インターナショナルIDEAとの懇談会メモ

日時:    5月31日(火曜日)午前10時30分から12時まで

場所:    衆議院第二議員会館 第四会議室

ゲスト:   マッシモ・トマソーリ インターナショナルIDEA事業部長

司会兼通訳: 菅原秀 (特活)ADP委員会事務局長

 

参加議員:  亀井久興、井上和雄、藤田幸久、内藤正光、稲見哲男(代理出席)

一般参加者: ADP委員会会員6人、トランスペアレンシー・ジャパン2人。

その他12人

 

 

●マッシモ・トマソーリ氏 プレゼンテーション内容

 

 インターナショナルIDEAは民主化と選挙の支援を目的として設立された国際機関である。現在23カ国が参加しており、さらに国家以外の民主化支援団体もいくつか参加している。日本はオブザーバーの資格で加わっている。今回の来日は日本の各機関との連帯の強化を目的としている。

 インターナショナルIDEAの設立の時代背景としては90年代初期の東欧の民主化などの国際情勢がある。インターナショナルIDEAがなぜ必要かということに関して初代事務局長が私に次のように説明してくれた。

「国連の場合は国という枠の中で外交を行わなければならず、民主化問題のように異なった考えのグループが対立する問題に対応するのには限界がある。そこで国連とは違う仕組みでかつ、オフィシャルな国際機関が必要だとされたのである」

 

インターナショナルIDEA設立の経緯

 

 インターナショナルIDEA設立のイニシャチブをとったのはスウェーデン議会であった。スウェーデン議会では与党も野党も協力して国際機関としてのIDEAの立ちあげのために動いた。また世界各地の民主化を推進するためには、政府だけでなく、NGO、マスコミ、企業などの多角的なグループの協力が必要である。スウェーデン議会はスウェーデン外務省に設立準備のマンデートを与え、設立の調査のために他の国も含むさまざまな団体と1年半かけてコンタクトし、日本も訪問した。日本訪問の際には、廣野良吉教授(ADP委員会理事長)にもお会いし、協議している。

 こうしてインターナショナルIDEAは1995年に設立され、今年で10周年となる。

 

インターナショナルIDEAによる民主化支援の方法

 

 主な活動は全世界で民主化支援を行うことであるが、ひとつのモデルを押し付けるのではなく、その国々で民主主義が育つための基盤作りを支援してゆく。たとえばインドネシアでは上院議会の機関設立の支援を行ったが、そうした場合「機関」と「政策」がどう関わってゆくかということに、注意する必要がある。異なった考え方の政党が上院という「機関」の中で十分にその政策を展開できなければならない。さらには民主化にとって女性の参画手段を支援することも重要な課題である。「中央」と「地方」の関係も重要であり、紛争を予防する意味で「地方」の声が中央の機関に届くようにしなければならない。また各政党のリーダーたちの育成を支援することで、紛争の予防、政党の活性化、政党の強化をうながすことも重要である。新しい考え方が政党に入り込むことでより良いものになるということを理解してもらい、そうした知識により効果的なプログラムを作り出すことが重要である。さらに、そこで生み出されたネットワークを生かし、選挙管理委員会の監視や公正化をはかる。知識にアクセスすることができて、実際に行うことができるような架け橋となることがインターナショナルIDEAの仕事である。

 またインターナショナルIDEAの重要な仕事に「対話の場」を作り出すことがある。私たちは一方の立場に与することはない。たとえばペルーでは、異なった価値観を持つ政党同士が対話を行っている。インターナショナルIDEAはこうして異なった価値観を持つグループの対話の場を作り出す調整活動を行っているのである。

 

質問 (井上和雄衆議院議員)

インターナショナルIDEAはインドネシア上院設立の支援を行っているが、国際機関が一国の議会制度に関与するのは難しいと思う。どういう経緯でこれが行われたのか?

回答(トマソーリ)

キーポイントは、その国からの要請があることが大事だが、インターナショナルIDEAはそもそもインドネシアに事務所を置いていて地元のNGOと提携した事業を行っていた。その過程の中で生まれた要請である。上院設立のための調査報告書も英語とインドネシア語の両方で準備できるなど、地元との提携があったので、最終的にスムーズな支援が行えた。

 

質問(内藤正光参議院議員)

どの国の外務省も国際機関による自国への関与を嫌うものだが、どういう取り組みによって、各国がインターナショナルIDEAに参加するようになったのか?

