展示されていたのは写真作品。かなり大きく、天地左右とも1m20〜30cmほどはあったろうか。写真の中には黒い大きな矩形が写真の大きさの9割ぐらいを占める具合に置かれてある。そのため写真のほとんどは黒い矩形に隠され、何が映っているのかわからない。見えるのは黒い矩形からはみ出した部分のみである。ちょうど、黒い額縁をつけた写真の額縁と画像を入れ替えたようなありさまだ。
黒い矩形部は、初めは真っ黒に塗りつぶされているのかと思うが、よく見ると、うっすらと下の画像が透けて見える。ほとんど見えないのだけれど、ごくごくかすかに何かが映っていることがわかるといった風情である。そうした様子から、作者は私たちがふだんごく当たり前のものとして受け止めている「見る」という行為について、黒い矩形が侵入することで、われわれの視覚がどう切り崩されるか問うているのだろうか。
しかし残念ながら、そのような問いに観客を引きずりこむだけの“引力”は、展示された写真には感じられなかった。いや問いなどではなく、ただ作者がクールだと思う感覚世界を提示しているのだ、という反論がもしあれば、それとて特筆すべきものではない。作者の意図が何なのか私にはちっともわからなかったが、意図がどうであれ、端的にいって作品としての力が弱い。もっともっと、客観的な視点も保持しつつ、求め続ける必要があるだろう。
なお、個展名の「yell」とは、「叫び」とか「叫ぶ」とかいう意味で、よく「エールの交換をする」とかいうときの「エール」であると思われるが、こちらも意味不明。
(7/6)
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