等症の脳血管性認知症の人の、頭痛やめまいなどの自覚症状、
記憶力や計算力などの精神症候、用便や座位などの日常生活動作(QOL)の改善効果が認められています。
釣藤散は、特に、冷えがあり、朝方に頭重感のあるような人に向く薬です。
いずれにしても、効果的に用いるためには、患者さんの症状・体質により、これらの漢方を使い分けたり、合方する必要もあります。
認知症の主な症状
認知症の症状には、知的機能障害を主とする「中核症状」と精神症状を主とする「周辺症状」があり、
現れ方は、脳の障害された部位や程度により、千差万別である。
中核症状・・・思考・判断力の低下、記憶力の低下、見当識障害(自分は誰か、今どこにいるかなどの基本的な認識)、計算力の低下
周辺症状・・・幻覚・妄想、意欲低下、抑うつ・不安、睡眠障害、不穏(泣き叫ぶなど)・興奮、徘徊、不潔行為(排泄物を触るなど)
脳血管性の認知症に用いられる漢方薬
@三黄瀉心湯(実) 便秘傾向、不眠・イライラあり、のぼせ感、出血傾向、顔面紅潮あり
A柴胡加竜骨牡蛎湯(実) 便秘傾向、不眠・イライラあり、のぼせ感、出血傾向、顔面紅潮なし
B黄連解毒湯(実) 便秘傾向なし、不眠・イライラあり、出血傾向、熱性湿疹あり
C釣湯散(虚) 便秘傾向なし、不眠・イライラあり、出血傾向、熱性湿疹なし、朝方の頭痛・頭重感あり
D桂枝茯苓丸(中〜実) 便秘傾向、不眠・イライラなし、のぼせ感、あざができやすい、顔面紅潮、痔あり
E真武湯(虚) 便秘傾向、不眠・イライラなし、のぼせ感、あざができやすい、顔面紅潮、痔なし
相談D 前立腺肥大症で夜間の頻尿に悩まされている。
6〜7年前から、夜トイレに行く回数が増え、5年前に前立腺肥大症と診断されました。
現在、睡眠不足に苦しんでいます。漢方で頻尿を改善できますか? (62歳・男性)
お答えします。
排尿困難のなかでも頻尿は最も多い悩みで、特に「夜間頻尿」が問題です。
中高年の男性の場合、頻尿の原因で最も多いのは前立腺肥大症で、大きくなった前立腺により、
膀胱の尿の出口が刺激されたり、尿道や尿が出にくいなどの排尿異常が起こります。
前立腺肥大症に対しては西洋薬でよく効くものがありますが、漢方薬を併用すると夜間頻尿が改善することがよくあります。
漢方では頻尿を「氣」を蓄える「腎」の働きが衰えた「腎虚」ととらえ、腎虚を改善する薬を用います。
特に「牛車腎気丸」などは、膀胱が収縮して尿を押し出す力を高めて、夜間頻尿の改善に役立ちます。
この薬は、胃腸が丈夫で、むくみ(浮腫)があるような人によい漢方薬です。
「五臓」とは
漢方では、西洋医学のような解剖学的な内臓ではなく、心身の機能の面から「肝、心、脾、肺、腎」という五臓の概念があり、
その失調から病気をとらえます。五臓のひとつである「腎」は、水分代謝、成長と生殖、耳・骨・歯の機能の維持、
驚きや恐れの感情のコントロールなどの機能を担っているとされ、腎の働きが衰える「腎虚」になると、次のような症状が現れます。
「腎虚」で起こる症状
●気力・精力の減退
●視力・聴力の衰え
●排尿異常(夜間頻尿など)
●腰痛
●手足のしびれやほてり
頻尿に効く漢方薬
苓姜朮甘湯(虚) 胃腸虚弱あり、腰より下の冷え、下半身が重だるい
清心蓮子飲(虚) 胃腸虚弱あり、腰より下の冷え、下半身が重だるくない
五苓散(虚) 胃腸虚弱なし、浮腫傾向あり、汗をかきやすい
牛車腎気丸(虚〜中) 胃腸虚弱なし、浮腫傾向あり、汗をかきやすくない
猪苓湯(実) 胃腸虚弱なし、浮腫傾向あり、汗をかきやすくない
八味地黄丸(虚〜中) 胃腸虚弱なし、浮腫傾向軽度〜なし
六味地黄丸(虚) 胃腸虚弱なし、浮腫傾向なし、乾燥傾向、口が渇く
相談E やせすぎていて心配です。漢方薬で、体質改善(もう少し太りたい)できますか?
