コーシャー Kosher (清浄食品)

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ユダヤ教徒にとって、聖書に記載されている「食べてはいけないモノ」が存在します。中でも豚肉は比較的有名ですよね。他にも禁忌の対象になるものがいくつか。

コーシャーとは、ユダヤ教のうち、食べ物に関する定め(律法)に合致した作り方をしたものを言います。
「コーシャー」とはヘブライ語で「ふさわしい」とか「適正な」という意味になります。日本語では「清浄食品」と訳される事が多いようです。

「アメリカのユダヤ人(The american Jews)」(明石書店)によると、律法では、基本的には 「貝類甲殻類はいついかなる場合も禁じられる。禁止されていない牛肉鳥肉は、掟にかなった方法――生きているうちに殺して血を注意深く出すなどの手順――で儀式的に屠殺されたものでなければ食べられない。それから牛肉乳製品同時に食べることは掟にそむく、あるいは不浄とみなされる。肉用の皿やガラス食器を乳製品用につかってはならない
となります。

ただ、これを正直に実践している正統派ユダヤ教徒とは多少違って律法の解釈を認める改革派ユダヤ教徒も存在しています。こちらは「正統派」に対して「保守派(コンサヴァーティヴ)」と呼ばれています。

正統派ユダヤ教は、聖書のように文章で残されている「成文律法」の他に伝えられている「口伝律法」も成文律法に劣らず重要なもの、とみなしています。言い伝えられた通りに、変えてはならない、というスタンス。
一方、改革派ユダヤ教は、口伝律法を人間の手で変える事が出来る、と云う解釈をする訳です。

ユダヤ系であっても、律法を遵守しないユダヤ人というのは現代では多いらしいのは、小説を読んでいても感じます。
多分、正統派ユダヤ教徒は、数的には多くないんじゃないかと思います。

食べ物に関する律法の多くは旧約聖書の「レビ記」に出ている、と記憶しています。

ユダヤ教徒にとっては「旧約」が「聖書」で、「新約」は存在しない訳です。ここでは分かりやすさと手に入りやすさで、あえてキリスト教の「旧約聖書」でご紹介です。(ごめんなさい。私が「旧約聖書(新約聖書付)」しか持っていないので)

レビ記 第7章26節から
「またあなたがたは、すべてその住む所で、鳥にせよ、獣にせよ、すべてその血を食べてはならない。」

これが、コーシャーの動物の屠殺方法の掟になる訳です。

第11章1節から
「イスラエルの人々に言いなさい。『地にあるすべての獣のうち、あなたがたの食べることのできる動物は次の通りである。
獣のうち、すべてひずめの分かれたもの、すなわち、ひずめの全く切れたもの、反芻するものは、これを食べることができる。
ただし、反芻するもの、またはひずめの分かれたもののうち次のものはたべてはならない。
すなわち、らくだ、これは反芻するけれどもひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。
岩たぬき、これは反芻するけれどもひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。
野うさぎ、これは反芻するけれどもひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。
、これは、ひずめが全く切れているけれども、反芻することをしないから、あなたがたには汚れたものである。」

ですから牛・羊は食べられます。

「水の中にいるすべてのもののうち、あなたがたの食べることのできるものは次のとおりである。すなわち海でも川でも、すべて水の中にいるもので、ひれとうろこのあるものはこれを食べることができる。
すべて水に群がるもののうち、すなわち、すべて海、または川にいて、ひれとうろこのないものはあなたがたに忌むべきものである。」

サーモン、鯛などの魚はOK。
でも、貝類、エビなんかは駄目って事ですね。

「鳥のうち次のものはあなたがたに忌むべきものとして食べてはならない。それらは忌むべきものである。
すなわち、はげわしひげはげわしみさごとびはやぶさの類、もろもろのからすの類、 だちょうよたかかもめたかの類、ふくろうみみずくむらさきばんペリカンはげたかこうのとりさぎの類、やつがしらこうもり。」

「はげわし」と「ひげはげわし」がどう違うかは私に聞かないで下さい(笑)。
だって、聖書にはそう翻訳されて載っているんだもん(あぁ、役立たず?)。

鶏、鳩、つぐみ、七面鳥等々、主だったものはだいたい食べられるかな。
今流行の兆しのある「だちょう」の肉は駄目ですね。

ちなみに、ユダヤ人は清浄食品しか食べない、という誤解からユダヤ人の食べる物はすべてコーシャーだ、と思う人も生まれました。

そのため、戒律には決められていないきゅうりのピクルスにも「ユダヤ的味つけ」、つまりデリカテッセンで売っているような味ならばコーシャーを名乗らされています。
この「コーシャー・タイプ」のピクルス、甘くなくて(スウィート・ピクルスではない、ディル・ピクルスです)結構好きです、私。

でも、基本的には野菜に関する「律法」はないです。

ニューヨークにある「コーシャー」の「デリカテッセン」は、19世紀の終わりごろに移民してきたユダヤ系の人々(ポーランド、ロシア、ドイツ、ルーマニア、など)がやってきてから発展したものです。
基本的に料理は、東ヨーロッパの人々によってもたらされたものです。
ですから、同じユダヤ教徒であるイスラエル国民とは違った料理も結構あるんではないかと思います。

現在アメリカでは、ユダヤ人が、全部ユダヤ人地区のみに住む訳ではなくなっているので、ユダヤ料理のデリカテッセンで現在も生き残っている店はそれ程多くないようです。

ユダヤ系のデリカテッセンで名実ともに有名なのは、「パストラミ」「コーンド・ビーフ」、「スタッフド・キャベジ(キャベツの肉詰め)」などでしょうか。
最近ユダヤ系の人々以外にもファンを増やしている「ベーグル」(パン)も、本来はユダヤ人が食べているんですね。

デリカテッセンには、厳密に「コーシャー」にのっとっているものを出すお店(グラッド・コーシャー)から、コーシャーの方式には従ってはいても、ただ「コーシャー」と呼ばれるお店、コーシャーの方法にそれ程忠実ではない「ユダヤ・スタイル(コーシャー・スタイル)」などなど色々あるようです。
コーシャー・スタイルのお店だと、「ターキー、コーンド・ビーフ、チーズのサンドウィッチ」も存在します。

デリカテッセンという言葉はドイツ語で、調理済みの食品や珍味を売る店、という意味です。イタリア料理のデリカテッセンも、中華料理のデリカテッセンも、当然存在します。

改宗派ユダヤ教徒として、フェイ・ケラーマンの「贖いの日」(ピーター・デッカー&リナ・ラザルス・シリーズ)にピーター・デッカーの異父弟(実母の元で育った弟)ヨナタン(ヨナサン)が登場しています。残念ながら、ヨナタンの食生活は描かれていませんが。


参考文献
聖書(日本聖書協会)
「ニューヨーク・デリ」(柴田書店)
「食べるアメリカ」(平松由美・駸々堂)
「購いの日」(フェイ・ケラーマン・創元推理文庫)