●美術の力──時代を拓く7作家
●2002.8.13
●兵庫県立美術館
★★★★
| 今年の4月にオープンしたニューカマー美術館の柿落とし第2弾。4つ★にしたけれど、これは「器」込みでのジャッジ。展覧会の内容オンリーでは「★★★☆」といったところか。 まずは「美術の力」展について。青木野枝、蔡國強、ヘンリク・ハカンソン(スウェーデン)、河口龍夫、小林孝亘、ハンス・ペーター・クーン(ドイツ)、ビル・ヴィオラ(アメリカ)の7氏が「美術が本来持っている力」を作品を通じて提示するというもの(まあ、そういう言い方をしてしまえば、どんなコラボレーションでも包括してしまえるのだが)。おもしろかったのは、河口龍夫、ハンス・ペーター・クーン、青木野枝の3氏の作品。 河口龍夫氏は、「蓮」を主モチーフに、人間の命あるいは生のイメージを表現する。鉛でできた蓮が大きな展示空間の壁面や床からたくさん生えている。ひょろひょろと細長い茎の先に小さめの蓮の花がぽつり。びっしりとではなく、適度な間隔を保っているので、性格があいまいな印象の蓮畑となっている。その中に、ベビーベッド、ストレッチャー、そして朽ち果てたベッドが置かれ、人の誕生から臨終までを暗示する。言うまでもなく、蓮はあの世の花。鉛の蓮たちが異化した空間は瞑想的で、静かに鑑賞者を内観させる。 音による演出の可能性に挑んだのがハンス・ペーター・クーン氏。かなり暗く大きな展示空間の中、むき出しのスピーカーが25mはあろうかと思われる長さにわたって、ズラリと床に一列に設置されている。スピーカーがあるほかの部分の床は箱型スピーカーの内部に入っている吸音材のようなもので隙間なく埋め尽くされる。奥の壁面にだけ鮮烈なクサビ型のデザインが赤色の光で描き照らされ、空間に強いアクセントを加える。 青木野枝氏は作風がかなり変わった。今回は「空玉」と題した、メルヘンチックなムードのもの。青木氏と言えば、ささくれだった切断面そのままの鋼の彫刻で知られ、これまでは作品自体の印象も素材と同様であった。ところが、「空玉」では、素材は従来通りなのだが、鋼が構成する造形が遊園地のような雰囲気を醸し出すのである。鋼でできたいくつもの丸い輪と、鋼の棒が輪と輪をつないで空間に大きくメリーゴーランドのようなかたちを描き出す。懐かしい子どものころの記憶を刺激する。「空玉」というネーミングは秀逸だと思った。 さて、「器」のほうだが、設計は安藤忠雄氏ということで、例によって、コンクリートとガラスが織り成す建造物となっている。それは、まさしくモダニズムの系譜を引くもので、その点においては「まだ、その方向性なのか」と批判を受ける場合もあり、そうした批判が出るのは私にも理解できるけれども、では、安藤氏によるこの建物に嫌悪感を抱くかと言えば、決してそんなことはなかった。むしろ、好ましく思った。 シンプルな外観の印象でありながら、内部構造は必ずしも簡単ではない。しかし、そのわかりにくさは不快なものではなく、楽しく、遊び心を刺激してくれる。ぐるぐると歩いたら、ふいに異空間のような場所に出たり、方向感覚がなくなったり……迷路で遊んでいるときのようでもあり、おそらく、くるたびに新しい発見がある建物だろうなと思われた。規模もかなり大きく、のべ床面積は西日本一だそうである。今後は、ハードに負けないソフトづくりが課題となるのだろうが、大いに期待を抱かせる新美術館ではある。発展を祈りたい。 ●兵庫県立美術館 ●
青木野枝氏の作品例(本展での作品とは異なります) ●アートスケープのレポートコーナー
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