●宮本佳代写真展 「青色日曜日」
●2002.1.19
●立体ギャラリー射手座

★★★☆

成安造形大学に写真専攻4年生として在学中の作者の写真展。10枚ほどの組み写真作品である。写真は、紙焼きをスキャナーで取り込み、デジタルプリンターで大きく(天地1m50ほど、左右1m〜2mほど)引き伸ばしたもの。展覧会名の通り、どの1枚も青色が強調されている。その青色とは大方は空の青で、写真によっては画面の半分ほども青い空に費やしてある。

 

しかし、本作の特徴は青色だけではない。すべての写真が“ピンボケ”になっているのである。それも、かなりの程度で。写されている題材は公園、遊園地、海(?)などで、ふつうの人々がふつうの生活を営んでいる風景。家族連れもいるから、休日の様子だろう。それらが、ボンヤリとピントを外して映像に収められている。ボケ加減はちょうど、“そのときのことは覚えているのだけれどハッキリとは思い出すことができない”といった感じだ。

 

宮本氏によれば、このピンボケはまさにその効果を狙ったもの。「青色日曜日」は、昔、日曜日になれば親にいろんなところへ連れて行ってもらえたり、家族そろってのお食事会をしたりした記憶を表現した作品だそう。だから、ボンヤリしている。宮本氏にとっては、そんなふうに過ごした日曜日は、ほかの日とは違う、特別な意味合いがあったと言う。題材とした風景も、新しい場所は避け、どこか懐かしさを感じられるところを周到に選んである。ピンボケと場所選択が奏効し、作者の懐古的演出はうまく機能していると思った。

 

現実世界を絵画世界に還元するために彫刻から部屋全体までを青一色で塗り込んだクラインによれば、青色とは非物質性を表現するのに最適の色である。カンディンスキーもまた「典型的な天上の色彩」と言って、青の非物質性を指摘している。記憶の世界という非現実世界を表現した本作が、青を主役に置いたのは“正解”だったと言えるだろう。強調された青色に負けないよう、ほかの色も効果的に画面に取り込まれている。赤、黄などがかなりの強さで目立っていた。そのあたりの色彩表現は、宮本氏自身が言うように、蜷川実花のカラフル感覚の影響が見られる。また、本作の写真は、カラープリンタで引き伸ばしたことによって、色調全体が原画よりもかなり強調されエキセントリックに表現される傾向があった(カラーコピーを想像してもらえば分かりやすいかと思う)。それが印象を強くし、テーマである「青色日曜日」にもいい効果を生んでいると思ったが、宮本氏と話して、必ずしもそれが意図的なものではなかったとわかったのが少し残念だった。

 

宮本氏は、これまでにも「懐かしさ」をテーマとした作品を制作してきた。色彩感覚や構図はポップなものさえ感じさせながら、映し出すテーマは古いものというギャップがおもしろいと思った。次にどんな写真たちが登場するのか楽しみである。