回答(トマソーリ)

インターナショナルIDEAのメンバーになるためには、批准が必要である。そのためには当然、その国の国会議員の関与が必要である。インターナショナルIDEAは各国の国会議員ともコンタクトしている。インターナショナルIDEAはその国自体の政策の変更をせまらないが、その国が多元的な意見を取り入れるような状況になることを歓迎している。たとえばアフリカ国会議員連盟を結成するための委員会で、インターナショナルIDEAは各国の議員との連携と対話を長い時間をかけて行っている。さらに女性の政治への参画を推進するためのパンフレットを作ったり、国会議員と市民との提携による政策提言をどうやって行うかというプログラムの策定なども行っている。

 

質問(亀井久興衆議院議員)

インターナショナルIDEAの財政基盤の確保のために加盟国は快く拠出に応じているのか?また民主化の問題を抱えている国がたくさんあるが、そうした国々の民主化をうながすプログラム策定に関して、NGOの要請を受けて決定するのか?

回答(トマソーリ)

加盟国には経済的負担が困難な中小国も含まれている。そうした国にはボランタリーな拠出をしてもらっている。それぞれの国に異なった拠出金を支払ってもらっている。全体の予算は1千万ユーロであるが、OECD加盟国は40万ないし70万ユーロを拠出している。ホスト国であるスウェーデンが一番大きな拠出をしている。民主化支援の手段を考える場合に、加盟国の考え方を直接受け入れるということはしない。直接の考え方と間接的な考え方の双方を勘案する必要がある。たとえばメキシコの来年の総選挙に関する民主化支援では、現大統領と反政府であるメキシコ市長の対立があるわけだが、政府の二つの機関と、非政府の二つの機関が協力してプログラムを策定している。

 

質問 (廣野良吉ADP委員会理事長)

民主主義が機能していない国では、誰がプログラム作りを行うのか?

回答(トマソーリ)

ネパールの場合が典型的な例になるが、ネパール国内のシンクタンクと欧州委員会双方から、ネパールで民主化を推進するためにはどうしたらいいかという要請があった。6カ月にわたって現地のNGOと対話し、議会制民主主義の再建と憲法制定に関する報告書を作成し、欧州委員会に提出した。しかし、ネパールの一種の王政クーデターで、その後、民主化を機能させるめどが立っていない。インターナショナルIDEAは直接的な民主化支援を行うわけではなく、幅広い一般的なコンセンサスを作り出す機関であり、個々の団体の要請に直接応じるわけではない。ボリビアの民主化にかかわる選挙の際には、国民選挙法廷が重要な役割を果たした。またオランダの「超党派のための民主財団(IMD)」からの支援要請もあった。その結果、IDEAは国民投票をモニターし、国民選挙法廷のもとに多くの対立グループが対話できるようになる役割を果たすことができた。

 

質問(藤田幸久衆議院議員)

インターナショナルIDEAは各国の民主化支援財団とどういった提携をしているのか?

回答(トマソーリ)

インターナショナルIDEAはもちろんドイツの政治財団やアメリカの民主化支援財団などとも協力しあっている。しかしながら各国の政治財団は相手国の自分達と同じ政策を持つ政党を支援しがちである。政党支援というものは幅広い形で行われなければならない。それぞれの政党が選挙の場で公正に選ばれるという政治システムが作り出されることが最も大事である。

 

了  (文責 菅原 秀 05年5月31日) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 参考資料

 

インターナショナルIDEA(国際民主化選挙支援機構)について

インターナショナルIDEA、International Institute for Democracy and Electoral Assistance(IDEA:国際民主化選挙支援機構)は、各国ごとの民主化支援財団とは違い、国連と同格の国際組織である。
 
国際組織であることを明確にするために、英語の略称はInternational IDEAとなっており、読み方は「インターナショナル・イデア」である。また同機構が発表した日本語の公式訳は「国際民主化選挙支援機構」である。
 1995
年に設立された組織であり、本部はスウェーデンのストックホルムに設置されている。現在の加盟国はオーストラリア、バルバドス、ベルギー、ボツワナ、カナダ、ケープベルデ、チリ、コスタリカ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、インド、モーリシャス、メキシコ、ナミビア、オランダ、ノルウェー、ペルー、ポルトガル、スペイン、南アフリカ、スウェーデン、ウルグアイ(2005年現在)となっている。
 
