●スーラと新印象派展
● 2002.9.21
● 京都国立近代美術館
★★★★
| 科学的な点描法で絵画の1ページを開いたジョルジュ・スーラと、彼に続いた新印象派と呼ばれる一派の展覧会。新印象派なるグループがどんな人たちで、どういう絵を描いたかが、よく学べる内容になっていたと思う。だから、「よかった」というより「勉強になった」といった感想のほうが強い(なので、評価がむずかしい! ためになった意義をもって★★★★としよう)。なお、「スーラと新印象派展」とはよく言ったもので、スーラの作品は習作を含めて10点余り。その他、内容の大半はスーラ以外の作品だった。もし、「スーラ展」であったら文句をつけたくなるところだが、「スーラと新印象派展」だから、看板に偽りはない(商売が、うまい!)。ポイントとなる絵に、解説がつけられていたのはよかった。が、カタログが3800円(だったと思う)というのは、高すぎる! 買えないです。
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ジョルジュ・スーラ 『クールブヴォアの橋』 1886〜87 スーラの点描画の典型的な一枚。『アニエールの水浴』と同様に、川辺の風景を描いている。色彩は緑と水色基調の寒色系。計算された幾何学的な構図で、岸辺は三角形で画中の人物もほとんど直立するように立っている。直線で構成された世界である。このあたり、まさに科学的な絵といった印象を受ける。が、同時に叙情にもあふれている。点描独特の叙情で、静かな中に怜悧で明晰な詩趣が伝わってくる。秩序立った、整った平和な世界である。ここには、テロもなければ拉致もない。すべてが息を詰めて停止している。スーラの絵が魅力的なのは、こうした叙情性にも富んでいるからだろう。
オンフルールの浜辺を描いている、白っぽい作品。上記の作品と同様に、点描独特の静かな詩情が感じられる。まったく動きのない、やはり永遠に停止した世界。しかし、暗い印象はない。明るい光もまた閉じ込められているのである。遠景ほど白点が多くなっており、風景が白くかすんで見える空気遠近法の描写が認められる。
シニャックは、もっともよく知られたスーラの後継者だろう。晩年は、かなり粗い点描(というより小さな四角と言ったほうが正しいくらい)だが、このころはスーラのような細かい点描で描いている。スーラが点描法を生んで、ほぼ10年。スーラの科学的な点描画とは、かなり趣が異なってきている。画中の松の木や道などのモチーフはくねくねとした曲線で構成され、むしろ直線的な部分を見つけるほうがむずかしい。色彩も赤、黄、紫と、スーラに比べて華やか。メルヘン的な印象さえ受ける。しかし、点描の置き方自体は、オレンジと紺、黄色と黒、緑と赤と補色関係を保っていて、スーラ以来の“伝統”を守っている。
海岸べりの景色を描いているのだが、この絵が目を引くのは、波の描写。海岸と平行に、5〜6本しっかりと描かれ、波の反復したリズムによって、海の波の様子というより物理的な波動を連想させ、印象的だ。科学的なアプローチがベースとなっている新印象派によくマッチした描き方と言えるかもしれない。 ● アンリ・ドラヴァレー 『冬の井戸』 1887 正統的なスーラの点描画を受け継いでいると言えようか。小さな家とその庭、そして井戸が描かれているのだが、家はほとんど三角形そのもので、ほかの部分もきちんとした四角形などで、まるで定規で構成されている画面と言っても過言ではないほど科学的。抽象画の傾向も見られる作品。
マロニエの木が一本と、その木が川面に線対称に映っているところを描いている。スーラの絵が怜悧で明晰な詩情を感じさせるのに対し、トーロップのこの絵は、暖かみがあるやさしさを伝える。ポップな印象さえある。それは、補色関係の点と点を隣り合わせるというスーラ以来の“伝統”を、トーロップは無視したからである。ピンクなども多用し、色循環にこだわらないで自由な色使いを見せている。その結果、正確無比な新印象派独特の味わいは薄れ、感性的なロマンチシズムを感じさせる絵となっている。
新印象派の中で、もっとも冒険的で、独自の点描世界の開拓に積極的だったのがクロスだろう。本作では、ほとんど赤と緑の2色しか使っていない。その色使いはフォーヴ的。赤い山羊や緑の山羊がドンと座っている。木もまた緑1色で明確な輪郭線をもって描かれていたりする。版画のようにも思える、耽美的なムードがあふれる絵である。
磯場の風景画だが、そこにある岩はまるで生き物であるかのように、くねり、うごめいて存在している。もはやスーラの科学性とは無縁の世界。ぐにょりとねじくれ、岩と岩がシュールな造形を見せる。ガウディの世界を連想させる。シュールレアリズム的でもある。新印象派の中では、特異な存在と言ってもいいかもしれない。事実、解説板によると、プティジャンの画風が、いずれアンフォルメルへの道となったとのこと。
●フランス大使館の紹介ページ http://www.ambafrance-jp.org/japanese/culture_formation_j/breves_j/2002-06-07_j/2002-06-07.html#seura
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