| 毎年、定点観測している本展。昨年がよかったので今年はどうかなと、いささか楽しみにもしていたが、本年度展は過去最低というのが私の評価である。厳しい言い方になってしまうが、ほとんど見るべきものはなかった。全体にひじょうにコンサバで、これでほんとうに「選抜」された作家たちなのかと、終始、疑念と不満を拭うことができなかった。
主催者の言によると、「出品作家の推薦は191人にも及び、さらにその中から選抜された若手作家63人による若々しい感性にあふれた作品を展示することができました」とある。まあ、主催者の言葉はだいたいこんなものなので、それとして割り切って読めばいいのかもしれいが、ヘソ曲がりの私なんぞは、こうしたあいさつ文を見ると腹が立ってきてしまう。もし、ほんとうにそう思っているとしたら、主催スタッフたちは無責任であるか、目が利かないかのどちらかといわざるを得ない。
そもそも、191人から63人が選ばれたとは、だいたい3人に1人がチョイスされたことになる。けっこう広き門ではないか。昨年までは、40人前後の選抜となっていたから、突然5割増しになっている。いったい、なぜか? 本展会場は、それほど広いスペースとはいえない。どうして急に枠を150%拡大したのか、まったく解せない。今年からは、どうやらオーガナイズが変わったようなので(フライヤーのデザインもついに変わった。が、やはりイマイチ、パッとしない)、エライさんの鶴の一声でもあったのであろうか。いずれにせよ、結果から見る限り、門戸拡大が質の向上にはつながらなかったことは明らかである。
話を作品のほうへ転ずると、本展の悪いクセが再び顔をのぞかせていた。すなわち、人マネ作品である。有名な作家の作風をそのまま援用しているものがいくつもあった。こういう作品は、もう締め出すべきではないだろうか。同時に、推薦した人のほうにも何らかのペナルティを課したら、とまでいっては乱暴だろうか。こうした無責任な推奨が、美術を学ぶ学生たちにどういう影響を及ぼすのか、虚心に考えてもらいたいのだ。
ほとんどの作品は平凡の域を出ないものばかり。そして、自分一人の世界に満足してしまっている表現が多く、第三者には「これ、いったい何なの?」としか思えない作品の連続であった。あるいは作家本人は「自分が新しい表現を見出した!」と考えているのかもわからないが、私などから見れば、すでに先人がし尽くしたような表現で、いまさらの感が拭えないものも少なくなかった。
といった具合だったので、個別に取り上げて論じようと思う作品はほとんどない。唯一、吉本直子氏の「白の棺」だけが群を抜いていた。この作品は、今年から美術部門と工芸部門に分けられた美術部門の最優秀賞を受賞していた。これには納得であった。しかしながら、工芸部門の最優秀賞、上田順平氏の「バンノウオキモノ」は、まったく訳がわからなかった。アジアンアートか某有名作家の亜流としか見えず、よくこれを最優秀賞に選出したもんだと呆れるほかなかった。
●吉本直子 「白の棺」 ★★★★☆
白い、綿と思われるシャツが材料の作品。何枚ものシャツを積み重ねて、1辺が1m半ほどもある大きなキューブ状に固めてある。キューブの外側、枠部分はしっかり形成されているのに、内側に向かっては、外枠面のあちこちから袖をまちまちな長さに伸ばしているだけとなり、そのため、中心に向かうにつれて、うつろな空間が生じることとなっている。ミトコンドリアとか、何かの生物の細胞のような連想があった。
多数のシャツを人間一人ひとりの比喩と見なすと、それらが固められてつくられたキューブは社会の擬製であろうか。そうだとしたら、内側が空虚というのは強烈なアイロニーとして見えてくる。あるいは、シャツの袖は手を伸ばして何かを求めているようにも見えることから、永遠に叶えられない望みをそれでも求め続ける人間の性が示されているようにも受け取れる。いろんなふうに考え、感じ取れる魅力あふれた、すぐれた作品である。タイトルも、イイ。
(2/16)
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