写真新世紀2004
海岸通りギャラリーCASO

4.14〜5.9

★★★

 

「写真新世紀」は、キヤノンが新人写真家発掘を目的として実施している文化支援活動。1991年から続いている。今回は、応募者数1150人、のべ作品数31171点のなかから、グランプリ1点と入賞作品5点が選ばれた。審査員は、アラーキー、飯沢耕太郎、南條史生(森美術館副館長)、森山大道のレギュラー審査員と、ゲスト審査員のマーティン・パー(イギリスの写真家)、鈴木理策(写真家)の6名。キヤノンとしては、かなり力の入った企画である。


1000人を越える応募者、30000点以上の作品から選ばれただけに、入賞作は、それぞれ、ピックアップされるだけの理由はあるとは感じた。けれども同時に、それほどの多数より選抜されたにしては平凡であったようにも思った。グランプリの内原恭彦氏の作品は、さまざまなシーンを写した何枚もの写真を壁面一面にビッシリと並べたもので、それぞれの写真は社会の必ずしも美しくない部分を切り取ったものが多い(フライヤー表面と裏面の上段、中央)。


単純な表面的なきれいさよりも、貧しい人々の営みとか朽ち果てて放置されたモノなどを追い、より存在の根源、本質を追い求めているよう。日本だけではなく海外までも取材していて労作だとは思ったが、絵柄は森山大道氏の、作品を得る視点は川内倫子氏のコピーから逃れられていない気がした(作者が意識しているかどうかは別として)。きっとこれを選んだのは森山大道氏だろうなと思って説明板を見ると、案の定であった。


優秀賞のヤマダシュウヘイ氏の作品は、女性の後頭部だけを撮ったもの(フライヤー裏面の右列、2番目)。決して顔は写さない。さまざまな髪型のバージョンがあり、なぜかシャツのタグが上向きにしてある。モノいいたげで、実験的ではあるようだが、よくわからない。何となく理屈先行の感ありで、私には作品としての魅力や説得力が物足りなかった。飯沢耕太郎氏の選と知って、さもありなんの感が。


その他の入賞作は、東京へ出た作者がふるさとの同級生たちのイキイキとした生活を写すもの、みずみずしくも懐深いニュアンスで木々の姿を写すもの、建築デザイン的な視線でさまざまな建物風景を写すものなどで、いずれも面白くないわけではないものの、「でも、こういうのよくあるなあ」という気持ちが残るのだった。つまり、3万点という膨大な応募からセレクトされたにしては、いま一つ、突き抜けたものが感じられなかったのである。


そうしたなかにあって、藤田裕美子氏の「Underwater Umbrella」に少し他より強い印象を受けた。プロジェクターでスチールを連続映写する、なかば映像作品的であったためもあるかもしれない。雨の日に傘をさす人々の様子をさまざまに写し出したもので、それぞれの絵がさわやかで、センスのよさが感じられた。改めて見ると、傘だけでもありとあらゆる個性が表われていて興味深い。すべてオーバーめの露出設定にしてあるようで、それが日常風景に不思議な浮遊感覚を与えていた。作品を見ているうちに、まるで新しい傘を買ってもらった子どものように、雨の日が楽しみに思えてきた。

(5/3)