平成四年三月・熊本県伝統工芸館

 交通は便利になり、時間的に遠近感はうすれてはいるが、東北から九州はやはり遠い地である。南の人々の想いもまた同じなのであろう。
 昭和六十三年十一月、福岡県立美術館での展覧会に訪れた人も熊本の人も異口同音に東北は遠くにあり、言葉の訛
(なま)りにさらに遠きを感じたと言う。長い冬、深い雪に埋もれて生きた、かつての人々の生活(くらし)は想像もできなかったのである。稲作とともに北に延びた弥生の文化に、人々は交わりを深めながら、いまの日本の生態を形づくってきた。北の人々が生活に適応する数多くの布を作り,、それが北から南へと派生したことをあらためて知り、森の恵みに抱かれて生きづいてきた縄文の香りと感触に目を見張り、北国に住む人の技とたくましさに刮目(かつもく)して畏敬すら覚え、遥かなる未知の国(みちのく)の風情に思いを寄せていつの日か訪ねてみたいと人々は言った。

私の日記より

昭和六十三年(1988)十一月十六日(水)晴れ
福岡県立美術館 展覧会二日目 

昨夜のNHKテレビ放映のためか本日の来場者多し。昼食もゆっくり食べられず応待説明に悲鳴をあげる。アンケートの回収は良い。来場者の声は殆んどの人が驚きとはじめて見た人が圧倒的であった。二三〇名の来場者あり。鹿児島で大島紬の織元都喜ヱ門の娘である藤かほりさん見学にくる。

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南の人々は
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