栄光のオランダ・フランドル絵画展
東京都美術館

4.15〜7.4

★★★★★ または ★★★★
 

 

★印評価が二つあるのが、いい加減で申し訳ないのだが、私の場合、お気に入りのフェルメール作品を見られただけで大満足となってしまうので「★★★★★」。でも、それだと公平を欠くので、フェルメールの付加価値分を割り引いてみたら「★★★★」ぐらいかな、ということである。


本展を通覧して改めて感じるのは、北方美術は律儀だなぁということ。綿密に細部まで描きこまれており、生真面目さが伝わってくる。それから、オランダ・フランドル絵画とはいうものの、オランダ絵画とフランドル絵画では違いがあるとも感じた。それは題材に関してで、フランドル絵画は、ルーベンスに見られるごとく、神話画や宗教画がけっこう多かった。対してオランダ絵画は、いわゆる風俗画中心。美術史的に見れば神話画や宗教画は保守本流であるから、オランダ絵画が特異ということができそうである。


本展の目玉は、いうまでもなく、フェルメールの『絵画芸術(画家のアトリエ)』であるが、それだけではなく、小品ながらも興味深いものが含まれていた。ド派手に目を引く大作はないものの、西洋絵画のテイストは十分味わえるだろう。西洋クラシック画が好きな人ならば、まずは満足することができると思われる展覧会だった。



● ヨハネス・フェルメール 『絵画芸術(画家のアトリエ)』 ★★★★★

この絵を日本で見ることができるとは、ついこのあいだまでは夢想だにできなかった。数ある(数ない?)フェルメール作品のなかでも傑作といってよいものだろう。基本的な印象はすでに「私的鑑賞」で書いたとおり。それに加えて今回改めて感じたことがいくつかあった。


まず、モデルとなっている女神クリオが、『真珠の耳飾りの女』の少女に似ているじゃないか、ということ。卵型の顔立ちで、西洋人にしては彫りのあまりない顔である。私だけかもしれないが、Every Little Thingの持田香織とも似ている気がしてしかたがない。こうした顔をまったくの想像で描くことはできない気がするし、もし想像だとしても『真珠』で描いて、また本作で描くというのも不自然に思えるので、私はモデルとなった人物がいたのではないかと考えたい。


それから、壁にかかっている迫真的な地図。当たり前のことだが、よく考えたら、この地図の細かいところまでフェルメールは描いているのだ!という事実に改めて驚嘆した。地図の描き方は、ただごとではない。フェルメールにとって、この絵のなかでもっとも入魂したのは地図だったかもしれないと思えるほどである。地図の意味は、一般に想像されている以上に重いものがあるかもしれない。


この絵を日本で見られるのは、美術ファンにとって、最高級の愉楽といえると思うので、ぜひ多くの人にご覧になってもらいたい(別に私ゃ主催者でも何でもないんですけど)。


● ヤン・ブリューゲル 『動物の習作』 ★★★★

美術史上の名作とかいうわけではなく、むしろ習作なので作品価値的にはそれほどのものではないのだろうが、なかなか興味深いものがあった。犬とか猫とか猿とかロバとかのさまざまなポーズのスケッチである。動物のいろんな瞬間を描きとめておいて、いずれ自分のちゃんとした作品に描くときの参考にしようというものであろう。それだけに気取りのない画家の素顔が垣間見られるような楽しさを感じた。描かれた動物たちのユーモラスな姿態がほほえみを呼ぶ。北斎漫画を思い出した。


● アブラハム・テニールス 『猿の床屋に猫の客』 ★★★★

『レオポルド大公の絵画室』のテニールス(ダーフィット・テニールス)とは別人。猿が営む床屋に猫の客がきているところ。そうした素材だけで、見ていて面白い。もちろんテニールスは面白さだけではなく、社会風刺の意図も込めているのだろうが。


● ヘラルト・テルボルフ 『林檎の皮をむく女性』 ★★★★

地味ながらも、静かに心を打つ魅力が感じられた。小品ながらも、なかなかの秀作。

 

<巡回展>
7/17〜10/11 神戸市立博物館

(7/6)