●キリン アートアワード2002 受賞作品展
● 2003.2.3
● KPOキリンプラザ大阪

★★★☆

昨年の秋から東京、名古屋と巡回してきた受賞作のお披露目展が、ようやく関西にたどりついた。受賞作発表からかなり時間が経っているので、少々、気の抜けたキリンレモンみたいな感じがなきにしもあらずだが、こないよりはマシである(なぜか東京、名古屋ときて、次は広島とか福岡などと関西をすっ飛ばす企画が多い気がしてならないのは、単なる被害モウソウだろうか……)。


応募総数が過去最高の950点となり、ますます競争が厳しくなるなか、最優秀賞1点、優秀賞2点、奨励賞8点が選ばれた。最優秀賞は立体、優秀賞は2つとも映像、奨励賞は立体2つ、平面2つ、映像4つと、映像関係が入賞作の多くを占めていた。映像作品は、なかなかいいなと思えるものに出合わないので、このシェアを見たときは「どうなんだろう?」と身構えた。映像作品は、彫刻や絵画、インスタレーションなどと違って、思い思いに好きな時間だけ見て回るわけにはいかず、見る者を束縛するからだ。だから、よほど“引力”が強くなければ途中から見つづけるのが面倒くさくなってくる。だが今回は、素晴らしい映像作品を見ることができた。


その一方、立体や平面は多数のなかから選ばれたにしては弱かった(映像作品の受賞が多かったのは、そのためだろうか)。最優秀賞を受賞した佐藤好彦氏の『Present Arms』(12本のエレキギターをヨコに並べて一つにくっつけた作品)も、悪いとは思わなかったが、審査員たちが激賞するほどとは感じなかった。したがって、展覧会全体としては少々辛い点数になってしまった。


○ ダニエレ・ルンギーニ/ディエゴ・ズェッリ『Le foto dello scandalo』

イタリア人二人組による映像。私なら、これを最優秀賞に推したい。モノトーンのCGアニメーション。殺人現場を撮影してしまった男が、殺し屋から逃げ延びるというストーリー(だと思う)。一つひとつのシーンは3D的に固定してつくられている(だから登場人物が動いたりしない)が、カメラアングルが常に動いており、パ―ンすれば続きの場面が出てくるという具合でストーリーが展開していく。つまり、固定場面の連続で見る者に話を類推させるしかけだ(ん〜、うまく説明できない! わかってもらえるかなあ……)。


音楽のみでセリフはない。言語の壁を超えている。キャラクターの若干フィギュアっぽいデザインも本作では成功しているように思う。シュバンクマイエルなどと同じくらいの、世界レベルの作品だと評価したい。最初は日本人の作品かと思っていたので、「日本人も、ついにここまできたか!」と感無量の気持ち(おおげさ!)で見ていたのだが、イタリア人の作品とわかって、「やっぱり」と、ちょっぴり残念な気も。優秀賞受賞。本作単体では、★★★★★のフルマークをつけたい!
(映像表現を目指している人は、見ておかれたほうがいいかと)


○ 坂本サク 『フィッシャーマン』

水が干上がった未来の地球で、砂にもぐり、空中を飛ぶ不思議な魚を、「フィッシャーマン」たちが捕獲するために闘う姿を描いたアニメーション。躍動感あふれる画面と、自作の音楽で完成度が高かった。すぐれた出来だとは思ったが、人物や魚の動きは『ルパン3世』に、場面設定は寺沢武一の『コブラ』に既視感があったのは気になった。またストーリー展開もやや月並みで、若干間延びを感じさせる部分もあった。あと一歩の練りがほしかった。なお、坂本サク氏は同時応募の『摩訶不思議』と併せての受賞となっており、審査員の椹木野衣氏は『摩訶不思議』のほうを買っていたが、私には逆に思えた。優秀賞受賞。★★★★

○ 高橋 榮 『鉄の女達』

鉄製のパーツを用いて、抽象的な4つの女性像(らしきもの)をつくりあげていた。最初は、独創的な感覚世界が面白いなあぐらいにしか見ていなかったが、よく見れば一つひとつのパーツは農作業で使われる器具。既製品を巧みに組み合わせることで、ユニークな造形を生み出した試みを買いたい。奨励賞受賞。★★★★

キリンアートアワードのサイト→

http://www.kirin.co.jp/active/art/art-award/2002.html