また、スイスが加盟の準備をしており、さらに日本は2003年にオブザーバーの資格を取得している。
 
世界全域にわたって民主主義の設立を支援するためにつくられた国際機関であり、各国政府、研究機関、さらに国際開発NGOと協力し、まだ民主化が未整備な国々に対し、制度作りと民主的文化作りの支援をおこなっている。

IDEAの目的としては、次の項目がうたわれている。
1、  主制度構築・強化に向けた各国への能力養成支援。
2、  界中の学者・政府・実務担当者間の民主化支援政策対話の場の提供。
3、   研究成果と実地経験の統合による、民主化プロセス改善支援のための実用ツール開発。
4、
  選挙管理の公正化と効率化の推進。
5、  地元市民による国内の民主化評価・監視・推進活動の促進。

 
IDEAの活動分野は次の6つのカテゴリーに分類されている。
「選挙制度・選挙管理」「女性の政治参加」「政党管理・資金調達」「紛争終結後の民主化と対話」「地方レベルでの民主主義確立」「民主主義指標の作成と評価」
 
IDEAの選挙管理支援活動は今までに、グアテマラ、ブルキナファソ、ナイジェリア、グルジア、ルーマニア、スロバキア、ボスニア、インドネシア、ネパール、ペルーなどでおこなわれてきた。
 
また、バングラデシュ、エルサルバドル、イタリア、ケニア、マラウィ、ニュージランド、ペルー、韓国では現地のNGOと協力し、試験的な民主主義評価を行っている。
 
IDEAに加盟できるのは各国政府および政府間機関であるが、さらにNGOも准加盟機関の資格で加盟できる。現在の准加盟機関は次の四団体である。国際新聞編集者協会(International Press Institute)、グローバル・アクション議連(Parliamentarians for Global Actions)、トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)、米州人権研究所(Inter-American Institute for Human Rights)。
 
インターナショナルIDEAの理事と理事長は、加盟国と准加盟機関の代表で構成する評議会によって任命される。評議会が最高統治機関であり、現議長国はオランダが務める。評議会は活動全体の方向性を定め、新規加盟国・機関を承認する。事務総長は、理事会によって任命される。理事は個人の資格で在任し、現理事長はスウェーデン元副首相、元外相のレナ・イエンワレン。日本からは猪口邦子が理事として就任している。 インターナショナルIDEAの資金は、各加盟国の分担金と、国際機関からの助成によって調達されている。スタッフは30カ国から60人。国際公務員として勤務している。
 03年7月には、日本がオブザーバーの資格を取得したことから、カレン・フォッグ事務総長と中満泉レナーツスン対外交渉部長が来日し、日本政府関係者、議員、およびADP委員会との面談をおこなっている。
 インターナショナルIDEAは各国政府が加盟する国際機関であるが、同時に各国の議員、NGOとも密接な連絡をとりながら、政府と民間の双方の外交活動を調整する形で、民主化支援活動を進めている。
 現在の重点地域はインドネシア、ビルマ(ミャンマー)であり、03年からはメキシコも重点地域となった。

インターナショナルIDEAホームページ言語(英、西)http://www.idea.int/

 

マッシモ・トマソーリ氏略歴 Massimo Tommasoli

イタリア出身。パリの社会科学高等研究院(EHESS)で博士号を取得したのち、主として紛争解決やグッド・ガバナンスの分野で活躍。新興独立国(ロシア、ウクライナ、カザフスタン)、サブサハラ諸国(エチオピア、ソマリア、タンザニア)、ラテンアメリカ(ブラジル、コロンビア)などでの現場経験が豊富。1999年にはOECDの開発援助委員会(DAC)内に設置された「グッド・ガバナンスと紛争予防ユニット」の長を務め、「グッド・ガバナンスとキャパシティー・ビルデイング」(GOVNET)や「紛争・平和・開発協力」(CPDC)などのネットワークを加盟国に拡大した。またイタリア外務省の開発協力庁のシニアー政策アドバイザーとしてユネスコでの外交活動に尽力。さらに開発協力庁の技術査定委員も務めた。現在イタリアの各大学、国際機関の研修センターで、積極的に講義活動を行っている。著書7冊。社会科学雑誌への寄稿多数。