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京都造形芸術大学卒業制作展・大学院展
● 2003.3.2
● 京都市美術館
★★★★
| 何事も同じだと思うが、美術もやはり生を見ないとわからないもんだと改めて認識した。京都造形芸大の卒業制作展・大学院展。よかったのである。もっといえば、見終えて満足感さえ覚えた。最近の美大の卒展でそんな気持ちになることに、自分でもびっくりしたほど。嬉しい誤算だ。
● 木ど悠輔 『現実逃避』(情報デザイン) ★★★★ 坂上チユキ氏のような、きわめて細かい模様で1m半四方ほどの大作が描かれていた。細かい模様とは、マガ玉のようなかたちであったり、四角であったり、星形であったり。その微小パーツが画面を埋め尽くし、絵全体を構成する。坂上作品と違うのは、全体としての秩序だった絵柄がきちんとあることで、一種の曼荼羅図のようだ。また、鮮やかな色調で着色されてもいる。だから、ひと言でいえば、“超細密カラフルポップマンダラ”といったところか。根気と熱意がなければ描けない作品で、仏教的ニュアンスをはらみながら、シュールな作者の宇宙を表現したところにおもしろさを感じた。
展示品は編集の世界で「色校」と呼ぶもので、タイトル通り、「自分が雑誌の誌面デザインを手がけるとしたら、こんなふうにする」というものを作品として掲出してあった。完成度が高く、もうそのまま雑誌デザイナーとしてやっていけるだろうなと思わせるものがあった。反面、既存の市販雑誌を研究すれば、これぐらいはできるだろうなという面も否定できず、もう少し作者の独自性を発揮してもらいたかった。が、トータルとしてはすぐれたデザイン力を提示していた。なお、実際に仕事としてやっていくには、これくらいのデザインがどれほどの時間でできるかも問われることになる。私の感覚では、本作ぐらいの誌面であれば、プロのデザイナーなら2時間程度で仕上げると思う。
上記の藤井氏同様、実践的な作品。一澤帆布や龍安寺などをクライアントに想定して、コマーシャルポスターを自分なりにつくっていた。写真とデザイン図案、そして文字の組み合わせに、シンプルで訴求力のあるセンスが感じられた。この人も、十分プロとしてやっていける力量を備えていると思わせた。 ● 王峰 『新痩金体』(情報デザイン) ★★★★★ 異色の作品。なんと、タイトルの「新痩金体」という書体(フォント)を自分でつくってしまったのだ。まず、その着眼がユニーク。そして、「新痩金体」自体も、古風でありながら斬新で、繊細なのに芯に力強いものがあって上品。一度、実際に使ってみたいと思わせた。活字見本帳まで制作する念の入りようで、仕事(といってしまうが)に対する姿勢にも感銘を覚えた。フルマークで評価したい。はっきりと覚えていないが、何か賞を受賞していた。
中華風の派手派手しい真っ赤っかの門構えのデザイン。大きな作品だが、ていねいにつくられている。キャラクターっぽく処理した中国女性を大胆に配してあって、インパクトは強い。が、どこかで見たような気がしないでもない。
水槽と片端が水中に浸けられたラセンチューブが1つのセットになっていて、そのセットが10個ぐらいぐるっと円を描いて並べられている。ラセンチューブはゆっくりと回転していて、水槽の水を汲み上げ、となりの水槽へ吐き出す。したがって、水は永遠に水槽の円を循環し続ける。水槽もチューブも水もすべて透明なので、パッと見たときガラス系の美しさがある。またラセンチューブがそろって回転している様子もおもしろい。が、見なれると、ややつくりが稚拙なのが気になってくる。もっと精度を上げて製作できたら、印象はさらに洗練されたものになっただろう。なおタイトルが、ちょっとそのまますぎる気がした。
小さな文字でドクロの絵柄を描いたハードコピー1枚ずつの前に大きな数珠玉を受ける手。それが108つながって、全体で長い一つの数珠となっている作品。ドクロや数珠などというと抹香臭いイメージをもたれるかもしれないが、クールなセンスが光る。若者向け店舗デザインなどに即、使えそう。ドクロを描く文字が、ドクロ一つずつ異なっているので、作者なりの考えもありそう。
電灯の熱を利用して上下に自分で首を動かす電気スタンド。やじろべえのようになっていて、首が下にきたら電灯がともり、その熱で熱せられて首が上へと動く。しゃれていいのだが、これもよく見ると工作が稚拙なのが玉にキズ。雰囲気は出ていた。
六角形をした小鉢の作品。白地(もしかしたら白磁器か?)にワンポイント的に小さなデザインが施されていて、かわいらしい。が、この作品の真価は、小鉢単独ではなく、集合体にしたときに発揮される。六角形を幾何学的に組み合わせ、タイトルにあるように蜂の巣を連想させるように並べると、とてもおもしろい。ワンセット、家に置いておきたいなと思った。これも何かの賞を取っていた気がする。
水彩画のようなさわやかな絵。可憐なポートレートの少女が真正面を向いているほぼ同じ絵柄2枚1組で構成される。1枚は正面を見据え、いま1枚は目を閉じている。『宿命』というタイトルと絵柄が響き合い、何かはわからないけれども、ある運命が少女にやってくる瞬間を予感させる。既視感があるが、それなりにいい絵だと思った。
大きな絵3枚1組の作品。飛行機から荒涼たる岩だけの大地を見たときのような地を立体的につくり、茶色一色を塗ってある。タイトルの「coarse」とは「粗雑な」とか「粗い」とかいう意味。金属などが精錬される前の状態を指すこともあるそうだ。それからすると、地球誕生まもないころの地球の表面にも見える。いずれにせよ、まだ磨かれない、だがそれゆえに原始の力強さをもっているものをイメージさせる。もう一皮むけてほしい気もする。
楽しい作品。いろんなデザイン図案が描かれている。横断歩道のマークや、非常口に書かれている歩く人のマーク、メンソレータムの人のマークなどなど。その一つひとつに下に引っ張る札がつけてある。引くと、絵柄がユーモラスに動く。どのようにしてつくってあるのか不思議だが、まずはとにかく親しめる。みんな喜んで引っ張って遊んでいた。絵柄の動きに意味が考えてあれば、作品の存在感はより増すことと思う。 * 以上のように、見応えのある展覧会だった。デザインにとくに強い印象を受けた。かなり実践的なカリキュラムが組まれているようで、社会に出て、即戦力となるように育てているなと感じた。いいものを見せてもらった。 |