半年ほど前から体重が減り始めました。
体重を落としたくないと思ってたくさん飲んだり食べたりすると、大量の寝汗をかき、尿が出ます。
やせすぎた人に用いて体質改善できる漢方薬はありますか? もう少し太りたいです。(58歳・男性)
お答えします。
体重が減ってくる病気もいろいろあります。
ですから、急に体重が減り始めたようなときには、まず原因となっている病気がないか確認する必要があります。
例えば、糖尿病、甲状腺機能亢進症、がん、結核などの代謝性・消耗性疾患が原因となって体重減少が起こります。
このような場合は、まず、何よりも、その根本原因疾患の治療が最優先です。
特に病気がないのにやせるという場合に、漢方薬が威力を発揮し、役立ちます
この方は飲食を契機にいろいろな症状が出ているので、胃腸の働きを補って元気を増していく
「補中益気湯」がまず考えられます。 この漢方薬には、「黄耆」という生薬が配合されていて寝汗を抑える効果もあります。
もちろん、漢方薬の服用と併せて、食事をしっかりとることが大切です。
やせてくる病気
糖尿病 のどの渇き、多尿、化膿しやすい 食欲があり、食べられるのにやせる
バセドウ病 首の腫れ、動悸、眼球突出 食欲があり、食べられるのにやせる
(甲状腺機能亢進症)
がん 発熱、患部の痛み・しこり 食欲がなく、食べられなくてやせる
肺結核 発熱、咳、痰、胸痛、息苦しい 食欲がなく、食べられなくてやせる
消化器の病気 下痢、腹痛、腹鳴 食欲がなく、食べられなくてやせる
急にやせてきたときには、現在あるいろいろな症状に注目し、原因となっている病気があるかないかを確認することが一番大切です。
やせすぎ・胃腸虚弱の人に良い漢方薬
真武湯(虚) 胃部振水音あり、むくみ、尿量減少あり、まっすぐ歩けない、ふらつき、めまいあり
茯苓飲(虚) 胃部振水音あり、むくみ、尿量減少あり、まっすぐ歩けない、ふらつき、めまいなし
安中散(虚) 胃部振水音あり、むくみ、尿量減少なし、上腹部痛、胸焼けあり
平胃散(虚) 胃部振水音あり、むくみ、尿量減少なし、上腹部痛、胸焼けなし
半夏瀉心湯(中) 胃部振水音なし、グル音亢進(腹鳴)あり
補中益気湯(虚) 胃部振水音なし、グル音亢進(腹鳴)なし、食後の眠気あり
香蘇散(虚) 胃部振水音なし、グル音亢進(腹鳴)なし、食後の眠気なし、便秘がち
相談F 長年、慢性頭痛で悩んでいます。 漢方で何とかなりませんか?
若いころからの頭痛もちで、頭痛薬をのみ続けています。
病院で検査を受けたこともありますが、特に病気はないといわれました。
慢性的に続く強い頭痛も漢方薬で改善できますか? (42歳・女性)
お答えします。
頭痛はさまざまな原因で起こります。なかには脳の重大な病気による場合もありますから、まずきちんと診断を受けてください。
この方のように、検査では異常がないのに長い間繰り返し起きる頭痛が「慢性頭痛」で、
頭の片側がズキンズキンと脈打つように 痛む「片頭痛」と、
頭全体が締めつけられるように痛む「緊張型頭痛」が代表的です。
両方が合併している場合もありますが、こうした頭痛には漢方薬がよく効きます。
片頭痛のような強い頭痛に最もよく用いられるのが「呉茱萸湯」で、胃腸が虚弱で冷えがあるような人に向く薬です。
一方、胃腸虚弱で、冷えがなく、特に天気が崩れる前に頭痛がひどくなるような人には「五苓散」という漢方薬がよいです。
頭痛の主な種類と特徴
片頭痛
●脈打つようにズキンズキンと痛む
●突然、頭の片側に起きる
●頭痛の前に光が見えたりする(前兆)
緊張型頭痛
●頭全体が締めつけられるように痛む
●肩から首にかけて重苦しい
●後頭部が痛む
●夕方起きやすい
片頭痛と緊張型頭痛が合併していることもある。
注意)急性の「脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞」のほか、「脳腫瘍」や「慢性硬膜下血腫」
(頭部打撲により硬膜とくも膜の間に血の塊ができる)などの脳の病気が原因で頭痛が起きることもある。
慢性頭痛によい漢方薬
桂枝人参湯(虚) 胃腸虚弱、手足の冷えあり、顔ののぼせあり
半夏白朮天麻湯(虚) 胃腸虚弱、手足の冷えあり、顔ののぼせなし、めまいあり
呉茱萸湯(虚) 胃腸虚弱、手足の冷えあり、顔ののぼせなし、めまいなし
釣藤散(虚) 胃腸虚弱あり、手足の冷えなし、肩や首すじがこる、起床時に頭痛がひどい
五苓散(虚) 胃腸虚弱、手足の冷えなし、天気が崩れる前の頭痛あり
葛根湯(実) 胃腸虚弱、手足の冷えなし、汗をかきにくい
川弓茶調散(中) 胃腸虚弱、手足の冷えなし、汗をかきやすい
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