●森万里子ピュアランド
● 2002.3.6
● 東京都現代美術館
★★★
| 話題の個展ということで、「見ておかないといけないな」という気持ちでいくぶん義務的に行ってきた。「森万里子ピュアランド」のネーミングは、なかなかよいと思う。「ピュアランド」というフレーズは、森万里子氏の感性をよく表わしている。作品の素材から、訴えるメッセージにいたるまで、とにかく純粋である。言いかえれば、不純物が徹底的に取り除かれている感じ。
本展の目玉、「ドリームテンプル」。半透明のガラスでできた現代版法隆寺の「夢殿」である。ダイクロイックガラスという材料が使用されており、光が通過したりしなかったり、見る角度を変えたりすると、ピンクに見えたり、ブルーに見えたり、緑がかったり、微妙に色合いが変化する。CDに光を当てたときの反射に似ている。完璧なまでの人工造形性に、精密技術の研究所のような印象さえもってしまう。一見、白砂に踏み石が並べられた伝統的な日本庭園のように見える「ガーデン・オブ・ピュリフィケーション」。しかし、実際には踏み“石”だと思ったのは、樹脂でできたオブジェ。これもまた、自然の石とは正反対にあるテクノロジーの賜物である。
そのように森万里子氏の世界は、人工の世界、テクノロジーの世界でもあった。彼女のテクノロジーに対する、何の疑念もない(ように見える)姿勢も「ピュア」である。その志向は、私にはついつい未来派を思い起こさせた。いずれも新しいテクノロジーが明るい未来を切り開くと疑いなく信じている点で共通する。そのせいかどうか、何だかエレクトロニクスメーカーのコマーシャルかのような印象も抱いた。「イッツ・ア・ソニー」とか「パナソニック!」といったMCがピッタリはまる気がするのである。そのことは、今回の作品が「アート」というよりは「デザイン」に近いものを感じさせることにもつながる。
最近の作品では「クマノ」など、アニミズム的なテーマ、宗教的なテーマも扱ってはいる。しかし、いずれもやはりテクノロジーで演出されているため、面白いと言えば面白いのだけれども、何だか付け焼刃的な印象も抱いてしまう。ほんとうに信仰している人が見たらどう思うだろうなと、ふと考えてしまった。しかし、これらの作品を通して、森氏はユートピアを訴えている。それも、非常に「ピュア」に、である。もしかしたら、現在の仏教界よりも、よほど純粋な思いかもしれない。
で、見ての評価となると、ことさらにケナす気はないが、さりとて、よかったよかったとたたえる気持ちも起こらない、といったところ。決して嫌悪感はないのだが、強烈にインスパイアされるということもなかった。ただし、巷間、これほど高く評価されていることを考えると、ちょっと評価され過ぎではないかという気はした。また、テクノロジーに対するここまで楽観的、完全受容的なベクトルは、私には逆に少々古臭く感じられた。それから余談だが、こんなにメディアで取り上げられ、話題にもなっている展覧会なのに、終始、客が自分一人だったのは意外であった。
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