●「光のなかの女たち」
● 2003.1.10
● ポーラ美術館

★★★★

 

昨年のニューカマー美術館の大物、ポーラ美術館にようやく行くことができた。企画展は、オープン記念となる「光のなかの女たち」。


ポーラ美術館は、ポーラ化粧品オーナーの鈴木常司氏が40年以上にわたって収集した美術コレクションをもとに、2002年9月、箱根の仙石原に設立された。中核をなすのは、モネやルノワールら印象派の絵画。その他、セザンヌ、エコール・ド・パリの画家たち、ピカソをはじめとする20世紀絵画の画家たちの作品も多くあり、西洋絵画だけで約400点を保有している。西洋絵画のほかには、洋画、日本画、彫刻、東洋陶磁、ガラス工芸、古今東西の化粧道具など、総数は9500点にものぼるというから驚きである。


またしても、「展覧会ミシュラン」というよりは「美術館ミシュラン」ぽくなってしまうが、話題になっているだけに、まずは建物についてふれないわけにはいかない。
箱根という土地柄を考慮して、周囲の環境を配慮したという設計になっている。それは、美術館への入り方に現われており、エントランスを入るとそこが美術館の最上階で、ギャラリースペースへは、エスカレーターで「上る」のではなく「下る」ことでアプローチする。地上2階地下3階の建物なのだ。この動線はユニーク。
印象は、さすがに化粧品メーカーが運営するだけに、とにかくオシャレ。天井部にガラスを目一杯使用したため、恐ろしく明るく開放的な空間がつくられている。壁面も、いま流行の白色半透明のガラスで統一されている。したがって、気持ちのよいソフィスティケートされたムードが売りとなっている。
だが、あえて文句をつけるとするならば、この種の雰囲気は銀座や渋谷でもよくあるもので、箱根の必然性は感じない。

エントランスを入ったところからの内部

 

ギャラリースペースへ入ると、一転して窮屈な印象を受ける。パブリックスペースが地下から地上へ至る大きな吹き抜けになっていてきわめて開放感に富んでいたので、余計にギャップを感じるのだろう。天井が低いのが気になってしかたない。作品もワイヤー吊りにされているのが、オシャレさが災いして常よりうるさく感じる。
注目を集めている「光ファイバー照明」は、ライト類で直接室内を照らすのではなく、光ファイバーを通して光を導くもので、自然光に近い環境を確保できているそうである。実際に見たところ、その狙いはうまくいっているように感じた。細い光ファイバーの光源が天井に一列に並び、「数少ない大きな光源による集中光」ではなく「数多くの小さな光源による分散光」で、全体にマイルドな光環境となっている気がした。光ファイバーの小さく輝く切り口も繊細な演出効果を発揮している。


さて、建物についてはそのへんにして、以下、「光のなかの女たち」展について。企画趣旨は、当美術館は印象派が中心となっているため「光」にちなんであり、ポーラという女性相手の企業なので「女たち」というところから決められたようである。また、美術館が光を意識した設計となっていることも関連していよう。
だが、その内容は必ずしも趣旨を反映したものとは感じられなかった。もちろん、ルノワールの印象派期の女性像などが展示してあったから、その限りでは企画趣旨は満たされているのだけれど、風景画や男性像、静物画も多く、結局はコレクションの秀作を見せるのに方便的に本企画をでっち上げたのでは、と思ってしまった。つまり、企画性が弱いのである。だから、あまり振りかぶらずに、「トレジャー・オブ・ポーラ展」ぐらいでよかったのではないだろうか。

トイレまでオシャレ!

 

一つひとつの作品を見ていっても中途半端感が拭えない。画家の名前を挙げていけば、キラ星のごときラインナップが並ぶ。モネ、ルノワールをはじめ、アングル、ドラクロア、ドーミエ、クールベ、コロー、マネ、ドガ、ブーダン、シスレー、ピサロ、スーラ、シニャック、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、ロートレック、ボナール、マチス、モディリアーニ、シャガール、マリー・ローランサン、ピカソ、カンディンスキー、ミロ、ダリ、キリコ、マグリットなど。疑うべくもなく超一流ばかりである。にもかかわらず、鑑賞後、物足りない印象が残るのである。


それは結局、総花的であるためと、それぞれの画家の抜きん出た作品がないからのような気がした。とにかくビッグネームをコレクションに置いておきたいという感覚で、絵というより名前でそろえたキライなきにしもあらず。この美術館ならではの特色、カラーが感じられないところが、不満足感につながってしまう。少々、カラクチで申し訳ないのだが。
また、コーナーを区切りすぎで落ち着かない気もしたし、作品を並べる順番もよくわからなかった。単純に制作年順にしてもらったほうが、画家の画風の変遷もわかってよかったのではないだろうか。もう一つついでにいえば、絵を覆ってあるガラスへの映り込みがひどく、見にくかった。


いいなと思ったのは、モネ『セーヌ河の日没、冬』『国会議事堂、バラ色のシンフォニー』『ルーアン大聖堂』、マチス『リュート』、藤田嗣治『姉妹』など。


いろいろと注文を述べたが、星評価は4つにした。オープンのご祝儀込みということで。また、器としての美術館自体には好感を抱いたからだ。
でも、今後、ポーラ美術館を待ちうけている道は、必ずしも平坦なものではない気がする。集客力をもつのは作品というよりむしろ建物であるようだし(したがって建築関係者の来館が多いそうである)、場所的にも箱根仙石原という立地が吉と出るか凶と出るかまだ不明。スタッフの数もかなり多いし、ソフトでの特徴が出しにくいコレクションである気もする。
その懸念を拭い去るには、どれだけ興味深い展覧会を今後展開できるかにかかっているだろう。

バス停までオシャレ!