ジョルジュ・ド・ラ・トゥール――光と闇の世界
国立西洋美術館

3.8〜5.29

★★★★
 

 

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの現存作品が40点ほどしかないとは、不覚にも知らなかった。フェルメールと似たようなもんである。本展は、30数点の「真作と関連作」を集めて催された、日本初となるラ・トゥールの展覧会。


ミソは、「真作と関連作」という点。「関連作」とは主に模写で、展示されていたのは真作だけではなかった。「関連作」が混じっていたことについては、人によって評価が分かれそうだが、こと展覧会を楽しむという観点からは、私には歓迎できるものだった。たとえば、銘板を見る前に、「これは真作か? 模作か?」と真否を鑑定しながら見るとか。自分の眼力を試せるようで面白いといえば面白いのではないだろうか(もっとも、その成績には我ながらガッカリしたが)。あるいは、12使徒シリーズという連作があり、模作や非出品作の写真を補助的に掲げ、シリーズの全体像が分かるようになっていたりもした。「関連作」はそれなりに効果を発揮していたと思う。


ラ・トゥールといえば、極端といっていいほどの劇的な明暗のコントラストと、画中に置かれるロウソクの灯火のゆらめきが特徴である。まるで、そこでほんとうに燃えているかのような小さな明かりは、炎の動きさえ感じられそうで、見る者に瞑想的な感覚を覚えさせる。本展でもそのラ・トゥールらしさが存分に発揮された作品を見ることができた。しかし、改めて気づいたのは、上手下手という点では、ラ・トゥールは必ずしも驚くべき技量の持ち主とは限らなさそうだということ。だから、真作と模作を見比べても、ほとんど違いがわからないものもあった。ドラマティックな画面演出で、うまく“弱点”をカバーしているようだ(笑)。


もう一つ思ったのは、この人、けっこう商売人だったんじゃないか、ということ。似たような絵がすごく多い。これは絵画の歴史ではよくあることで、ある作品が好評を博すると、同じような絵を何枚も描いては売り、きっちりお金を稼ごうとするときに起こる現象である。ラ・トゥールは工房ももっていたようだから、弟子たちも動員して“マニュファクチュアリング”で量産していたのかもしれない。


いちばんよかったのは、しかしながら灯火のない絵、『荒野の洗礼者聖ヨハネ』。お約束のロウソクはなく、暗闇のなかでヨハネがうなだれたようにうつむきき加減にベッドか何かに腰を下ろしているシーンが描かれている。どこからか、ぼんやりとした光が指しており、おぼろげにヨハネの姿が浮き上がっている。何となく、ヨハネの悲しみがひしひしと伝わってきて、心にしみるようだった。ルーヴルの『ダイヤのエースを持ついかさま師』が見られたのもよかった。

(4/12)