VOCA展2005
上野の森美術館

3.15〜30

★★★☆
 

 

毎年恒例のVOCA展、「平面作品の新しい地平」を追求することを目的とし、同時に有望な若手の発掘・紹介の場ともしている。今年で12回目を迎えるから、それなりの歴史を育んできたことになる。


05年展は、昨年、一昨年と比べると変化があった。03年展や04年展が似たような作風のオンパレードだったのに対して、今年は表現のバラエティが豊かになっていた。そのため、おのずと多彩な作風が感じられ、これまでよりは「平面作品の新しい地平」を探るという本展の趣旨にかなったものになっていたかと思う。たとえば、鏡にコラージュした作品や写真と絵画を融合させた作品、墨やテキスタイルを用いた作品、粘土を素材にした作品など、「平面」という括りのなかで何ができるか、とにもかくにも試行錯誤がうかがえる結果となっていて、近年の「おだやか」一辺倒の“VOCA調”は影をひそめていた。


そのこと自体はよかったと思うのだが、では、それで万々歳かというと、ことはそれほど簡単ではない。「いいなあ〜、これは!」「すごいな!」と有無をいわさず納得させてくれる作品が少なかったからである。主催者は、VOCA展は「全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などから推薦された40歳以下の作家」による「エキサイティングな場」だと標榜する。いわば、現代の若手を代表するアーティストたちの祭典ということになる。しかし、「若手の代表」として見れば、弱い。弱すぎる。これらが現代日本のサミットなのかと思えば、世界水準からは相当水をあけられているといわざるを得ない。


いわゆる“VOCA調”の嵐は収まったものの、総じて「幼稚っぽい」作品が多いのが気になった(今年のVOCA賞作品が好例)。「幼稚っぽい」のが、即、幼稚かどうかは一概にはいえないが、こうした傾向ばかりが専門家から評価されて、ほんとうにそれでいいんだろうかと疑問を抱く。また、「幼稚っぽい」作品を通じて、作者は何を語りたいのか、何をテーマにしようとしているのか、何を問おうとしているのか――アートの根本的な存在意義の部分(レーゾンデートル)が、少なくとも私にはわからなかった。


本展に限らず、現代アートの作家たちは、「何のために自分はアート作品をつくるのか」という哲学的な問いかけが不足しているんじゃないかという気がする。評価する側も、インパクトがありさえすればそれでよし、で、「なぜこれを高く評価するのか」という掘り下げが不足しているのではないか。美術界は閉じた世界なので、ほかの諸ジャンルに比べて、つくるほうも評するほうも、全体的に未熟になっているような危惧を覚えてならない。


もう一つ、気づいたこと。偶然か必然か、今年の作品の多く、いや、ほとんどは、非現実のイメージを作品化するものであった。作者の空想世界をそのまま表現してあるばかりで、外界との接触が感じられない、「引きこもりアート」とでもいうべきトレンドが著名なのである。私は“VOCA調”をなかば揶揄的に「半径2メートルアート」と呼んできたが、「引きこもりアート」はそれどころではないかもしれない。そのため、ともすれば独りよがりになりがちで、それが上記のレーゾンデートルに対する疑問にもつながっているように思う。


といった感じで、感想をまとめるとするならば、「表現が多彩になったのはいいけれど、総体的な作品の力としては物足りない」ということになる。こんな調子が今後も続くと、本展は現代アートをミスリードしやしないか心配になってくる、とまでいってはいいすぎ?

目を引いたのは以下の作品たちです。


● 片岡健二 「yes.ma’am」

淡い肌色の絵具で、女性の顔をおぼろに大きく描いた2枚組の絵画作品。題名からすると、作者の母親らしい。まあ、よくあるタイプの絵といえば、そうなのだけれど、引力は感じた。2枚の顔は、しわの寄り方とか髪型とか、微妙に違う点があり、それが作者の母親観を暗黙裡に物語っているよう。


● 鯉江真紀子 「untitled」

写真作品。競馬場のスタンドより、観客席から馬場まで広く俯瞰して写してある。2枚並べて、ほとんど一体化させている。多重露光を使用しているようで、観客がダブり、コースを区切る白いラチが何本も重なる。画像を明確に見きわめられない。露出はハイキーで、全体的に白っぽく、それがなおさら幻想感を高めている。こんな撮り方もあるのかと感嘆。大原美術館賞受賞作品。「untitled」というのはやめてほしい。


● ベ・サンスン 「More and Less V」

黒いベルベットにジェッソという一種の白い地塗り剤で描いた作品。描かれているのは薄い細い輪で、それがグラデーション的階調をもって、まばらに描かれたり、濃密に描かれたりしている。その結果、黒いベルベットにぼんやりと霧のような雲のような抽象模様がうっすらと浮かび上がる。不思議な浮遊感があり、宇宙の深遠をも思わせる。タイトルに「V」とついているから、いくつもの連作があるのだろう。


● 米原昌郎 「The harbor U」

粘土を素材にした作品。粘土で大きな板をつくり、それを地として、そこに刃物で切りつけて絵柄を描く。通常、粘土は彫刻などの「立体」に使用されるから、それをあえて「平面」に使用したところに意表をつかれた。「平面の新しい表現」だと思った。

(3/21)